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死者たちの夜Ⅵ

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死者たちの夜Ⅵ


「かつては騎士道だとか武士道だとか。戦いの中に誇りや素晴しさを見つける戦いかたがあった。
 だがな、それは人間が人間であるということを見失わないようにするためだけのもの。
 違う言い方をするなら人間を捨てきれないやつらが持つ思想だ。
 それも悪くない。しかしそれは試合での話。殺し合いには向かぬ。わかるか?」
右手で剣を上げ肩に担ぎ、構えを解いた。ビゼンがゆっくりと間合いを詰めている。
「殺し合いに最も必要なのは相手を殺す。この曇りなき殺意だ。
 誇りも情けも恐怖も悲哀も全てを食らい尽くす純粋無垢な殺意。
 人間を捨て、獣の本能になってでも殺す意思こそが最も重要なものなのだ。
 お嬢ちゃん。あんたのはまだそれがない。故に俺には勝てない」
「それはやってみなければわからないだろ!」
言ったと同時に突進する。マゴロクが担いでいた剣で地面ごと切上げた。
大きな石はソーニャを目掛け飛び、細かい砂が視界を阻む。
しかしこれでいい。ソーニャは飛んできた石を通常の大きさまで伸ばした剣で受ける。
「ビゼンにはそれがあった。一種の才能と呼べるものだ」
数歩先から聞える声。マゴロクは完全にビゼンに背中を向けていた上に、切上げた体勢だ。
避けることは出来ないし、仮に受けれてもビゼンの全力なら防御も意味ない。
「勿体無いものだ」
背中を風が押している。砂嵐が目の前で渦を巻いた。
剣に鈍い輝きが線を描き、今度は前から風が吹き、砂嵐が晴れた。
マゴロクはビゼンのほうを向き、剣は横に振り下ろしている。
一方のビゼンは剣を振り上げた状態で止まっていた。
「鉄の旋風。人間相手はお前が初めてだな」
ビゼンの胸から血が噴出し、そのまま膝から崩れていった。
「ビゼン!!」
強く地面を蹴り、飛び掛る。
振り向きざまの横薙ぎが飛んでくる。かわせない。受けきれない。
左から飛んでくる剣の刀身に素手を乗せ、飛び越える。
驚いているマゴロクの頭上を越え、背面から一撃をいれてそのまま地面に落ちる。
やってみるものではない。刀身を触った左手がひりひりする。着地もうまくいきやしない。
しかしビゼンの傍には来れたし、背中に一撃は与えられた。
「無茶をするな。お嬢ちゃん。だがいい一撃だった」
マゴロクは背中を触って、傷の具合を調べている。痛みを感じない以上は確実に行動に支障が出る攻撃をしなければいけない。
ちらりとビゼンを見る。呼吸はどうやらしているようだが動きがない。このままでは危ない。
懐に手を突っ込み、線を抜く。それと同時にマゴロクに投げつけ、獲物を盾状に変える。
剣で斬ってくれたら上々だがマゴロクは普通にそれを素手で取った。
「爆弾ねぇ。こんなもんあっちに投げておくぞ」
ばれている。が、好機。短銃を取り出し、爆弾に狙いを定める。
明後日のほうを見ていたマゴロクの反応が遅れた。
撃ったと同時に盾でソーニャとビゼンを守る。しかし爆発音が聞えない。
代わりに強烈な衝撃を受け、思わず吹き飛ばされた。
マゴロクが剣を構えて立っている。爆弾を投げようとしていた体制から数秒も経っていない。
遠くのほうで爆発音が聞えた。爆弾は既に投げてあった。いくらなんでも早すぎる。
しかもそれと同時に再びビゼンから離れてしまった。
「いい調子だ。しかしまだまだだ」
踏み出そうとしたとき、何かが咆える声が空に響いた。狼のものではない。もっと低い強大な何かの声。
どこかで聞いた気がする。しかし今はそれを考えている場合ではない。
手持ちの爆弾は残り僅か。短銃も弾はそうない。
マゴロクの少し後ろを見る。ビゼンは先ほどと変わらず、剣を握ったまま伏せている。
よく見るとその横を魚が飛んでいる。そういえば彼女がいたなと思い出すが何かが出来そうなわけがない。
マゴロクが一歩踏み出した。それと同時に短銃を撃つ。刀身を盾にして銃弾を弾かれる。
とてもじゃないがこんな銃では、というよりも大抵の銃ではあの剣を貫通することは叶わない。
やけになって銃そのものを投げてみるもマゴロクの横を通り過ぎていった。
獲物を弓矢に変え、狙いを定める。その隙を狙って、マゴロクが間合いを詰めてきた。



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