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死者たちの夜Ⅳ

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死者たちの夜Ⅳ


飛び出したビゼンを見て、一瞬硬直をする狼。その隙にビゼンの剣が体を二つに引き裂く。
突き当たりにはそこそこな数の狼と人間が待機していた。距離も少々ある。
「突っ切るぞ!」
「ああ」
相手が遠隔攻撃をしてくる前に距離を詰めてしまえばいい。
走ってくる狼を立ち止まらずに、薙ぎ払っていく。しかし数が多く、どうしても足が止まってしまう。
こんなところでもたもたしている暇はない。先ほど渡された道具の一つを取り出す。
握り拳小程度の大きさで丸く表面がすべすべしていて、線が一本だけちょろっと出ている。どうみても爆弾だ。
使用法も聞いてある。この線を引っこ抜いてすぐに投げるだけ。
放物線を描いて、爆弾が媒体のちょっと手前のほうに転がる。先ほど引っこ抜いた線の穴から煙が出始めた。
「おい、あんなちっこいのでどの程度の威力が出るんだよ」
「さぁ……」
向かってくる狼を迎撃しながら答える。
爆弾から出ていた煙が消えた。……何も起きない。
爆弾から離れて身構えていた人間が笑い始めた。狼も前足で転がして遊んでいる。
これは不発弾だ。
「道具なんかに頼るなってことかな」
「信じられるのは己の腕と剣だけかよ!」
これなら先ほどの匂う道具のほうがよっぽど使えた。しかし手元にあるのは爆弾と短銃だけ。
増援が来ているのか元から数が多いのか敵の狼はいくら斬っても減らない。
いくら狼が弱いと行ってもこのままじゃジリ貧だ。あっちにいた人間が爆弾をこちらに蹴り飛ばした。
途端に鋭い閃光が走り、同時に体に音の衝撃を受ける。
「あの爆弾は爆発するまでに少々時間差があるんですよ。もちろんそれまでに衝撃を受けたら爆発しますけど」
「使いにくい道具だな」
「ですが性能はお墨付きです」
魚の言うとおり爆弾周りの地面はえぐれており、その威力を如実に現している。
それだけじゃない。爆発と同時に何かを、おそらく鉄片のようなものを拡散させている。
距離自体は遠くまで届くような代物ではないようだが攻撃に関しては十二分なぐらいだ。
爆心地にいた者はもちろんこと少し離れた場所にいた人間や狼はうずくまって動かない。
爆音に怯んだ狼を叩き、媒体へと近づく。
近づくにつれ、疑いが確信に変わる。間違いない。あの媒体は隊商の荷物として持ち込まれたものだ。
気づけば狼たちが少なくなっている。恐れをなして逃げたのか? しかしこれを守らなければあいつらがいる意味がない。
何か嫌な予感がする。隣を見るとビゼンも身構えてあたりを見回している。
「近くに何かいないか?」
「今のところは……いや、来てます! 影が一つ、屋根を飛んでここに向かって来てます!」
「つーことは上位の狼あたりか。二人いりゃ倒せるな」
しかしおかしい。上位の狼ならむしろ雑魚もここに残るはずだ。
もしかしてこちらの仲間が来ているのか? 魔術師ならば屋根を飛んで移動も出来るだろうが……。
上空に何か居る。
咄嗟に後ろに飛び退く。
降って来たそれはこちらに背を向けていた。大きな赤い外套を羽織っている。
立ち上がった姿はビゼンよりも大きく、手に持つ剣はその体躯すら越えた鉄板に近いものだ。
横を見るとあのビゼンが眼を大きく見開き、震えている。
「……兄貴?」
記憶が蘇る。かつてビゼンが言っていた人物。
ビゼンが兄貴と慕い、この町を救った前隊長。
「久しぶりと始めまして、だな」
男は振り向く。外套が翻り、男の姿をさらに大きく見せる。
「名乗ろう。俺の名はマゴロク。自衛団隊長……ではなく前隊長だ」



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