■内装/外装変速

普段の使い勝手に関わる変速機。大きくは2種類に分かれる。
内装…漕がずに変速(変速機はハブに内蔵)
外装…漕ぎながら変速(変速機は外部に露出)
それぞれまさに“一長一短”で、好みの分かれる所になる。



内装変速の特徴

【○】停車中にギアを変更可能で、坂道発進や街中に強い

  • 内装と外装で使い勝手に一番影響する違いとなる。内装変速の構造上、外装変速の様にチェーンを移動して架け替える必要が無く、ハブ内部の歯車の噛み合わせを変えて変速しているので、停車中にもギアを変更可能。なお、走行中にも変速は可能だが、漕ぎながら変速するよりは、漕ぐのを一旦止めて惰性走行中に変速して漕ぐのを再開する方が部品の負担は少ない。
  • 例えばトップギア(一番重いギア)で停止しても、停車中に軽いギアに切り替えて軽快にスタートする事ができる。特に街中の様に信号等で停止する事が避けられない道を走る時ほど役に立つ。停止&発進回数が数十回を越える様な市街地走行がメインなら、内装変速が便利となる。
  • 坂道を登る途中でトップギアのまま停止しても、スタートする時には停車中に軽いギアに切り替えていつでも最適なギアで発進できる。外装変速の場合は停車前にギアダウンする間の走行距離がある程度必要で、停止距離が伸び易いが、内装変速ならギアダウンを気にせずトップギアのまま即停車できるので、急坂登坂中でも余裕を持って運転に集中できる。
  • 内装の弱点である重量や駆動ロスを電動アシストで相殺できるので、非電動の自転車に比べると内装変速のデメリットが目立たなくなり、停車中に変速できるメリットが強調される事になるので、内装変速と電動アシスト自転車の相性は比較的良い。


【○】メンテナンスが“殆ど”必要なく、車体や服が汚れ難い

  • 変速用の可動部品がハブ内に密閉されているので、外的な衝撃が加わったり泥汚れや異物を挟み込んだりして調子が悪くなる可能性が減り、耐久性が非常に高い。密閉された内部にグリスを封入して潤滑させているので、メンテナンスフリー(メンテが殆ど要らず、壊れたら全交換が基本)を想定した設計になっている。
  • 外装変速機の様に可動部品が外に露出していないので、可動部品を縁石等にぶつけてワイヤーの調整が狂う事が無く、ワイヤー調整の必要が殆ど無い。内装変速でもワイヤーは経年劣化で1年~数年経つと僅かに伸びて調整が狂う事はあるが、調整は変速機の付け根のネジを少し回せば数分で可能。
  • 外装変速の様にチェーンを左右のギアに架け替える事が無いので、チェーン外れのトラブルが殆ど無い。非電動のママチャリだとチェーン引きの調整が不十分でチェーンが伸びて緩くなって外れる場合があるが、電動アシスト自転車の場合はアシストギアの下にテンショナーがあるので、ある程度のチェーンの伸びは相殺してくれる。
  • 可動部分が露出してないので車体や服の裾が油で汚れ難い。内装変速の場合、チェーンの移動が無いのでチェーンカバーさえあれば汚れた油の飛び散る量は極少ない。


【○】高耐久ハブを使えば、高アシスト比に対応可

  • 従来の内装・外装変速機では、電動のアシスト比率を上げ過ぎると長期間使った場合の部品の耐久性に不安があった。その為、旧基準時代は法定上の最大アシスト比が1:1でも実際は【1】:【0.7】程度で、新基準時代になっても最大アシスト比が1:2でも実際は【1】:【1.2】程度の車種が殆ど。
  • チェーンの架け替えの無い内装変速なら、太いチェーンを使ってチェーンの耐久性を上げる事ができる。それに2010年より登場した高耐久型内装3段変速ハブを組み合わせると、アシスト比1:2に近い高パワーに対応可能になる。
  • 高耐久型ハブは、トップギアの3速が増速無しの等倍変速になっている。ペダルの回転が遊星ギアによる増速無しにダイレクトに後輪側に伝わるので、部品の負担や駆動ロスが少ない仕組みになっている。実際の使用では最も多用する事になる3速を等倍に設定した事で耐久性を上げている。


【△】頑丈で消耗品も少ないが、一度壊れたら全交換

  • 短い期間で交換が必要な消耗品が殆ど無いので、メンテ代で細かい出費が出ないのは利点。ただしもちろん物理的な力の掛かる可動品なので永久に使える訳では無い。長期的なスパンでは磨耗したチェーン及びスプロケットの交換がいずれは必要になる。チェーンを架け替える事が無いので外装に比べると比較的チェーンの消耗は少ない。
  • 内装ハブの構造自体は相当に頑丈なので、状況次第ではかなり長期間に渡って使える場合もある。実際、負荷の少ない非電動のママチャリなどは、15年位昔の内装3段が未だ現役で稼動している場合も見られる。電動アシスト自転車の場合は強いパワーで負荷が大きく掛かるので、普通の自転車よりは金属の磨耗等は早く進む。
  • トラブルの大半はワイヤーの伸びや錆による作動不良で、内装ハブ自体が壊れる事は稀だが、ワイヤー調整が狂っていてギアが中途半端に入った状態で、電動アシストの強い力を掛けるとギアを傷め易い。異状があった際にすぐ修理に出すか、面倒がって放置するかで寿命は変わる。大きなトラブルが無ければ10年など長期的に使え、少しずつ部品の磨耗とグリスの劣化が進んでいき、最終的には部品交換(ハブ丸ごと全交換)が必要な時期が来る。
  • もし内装ハブ本体が壊れたら丸ごと交換が基本の対応となる。特にスポーツ車に搭載されている内装8段ハブの中心部分は分解不可能なアッセンブリ構造なので壊れたら全交換で対応する。なお、個人の力で内装3段ハブの分解オーバーホールを行うのは非常に慣れた人でないと困難で、機械整備の経験が殆ど無い人が行うと却って調子が悪くなる(グリスの塗り過ぎで動作不良や組み付け手順間違いで偏磨耗等)可能性があるので、素直に自転車店に修理・交換依頼をした方が無難。長年使い込むと徐々にハブ内部のグリスが劣化して動きが鈍い感じになるが、オーバーホールして専用グリス(専用品以外のハブ内部への注油はグリスが溶け出すので厳禁)でグリスアップするとスムーズさがやや復活する。


【×】漕ぎながらの変速は非推奨で、登坂中の変速が苦手

  • 内装変速は「漕がずに変速」できる代わりに、「漕ぎながら変速」は原則として行わない方が良い。走行中にギアチェンジする場合は、漕ぐのを一時的に止めて惰性走行状態にして変速を行う方がベターで、各部品への負担は少ない。漕ぎながら変速も一応可能だが、漕ぎながらペダルにトルクが掛かっている状態で変速すると、ハブ内部のギアの噛み合わせの変更がスムーズに行かず上手く変速できない場合がある。仮に上手く変速できたとしても、電動アシストの大きなトルクが掛かった状態で無理矢理ギアの噛み合わせを変えているので、部品の負担は大きくなるので非推奨。
  • 平地や緩い坂程度なら、「走行中に一瞬だけペダルを止めて、カチッと変速してすぐ漕ぎ始める」という動作は一瞬で終わるのでそれ程気になる程ではない。だが登り坂の途中では、ペダルを漕ぐのを一時的に止めて変速しようとすると、漕ぐのを止めてる間に大きく失速して、変速後に再び漕ぎ出そうとしてもフラフラして危ない場合がある。まるで自動車教習所のマニュアルミッションで急な坂道で発進する時に、坂の途中でクラッチを切るとバックしてしまったりエンストしてしまい易い状態に似ている。
  • 急な登り坂では、「惰性走行を行う余裕が無く、常にペダルにトルクが掛かっている状況」であり、「漕ぐのを一時的に止めて変速」が平地より難しい。特に漕ぎながら変速した場合、ギアを1速→2速→3速と上げていくシフトアップは上手く行っても、ギアを3速→2速→1速と下げる側のシフトダウンは上手く行かない事が多い。この為、坂道に高いギアで突入してしまうと、坂の途中でのギア変更が躊躇われる場合がある。急な坂道では、坂突入前に前もって低いギアに下げておく事が大事となる。内装変速は登り坂の途中での変速が苦手と覚えておきたい。


【×】重量とパワーロスが比較的大きい

  • 内装3段ハブが約900g、内装8段ハブは約1600g。外装変速(ALTUS)のディレーラーが約300g、カセットスプロケ約350g、ハブ約400g。変速機・ハブ・スプロケにシフターも含めた総重量を比べると、合計総重量は外装7段より内装8段の方がやや重くなる。特に回転体であるハブの重量が重くなると、後輪が段差を乗り越えた時の衝撃が大きくなったり、漕ぎ出しが少し重ったるい感じになったりする。
  • ハブ内部で遊星歯車を使って変速する性質上、外装よりも僅かにパワーロスが大きくなる傾向にある。ただし体感できる程の差であるかは個人の感覚による所も大きい。海外の技術雑誌『HUMAN POWER』(IHPVA)の変速機効率計測記事では、内装と外装のパワーロスの違いはそこまで決定的な差ではない模様。
■ダイナモメーター計測の駆動効率比較表(『HUMAN POWER』 2001 No52)
変速 出力 1速(0.73) 2速(1.0) 3速(1.36)
内装3段 80W 90.5% 93.5% 87.2%
内装3段 200W 93.2% 93.9% 87.2%

変速 出力 1速(0.63) 2速(0.74) 3速(0.84) 4速(1.0) 5速(1.15) 6速(1.34) 7速(1.55)
内装7段 80W 87.3% 88.7% 88.4% 93.0% 89.3% 86.0% 83.0%
内装7段 200W 89.7% 90.3% 91.3% 94.7% 91.0% 88.6% 85.3%

変速方式 出力 1速 2速 3速 4速 5速 6速 7速 8速 9速
外装9段 80W 93.1% 92.8% 89.4% 92.6% 90.0% 92.1% 91.7% 89.5% 91.5%
外装9段 200W 95.0% 94.5% 93.6% 94.2% 93.1% 94.2% 93.9% 93.6% 93.9%
  • 内装変速は構造上、増速比が大きくなる程ロスが大きくなる傾向がある。例えば内装3段だと2速は変速比1.0倍(ペダル側1回転に対してタイヤ側も1回転の等倍)でロスが比較的少ないが、3速の変速比1.36倍増速(ペダル側1回転に対してタイヤ側が1.36回転)では駆動ロスが増している。内装7段なら4速が変速比1.0倍で最もロスが少なく、7速を漕いだ時は4速よりも抵抗が増える。
  • ただし、電動アシスト自転車の場合には、アシストで相殺して体感的な違いは殆ど分からない状態にしてカバーする事ができる。一方、万一のうっかり電池切れで電源OFFで走ると言った場合には、坂では車体重量がペダルを漕ぐ抵抗に直接響くので、僅かな重さや駆動ロスの差も影響し易くなる。


【×】クイックレリースが付かず、後輪の取り外しが面倒

  • 内装の場合はハブに変速機を設ける関係上、後輪をクイックレリース(Quick Release)にはできずボルト留めとなる。後輪を外す際には必ず工具が必要で、クイックレリースの様に工具無しで素早く後輪を外せないので、タイヤ交換や車載等の際に影響してくる。
  • ローラーブレーキの付いた内装3段ママチャリの後輪取り外し作業の場合、ローラーブレーキ固定ボルトを外してから車軸ナットを外す必要があるので作業の手順が1つ増える。タイヤやチューブの交換は15分程で可能ではあるが、外装(特にクイックレリース)と比べると手間が多いのでメンテナンスがやや面倒。
  • ローラーブレーキの付いていない内装8段の場合、後輪を完全に外さないチューブ交換や、カセットジョイントを外さずにシフトワイヤーを外しての後輪外し作業なら手順が少なくて済む。うっかりカセットジョイント固定リングをずらしたまま気付かずにカセットジョイントを完全にバラしてしまうと厄介な事になる。




外装変速の特徴

【○】漕ぎながら変速なので、加速中にペースを落とさず変速可能

  • 外装変速の場合、変速は常に漕ぎながら行う事になり、加速中にもペダルを漕ぐのを止める事無く変速できるのが利点。内装で走行中に変速する場合は、変速前に一瞬ペダルのトルクを抜いて変速操作を行うので、変速の際にスピードがダウンする時間が発生する。外装の方が停止状態からの加速時に素早く最高速に到達させ易い。
  • また、ある程度急な坂道を登りながらシフトアップする際にも役立つ。外装だと、漕ぎながらペダルのトルクを抜かずに変速できるので、車速を落とさずにスムーズにシフトアップし、登り坂でもペダル回転速度と車速を一定のペースに保って走行し易い。内装だとペダルを一瞬止めて変速する際に登り傾斜で速度が大きく減少し、重いギアに変えた後も車速が落ちているので更に加速が鈍る状態が起こり易い。


【○】比較的軽量でパワーロスが少ない

  • 外装変速の「カセットスプロケ+リアディレーラー+ハブ」の合計重量と、内装変速の「リアスプロケ+変速機内蔵ハブ」の合計とを比べると、僅かながら外装の方が軽量になる。特に内装8段ハブは約1.5kg近くになるので、変速段数を増やしつつ車体を軽量に保つ場合には外装の方が軽量化し易い。電動アシストが加わるので普段は目立つ程の差は出ないが、アシストOFF域での坂道走行等では車体総重量が響いてくる。
  • 内装に比べると駆動ロスがやや少ない傾向にある。チェーンとディレーラーを含む場合の理論上の駆動ロスは約98%で実車計測でも90%前後の駆動力伝達効率を持つ。特にトップギア等の増速比率が高いギア段数での駆動効率が内装に比べて高い。ただし、駆動ロスには変速方式の違いよりも、チェーン張力スプロケ歯数等の影響が大きい模様。


【○】後輪の取り外し、タイヤ交換等が楽

  • 後輪ハブと変速機が別々になっているので、後輪を外す際にシフトワイヤー脱着が必要無く、後輪車軸を留めている15mmボルトを外せば簡単に後輪を外せる。「外装+Vブレーキ」の車種は、「内装+ローラーブレーキ」の組み合わせの自転車に比べれば、タイヤ交換の作業手順は少なくて済むのでメンテが楽。
  • 特にジェッターは、「前後ともクイックレリース式」のホイールで車輪の脱着に工具が必要無い。整備性が良いだけでなく、ミニバン等への車載時にも役立つ。オフタイムは「非クイックレリースの外装7段+ローラーブレーキ」でブレーキ固定ボルト脱着の手間が増えるが、折り畳み機能により車載やひっくり返してのメンテが楽な事でカバーしている。
  • なお、ジェッターの様なカセットスプロケ型なら8段以上の外装変速の多くはクイックレリース対応となるが、ハリヤやオフタイムに使われているボスフリー型の外装7段にはクイックレリース対応ハブが無い(若干マイナーだがカセットスプロケ型なら外装7段のクイックレリース対応品もある)。


【△】1回の部品交換代は安価だが、交換のスパンが短い

  • 外装変速機は部品点数が多くチェーンの寿命も早めになるが、交換が必要な部品だけを個別に買い足す事で修理できるので、1回の部品交換代は安価になる。内装変速ハブが「滅多に壊れないが、壊れたらハブごと全部交換」になるのとは対照的。
  • 外装は内装に比べるとチェーンの寿命が早く来る傾向にある。外装の場合はチェーンを左右にスライドさせて変速するので斜め方向に曲げる力が加わる。一方、内装の場合チェーンはずっと同じギアと噛み合ったまま常に一定の位置にある。チェーンは真っ直ぐ引っ張る方向への力には強いが、左右にねじる方向への力には弱い。特に電動アシスト機構の関係でクランク側スプロケに変速機を取り付けられず、リアスプロケ側のみ動かして変速するので、斜めにチェーンがかかっている状態になり易い。
  • 変速した時や力一杯踏んだ時に、チェーンとスプロケの噛み合いがガリッとずれる「歯とび」が起こる様になったら交換時期。仮にチェーンを5000km毎に交換するなら、1万km毎(チェーン交換2回に1回位の割合)で前後のスプロケも同時に交換となる(片方だけ交換すると磨耗の具合が合わず負荷が1部品に集中する為)。
  • チェーンの消耗具合は脚力とメンテ状態で大きく個人差が出る。脚力の弱い人で5000km以上走っても大丈夫なケースもあれば、脚力の強い人がいつもアシスト強モードで力一杯踏んで大きな負荷をかける様な乗り方だと3000kmで交換が必要になる場合もある。またチェーンは油切れを起こすと寿命が早く縮む。こまめに注油やメンテを行う人とそうでない人では寿命もかなり変わってくる。


【×】停車中に変速できないので、急坂や街中で気を遣う

  • 外装変速を使う上で一番影響が出るポイントとなる。外装変速は停車中にギアチェンジできない。もし停車中にギアを変えて発進するとガチャガチャと音がしてスムーズに発進できないばかりか、部品に大きな負担が掛かるので厳禁。その為、外装変速で走行する場合は、停車前にあらかじめギアを落としておく必要がある。
  • 停車前に減速しつつギアを落とす為には、漕ぎながらギアダウンするので数m~10m程度の距離が必要となる。漕ぐのを速攻で止めてブレーキを掛けるだけで良い内装に比べると、どうしても急停止に必要な距離が伸びる傾向にある。この為、走行中は周囲の状況を良く掴み、「20m先の信号がもうすぐ黄色に変わるな」「横断歩道に子どもが居るから飛び出しに注意」等の停止が必要になる位置を事前予測しておき、ギアダウンしながら減速するのに必要な距離を余裕を持って確保する必要がある。
  • 急な横断歩道飛び出し等で、安全上やむを得ずギアを落とす暇も無く急停止した場合に困る事がある。停車中に変速できないので、重いギアで停止すると発進も重いギアで漕ぐ事になる。平地や下り坂なら多少漕ぐのがもたつく程度で済むが、登り坂でトップギア発進するのは困難となる。ヨロヨロと物凄く遅い発進になったり、モーターが負荷に負けて異音がしたりギアや各部を傷めたりする。
  • 非電動の軽量なロードバイク等なら、停車中でも車体後部を掴んで後輪を少し持ち上げてペダルを回せば、外装でも停車中にチェンジできる。しかし車重が重い電動アシスト自転車で停車中にギアチェンジするには、自転車を降りてスタンドを立ててペダルを回す…等とするしか無い。この為、急坂を登る際は、急な飛び出し等を警戒し、トップギアのまま急停車する状況を避ける様に漕ぐ必要がある。
  • 外装変速が元々レース競技と共に進化してきた経緯もあり、「コーナーが連続する峠道」の様なコースを、加減速を微調整してスピードを落とさずに走行するのに最適な構造となっている。逆に競技走行ではこまめに完全停止する事は想定されないので、街中の様に停止せずに走行する事がほぼ不可能な場所では、漕がないとギアダウンできない外装は内装に比べるとやや不便になる。


【×】変速機をぶつけた時にワイヤー調整が必要な事がある

  • 変速機のワイヤーは使う間に伸びてくるので微調整が必要だが、経年劣化によるワイヤー伸びの微調整は内装も外装も大差は無い。新品時から約1ヶ月以内に出る初期伸びの調整(必要ない事もある)と、数年経過した時に経年劣化で伸びたワイヤーの調整が1~2度必要になる事がある位で、普段は問題無く使える場合が殆ど。
  • 外装の場合はそれに加え、後輪右側にあるディレーラー(変速機のアーム)をぶつけた時に、調整が必要になる。ぶつけさえしなければ、外装も殆どワイヤー調整は必要ないのだが、実際には変速機構が外に張り出す形で露出してるので結構ぶつける事態が発生し、結果的に内装よりもこまめに調整の機会が発生する事になる。
  • 主なケースは、「ディレーラーをガードレールや縁石にぶつけて曲がる」「駐輪中に倒されて地面にディレーラーをぶつけて曲がる」「店の前の道路にはみ出して置かれた搬入物や歩道の植木にディレーラーをぶつける」等、日常生活で外的衝撃を受ける機会は結構潜んでいる。
  • しかし、調整自体はそれ程難しくなく、数分で終わるので、あまり機械に詳しくない人でも、外装変速機の調整方法に付いて書かれている参考サイトを見ながらドライバーでネジを調節すれば、十分自力で調整は可能。ただし、ディレーラーのアームが歪む程に大きく曲がった場合は、調整ネジだけでは解決できなくなるのでプロにアームの修理を依頼する方が良い。
  • 金属同士が触れ合う可動部品は、注油を怠り油切れ状態になると寿命を損ない易い。外装はディレーラーを始め可動パーツの大半が外部に露出しているので、各パーツを定期的にチェック&注油する事で寿命が変わってくる。内装は変速機構の殆どがハブ内の密閉された空間でグリスに浸っているので、チェーン以外のメンテ箇所が少なくて済む。
  • 可動部が多い外装変速の場合、内装に比べて車体や服が油で汚れやすい。特にメンテ注油直後や、雨でチェーンが濡れた場合の走行では、リアのチェーンを架け替える可動部品周辺は鉄粉や汚れの混じった潤滑油が飛び散って、黒い墨汁の様な点々の染みが後輪周辺やズボンの裾に付く事がある。
  • スポーツ競技で使われながら技術進化してきた外装変速の場合には、「常に最適なセッティングをして最高の結果を出す」事を想定されているので、元々こまめに調整する事でベストの性能を発揮すると言う側面も持っている。その点は、レースに出る事を最初から想定していなくて、「なるべくメンテしなくて良い様に、とにかく頑丈に」と、日常生活用途に特化して進化してきた内装変速とは性格が異なる。


【×】チェーン厚に制限があり、高アシスト比のモデルが無い

  • 外装変速機の後輪部分は多数のスプロケットが狭い間隔で重なり合っているので、チェーンの幅をスプロケの間隔よりも厚くする事ができない。アシスト比率を上げると、それに耐えられる分厚くて丈夫なチェーンが必要になるが、変速段数が増える程にスプロケットの間隔が狭くなるので、チェーンの厚みに制限が生じる。チェーンの規格には幾つかの種類があって、7段変速のハリヤでUGチェーン等が使われているが、仮に9速以上に変速段数を上げると、幅の狭いナローチェーンを使う事になる。
  • 現時点で外装変速を採用するモデルには、ラクラクドライブや高耐久ハブ搭載車に相当する高アシスト比率(推定1:1.8程度)のモデルは無く、低いアシスト比率(推定1:1.2程度)のモデルのみとなっている。内装の場合は幅の厚い頑丈なチェーンを採用すればアシスト比を上げても耐えられる様にできるが、外装の場合は「変速段数を増やす」事と、「チェーンをアシスト比1:2に対応できるまで厚くする」事の両立が難しくなる。




「内装か外装か」を選ぶ場合

  • ママチャリタイプは殆どが内装変速を搭載しているので、内装か外装か悩むのは主にスポーツタイプや小径車(折り畳み)タイプを選ぶ際に起こる。電池容量やGD値と並び、使い勝手に大きく関わる部分なので、それぞれの長所・短所を考えて、自分の好みに合ったタイプを選ぶ事になる。


停止&発進の多い街中

  • 停車中にギアチェンジできる内装変速が便利。外装変速でも停止前にギアを落とせば困る事は無いが、内装変速は停止前に今入ってるギアの段数を気にしなくて良いので、より気楽に運転できる。


急な傾斜の多い地域

  • 内装と外装で得意な場面が異なる。

  • 内装変速の得意な急斜面は、「坂の多い住宅地」等、停止回数が多い生活道路となる。狭い込み入った坂道の途中に十字路がある道に強い。トップギア停車しても1速で発進しなおせるので、登坂中に慌てる必要が無くなる点が長所。特にSPECを搭載していると低速ギアでも発進時に力強いので急坂と相性が良い。
  • ただし登りでペダルに力を加えている状態のままシフトアップするのは苦手で、変速の瞬間にペダルを漕ぐのを中断するので変速の度に減速する事になる。タイムを競う必要性の無い日常生活を前提として設計されているので、ワイドレシオなギア比も相まって峠道をスポーツ走行する様な用途には向かない。

  • 外装変速の得意な急斜面は、「カーブの連続する峠道」等、停止回数の少ない道でのスポーツ走行となる。漕ぎながらこまめにシフトチェンジできるので、カーブ前の減速からカーブ終了後の立ち上がり加速等でシフトチェンジを駆使してペダルの回転ペースを一定に保ち易い。歩行者が居なくて停止する必要が殆ど無い道なら、ダウンヒルやヒルクライムの様なスポーツ走行ができる。
  • 逆に多くの歩行者が行き交う生活道路にある急斜面は苦手。そもそも競技向けの変速構造なので、ちょくちょく完全停止を強いられる様な日常生活での走行とは相性が悪い。特に急傾斜の十字路で一時停止する際に、歩行者の飛び出し等でトップギアのまま緊急停止すると面倒な事になる。漕がないと変速できないのでトップギア発進するしか無いが、あまりに急傾斜だとそれもできずに、一旦自転車を降りてスタンド立てて変速するか、傾斜の無い方向へ逆走(or真横方向へ走行)して、ギアを落としてから再度登る羽目になる。


後輪脱着の手間

変速 後輪の構造 メンテナンスの楽さ 代表車種
外装8段 クイックレリース 後輪交換が最も簡単。工具要らずなので車載も楽。 ジェッター
外装6~7段 Vブレーキ 後輪交換が簡単。15mmナットを外すレンチがあればOK。 ハリヤ
外装7段 ローラーブレーキ ローラーブレーキ脱着の分だけ手間が増える。 オフタイム
内装8段 Vブレーキ カセットジョイントを弄らないなら交換は簡単。 リアスト、ブレイス
内装3段 ローラーブレーキ 後輪交換が最も面倒。シフトとブレーキ両方外す。 殆どのママチャリ


アシストOFF域

  • 電動アシストは内装変速のデメリットである重量増や駆動ロスを打ち消してくれるので、内装変速にとって電動アシストは相性の良いシステムとなる。停車中にも変速できて使い勝手が良く、パワー面でもデメリットが少なく、SPECがあればむしろ急坂では外装より有利な程。
  • 反面、アシストOFF域ではインター8の重量増やトップギアでの遊星ギアの駆動ロスの大きさが僅かではあるが影響する。軽量な外装タイプと比べれば人力の負担が増える。これらの特性から「常時電源ONで使う」事を前提に、余裕の大容量バッテリーでアシストをガンガン効かせてパワー走行するのに向いている。

  • 外装変速の場合は、本来有利になる筈の軽量さや駆動ロスの少なさが、電源ON域では電動アシストで相殺されてメリットとは言い難くなり、相対的に停車中に変速できないデメリットの分が目立ってややクセの強い使い勝手となる。
  • 反面、軽量さとトップギア時の駆動ロスが少ない点から、電源OFF域やアシストOFF域では走行抵抗を僅かながら和らげてくれる。これらの特性から、アシストが必要ない場面では電源OFFして、余裕の大容量バッテリーと合わせてパワーよりも航続距離を稼ぐ様な燃費走行に向いている。



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最終更新:2010年09月15日 18:55