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夏の午後
59 :創る名無しに見る名無し:2010/12/20(月) 23:36:04 ID:+xmS44AT
夏の午後。青い空。野球部のボールを打つ音。蝉の鳴き声。日差しが少しずつ侵入してくる階段の踊り場で二人。
ちらと隣の彼女を窺う。胸元まで開いた、少し汗で湿ったシャツ。さらさらと風に揺れる長い黒髪。炭酸飲料を飲む唇。グラウンドを見つめる瞳、それとも見ているのはもっと遠くの何かか。
「それなに?」
「……苺ソーダ」
「ちょっとちょうだい」
「……」
「……苺ソーダ」
「ちょっとちょうだい」
「……」
そっぽをむいて一口。駄目なのかと思っていたら急に顔を近づけてくる。そして唇が触れる。
「………有難う」
「……」
「……」
白い太陽、しゅわしゅわ音を立てて弾ける泡、甘い香り………。あれはソーダの香り?それとも彼女の長い黒髪から零れたシャンプーの香り?
再び遠くを見つめる彼女。私も同じ方角に顔を向ける。遠くに飛行機雲が走っていた。雲はゆっくりだったけど綺麗な直線を空に引いていった。
私の方から彼女の方へ。時折吹く風はあの香りをふわりと運んできてくれた。彼女から私に。
私の方から彼女の方へ。時折吹く風はあの香りをふわりと運んできてくれた。彼女から私に。