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人と人外

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人と人外


「あんどろいど?」
聞きなれない言葉だったので聞き返してしまう。
一体どんな計画なのだろうか。餡泥井戸。おいしくはなさそうだ。
「人工生命体、と言ってソーニャに通じるのだろうか」
「つまり人の作った生命ってことか」
「通じた……!」
「馬鹿にしているのか」
亀がソーニャを見つめながらゆっくりと大きく頷く。
確かに無知である。無知ではあるがこの馬鹿にされようはちょっと腹が立つ。
「試作段階には入っているのですがなにぶん問題が多いので……」
「問題?」
「『生物問題』。僕からしてみればどうでもいいことなんだけどね」
「生物って生命体なら生物だろ?」
「生物としての在り方だよ。我々は地球上の進化という歴史を辿って生まれた生物だ。
 だけど人工生命体は人間と酷似しているがその生まれは試験管の中となる。
 云わば別生物というわけだ。
 仮に実験が成功し、人間となんら変わりないアンドロイドが誕生した時。
 本来の人間である我々はそれをどのように扱うべきなのか。
 兵器として生まれたからには生物兵器として扱うのか、それとも一人の人間として扱うのか。
 なまじアンドロイドというのが人間の上位互換みたいな存在だから場合によっては我々の上に君臨する危険性とやらもある。
 後は神のなんちゃらだとか倫理的などうちゃらとかあるけど植物の品種改良となんら変わりないと思うんだけどね」
人の形をした別生物。作られた生命体。
まるで我々と同じじゃないか。
「状況が状況ですしおそらくは計画は実行されます。それでも成功する確率は高いとは言えないのが現状。
 期待はしつつもこちらはこちらで出来るだけ種はまいておいたほうがいいでしょう」
それまで黙って話を聞いていたコユキが何かを思い出したかのように手を打つ。
「そういえば扱い云々の話で思い出しましたけど確か魔獣や魔族でも人間に味方するのもいましたよね。
 彼らの待遇はどうなってるんですか?」
「魔獣や魔族が味方に? 人間に敵意を持っているからそう呼ばれているんだろう。そんな馬鹿な話が」
ソーニャは軽く笑いながら紅茶を口に含む。
「いるね」
そして噴出した。
「きたなっ! おい、脳味噌筋肉。消し炭にしてあげようか」
「げほっげほ……。すまない……。いやしかしおかしいだろ。前に聞いた話と明らかに矛盾しているだろ」
「基本的には人間に強い敵意を持っている生物を魔物と呼んでいますけど
 明らかに野生生物の知能をはるかに超えたものもそう呼んでいるんですよ」
ロゼッタが説明しながら布巾で机を拭いている。非常に面目ない。
「有名なのはヨーロッパの吸血鬼とか大白鯨ですね。確か日本にも狸とか狐の魔物がいたような」
「結構いるもんなんだな」
「知能を持てば持つほど自らの目的に疑問を持つということかな。人間と変わらないね」
「人間との係わりかたも手助けする代わりに供物を要求するものもいれば
 人里に住み、普通に暮らしているものもいます。
 それでも姿かたちは人間と異なるのでそういった目で見られていることが多いと言ってましたね」
現在も東京拠点には魔物が住んでいるらしく、戦いとあらば人間と共に共同戦線を張っているそうだ。
そういったところで感謝される反面やはり魔物であるということで差別を受けることもあると言う。
人間の知性を持った魔物は差別され、人間を模して作られたアンドロイドはその誕生すらも問題視される。
ならばもしも無限桃花のことが広く知られればもしかしたら我々もそういった処遇を受けることになるのだろうか。
ソーニャはそんなことをふと思った。



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