創作発表板@wiki

ガンダム総合スレ「オデッサ・シ-クレット・ファイル 第2章」

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
Top > ガンダム総合スレ > SS まとめ > オデッサ・シ-クレット・ファイル 第2章

オデッサ・シークレット・ファイル 第2章


第1章からの続き

29 :MAMAN書き ◆R7VZxu4aYKCk :2010/09/25(土) 04:50:12 ID:LiAAuBjI

 一週間後、鉱山基地の新顔となったMS用バイクは基地内のザクパイロットから概ね好
意的に受け入れられ、既に全員がバイクの扱いは問題なく出来る様になっていた。サイド
カーの武装の扱いにはまだ不慣れな者もいたが、次第に解決するだろう。
 実際、事前の印象以上に役に立つものである事はすぐに判明した。メカニックの説明通
り、車輪式のバイクでありながら悪路走破性が高く岩場の多い基地周辺の地形を苦にせず
進んでいく。これはドムに対しほぼ全ての面で劣るザクにとって、機動力と火力を同時に
アップデート出来る画期的な装備となったのである。


 クワンとパンナ、ターニャは今後の訓練メニューについて昼食を摂りながら打ち合わせ
をしていた。
「やっぱりそろそろ訓練の進捗で組を分けたほうがいいですね」
 ターニャが確認を求める。パンナも同意する。
「ジャン曹長とマルク軍曹はまだ攻撃が全く出来ないからなあ。四、五人は別のメニュー
でもう少し慣らした方がいいかもしれねえ。どうです、大尉?」
「うん、それでいい。メンバーのふるい落としは任せる。教練はパンナが担当してくれ」
「了解しました」
 羊肉のドルマ(葡萄の葉でひき肉を巻いて煮込むロールキャベツに似た郷土料理)を食
べ終わったクワンがワインの小瓶を取り出す。それを見たターニャが顔をしかめた。
「隊長、お昼はご自重下さい」
「ん?ああ、これくらいの楽しみは許してくれ」
 クワンが苦笑する。彼は地球をあまり好きではなく、この小さな鉱山の警護という任務
も好きではなかったが、この土地で作られているワインだけは気に入っていた。食後のワ
インだけが楽しみでこの日常に耐えていると言ってもいい。
「勤務時間ですよ」
 長くなりそうだ、と判断したパンナが助け舟を出した。
「ターニャ、その辺で勘弁してやれ。俺だって本当なら飲みてえよ」
「ですから、隊長や副長がそれでは部下に対して示しがつかないでしょう」
 切っ先はいつの間にかパンナに向けられていた。ターニャはかなり酒に強く、新年やク
リスマスのパーティーでは相応に酒を楽しむが、普段は堅物過ぎるのがクワンやパンナか
ら見ると「可愛げがない」と映る。
 これは話題を仕事に戻した方がいい、とクワンは考えた。
「ところで、二人はサイドカーに乗せる武装は決めているのか?他の隊員もそろそろ武装
の割り当てをしたいからお前達は先に決めておいて欲しいんだが」
「あ、自分は連装機関砲で行きます」
 パンナが即答した。クワンの意を察した事も理由の一つだが、彼は大型のロケットラン
チャーを得物としており、副兵装として性質の違う武装を選択するのはセオリーと言える。
「ターニャは?」
「私は最初からマゼラトップ砲を使うつもりですが。あまり接近戦は得意ではないので」
「そうか。それならいい」
 他の連中もちゃんと自分の戦い方との相性を考えていてくれればいいが、とクワンは
思った。そうすれば俺はもっと楽ができるのに。


 ザクが新配備の兵器を使用する訓練に時間を割くため、必然的に哨戒任務はドムが担当
するシフトが一時的に増やされている。ドムを受領したパイロットからすると、新しいお
もちゃで遊ぶのに仲間外れにされた気分でもある。
 もちろん、ザクのパイロットにしてみればドムを受領した時に十分いい思いをしただろ
うという言い分もあるのだが。
 今回哨戒している小隊の隊長はロナルド曹長と言う叩き上げの下士官で、指揮官として
は才に恵まれていないものの、パイロットとしての資質は最新鋭機のコクピットをいち早
く任されるに相応しい技量を備えていた。
『あ~あ、なんでドムが乗れねえもん作るんだよ』
 回線から同僚のアロンソ軍曹のぼやきが聞こえてきた。彼もまた今の基地内ブームに乗
り損ねてつまらない思いをしている一人だった。
「恐らくジオニック社の設計なんだろう。その内ツィマッドもドムのために何か用意して
くれるさ」
『ならいいんですがねえ……』
『まあ、裏をかえせばそれくらいドムとザクに性能差があるって事なんだろうが、全体的
にジオニックはサポートが充実してるよな』
 三人目のパイロット、ガルシア軍曹も同調して軽口を叩く。彼ら全員自分達の方が高性
能なMSに乗っているという認識はあるが、それとは別に新しい道具を使ってみたいとい
う欲求はあるものなのだ。
 二人の会話にロナルドは苦笑していたが、その時モニターの端に何か動くものが見えた。
「おい、今何かいなかったか?」
『え、どこに?』
「今二時の方向に何か動いた気が……」
『気付かなかったな。人間か?』
「いや、人間にしては大きすぎたような……」
『――センサーに反応あり!』
 アロンソの声にガルシア、ロナルドが緊張する。この切り替えの速さはさすがに精鋭と
言える。
「アロンソ、反応は?」
『かなり大型の金属体と思われます。数は……五、いや六』
「俺のセンサーも捉えた。あの岩場の影か……ガルシア?」
『俺も見つけた。しかしなんだこいつは。戦車の大きさじゃない、これはまるで――』
 ガルシアは言葉を切った。それはいつか来ると予想はされていた事態だった。しかし自
分達がその最初の遭遇車となる、そんな偶然があるだろうか?
 ロナルドが警戒していた岩場から「それ」は飛び出してきた。白い手足、赤い胴体、そ
して赤く塗られた盾には連邦軍の十字記章。その姿はドムとほぼ同じ大きさの巨人だった。
「MSだと!?」
 ロナルドは思わず声に出して驚きを表した。そして考えるより早くジャイアントバズを
構え、トリガーを引いた。


 連邦軍MS隊ナッシュ・ブリッジス中尉は音に出して舌打ちをしていた。こんなところ
でジオン軍の、それもMSと遭遇するとは思っていなかった。
『中尉、どうしましょう?』
 シオン少尉の声が震えている。無理もない。MS戦闘の実戦経験はまだないのだ。
『何とか隠れてやり過ごす事は……』
 ナッシュもそれは考えた。しかし既にそのアイデアに対する結論は出していた。
「無理だろう、もう相手は警戒態勢に入っている。姿を見られたかはまだ不明だが、ここ
に味方でない者がいる事は完全に知られている」
『で、では戦うのですか?』
「シオン、我々の存在は絶対に敵に漏れてはならない。こうなってしまった以上スカート
付きに自分達の基地まで戻られれば、たとえ今この場をやり過ごしたとしてもレコーダー
を解析されればジムの存在は明るみに出てしまう。それだけは阻止しなければならん」
『わ、判り……ました』
「よし、私とジャン、ロベールの三人が突撃する。後の三人は後方から援護だ」
『了解』
(しかし、まさかこの近くにジオン軍の基地があるのか?)
 周囲を落ち着かせるために毅然と指示を出したものの、実際のところ彼自身も激しく動
揺していた。
 ナッシュ達は連邦軍によるオデッサ奪取作戦に参加する奇襲部隊だった。まだ連邦軍の
MS量産が成功している事は公式、非公式を問わず一切外部には出ていない。サイド7で
のRX計画露見によりMS開発計画については露見し、南アジアではRX計画のイレギュ
ラーパーツでビルドアップされた「陸戦型ガンダム」によるMS部隊が、、また北米大陸
ではジムの実戦データを収集する目的で活動する「モルモット隊」が活動しているが、ま
だ本格的な量産化が開始され、すでにジャブローには相当数のジムがロールアウトしてい
る事実はジオン軍も把握していない。それを最大限に利用し、オデッサ作戦に四〇機以上
のジムを投入し奇襲をかける、それがナッシュ達である。今彼らは四十二機のジムを秘密
裏に進軍するルートを探すための偵察に出ていたのだった。
 この周辺の地形はもちろん事前に地図を確認していたのだが、その地図には周辺にジオ
ンの基地があるという情報はなかった。MSの行動半径から考えて、この場所で遭遇戦を
行う可能性など考えていなかったのである。
(しかし、それでもまだこちらが有利なはず)
 MS戦闘の経験がないと言う点では彼我の条件は同等、自分達はこのスカート付きの性
能について限定的ながら情報を持っているが、相手はジムについて一切のデータをもって
いない。これは戦闘において大きなアドバンテージとなるはずだった。あとはジムがカタ
ログ通りのスペックを出してくれるのを信じるしかない。
「行くぞ、三……二……一……ゼロ!」
 ナッシュはドムの前に姿を晒し、そのまま突進した。


 ロナルドが白い連邦軍MSに向けてジャイアントバズを撃ち込む。予期されていたかこ
れは簡単に避けられた。
「速いな。足はザクより上か」
 とにかく相手に対する情報が足りなすぎる。様子を見ながらデータを集めた方がよさそ
うだ。
 しかし、アロンソが別の一機に向けて急速に間合いを詰め始めた。
「アロンソ!」
 アロンソにもそれなりの勝算がある。ドムの装甲はザク、グフと比べても厚い。ザクの
マシンガンなら相当な至近距離でも止められるほどだ。防御力に任せて一気に間合いを詰
め、格闘戦に持ち込めばドムのパワーと重量で押しきれる、それが彼の読みだった。
 アロンソが仕掛けた相手こそがナッシュだった。ナッシュの武装はマシンガンだった。
ザクのそれよりは貫通力や初速で勝っていたが、ドムの装甲を貫通するにはそれでも不足
だった。
「ええい!」
 ナッシュは忌々しげに舌打ちし、マシンガンを諦めた。マシンガンも複数の口径が用意
されているが、これより威力の劣るタイプはどれも役に立たないだろう。
 逆にアロンソは相手の機銃掃射に耐えた事で自信を深めた。これなら勝てる。
 背中からヒートサーベルを引き抜き、切っ先を相手に向けて加速。突進力で貫く狙いで
ある。相手の装甲は不明だが、ドムの重量とスピードが乗れば無事では済むまい。
 ナッシュも相手の狙いは気がついていた。しかし目前に迫る黒い機体のなんと威圧感の
ある事か。今から左右いずれかに飛んでも刺突は躱せても機体のどこかには当たる。そし
てそうなれば前傾姿勢で突進するドムと静止状態から横に移動しようとするジム、どちら
がよりダメージを受けるかは明白だろう。
 ナッシュは背中からビームサーベルを引き抜き正対して構えた。相手の切っ先だけを躱
しカウンターを当てるしかない。マシンガンを弾いた装甲もビーム刃ならどうだ。
 敵の突進をギリギリで見切り、機体を横に開いて刺突をやり過ごす。当然ドムは停止せ
ず、本体の体当たりで押し潰しにかかってくる。ナッシュのジムは一歩踏み込み、スカー
ト付きの胴体を横薙ぎに斬り払った。
 アロンソのドムは上下に両断され、ホバーで前進を続ける下半身と、推進力の大半を失
いその場に落下する上半身に分かれた。その上半身の胸、コクピットを狙い、ビームサー
ベルを逆手に握り直したジムが突き下ろした。
「アロンソー!」
 ロナルドが叫び、バズーカを連射する。ナッシュのMSはシールドで受けつつその場を
移動する。
『野郎!』
 ガルシアも敵と格闘戦に移行していた。こちらはガルシアが軽率に仕掛けない事と、相
手のパイロットの技量の違いだろう、勝負は簡単にはつかず、連邦の機体はシールドで斬
撃を受けつつ反撃の機会を狙っていた。
「ガルシア、気をつけろ。相手はビームを持っている」
 当然気づいている事だろうが、ロナルドは警告した。認めたくはないがMSの性能はと
もかく武装は相手が上回っている。
 ガルシアはあと一歩でジムに対し初勝利したジオン軍パイロットの名誉を得るところま
で相手を追い詰めた。敵MSはバランスを崩しその場に尻餅をついた。ガルシアは復讐心
を隠そうともせずその胴体に止めの一撃を加えるべく剣を振り上げた。
 その瞬間、後方に待機していたシオンがビームライフルを撃った。まだ生産が安定せず
全機には行き渡らないものの、ジムにとって最強の攻撃力を持つ兵装である。そのメガ粒
子はドムの装甲を貫通し、機能を停止させ、パイロットを焼き殺した。
「ガル……!!」
 ロナルドはここに至り、撤退を決めた。連邦にMSあり。この情報を生きて仲間の下に
持ち帰る事を最優先とするために。戦死した戦友の仇討ちは後回しに、彼は背中を向けた。
 しかし、戦力は一対六となっていた。ロナルドは取り囲まれ、壮絶な戦死を遂げた。

ここまで

【メカニックデータ】
RGM-79ジム
連邦軍初の本格的量産MS。その第一ロットモデル。ユウ達モルモット隊がデータ収集のために使用している機体とほぼ
同一仕様の機体。
この時点ではOSにガンダムのデータはフィードバックされていないが、モルモット隊のデータを基にOSが設計され、それを
パイロットが個人でカスタマイズしている。各パーツの工作精度は高く、後に数を揃えるための大量生産されたいわゆる
前期生産型に比べると機械的な性能では優っている。
武装は陸戦型ガンダムが使用した100mmマシンガン、ビームスプレーガン、ビームライフル、ハイパーバズーカなど。

※続きは、第3章



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー