操作上の注意

発進/変速時の注意

電源を入れてすぐに走らない

電動アシスト自転車は電源を入れた直後に機械の診断を行う。
この際、クランクに掛かっているトルクのキャリブレーション(初期化)を行うので、ペダルに力が加わっている状態にしたまま電源を入れると、電動アシスト自転車の制御回路はその力が加わっている状態をトルク「ゼロの基準」と判断してしまう。
まるで、「デジタル表示の体重計に乗ったまま電源を入れてから降りると、乗ってる状態をゼロ基準にして「マイナス60kg」等と表記される状態」に似ている。

つまり、電源を入れてすぐ(約2秒以内)に走り出すと、アシスト力が弱くなってしまう事がある。
走り出そうとしてペダルに力を加えた状態を「ゼロ基準」と機械が判断してしまい、相当に高い力を加えないとペダルを踏んでいないと判断されてしまう為である。
必ず、停車中にあらかじめ電源を入れておき、約2秒待ってから漕ぎ始める様にする事。
また、電源を入れる際には、ペダルに足を乗せない様にする事。トルクが掛かった状態をゼロ基準にされてしまうと、アシストが弱くなってしまう。

同様に、走行中に後から電源スイッチを入れた場合も、アシストが弱くなる場合がある。もしうっかり電源入れ忘れて走行中に電源を入れる場合は、ペダルを漕いでいない「惰性走行」の状態にして、ペダルに力が掛かってない状態で電源を入れ、約2秒(キャリブレーションが終わる時間)ほど待ってから漕ぎ始めるようにする事。
操作時の状況 正しい使い方 間違った使い方
電源投入時 ペダルに足を掛けない ペダルに足を乗せたまま電源を入れる
漕ぎ始め時 電源を入れたら2秒待ってから漕ぐ 電源を入れてすぐ漕ぎ始める
走行中電源ON 惰性走行状態で電源ON
約2秒待ってから漕ぎ始める
漕ぎながらそのまま電源ON
電源ONから2秒待たずに漕ぐ
これらの事項は、各車の取扱説明書や公式HPの取扱い説明書ダウンロード書類にも記載されているので、詳細はそちらも参照。


ケンケン乗りをしない

自転車の発進の際に、いわゆる「ケンケン乗り」をしない事。
「ケンケン乗り」とは、自転車に跨った状態で漕ぎ始めずに、自転車の横に立ち、片足をペダルに乗せたまま、もう一方の足で地面を蹴ってケンケンしながら加速し、時速数km/h出た所で飛び乗る乗り方。

  • 電動アシスト自転車はペダルに加わる力に比例したパワーをモーターが出す。ケンケン乗りでは体重分の力がペダルに加わるので、全力で漕いだ時並の大きなパワーをペダルに加えた事になり、急発進を起こす可能性がある。特に時速10km/h以下の場合は最大限のアシストを行うので強いパワーが出てしまう。
  • それとは全く正反対に、ケンケン乗りしたらアシストが弱くなる事もある。これは前述の「電源を入れてすぐに走り始める」操作を行った為で、キャリプレーション補正でペダルに体重がかかった状態をゼロ基準と判断して、殆どアシストされなくなってしまう状態になっている。
  • 純粋に自転車の乗り方として見ても、ケンケン乗りは転倒や接触事故に繋がるおそれがあるので良くない。特に電動アシスト自転車は車重と乗員体重の合計が100kgを越える事もあるので、ケンケン乗り中に飛び出しで人を轢いた場合や、自分がヨロけて転んだ場合の被害が大きい。
では、なぜ思わずケンケン乗りをしてしまうのか言うと、ペダルの高さや自転車の大きさが身長に合っていない場合が多い。


ママチャリタイプの発進方法

■ママチャリタイプの発進方法
【1】サドルに腰を降ろし跨った姿勢を作る
【2】電源を入れて約2秒待つ(足をペダルに乗せない)
【3】ペダルに足をかけて漕ぎ始める
が本来の正しい乗り方であるが、もしサドルが高すぎると、静止して跨った状態を作れないので、ついケンケン乗りをやってちまいがちになる。
ケンケン乗りをする人に年配の小柄な女性が多いと言われる理由も、自分の体格より大きめの自転車に乗るケースが多かった事が無関係では無い。

サドルに座って跨った状態で両足が軽く地面に着く位の状態を作れる様に、あらかじめサドルの高さを調整しておく。
小柄な人でサドルを目一杯下げても26インチの自転車が大きすぎる場合には、20インチ等の小径車タイプや、「最低サドル高が低い」「フレームが低床タイプで跨ぎ易い」を売りにしている車種を選ぼう。


停車時に電源ONのままペダルに足をのせない

■ママチャリタイプの停車方法
電源ONのまま停車時は、ペダルを足にのせない
長時間の停車なら、電源をOFFにする

停車時は電源を入れたままペダルに足をのせない様に注意し、念の為前後輪のブレーキレバーを握っておく。
電源を入れたままの停車中にペダルに足を乗せない理由は、ペダルに力が加わっているとモーターがそれに比例した力を出そうとするが、漕ぎ出せないのでウンウンと唸る状態になり、モーターに負荷がかかる為。
また不用意にペダルに足を乗せた時など、ペダルに力が加わってしまうとアシストが作動して誤発進や姿勢バランスを崩してよろけてしまう可能性がある。

いずれの場合も「電源を入れて2秒間はペダルに力を加えない」ケースと同様で、上述の様に「ペダルに加わる力を判断材料にして、モーターのアシスト量が決められている」と言う仕組みが頭に入っていれば、やっては行けない事が自ずと分かる様になってくる。


スポーツタイプの発進方法

■スポーツタイプ(スピード重視攻め攻めポジション仕様)の停車→発進の場合
【1】停車時に腰をサドルの前のトップチューブ側にずらす
【2】トップチューブを跨いで両足で地面に立ち停車
【3】ペダルの角度をあらかじめ漕ぎやすい角度にして電源ON
【4】片足をペダルに乗せる(ペダル角度は斜め前方)
【5】漕いだ直後に一瞬立ち漕ぎ状態を経由して両足をペダルに
【6】サドルに腰を下ろして本格的に加速に入る
スポーツタイプの自転車の停車の場合は、サドルの前にあるトップチューブを跨ぐ様にする事が多い。
サドルの位置を決める際、ペダリング効率を最優先すると「ペダルを一番下まで下ろした時に、膝が軽く曲がる程度」の状態が良いので、スポーツタイプの自転車に乗る場合はママチャリタイプよりもサドルが高めになる傾向がある。
これだとサドルに跨ったまま停車すると「両足が軽い爪先立ち状態で地面に着く」状態になる。短時間の停車なら兎も角、信号待ち等の長時間停車では安定性に欠け、脹脛の筋肉が疲れ易い。
サドル位置を高めにした場合の長時間停車では、トップチューブを跨いで両足がしっかり地面に着く状態で立つ様にする。
停車から発進までの動作をスムーズに素早く行う様にする。慣れるまではサドルを両足がベッタリ着く低めの位置にしておき、上手く乗り降りできる様になってきたら、次第にペダリング効率重視の位置にサドルを上げて調整する。




坂道のコツ

坂道を重いギアで登る(SPEC無し)

■坂道を登るコツ
【普通の自転車】…坂道は軽いギアで登る
【電動アシスト】…坂は重いギアで登る(例外あり)
通常の自転車では坂道はギアを低い方(ペダルが軽くなる方)に下げる。
しかし、電動アシスト自転車の場合、状況によっては敢えてギアを高い方(重い方)にして、重いギアで登った方が楽に登れる事がある。
普通の自転車を操作する時の感覚からすると違和感がある使い方になるが、これは電動アシスト自転車の仕様上の特性から来ている。

通常の電動アシスト自転車では、モーターの回転数(アシストギアの回転数)で速度を検出している。
例えば、「この車種のギア比では、モーターの回転数が2回転/秒の時は時速15km/hのはず」等と言った感じで判断している。この方式では、ギアが何速に入っているか迄は感知していないのが問題となる。
ギアが何速に入っているかを検知できないので、制御側は『常に一番重たいギアに入っている』という前提でアシストを行っている。
この為、軽いギアで漕いだ場合、アシストが早く弱まってしまう事になる。
■SPEC未搭載車のアシスト比イメージ(数字は例)
3速…時速10km/hからアシストが弱くなり、時速24km/hでゼロに
2速…時速8km/h辺りからアシストが弱くなり、時速18km/hでゼロに
1速…時速5km/h辺りからアシストが弱くなり、時速12km/hでゼロに

この為、SPEC非搭載の車種では、普通の自転車と同じ感覚で、坂道だからと軽いギアにするよりも、重いギアの方が楽に漕げる場合がある。
坂を楽に漕ぐコツは、なるべく人力の負担分を減らし、電動に負担させる割合を増やす事。
その為、軽いギアで人力のペダル回転力に頼るよりも、重いギアでモーターに一杯仕事をさせる方が楽になる場合がある。

もちろんあまりに急すぎる坂道では、重いギアでもモーターの負荷を超えて登れない事があるので、日常目にする坂が比較的軽い坂ばかりの場合に限られる。
重いギアでは電動と言えど登れない様な激坂がある場合には、軽いギアで登る方が良い場合もある。あまりに急な坂道ではモーターの負担が大きすぎてエラーや故障を引き起こすので程々に。


坂道を重いギアで登る(SPEC有り)

SPEC(シフト・ポジション・エレクトリック・コントロール)を搭載すると、シフトセンサーや車速センサーで、ギアが何速に入ったかをちゃんと把握しているので、低速ギアでもアシストが早く弱まったりはしないので、低速ギアでも常に最適なアシストが得られる。
その為、低速ギアで低い速度を保ってゆっくり漕げば、急斜面でも人力の負担を減らして楽に登る事ができる。

しかし、ある程度緩い坂ならば、SPEC搭載と言えども重いギアで漕ぐ回数を減らして、モーターの力に頼って強引に坂を登った方が楽な場合もある。
また別のケースとして、坂道がごく短い場合など、状況によっては下り坂の間に勢いを付けておき、重いギアでスピードを落とさずに一気に駆け抜けた方が良い場合もある。
状況によって最適な方法は代わるので、既成の自転車の概念に捉われずに、色々な走行パターンを試してみると、その自転車のアシストのクセ等も掴めて来る。


坂道でのギアチェンジ(SPEC有り)

■坂道を登るコツ2
【1】緩い上り坂なら、ギアチェンジはペダルに力を込めずに変速する
【2】急な上り坂だと、ペダルに力を込めずに変速するのは難しい
【3】ペダルに力を込めたまま変速すると、シフトダウンが失敗し易い
よって、急な上り坂に入る前にはギアを1速に下げておく 
ママチャリタイプの殆どは内装3段変速が採用されているが、内装変速でスムーズに変速したいなら、ペダルを漕ぐのを一時中断して惰性走行状態にして変速となる。
また、ペダルを回しながらでも“一応”変速は可能。ただしペダルに強い力がかかっている時には、上手く変速できない事が多い。強く漕ぎながら変速するとハブ内部のギアから「バキッ」と大きな音がして部品の負担も大きい。
そこで、ペダルを回しながら変速する時は、ペダルに力を込めずに、軽くクルクル回してるだけの状態にしてから変速する必要がある。
※詳細は内装変速の特徴も参照。

しかし、漕ぐのを一旦止めてもモーターの回転停止までには僅かなタイムラグがある。
これは、もし漕ぐのを止めた時にすぐにアシストが停止してしまうと、急にトルクがガクッと変わって危ないのが理由。漕ぐのを止めた時にも、モーターは少し時間をかけて緩やかに停止する。
よって、かなり急な登り坂では、漕ぐのを一旦中断してギアチェンジしたのに上手く行かないという事が起こる。
特に、ギアを「3速→2速→1速」と下げるシフトダウンが失敗し易い。ギアを「1速→2速→3速」と上げるシフトアップは比較的スムーズに行く
また、急な坂で漕ぐのを一旦中断してギアチェンジしようとしても、坂の勢いに負けて押し戻されて大減速してしまい、再び漕ぎ出そうとした時には、失速していてフラついて危ない、という状態になり易い。

そこで、とても急な上り坂が目の前に見えたら、あらかじめギアを1速や2速等の低いギアにしておくと良い。
急坂の途中でギアチェンジしたくなった場合、シフトアップは上手く行くが、シフトダウンは失敗し易い。
後述の「速度が遅い方がアシスト比率は高くなる」仕様と合わせて考えると、坂の手前で1速にして突入し、ギアが軽すぎた場合にのみ、シフトアップを考える様にすると楽に漕げる事が多い。

なお、SPEC3の無い車種の場合、低速ギアではアシスト比率が減少する速度域が早くやってくる。「3速の時には時速15km/hまでアシストしてくれたのに、1速だと時速7km/hでアシストを止めてしまう」等の状態となる。
SPECが無いと、坂の勾配次第で「適切なギアチェンジ」の内容が変わり易く、より判断が難しくなる。


坂道を低速で登る

■坂道を登るコツ3
【普通の自転車】…スピード出して勢いを付けて登る
【電動アシスト】…スピードをわざと低目に保って登る(例外あり)
電動アシスト自転車は法律の規制により低速になる程、アシスト比率が高い
新基準ならば時速10km/hまでがアシスト比率最大の1:2の範囲で、そこから速度が上がる程に人力の負担は増えていき、時速24km/hで電動のアシスト比率は0になる。
その為、スピードを上げない方が人力の負担が減るという現象が起きている。普通の自転車と同じく「スピードを上げて勢いを付けて登ろう」とすると人力の負担が増える。
電動の場合は、時速10km/hを越えない様に速度を抑えて漕ぐのがコツとなる。もちろん、軽い坂なら勢いを付けてスピードに乗って一気に越えた方が楽な場合もある。状況で使い分けを。

■人力と電動アシストの補助比率の割合の目安
時速 新基準
人力分
新基準
電動分
旧基準
人力分
旧基準
電動分
10km/m 33 67 50 50
11km/m 35 65 50 50
12km/m 37 63 50 50
13km/m 39 61 50 50
14km/m 41 59 50 50
15km/m 44 56 50 50
16km/m 47 53 53 47
17km/m 50 50 56 44
18km/m 54 46 60 40
19km/m 58 42 64 36
20km/m 64 36 69 31
21km/m 70 30 75 25
22km/m 78 22 82 18
23km/m 87 13 90 10
24km/m 100 0 100 0



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最終更新:2010年08月31日 05:42