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Yuri-3-094

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さくらもち


94 :わんこ ◆TC02kfS2Q2 :2013/10/27(日) 20:46:13.62 ID:PU+vydoO

久方ぶりに百合百合もん


95 :『さくらもち』 ◆TC02kfS2Q2 :2013/10/27(日) 20:48:01.67 ID:PU+vydoO

 世話焼なさくらがそっとハンカチでもっちーの口元を拭く。
 実の妹のようにもっちーはぷうっと頬を膨らませた。

 四畳半のボロアパートに若い娘が二人居るだけで、何故か物語りが紡げそう。そんなヨコシマでヒネクレな妄想はアニメだけでよろしい。
 しかし、さくらともっちーは喜んでその妄想を現実にするだろう。もっちーの黒タイツな太ももが座布団に絡み付いた。

 「さくらはホントわたしのことが好きなんだね」

 一つ年上のさくらを叱るもっちー。叱られることに生きる意義を感じたさくらは手元のハンカチをくんかくんかと嗅いだ。
 幸せな時間ほど速く過ぎ去る。明日にはこの幸せが薄氷の如く割れてしまう。いや、割らねばならぬ。
 すっと立ち上がり、流星に独り占めされた夜空を眺めたもっちーにさくらが背後から羽交い締めした。

 「風邪、ひいちゃうよ。風邪ひいたら、迷惑かけちゃうし」
 「平気平気。涼しいし、さくらんちの景色眺めてたら、いい声出そうだし」
 「だーめ。もっちーは早く帰って台本の見直しでもなさい」
 「本読みなら、さくらと一緒がいいのに……」

 羽交い締めされたままのもっちーは玄関先に追いやられ、強制的にさくらから帰宅を命じられた。

 ブーツを履きながら、もっちーは何か芝居がかった台詞を繰り返していた。
 すっとブーツのファスナーをしめる音ともっちーの桜餅のような声が噛み合わない。

 「違うよ。もっと、相手を憎たらしそうにっ」
 「……」

 寒いから窓をぴしゃりとしめたさくらが小言を飛ばす。
 もっちーは黙って立ち上がり、さくらに背中を見せながら弱音を吐いていた。

 「どうして、仲悪くならなきゃいけないのかなぁ」
 「そういう設定だからじゃないの」
 「なかなかさくらのこと……嫌いになれないよ」
 「あのね。『小豆』ってキャラは『こまめ』ってキャラにライバル心を抱いてるんだよ?
 だから、嫌いってか……むしろ好きにならなきゃ演じられないキャラだし!」
 「好きに」
 「そう!もっちーには当たり役じゃないの?音響監督さんに感謝感謝!」
 「なる!」

 季節外れなもっちーの桜餅のような心が無彩色なる四畳半の部屋に花咲かせた。
 明日は録音、わたしはプロの声優だし。スタジオには張り切って入るんだと、もっちーはブーツの踵をコンクリの床鳴らせながら、
さくらのことをもっと好きになれるように、そしてもっと嫌いになれるように憎たらしく思った。

おしまい

わおー

投下おわり



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