総括所見:モルディブ(第4~5回・2016年)


CRC/C/MDV/CO/4-5(2016年3月14日)/第71会期
原文:英語(平野裕二仮訳)

I.序

1.委員会は、2016年1月19日に開かれた第2077回および第2079回会合(CRC/C/SR.2077 and 2079参照) においてモルディブの第4回・第5回統合定期報告書(CRC/C/MDV/4-5)を検討し、2016年1月29日に開かれた第2104回会合(CRC/C/SR.2104)において以下の総括所見を採択した。
2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況に関する理解の向上を可能にしくれた、締約国の第4回・第5回統合定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/MDV/Q/4-5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ部門横断型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。

II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、以下の文書について批准または加入が行なわれたことを歓迎する。
  • (a) 障害のある人の権利に関する条約(2010年4月)。
  • (b) 国際労働機関の強制労働条約(1930年、第29号)、強制労働廃止条約(1957年、第105号)、最低年齢条約(1973年、第138号)および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)(2013年1月)。
  • (c) 国際刑事裁判所ローマ規程(2011年9月)。
4.委員会は、以下の立法措置がとられたことに評価の意とともに留意する。
  • (a) セクシュアルハラスメントおよび性的虐待防止法(2014年)。
  • (b) 性犯罪法(2014年)。
  • (c) 人身取引防止法(2013年)。
  • (d) 家族間暴力法(2012年)。
  • (e) 就学前教育施設法(2012年)。
  • (f) 障害のある人の保護および金銭援助法(2010年)。
  • (g) 子どもの性的虐待の加害者に関する特別措置法(2009年)。
5.委員会は、以下の制度上および政策上の措置を歓迎する。
  • (a) 教育施設に通っている子どもを対象とした子ども保護政策の採択(2015年)。
  • (b) 「ひとりの子どもも取り残さない政策」の採択(2014年)。
  • (c) マレ(1か所)および諸環礁(4か所)におけるセーフホームの開設(2014年)。
  • (d) インクルーシブ教育政策の採択(2012年)。

III.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条(6))

委員会の前回の勧告
6. 委員会は、締約国が、2007年の総括所見(CRC/C/MDV/CO/3)で行なわれた勧告のうちまったくまたは十分に実施されていないもの、とくに留保(パラ10)、立法(パラ12)、包括的な政策および戦略(パラ15)、調整(パラ17)資源配分(パラ22)ならびに全国的データ収集システム(パラ23)に関するものに対応するために必要なあらゆる措置をとるよう勧告する。
留保
7.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ10参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、条約第14条第1項および第21条に付した留保の撤回を検討するよう奨励する。
立法
8.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ12参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、条約との全面的一致(親の共有責任、家族からの子どもの分離、子どもの保護の調整および国外居住者の子どもの権利に関連する分野における一致を含む)を確保しながら、子ども法案を採択するための即時的措置をとるよう勧告する。
包括的な政策および戦略
9.関連の政策(たとえばインクルーシブ教育および教育施設に通っている子どもの保護に関するもの)が最近採択されたことには留意しながらも、委員会は、締約国がまだ子どもに関する包括的政策を策定していないことを懸念する。
10.委員会は、締約国に対し、条約およびその選択議定書で対象とされているすべての分野を包含した、子どもに関する包括的政策を作成するとともに、当該政策に基づき、その適用のための諸要素を備え、かつ十分な人的資源、技術的資源および財源に裏づけられた戦略を策定するよう奨励する。当該戦略においては、子どもの権利に関わる国の諸機関の任務を明らかにし、かつ、監視および評価のための明確な枠組みを定めるべきである。
調整
11.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ17参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、さまざまな部門を横断して、国および地方のレベルで条約の実施に関連するすべての活動を調整するための明確な任務および十分な権限を備えた適切な機関を、高い省庁間レベルに設置するよう促す。締約国は、当該調整機関に対し、その効果的運営のために必要な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するべきである。
資源配分
12.社会部門における資源配分の増加は歓迎しながらも、委員会は、条約上の義務の実施のために配分される具体的な予算科目が設定されていないこと、ならびに、これらの義務を実施するための資源の配分を評価するための監視評価機構が設置されていないことを懸念する。
13.子どもの権利のための資源配分:国の責任」に関する一般的討議(2007年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの予算上のニーズの包括的評価を実施し、子どもの権利の実施のために十分な予算資源を配分し、かつ、とくに、子どもの権利に関連する指標に基づいて格差に対処すること。
  • (b) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の十分性、効率性および公平性を監視しかつ評価するための機構を設置すること。
データ収集
14.モルディブ子どもの保護データベースが2010年に設置されたことは歓迎しながらも、委員会は、条約の効果的実施のための政策、プログラムをおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用できる細分化されたデータの収集を可能とする目的としたデータベースの運用に対し、十分な予算資源が配分されていないことを懸念する。
15.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、締約国に対し、データ収集システムを速やかに向上させるよう促す。このようなデータは、すべての子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれている子ども)の状況に関わる分析を促進する目的で、条約の全分野を網羅し、かつ、年齢、性別、障害、地理的所在、民族的出身および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。さらに、委員会は以下のことを勧告する。
  • (a) データおよび指標が関連省庁間で共有され、かつ、条約の効果的実施のための政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価のために活用されるべきこと。
  • (b) 締約国が、統計的情報の定義、収集および普及の際、国際連合人権高等弁務官事務所の報告書「人権指標:測定・実施ガイド」(Human rights indicators: a guide to measurement and implementation)に掲げられた概念上および手法上の枠組みを考慮に入れること。
  • (c) 締約国が、子どもの保護データベースの部門横断的共有および全面的運用に向けて予算資源を配分するとともに、国際連合児童基金(ユニセフ)および他の適切な機関との技術的協力を強化すること。
独立の監視
16.委員会は、子どもの権利侵害の苦情を受理し、監視しかつ調査する目的で、マレに子ども・家族保護サービスが、かつ19の環礁に家族・子どもサービスセンターが、設置されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、これらのセンターの人員および資金が不足していることを懸念するものである。委員会はさらに、15歳の女子の事案についてモルディブ人権委員会が調査報告書(2014年4月)を発表し、かつ人権理事会の普遍的定期審査手続に報告書が提出された(2014年)のち、モルディブ最高裁判所が、人権委員会が最高裁判所の権限を批判したことに対して職権による手続を開始したことを懸念する。委員会はまた、〔拷問等禁止条約の選択議定書に基づく〕国内防止機関としても行動する人権委員会の2016年予算が相当に削減されたことにより、その機能およびとくに少年拘禁施設を監視する能力に悪影響が生じていることも懸念するものである。
17.子どもの権利の促進および保護における独立した人権機関の役割についての一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国に対し、モルディブ人権委員会が国際連合機関と協力したことに対するすべての報復行為を直ちに停止するとともに、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)との全面的一致を確保するため、この監視機構の独立性(資金、任務および免責との関連を含む)を確保するよう促す。後者の点について、委員会は、締約国が、とくに国際連合人権高等弁務官事務所(OHCHR)、ユニセフおよび国際連合開発計画の技術的協力を求めるよう勧告するものである。
普及、意識啓発および研修
18.委員会は、締約国が、子どもの権利の問題に関するいくつかのテレビ番組およびラジオ番組等を通じて条約についての意識を高めるために行なっている努力、ならびに、子どもとともにおよび子どものために働く者を対象として研修セッションを実施するために行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 条約の公式な翻訳が作成されておらず、かつ締約国報告書を普及するために十分な努力が行なわれてこなかったこと。
  • (b) 条約についての知識が限られていることもあって、一般公衆の一部およびとくに子どもたちの間に、イスラム教と子どもの権利は「両立しない」という誤解が存在すること。
19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約を地方言語に公式に翻訳したものおよびそれを子どもにやさしく書き直したものを作成するともに、それらの翻訳ならびに締約国報告書および委員会の総括所見を広く普及すること。
  • (b) 条約の規定および原則に関する、対象を明確にした定期的な研修を専門家向けに実施するための努力、および、子ども、その親その他の養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働くすべての関連の専門家集団の間で条約についての情報を体系的に普及するための努力を強化すること。
  • (c) 高等教育段階までの学校カリキュラムに条約についての教育を統合するとともに、ラジオおよびテレビでならびにインターネットを通じて条約の内容を恒常的に放送すること。
  • (d) イスラム教と子どもの権利が両立しないという点に関する公衆の誤解に対処するため、ユニセフおよび市民社会と協力しながら、対象を明確にした意識啓発プログラム(キャンペーンを含む)を発展させること。
子どもの権利と企業セクター
20.委員会は、観光が締約国の経済の主たる柱となっており、かつ、ビーチ、サファリボートおよびゲストハウスという観光的環境において児童買春が行なわれていると報告されている一方で、締約国が、観光活動から生じる可能性のある子どもの権利侵害(とくに児童セックスツーリズム)から子どもを保護するための措置をまだとっていないことを懸念する。
21.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 締約国の領域で操業しておりまたは締約国の領域から経営されている企業およびその子会社(とくに観光産業関連企業)の法的責任を確保するための立法上(民事法、刑事法および行政法上)の枠組みを検討しかつ採択すること。
  • (b) 観光産業および公衆一般とともに児童セックスツーリズムに関する意識啓発キャンペーンを実施し、かつ、旅行代理店および他の観光産業関係者の間で観光名誉憲章および世界観光機関の世界観光倫理規範を広く普及すること。
  • (c) 国境を越える性犯罪者の特定ができるように国際的情報交換協定を執行する等の手段により、児童セックスツーリズムの防止および撤廃のための多国間、地域間および二国間の取決めを通じて、児童セックスツーリズムに反対する取り組みへの国際的レベルでの協力を強化すること。
市民社会との協力
22.委員会は、人権擁護の活動をしている一部の非政府組織(NGO)が国の関係者による脅迫を受けているという報告があることを懸念する。
23.委員会は、締約国に対し、人権擁護者は、その活動が子どもを含むすべての者の人権を促進するためにきわめて重要であるがゆえに特別な保護を受けるのにふさわしい存在であることを想起するよう求めるとともに、したがって締約国が、ジャーナリスト、人権擁護者およびあらゆるNGOが脅迫およびいやがらせを受けることなく表現および意見の自由に対する権利を行使できるようにするための即時的措置をとるよう、強く勧告する。委員会はまた、締約国に対し、対話の際に表明されたように、NGO,人権擁護者および市民社会活動家に対する脅迫およびいやがらせの通報が迅速にかつ独立の立場から調査され、かつそのような人権侵害を行なった者の責任が問われることを確保するようにも促すものである。委員会はさらに、締約国が、子どもに関連する法律、政策およびプログラムの策定、実施、監視および評価に際し、子どもの権利の分野で活動するすべてのNGOの関与を組織的に得るように勧告する。

B.子どもの定義(第1条)

24.委員会は、子どもの権利の保護に関する法律(法律第9/91号)第28条で、子どもが同法に定められたいかなる権利も享受できない3つの例外(婚姻契約を行なった子ども、親になった子どもおよび雇用されている子ども)が規定されていることを懸念する。
25.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の保護に関する法律第28条を廃止するとともに、国内法において、18歳未満のすべての者に対し、いかなる例外もなく全面的かつ平等な保護が与えられることを確保すること。

C.一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
26.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) すべての市民の平等について定めた憲法第20条と、市民はイスラム教徒でなければならないとし、かつイスラム教徒でない者は市民権を取得することができないと定める第9条(b)との間に乖離があること。
  • (b) 女子に対する差別が法律上も実際上も続けられていること(家族法上、女子は父方の保護者の意思に服するものとされていること、および、相続権が否定されていることを含む)。
  • (c) 一部の政治家および宗教的指導者が、女子の品位を貶め、かつジェンダーを理由とする差別を助長すると考えられる発言を行なってきたという報告があること。
  • (d) 婚外子または法廷外婚姻のもとで生まれた子どもに対する差別が続けられていること(実の父親と法的関係を確立する権利および実の父親の姓を名乗る権利が否定されていること、ならびに、相続権が否定されていることを含む)。
  • (e) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーもしくはインターセックスである子どもまたはそのように見なされる子どもが、社会でスティグマを付与されかつ周縁化されていること。
27.委員会は、締約国に対し、自国の管轄内にあるすべての子どもが、条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受できることを確保するため、いっそうの努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、女子、婚外子または法廷外婚姻のもとで生まれた子ども、および、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーまたはインターセックスである子どもに対するいかなる差別も撤廃するための法改正を行なうことも促すものである。委員会はさらに、締約国に対し、政治家および宗教的指導者が女子の品位を貶め、かつジェンダーを理由とする差別および暴力を助長する発言を行なったすべての事案について、捜査および処罰を行なうよう促す。委員会は、締約国に対し、立法上、政策上および教育上の措置(感受性強化および意識啓発を含む)を活用して、女子、婚外子または法廷外婚姻のもとで生まれた子ども、および、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーまたはインターセックスである子どものスティグマに終止符を打つよう奨励するものである。
子どもの最善の利益
28.委員会は、子どもの最善の利益について、条約に一致しない慣習的および宗教的解釈が締約国で支配的となっており、そのため子どもの権利の深刻な侵害につながっていることを懸念する。委員会は、子どもの性的虐待を通報しないことが、子どものいわゆる「名誉」を守ることであり、したがって子どもの最善の利益にかなっていると考えられていることに、深刻な懸念とともに留意するものである。
29.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、法律において、条約第3条と一致する形で子どもの最善の利益の原則を明示的に定義しかつ掲げるよう勧告する。これとの関連で、締約国は、公的権限を有するすべての関係者に対し、あらゆる分野で子どもの最善の利益について判断し、かつそれを第一次的考慮事項として正当に重視することに関する指針を提供するための手続および基準を定めるよう奨励されるところである。締約国は、子どもの性的虐待の加害者を処罰しないことが子どもの最善の利益にかなっているという考え方につながる宗教的および慣習的解釈に異議を申し立てる意識啓発キャンペーンを実施するよう求められる。
生命、生存および発達に対する権利
30.委員会は、以下のことについて重大な懸念を覚える。
  • (a) 少年裁判所が、3つの異なる事件(2013年の1件および2015年の2件)において5人の子どもに死刑を言い渡したこと。
  • (b) 報告によれば、死刑に直面している子どものほとんどはキサス(同害復讐法)に基づいて刑を言い渡されており、かつ、2015年11月30日の高等法院判決により、被害者の相続人全員がシャリーア法上のキサスに基づく刑罰が科されることを望んでおり、かつ有罪判決を受けた殺害犯に対して死刑を執行することを要求する場合には、大統領はもはや、故意の殺人罪について死刑を終身刑に減刑できないとされていること。
  • (c) 故殺の捜査および刑の執行に関する規則(2014年)により、7歳という低年齢の子どもに対し、故意の殺人罪について死刑を言い渡すことが認められていること。
  • (d) 現在、死刑法案として展開されようとしている死刑の実施に関する規則(2014年)により、死刑を言い渡された未成年者に対し、当該未成年者が18歳になれば死刑を執行することが認められていること。
  • (e) 死刑事件および鞭打ち事件についての自動的上訴を定めた2015年11月の通達が、全体としては肯定的なものである一方で、当該通達の利益を享受できる者の間で十分に普及されておらず、かつ、最高裁判所への上訴期間も60日から30日へと短縮していること。
31.委員会は、締約国に対し、以下の措置を最優先でとるよう促す。
  • (a) 18歳未満の者の死刑について定めた国内法のすべての規定を廃止すること。
  • (b) 18歳未満の者または犯罪実行時に18歳未満であった者に対して死刑が執行されないこと(フドゥード法上の犯罪およびキサス法に基づく事件についての刑を含む)を確保し、そのようなすべての死刑についてそれに代わる適切な制裁を科すとともに、殺人被害者遺族に働きかけてキサス法に基づく事件について宥恕を奨励すること。
子どもの意見の尊重
32.委員会は、社会福祉機関、裁判所および行政機関によって子どもの意見が聴かれることがめったになく、かつ、16歳未満の子どもまたは第二次性徴期を迎えていない子どもには裁判所における陳述が認められないことを懸念する。
33.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ45参照)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、地方レベルでも、かつ裁判所における陳述との関連でも、意見を聴かれる子どもの権利が、その子どもの権利に影響を与える可能性があるすべての手続、とくに社会福祉機関、裁判所および行政機関がとる措置において、その年齢および成熟度にしたがって尊重されることを確保するよう促す。

D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条)

思想、良心および宗教の自由
34.委員会は、イスラム教徒でない者および無信仰の者に対する宗教的不寛容についての報告があること、ならびに、宗教的寛容を奨励する成人および子どもに対して暴力を行なった者が一般的に処罰されていないことを深刻に懸念する。委員会はまた、締約国で宗教的過激主義が勢力を増しており、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利に深刻な影響が生じているという報告があることも懸念するものである。
35.委員会は、締約国が、宗教または信条を理由とするあらゆる形態の差別を防止しかつ解消するための措置をとり、かつ社会における宗教的寛容および対話を促進する等の手段により、思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するべきである旨の前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ48〔49〕参照)を、あらためて繰り返す。締約国は、宗教の名のもとに暴力を行なった者が責任を問われることを確保するべきである。
結社および平和的集会の自由
36.最近、18の学校で人権クラブが設立されたことは歓迎しながらも、委員会は、結社法(1/2003)で、すべての子どもが団体の結成を禁じられていることを懸念する。
37.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ51参照)をあらためて繰り返すとともに、対話の際に表明されたように、締約国が、子どもが団体を結成できるようにするために結社法を改正し、子どもたちに団体の結成を奨励し、かつ、子どもに影響を与える政策および決定の立案に子どもたちが関与するための機会をつくりだすよう勧告する。
適切な情報へのアクセス
38.締約国の14~18歳の子どものほとんどがインターネットにアクセスできており、かつ、締約国が最近、子どもおよびその親を対象としてネットいじめおよびインターネット上の安全に関する意識啓発活動を開始したことには留意しながらも、委員会は、子どもが年齢にふさわしくない情報およびポルノグラフィーならびにネットいじめにさらされないことを確保するうえで、これらの措置が不十分であることを懸念する。
39.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ53-54参照)をあらためて繰り返し、締約国が、多様な情報源、とくに子どもの社会的、霊的および道徳的ウェルビーイングならびに身体的および精神的健康の促進を目的とした情報源からの適切な情報に対する子どものアクセスをさらに向上させるとともに、子どもならびに親および教員を対象とした、インターネット上の安全に関する(かつ、とくにポルノグラフィーおよびネットいじめの問題について扱う)啓発プログラムを強化するよう勧告する。

E.子どもに対する暴力(第19条、第24条(3)、第28条(2)、第34条、第37条(a)および第39条)

拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰
40.憲法第54条で拷問が禁じられていることには留意しながらも、委員会は、未成年者が行なった犯罪についての審判の実施、捜査および公正な量刑に関する規則(2014年、第4条および第5条)に基づき、第二次性徴期に達した子どもが、フドゥード法上の特定の犯罪を行なったことを理由として鞭打ちにより処罰される可能性があることを懸念する。委員会は、未成年者が引き続き鞭打ちの刑を執行されておりまたは鞭打ち刑を言い渡されていること、および、この刑罰の適用においてジェンダーの偏りがあること(大多数の事件で、婚姻外の性交を理由として有罪を言い渡された女性および女子しか鞭打ちの刑を言い渡されていない)を、深刻に懸念するものである。委員会はさらに、罪を犯した子どもに対し、同意に基づく同性間の関係を理由として終身刑、追放刑または鞭打ちの刑を言い渡すことも合法とされていることを懸念する。
41.委員会は、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ56参照)をあらためて繰り返すとともに、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)を参照しながら、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 18歳未満のときに犯罪を行なった者がいかなる形態の拷問(体罰を含む)の対象にもされないこと、ならびに、しつけおよび規律維持の措置としての体罰が家庭、代替的養護環境、司法機関、学校および職場環境において法律で禁止されることを確保するために必要なあらゆる措置をとること。
  • (b) 未成年者が行なった犯罪についての審判の実施、捜査および公正な量刑に関する規則(2014年)を改正して鞭打ち刑を禁止すること。
  • (c) 18歳未満の者の終身刑を明示的に禁止すること。
あらゆる形態の暴力からの子どもの自由
42.2012年に家族間暴力法が採択されたことおよび同法の規定に関する意識啓発のための活動が実施されていることは歓迎しながらも、委員会は、同法が、子どもの体罰を禁止していると解釈されていないことを懸念する。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。
  • (a) 家庭、学校およびコミュニティにおいて子どもに対する暴力、虐待およびネグレクトが広く行なわれていること。
  • (b) 家族間暴力の事案の通報水準が低く、かつ、法執行官が、このような暴力はイスラム教において正当化されると考えて、行動をとることおよび家族間暴力の加害者を逮捕することをしばしば躊躇すること。
  • (c) 2012年法で必置とされているシェルターがまだ設置されていないこと、ならびに、家族・保護サービスセンターおよびセーフハウスが資金不足の状況にあり、かつ利用可能となっていないこと。
  • (d) とくにマレにおいてギャング関連の暴力がエスカレートしつつある一方で、ギャング関連の暴力および死亡ならびにギャング関連の活動への関与から子どもを保護するためにとられた措置が限られていること。
  • (e) 子どもたちが、2012年2月7日〔政権交代をめぐる軍事政変〕後に行なわれた抗議の際に暴力にさらされてきたこと。
  • (f) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーもしくはインターセックスである子どもまたはそのように見なされる子どもが脅迫および公然たる脅しに直面していること。
43.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての一般的意見13号(2011年)および持続可能な開発目標のターゲット16.2(子どもの虐待、搾取、人身取引ならびに子どもに対するあらゆる形態の暴力および拷問の廃絶)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家族間暴力法に基づき、体罰が曖昧さを残す余地なく禁じられることを確保すること。
  • (b) 必置とされているシェルターを設置し、保護サービスセンターおよびセーフハウスに十分な資金を提供し、家庭内で女子に対して行なわれる暴力について法執行官の十分な能力構築を図り、かつ意識啓発のための努力を通じて通報を増加させる等の手段により、2012年家族間暴力法の執行および実施を確保すること。
  • (c) 子どもに対する家族間暴力のあらゆる事案に関する全国的データベースを設置するとともに、このような暴力の程度、原因および性質についての包括的評価を実施すること。
  • (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表からも2013年5月の訪問時に勧告されたように、子どもの保護に関わる問題を担当するすべての主要な部局および機関が一堂に会し、定期的に会合して、ジェンダー関連の暴力にも焦点を当てながら子どもに対する暴力および子どもの虐待を防止しかつこれと闘うための包括的戦略(具体的な予算をともなう介入策を定めたもの)を立案するための、ハイレベルな討議の場を制度化すること。
  • (e) 統一された、調整のとれた、かつ包括的な子どもの保護制度を創設すること。
  • (f) 政治的抗議の際に子どもに対して暴力が振るわれることおよび子どもが暴力にさらされることを防止するために必要なあらゆる措置をとること。
  • (g) レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもに対する脅迫および脅しを防止すること。
性的搾取および性的虐待
44.委員会は、子どもの性的虐待への対応に関する特別措置法が2009年に制定されたこと、その後、有罪判決を受けた性犯罪者の登録簿を法律・ジェンダー省がネット上で公表したこと(2015年11月)、および、子どもの性的虐待の通報が増えていることを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 法律で「性的虐待」の定義が定められていないこと、および、2009年法第14条で、既婚女子に対して夫が行なった性犯罪の事件については免訴が認められていること。
  • (b) 性的同意に関して法律で定められている最低年齢が低すぎる(13歳)こと。
  • (c) 子どもの性的虐待(とくに女子に対する虐待)が依然として広く行なわれており、かつその大部分が通報されていないこと、有罪判決率が著しく低いこと、および、加害者がしばしば早期に釈放されてコミュニティに戻っていること。
  • (d) 2009年法の効果的実施のために必要な二次立法(証拠法案など)の成案がまだ得られていないこと。
  • (e) 裁判官が、女性、女子およびセクシュアリティについて差別的な見方をしており、子どもの性的虐待の被害者に対して配慮のない態度を示しており、かつ、場合により、自らも過去に性犯罪で有罪判決を受けていた者もいると報告されていること。
  • (f) 婚外妊娠が、虐待の結果として妊娠した女子の場合も含め、性犯罪法により犯罪とされていること。
  • (g) 性的虐待を受けた子どもが密通の罪で鞭打ち刑を言い渡される事案が多数生じていること。
45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 性的同意に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。
  • (b) 条約に一致する形で性的虐待を定義すること、および、いかなる形態のものであれ性的搾取を受けたすべての子どもが被害者として扱われ、刑事的制裁の対象とされないようにすることを目的として、法律を改正すること。
  • (c) すべての形態の性的虐待(婚姻内強姦を含む)が犯罪化され、かつ犯罪の重大性に相応した刑罰によって処罰されることを確保する目的で2009年法第14条を廃止するとともに、証拠法案を完成させかつ制定すること。
  • (d) 子どもの性的虐待および性的搾取のすべての事案の通報義務を確保するための機構、手続および指針を確立すること。
  • (e) 女子の性的虐待に関する裁判官の感受性の強化を図ることなども通じ、性的搾取および性的虐待の加害者が効果的に訴追され、かつ相応の制裁を科されることを確保すること。
  • (f) 性的搾取および性的虐待(近親姦を含む)の被害者に対するスティグマと闘うための意識啓発活動を実施し、かつ、このような人権侵害についての、アクセスしやすく、秘密が守られ、子どもにやさしく、かつ実効的な通報経路を確保すること。
  • (g) 子どもの商業的性的搾取に反対する一連の世界会議で採択された成果文書にしたがい、防止ならびに被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のためのプログラムおよび政策(十分なシェルターの提供を含む)の発展を強化すること。
有害慣行
46.委員会は、最低婚姻年齢は18歳であるものの、家族法第4条(b)に基づき、マレの家庭裁判所が、子どもが第二次性徴期に達しており、心身ともに健全であり、かつ生計維持の能力を有していることを条件として、より低い年齢での婚姻を許可できることを懸念する。締約国が、法定年齢に満たない段階での婚姻の影響に関する広報ポスターを配布し、かつ児童婚および女性性器切除の有害な影響に関するその他の意識啓発活動を実施してきたことには留意しながらも、委員会は、締約国で児童婚が増えていると報告されていることを懸念するものである。委員会はさらに、女性性器切除からの保護が法律で明示的に定められていないこと、および、一部の宗教的指導者(フィクフ〔法学〕アカデミーの副学長を含む)が、女性性器切除を「イスラム教の好ましい慣行」として擁護しているとされることを懸念する。
47.有害慣行に関する女性差別撤廃委員会および子どもの権利委員会の合同一般的勧告31号/一般的意見18号(2014年)に照らし、委員会は、締約国に対し、締約国で行なわれている子どもに対する有害慣行に終止符を打つための積極的措置をとるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 家族法第4条(a)で18歳と定められている最低婚姻年齢が遵守されることを確保すること。
  • (b) 女性性器切除を有害慣行として明示的に禁止する法律を制定するとともに、その有害な影響に関する意識啓発を図ることおよびこの慣行を促進する宗教的指導者の責任を問うこと等を通じてこれと闘うための措置をとること。
  • (c) 早期婚が女子の身体的および精神的健康ならびにウェルビーイングに及ぼす有害な影響についての意識啓発のためのキャンペーンおよびプログラムを、世帯、地方当局、宗教的指導者、裁判官および検察官を対象として発展させること。
ヘルプライン
48.委員会は、被害者またはその家族が人権侵害事案を通報するために活用できる、法律・ジェンダー省が運用するヘルプライン(フリーダイヤルおよび24時間運用)が2009年に開設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、このヘルプラインについて多数の苦情(その存在が知られていないこと、アクセスのための接続が脆弱であること、通話に対応するための訓練を受けた職員がいないことおよびフォローアップが行なわれないことに関する苦情を含む)が出されており、いずれもこのヘルプラインへの公衆の信頼を失わせる結果になっていることを懸念するものである。
49.委員会は、締約国が、子どもヘルプラインを運営するための標準業務手続を作成し、通話に対応する職員に対して十分な研修を実施し、かつ、人権侵害が疑われる事案を通報するためのヘルプラインの活用を積極的に奨励するよう勧告する。

F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条(1)~(2)、第20~21条、第25条および第27条(4))

家庭環境
50.委員会は、対話の際に強調されたように、締約国の離婚率が非常に高く、かつ上昇し続けていることを依然として懸念する。委員会はまた、働く母親が多数存在するにもかかわらず、締約国に保育施設がひとつしかないことも懸念するものである。委員会はさらに、子育て意識啓発プログラムおよびカップル相談サービスがないことを懸念する。
51.委員会は、高い離婚率の背景にある理由についての研究を締約国が実施するよう勧告するとともに、締約国に対し、保育施設を整備するための努力、ならびに、とくに親としての指導および親の共同責任に関する親向けの支援(研修を含む)を提供することを通じて、家族教育および家族についての意識啓発を発展させるための努力を増進させるよう、奨励する。
家庭環境を奪われた子ども
52.委員会は、代替的養護施設で子どもに対して虐待、差別および暴力が行なわれていること、ならびに、2010年以降、子どもに入所養護を提供しまたは被害を受けた子どもに対して必要な治療およびサービスを提供することを任務とせず、そのために設置されたわけでもない施設である「特別なニーズを有する人々のためのホーム」に措置される子どもが着実に増えていることを、深刻に懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。
  • (a) 現在のところ、代替的養護における子どもの措置、養護および再統合についても、代替的養護施設の職員の採用および行為の監督についても包括的な法的枠組みが定められておらず、かつ指針も策定されていないこと。
  • (b) 養護を離脱する子どもまたは青少年のための計画、政策または手続が存在しないこと。
  • (c) 伝統的な里親養育システム(家族およびコミュニティを基盤とする代替的養護など)を発展させることについて、締約国が十分な考慮を行なっていないこと。
53.委員会は、締約国に対し、「特別なニーズを有する人々のためのホーム」から直ちに子どもを退所させ、同施設への子どもの措置をやめ、かつ、代替的養護施設内で子どもに対して行なわれたすべての虐待、差別および暴力事件を調査するよう促す。委員会はさらに、前回の勧告(CRC/C/MDV/CO/3、パラ60参照)をあらためて繰り返しながら、締約国が、子どもの代替的養護に関する指針(2009年12月20日)を考慮に入れながら、子どもホームの最低基準に関する規則、国の監護に関する規則および里親養育に関する規則を速やかに採択するとともに、これらの規則を実際に実施するため、職員を対象として関連の研修を実施するよう勧告するものである。委員会はまた、締約国が、養護を離脱する子どもおよび青少年のためのプログラムを緊急に策定するとともに、伝統的な里親養育システム(家族およびコミュニティを基盤とする代替的養護など)を発展させる可能性を、これ以上遅滞することなく模索することも勧告する。

G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条(3)、第23~24条、第26条、第27条(1)~(3)および第33条)

障害のある子ども
54.障害のある人の保護および金銭援助法(2010年)およびインクルーシブ教育政策(2012年)が採択されたことは歓迎しながらも、委員会は、同法が全面的に実施されているわけではないことを懸念する。委員会はまた、障害のある子どもに対してスティグマが付与されていること、障害のある子どもについての細分化されたデータがないこと、および、これらの子どもが保健サービスにアクセスできていないことも依然として懸念するものである。
55. 障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、障害に対して人権基盤型アプローチをとり、細分化された統計データに基づきながら障害のある子どものインクルージョンのための包括的戦略を定め、かつ、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 障害のある人の保護および金銭援助法の全面的実施のために十分な資源を配分すること。
  • (b) 障害のあるすべての子どもが障害者登録簿に記載されることを確保するとともに、当該登録を妨げる、現在存在するいかなる金銭的その他の障壁も取り除くこと。
  • (c) インクルーシブ教育政策を実施し、かつ、インクルーシブ教育が特別施設および特別学級への子どもの措置よりも優先されることを確保するための努力を強化すること。
  • (d) 障害のある子どもが保健ケア(早期発見および早期介入のためのプログラムを含む)にアクセスできることを確保するための努力を強化すること。
  • (e) 政府職員、公衆および家族を対象として、障害のある子どもに対するスティグマおよび偏見と闘い、かつこのような子どもの肯定的イメージを促進するための意識啓発キャンペーンを実施すること。
思春期の健康
56.委員会は、思春期の子どもにやさしい保健サービスを提供するための基準が最近策定され、かつ、この問題について、政策立案関係者および宗教的指導者を対象とした感受性強化のための会合が開かれてきたことに留意する。委員会はまた、教育省が、学校において、青少年の子どもを対象とした、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する包括的なライフスキル教育パッケージを実施していること、および、意識のさらなる促進を図るために放送媒体が活用されていることにも留意するものである。委員会はさらに、妊娠した非婚の女子に対し、家族保護部によって支援および医療ケアが提供されていることに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 中絶が、配偶者の同意を要件としており、かつ特定の場合(重症型サラセミア、重症型鎌状赤血球症または多発性先天奇形の場合、母体の生命を救いまたはその身体的健康を保全する目的がある場合、近親者による強姦で妊娠した場合、および、身体的および精神的に妊娠および分娩に適さない子どもが強姦により妊娠した場合)にしか認められないこと。
  • (b) リプロダクティブヘルスのための保健ケアサービスにすべての者がアクセスできるわけではなく、かつ、婚姻外妊娠が社会的非難の対象であることおよび犯罪とされていることを理由として非婚の女子が種々の困難に直面しているために、不法で安全性を欠いた中絶がますます行なわれるようになっており、思春期の母親の生命および健康に対するリスクが高まっていること。
  • (c) 2006年に実施された全国規模の研究によれば、締約国の子どもおよび青少年の66%が精神保健関連の問題を抱えており、かつ、2009年の調査によれば、締約国の生徒の22.2%が調査前の12か月間に自殺未遂の計画を立てていたにもかかわらず、これまでのところ、子どもおよび青少年を対象とする専門の精神保健サービスが締約国で確立されていないこと。
57.条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 思春期の子どもを対象とする包括的なセクシュアル/リプロダクティブヘルス政策を採択するとともに、セクシュアル/リプロダクティブヘルス教育が、若年妊娠および性感染症の予防にとくに注意を払いながら、学校の必修カリキュラムの一部とされ、かつ思春期の女子および男子を対象として行なわれることを確保すること。
  • (b) あらゆる場合の中絶を非犯罪化するとともに、配偶者の同意規定を削除する等の手段により、子どもが安全な中絶および中絶後のケアサービスにアクセスできることを確保する目的で、法律の見直しを行なうこと。また、中絶に関する決定において、妊娠した女子の意見が常に聴かれかつ尊重されることを確保すること。
  • (c) 妊娠した10代、思春期の母親およびその子どもの権利を保護し、かつこれらの女子および子どもに対する差別と闘うための政策を策定しかつ実施すること。
  • (d) 男子および男性にとくに注意を払いながら、責任のある親としてのあり方および性的行動についての意識を高め、かつそのようなあり方および行動を促進するための措置をとること。
  • (e) 子どもおよび青少年を対象として、精神保健のための専門的便益およびサービスを提供すること。
  • (f) 思春期の子どもの性的行動および精神保健についての微妙な問題に関して、宗教的指導者との内部的対話を促進すること。
薬物および有害物質の濫用
58.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 近年、思春期の子どもの間で薬物の消費が増加しており、一方で薬物を最初に使用した平均年齢が下がりつつあること。
  • (b) 現在のところ、薬物濫用の被害者である子どもをとくに対象としたサービスが締約国に存在しないこと、および、利用可能なサービスは需要を満たすのに不十分であって依然として有効なものになっていないこと。
  • (c) 子どもが薬物濫用について専門家による援助を得るためには親または保護者の同意が必要であるが、多くの親はスティグマを恐れて家庭で問題を解決しようとしていること。
  • (d) 離脱症候群を持って生まれる子どもの人数が増えていること。
59.委員会は、締約国が、とくに子どもおよび青少年に対して有害物質濫用(タバコおよびアルコールの濫用を含む)の防止に関する正確かつ客観的な情報およびライフスキル教育を提供することにより、子どもおよび青少年による薬物の使用の発生に対処する努力を強化するとともに、子どもおよび若者を対象とした、アクセスしやすく若者にやさしい薬物依存治療およびハームリダクション(危害軽減)のサービスを発展させるよう、勧告する。有害物質濫用の被害者のための専門的リハビリテーションサービスの一環としての新生児部、リプロダクティブヘルスサービス部および家族保護部に対し、特段の注意が払われるべきである。

H.教育、余暇および文化的活動(第28条、第29条、第30条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
60.委員会は、2014年に法律第9/91号(子どもの権利保護法)が改正され、モルディブに住むすべての子ども(外国籍の子どもを含む)に対して無償教育を受ける権利が認められたことを歓迎する。委員会は、教育法案において第10学年(15歳)までの義務教育が導入されることになる旨の情報に留意するものの、同法案の可決が遅れていることを依然として懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。
  • (a) 締約国が、乳幼児期のケアおよび教育に関する包括的政策を定めていないこと。
  • (b) 障害法(2010年)の規定にもかかわらず、障害のある子どもが、とくに環礁において実質的に中等教育にまったくアクセスできていないこと、および、普通学校へのインクルージョンの対象とされた子どもが教室内で深刻な差別に直面していること。
  • (c) 多くの女子が学校に行かなくなっていると報告されていること。
61.委員会は、締約国に対し、教育法案を、これ以上遅滞することなく、かつ条約と一致する形で採択するよう促す。委員会はさらに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 乳幼児期のケアおよび教育に関する包括的政策を採択すること。
  • (b) 障害のある子どもを含むすべての子どもが、他の子どもと同様に教育に対する権利を享受できることを確保すること。
  • (c) 適切な政策および措置を立案しかつ実施する目的で、女子が学校に行かなくなる理由についての研究を実施すること。
教育の目的
62.対話の際に提供された、授業用資料の見直しが現在進められている旨の情報には留意しながらも、委員会は、第4学年以上を対象とする授業用資料のなかに、性差別的および排外主義的資料ならびに理解、平和および寛容を促進しないその他の要素が含まれているという報告があることを深刻に懸念する。
63.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、軽蔑的な内容ならびに性別および宗教的信条に基づく差別および暴力を呼びかける内容を含んだすべての資料を直ちに撤回するとともに、それに代えて、すべての人民間ならびに民族的、国民的および宗教的集団間の理解、平和、寛容、性の平等および友好の精神を反映し、かつ人権およびすべての文明の尊重の発展を促進する教育資料および教育プログラムを導入するよう、促す。
休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動
64.芸術および音楽は必修教育カリキュラムの一部に位置づけられており、したがって学校にはこれらの科目を中止する選択権はない旨の締約国の情報には留意しながらも、委員会は、あらゆる形態の芸術的表現は「ハラム」〔禁止行為〕であるから禁止されているという宗教的宣伝の結果、芸術、音楽および演劇の授業が一部の学校で中止されたという報告があることを深刻に懸念する。
65.委員会は、休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国に対し、中止された芸術、音楽および演劇の授業をすべて再開しかつ保護すること、および、子どもが余暇を享受し、かつ文化的伝統について学習するために設けられている手段を拡大することを促す。

I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)ならびに第38条、第39条および第40条)

経済的搾取(児童労働を含む)
66.委員会は、2008年雇用法において最低就労年齢が16歳とされていることに留意するものの、家族企業で働く子どもについては同法が適用されず、このような子どものための立法上の保障措置が存在しないことを懸念する。委員会はまた、同法において、健康、教育、安全または品行に有害な影響を及ぼす可能性があるいかなる業務においても18歳未満の子どもの雇用が禁じられていることに留意するものの、禁止対象である危険な活動がそれ以上に具体的に定められていないことを懸念するものである。委員会はさらに、同法を執行するために労働関係庁および労働監察制度が設置されたことに留意する。しかしながら委員会は、同庁の人員および資源が不足しており、監察が不十分であり、かつ、児童労働を認識しかつこれに対応することについての具体的訓練が監察官を対象として実施されていないために、執行が十分に行なわれていないことを懸念するものである。
67.委員会は、締約国が、家族企業で働く子どもの保護のための立法上の保障措置をとり、子どもに対して禁止される搾取的業務および危険な業務の包括的リストを採択し、労働監察官を対象として、児童労働を認識しかつこれに対応することについての必修の研修を実施し、かつ、労働監察を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、この点に関してILO・児童労働撤廃国際計画の技術的援助を求めることも勧告するものである。
少年司法の運営
68.委員会は、新たに採択された2014年9月の刑法に基づき、子どもの未成熟性は15歳未満の子どもについては正当な抗弁とみなされる(ただしフドゥード法上の犯罪については例外とされる)こと、および、刑法上の犯罪について有罪と認定された15~17歳の子どもに対する刑の執行は、その子どもが18歳に達するまで延期されるとされていることに留意する。委員会は、刑事責任年齢が低い(10歳)ままであることを深刻に懸念するものである。委員会はまた、以下のことも懸念する。
  • (a) 締約国の裁判官が、刑事責任の存在を認定するにあたり、法定最低年齢ではなく身体的第二次性徴期への到達を基準として用いる傾向にあること。
  • (b) 鞭打ちが、犯罪に対する刑罰として依然として合法とされていること。
  • (c) 拘禁された子どもおよび青少年が、成人拘禁施設において、別ではあるものの近接した房に収容されていること。
  • (d) 法律に抵触した子ども、未決拘禁中の子どもおよび収監された子どもが教育に対する権利を否定されていること。
  • (e) 少年裁判所がマレ以外に設置されておらず、すべての事件がマレに移送されなければならないこと。
69.少年司法における子どもの権利についての一般的意見10号(2007年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、少年司法制度を条約および他の関連の基準に全面的に一致させるよう促す。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 18歳未満の子どもに対し、フドゥード法上の犯罪についての刑罰を適用しないこと。
  • (b) 刑事責任年齢を国際的に受け入れられる水準にまで引き上げること。
  • (c) 少年司法法を、その規定が条約の規定および原則ならびに少年司法の運営(刑事手続における子どもの審理を含む)に関する他の国際的基準を全面的に遵守したものとなることを確保しながら、これ以上遅滞することなく採択すること。
  • (d) 犯罪に対する刑罰としての鞭打ちを廃止すること。
  • (e) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、調停、カウンセリングまたは地域奉仕のような拘禁に代わる措置を促進するとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間で用いられること、および、拘禁がその取消しを目的として定期的に再審査されることを確保すること。
  • (f) 拘禁が避けられない場合、子どもが成人とともに拘禁されないこと、および、拘禁環境が国際基準(教育および保健サービスへのアクセスに関するものを含む)を遵守したものとなることを確保すること。この目的のため、委員会は、締約国が、少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成機関(国際連合薬物犯罪事務所、ユニセフ、OHCHRおよびNGOを含む)によって開発された技術的援助ツールを活用するとともに、同パネルの構成機関に対し、少年司法の分野における技術的援助を求めるよう勧告する。
  • (g) 十分な人的資源、技術的資源および財源を備えた少年裁判所専用の施設および手続を締約国全域で速やかに確立し、子どもに関する専門の裁判官を指定し、かつ、このような専門の裁判官が適切な教育および研修を受けることを確保すること。
子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ
70.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見(2009年1月30日、CRC/C/OPSC/MDV/CO/1)の実施に関する情報がないことを遺憾に思う。委員会は、貧困および農村出身の背景を有する多くの子どもが児童買売春ならびに児童ポルノの製造および配布に従事しているという報告があることをとりわけ懸念するものである。
71.委員会は、締約国に対し、買売春およびポルノのために子どもを使用することを(たとえ加害者と被害者がシャリーア法に基づく婚姻関係にあっても)犯罪化し、たとえ威迫が行なわなれなくとも子どもの性的人身取引を犯罪化し、かつ、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもがシャリーア法に基づく告発(ジナ〔婚外性行為等〕の罪による告発を含む)に直面させられないことを確保する等の手段により、刑法を選択議定書第2条および第3条に全面的に一致させるよう促す。
武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ
72.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく締約国の第1回報告書についての総括所見(2009年1月30日、CRC/C/OPAC/MDV/CO/1)の実施に関する情報がないことを遺憾に思う。複数の夫婦および家族全員が締約国からイラク・レバントのイスラム国(ISIL)の支配領域に渡航したとされている旨の情報に照らし、委員会は、締約国が、急進主義化および狂信的犯罪集団への勧誘を防止するための措置をとっていないことを懸念するものである。
73.委員会は、締約国に対し、子どもを徴募することおよび敵対行為に関与させることに関わる選択議定書の規定の違反を犯罪化するとともに、いっそうの過激主義化、急進主義化および「ジハード」集団への勧誘の問題の高まりに対処するための戦略を策定するよう、促す。

J.通報手続に関する選択議定書の批准

74.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する選択議定書を批准するよう勧告する。

K.国際人権文書の批准

75.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書および障害のある人の権利に関する条約の選択議定書、ならびに、死刑の廃止を目的とする市民的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書を批准するよう勧告する。

IV.実施および報告

A.フォローアップおよび普及

76.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第4回・第5回統合定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。

B.次回報告書

77.委員会は、締約国に対し、第6回・第7回統合定期報告書を2021年9月12日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。
78.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2017年3月24日)。