7 名前:酒、岩、祭り[] 投稿日:2008/08/28(木) 23:06:28 ID:nRdUm5kV
その日、猿のトコトコは猿酒の名手である老猿ヂルに、祭りに供える酒を
教えてもらいに道を歩いていた。
暖かい春の日差しが野原に満ち溢れ、タンポポの黄色い花がどこまでも
咲いていた。どこからかひばりの声も聞こえてくる。
トコトコは空を見上げた。白い雲が流れ、優しい風が頬をなでていく。
ヂルは最近、体の調子がよくないらしいとは猿村の者たちは言っていた。
子供がなく独り身のヂルは、どんなに美味い酒を造る技があっても
それを伝えるすべがない。
だからトコトコがヂルに酒造りを教えて欲しいと願い出たとき、ヂルは
手を叩いて喜び、そして、すぐに心配そうな顔になったという。
『酒造りの修行は、住み込みでないと無理だよ。その小僧は、おっかさんに
何ヶ月も会わなくて平気なのかね』
トコトコはヂルにはまだ会った事がない。トコトコの住んでいる村からは
この野原を越えて岩だらけの山をのぼらなければ、ヂルの酒蔵には
たどり着けないからだ。
トコトコは、その話をヂルを紹介してくれた猿から聞いて少し寂しくなったけれど
これも修行のため、祭りのためと決心することにした。
野原にはタンポポの無数の花が風に揺れている。
帰る頃にはここにはどんな花が揺れているのだろうと思いながら
この若い猿は野原を歩いて行くのだった。
教えてもらいに道を歩いていた。
暖かい春の日差しが野原に満ち溢れ、タンポポの黄色い花がどこまでも
咲いていた。どこからかひばりの声も聞こえてくる。
トコトコは空を見上げた。白い雲が流れ、優しい風が頬をなでていく。
ヂルは最近、体の調子がよくないらしいとは猿村の者たちは言っていた。
子供がなく独り身のヂルは、どんなに美味い酒を造る技があっても
それを伝えるすべがない。
だからトコトコがヂルに酒造りを教えて欲しいと願い出たとき、ヂルは
手を叩いて喜び、そして、すぐに心配そうな顔になったという。
『酒造りの修行は、住み込みでないと無理だよ。その小僧は、おっかさんに
何ヶ月も会わなくて平気なのかね』
トコトコはヂルにはまだ会った事がない。トコトコの住んでいる村からは
この野原を越えて岩だらけの山をのぼらなければ、ヂルの酒蔵には
たどり着けないからだ。
トコトコは、その話をヂルを紹介してくれた猿から聞いて少し寂しくなったけれど
これも修行のため、祭りのためと決心することにした。
野原にはタンポポの無数の花が風に揺れている。
帰る頃にはここにはどんな花が揺れているのだろうと思いながら
この若い猿は野原を歩いて行くのだった。