総括所見:シリア(第3~4回・2011年)


CRC/C/SYR/CO/3-4(2012年2月8日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2011年9月22日に開かれた第1646回および第1647回会合(CRC/C/SR.1646 and 1647参照)においてシリア・アラブ共和国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/SYR/3-4)を検討し、2011年10月7日に開かれた第1668回会合において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、締約国における子どもの状況についての理解の向上を可能とする、第3回・第4回統合定期報告書ならびに事前質問事項(CRC/C/SYR/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答および締約国報告書に関する追加情報(CRC/C/SYR/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、同国で最近起きた事件にも関わらず予定通りに報告書を発表するために締約国が行なった努力を評価するものである。委員会はまた、ハイレベルなかつ部門横断型の締約国代表団との間にもたれた、建設的かつ双方向的な対話も評価する。

II.締約国によるフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、以下の法令が採択されたことに留意する。
  • (a) 非常事態を解除する2011年4月21日の立法令第161号。
  • (b) シリア憲法および国際条約で保障された人権および基本的自由としての平和的デモ行進の組織に関する、2011年4月21日の立法令第54号。
  • (c) シリア国民たるクルド人の地位について定める2011年4月7日の立法令第49号。
  • (d) 強姦犯が被害者と婚姻したときはいかなる刑も免除すると定めていた刑法第508条を改正する、2011年1月3日の立法令第1号。
  • (e) 人身取引の禁止に関する2010年1月の立法令第3号。
  • (f) 民間部門における労働関係について定める2010年の法律第17号。
  • (g) 名誉犯罪を行なった者の刑の免除規定を削除する、2009年7月1日の立法令第37号。
  • (h) 締約国が条約第20条および第21条に付した留保を撤回する、2007年2月の立法令第12号。
  • (i) 特別なニーズを有する人に関する2004年7月の法律第34号。
4.委員会はまた、締約国が以下の国際人権条約を批准したことも歓迎する。
  • (a) 障害のある人の権利に関する条約(2009年)およびその選択議定書(2009年)。
  • (b) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2009年)。
  • (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2009年)。
  • (d) 傭兵の募集、使用、資金供与および訓練を禁止する条約(2008年)。
5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。
  • (a) 国家子ども保護計画(2005~2007年)。
  • (b) 2004年6月2日の首相令第2896号による国際人道法国家委員会の創設。
  • (c) 法律第42/2003号によるシリア家族問題委員会の創設。

III.条約の実施を阻害する要因および困難

6.委員会は、締約国で2011年3月以降に生じ――そしていまなお生じ続け――、かつシリアの人民、とくに子どもたちに影響を与えている特異な事件が、条約で定められた、子どもが有するすべての権利の実施を妨げる主要な要因であるとの見解に立つものである。これとの関連で、委員会は、2011年3月の反乱開始以来行なわれてきた子どもの権利の重大な侵害(恣意的な逮捕および拘禁、デモの際の子どもの殺害、拷問ならびに不当な取扱いを含む)に関する、信頼でき、裏づけがありかつ一貫した報告をめぐって、最大限の懸念を表明する。委員会は、締約国に対し、国際人権法上の義務は継続していること、および、条約上の権利はいかなるときにもすべての子どもに適用されることを想起するよう、求めるものである。委員会はまた、締約国に対し、締約国は自国の住民を保護する第一次的責任を負っており、したがって、民間人に対する過度のおよび致死的な力の行使を停止し、かつ子どもに対するさらなる暴力(殺傷を含む)を防止するための即時的措置をとるべきであることを想起するようにも求める。
7.委員会は、占領下にあって子どもの権利が侵害されているシリア領ゴラン高原においてシリア人の子どもの権利を確保する際の困難に関する、締約国の重大な懸念を共有する。

IV.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告
8.委員会は、締約国の第2回定期報告書に関する委員会の総括所見(CRC/C/15/Add.212)を実施するために締約国が行なった努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、委員会の懸念表明および勧告に、不十分にしかまたはまったく対応されていないものがあることを遺憾に思うものである。
9.委員会は、締約国に対し、第2回報告書に関する総括所見の勧告のうちまだ実施されていないものまたは十分に実施されていないもの、とくに、留保、立法、データ収集、市民社会との協力、差別の禁止、婚姻に関する法定最低年齢、ドメスティックバイオレンスおよび少年司法に関わる勧告に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、この総括所見に掲げられた勧告を十分にフォローアップすることも促すものである。
留保
10.締約国が条約第20条および第21条に付した留保を撤回する根拠となる2007年2月の〔立法〕令第12号の採択は称賛しながらも、委員会は、締約国が、条約に対する一般的留保および第14条に対する留保を維持していることに、懸念とともに留意する。これらの留保は、条約の趣旨および目的と両立しない。
11.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.212、パラ8)を繰り返し、締約国に対し、条約に対する一般的留保および条約第14条に対する留保の撤回を検討するよう奨励する。
立法
12.子どもの権利法案に条約のすべての規定が統合される旨の締約国の説明には積極的側面として留意しながらも、委員会は、同法案が2006年以来採択待ちの状態であることに懸念を表明する。委員会はまた、法源が異なる法律、とくに制定法、慣習法および身分関係法が適用されていることにより、自国の法律を条約の原則および規定と調和させようとする締約国の努力が損なわれる可能性があることについての懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ9)も、あらためて表明するものである。委員会は、条約のすべての原則および規定がまだ国内法に編入されておらず、かつ、条約に反する法律、とくに女子および婚外子を差別する法律が依然として効力を有しているという、さらなる懸念を表明する。
13.委員会は、締約国に対し、子どもの権利法案を速やかに法律として成立させるとともに、当該法案が、条約のすべての原則および規定を編入し、かつ締約国の領域で暮らしているすべての子どもに適用されることを確保するよう、促す。委員会はまた、締約国に対し、現行国内法の枠組み(慣習法または身分関係法を含む)が条約と一致することを確保することも促すものである。この目的のため、委員会は、子ども法案が成立した際には条約と一致しないすべての法律より優位に立つものとされること、および、とくに女子および婚外子の権利に影響を与えている差別的規定が廃止されるべきことを勧告する。
調整
14.委員会は、条約の実施を調整する公的機関として2003年にシリア家族問題委員会が設置されたことを歓迎するとともに、設置以降、同委員会が実施してきた多数の研究および活動を称賛する。しかしながら委員会は、同委員会の権限および省庁および政府機関との関係について定めた明確な規定がないことを懸念するものである。委員会はまた、シリア家族問題委員会が他の14県にいかなる支所も有していないことも懸念する。
15.委員会は、締約国が、諸部門間および諸県間の調整を担当する上級機関としてのシリア家族問題委員会の権限をいっそう明確に定めることにより、同委員会を強化するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、すべての県にシリア家族問題委員会の支所を設置するとともに、同委員会に対し、調整、監視および評価の役割を履行するための十分な人的資源、財源および技術的資源を提供するよう、勧告するものである。
国家的行動計画
16.委員会は、国家子ども保護計画(2005~2007年)以後、条約に関する包括的な実施戦略が2007年以来存在しないことを懸念する。委員会はまた、2005~2007年の計画の主要な活動の一部(国レベルで家族保護部局を設置することならびに子ども保護シェルターおよび子どもヘルプラインを創設することなど)がまだ実行されていないことも懸念するものである。
17.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的な政策および戦略を策定しかつ実施するとともに、子どもに関する関連の国家的行動計画、または、条約のあらゆる側面を網羅した、子どもの権利の実施のためのその他の同様の枠組みを採択するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、国家子ども保護計画(2005~2007年)のうち未実施のままとなっている行動を完了させ、かつ家族保護部局、子ども保護シェルターおよび子どもヘルプラインを設置するためにあらゆる必要な措置をとるよう、奨励するものである。
独立の監視
18.委員会は、条約上の権利の充足における進展を恒常的に監視することを任務とし、かつ子どもからの苦情を受理しおよびこれに対応する権限を与えられた独立の機構の設置に向けた重要な進展が見られないことについての懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ15)をあらためて表明する。
19.委員会は、子どもの権利の促進および保護における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に照らし、締約国に対して、子ども担当部局を備えた国内人権機関の一部として、またはより望ましい形としては別個の機構(たとえば子どもオンブズパーソン)として、条約上の権利の充足を監視することおよび自己の権利の侵害に関する子どもの苦情に子どもにやさしくかつ迅速なやり方で対応することを目的とした、適正な資源を与えられ、かつ領域全体で活動することのできる独立の機構を設置するよう、促す。
資源配分
20.委員会は、社会部門への資源配分の水準が低いこと、子どもに対する配分額についてほとんど情報が提供されなかったこと、および、資源の配分および効果を子どもの権利の視点から監視する能力が欠如していることを、依然として懸念する。委員会はまた、汚職を禁ずる立法規定および2010年に実施された全国的な汚職反対キャンペーンにも関わらず、汚職が締約国で依然として蔓延しており、かつ子どもの権利の実施の増進につながりうる資源が流用され続けていることも懸念するものである。
21.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 予算全体における子どものための資源の配分および使用の追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門における投資が子どもの最善の利益にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。
  • (b) 予算上のニーズに関する包括的評価を実施し、かつ、子どもの権利に関わる指標の格差に漸進的に対処する分野への明確な配分額を定めること。
  • (c) 条約第4条にしたがい、子どもの権利の実施のために十分な予算資源を配分するとともに、とくに社会部門に配分される予算を増額すること。
  • (d) 積極的な社会的措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(とくに2011年3月以降の動乱の被害者)に関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。
  • (e) 汚職と闘い、ならびに汚職を効果的に摘発し、捜査しおよび訴追する制度的能力を強化するための即時的措置をとること。
  • (f) 「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年を受けた委員会の勧告を考慮すること。
データ収集
22.委員会は、シリア家族問題委員会との協力のもと、中央統計局が2008年に子どもデータ部を創設したことに留意する。しかしながら委員会は、このデータ収集システムが全面的に稼働しているわけではなく、かつ、子どもに関する、信頼できかつ時宜を得た統計データが締約国で利用可能とされていないことを遺憾に思うものである。このことは、首尾一貫し、かつ証拠に基づいた子ども政策の策定に悪影響を及ぼす。
23.委員会は、締約国に対し、子どもデータ部が全面的に稼働し、かつ、子どもの権利の実現に関して達成された進展の分析を促進することおよび条約実施のための政策およびプログラムの立案に役立てることを目的とした、条約の全領域に関するデータ(とくに年齢別、性別、民族別、地理的所在別および社会経済的背景別に細分化されたもの)を収集することを確保するため、必要な措置をとるよう促す。締約国は、収集される情報に、脆弱な状況に置かれた子ども(女子、障害のある子ども、貧困下にある子どもおよび路上の状況にある子どもを含む)に関する最新のデータが含まれることを確保するべきである。委員会はさらに、締約国に対し、国のあらゆるデータベースに登録された子どものプライバシーを保護するための政策を策定しかつ実施するよう、促す。
普及および意識啓発
24.委員会は、条約を普及し、かつすべての段階の学校カリキュラムに条約の原則および規定を漸進的に含めるために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに子どもとともにおよび子どものために働く専門家、メディア、親ならびに子どもたち自身の間で、条約に関する知識が依然として限られていることを懸念するものである。
25.委員会は、締約国が、公衆一般ならびにとくに子どもとともにおよび子どものために働く専門家、メディアならびに子どもたち自身の間で組織的に条約を普及しかつ促進するための努力を強化するよう、勧告する。
研修
26.子どもとともにおよび子どものために働く一部職種の専門家を対象として研修が行なわれていることおよび子どもの保護に関する高等教育学位が大学から付与されていることには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、このような養成教育および研修が依然として不十分であり、かつ、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家ならびに法執行機関、ならびに、条約に関する意識が限られたままである軍隊および治安部隊ならびにジャーナリストが対象とされていないことを、懸念する。
27.委員会は、締約国が、条約の原則および規定に基づいた教育および研修プログラムの質を向上させるための努力を強化するよう、勧告する。このような取り組みは、裁判官、弁護士、法執行官、軍隊および治安部隊、ジャーナリスト、公務員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教員、保健ケア従事者(心理学者を含む)ならびにソーシャルワーカーなど、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団を対象として行なわれるべきである。委員会は、締約国に対し、とくに国連人権高等弁務官事務所および国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めるよう、奨励する。
市民社会との協力
28.委員会は、締約国が、とくに人権団体(子どもの権利について監視している団体を含む)の登録および認可を拒否することにより、その活動を引き続き制限していることに深い懸念を表明する。委員会は、人権活動を行なっている非政府組織の構成員が一貫して脅迫、いやがらせ、身体的攻撃および逮捕の対象とされていること、および、2011年3月の抗議行動勃発以降、多くの人権擁護者が拘禁されまたは失踪していることを、とりわけ懸念するものである。
29.委員会は、締約国に対し、正当かつ平和的な人権擁護活動との関連で拘禁されているすべての人を即時釈放し、かつ、どのような状況に置かれているのか不明なままのすべての人権擁護者の所在を確認するよう、強く促す。委員会はまた、締約国に対し、人権擁護者(子どもの権利侵害を報告して締約国による適切な行動を求める人々を含む)およびその活動を促進しおよび正当に認知し、ならびに、非政府組織(NGO)が民主的社会の諸原則に一致する方法で安全にその役割を果たせることを確保するための具体的措置をとることも、促すものである。

B.子どもの定義(条約第1条)

30.委員会は、1957年身分関係法で定められた、男子の最低婚姻年齢(18歳)と女子のそれ(17歳)との格差に関する懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ23)をあらためて表明する。委員会はまた、身分関係法がさらに低い年齢の婚姻さえ認めていることも、深刻に懸念する。同法は、当事者である子どもが婚姻について前向きであり、「身体的に成熟」しており、かつ父または祖父の同意があるときは、裁判官に対し、男子の婚姻年齢を15歳まで、かつ女子の婚姻年齢を13歳まで、引き下げることを認めているためである。
31.委員会は、締約国に対し、女子の最低婚姻年齢を男子のそれまで引き上げて18歳とすることによって男女間の最低婚姻年齢の格差を是正するとともに、早期婚を容認する身分関係法の規定を廃止するよう、促す。

C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
32.委員会は、締約国において女子に対する法的および社会的差別が根強く残っていることに懸念を表明する。とくに委員会は、女子の相続権に関わる規定など、身分関係諸法に掲げられた差別的規定について懸念を覚えるものである。委員会はまた、差別的な態度およびジェンダー役割の定型的固定化を変革するために締約国がとってきた措置が不十分であることも懸念する。
33.委員会はまた、クルド人の子ども(とくに女子)、遠隔地に住んでいる子ども、施設養護を受けている子ども、婚外子および路上の状況にある子どもの差別についても懸念を表明する。
34.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 女子を差別する法規定を廃止するとともに、女性差別撤廃委員会の勧告(CEDAW/C/SYR/CO/1、パラ28および34)にしたがってジェンダー役割の定型的固定化と闘うための公衆教育プログラム(オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)を通じ、社会的差別を撤廃するためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 婚外子を差別するすべての法規定を改正すること。
  • (c) 差別にさらされている子ども(とくに不利な立場に置かれた前掲集団に属する子ども)の状況を注意深く監視するとともに、この監視の結果に基づき、これらの子どもに対するあらゆる形態の差別の撤廃を目的とする、具体的かつ対象の明確な措置(差別是正のための積極的社会措置を含む)を掲げた包括的な戦略を策定すること。
子どもの最善の利益
35.委員会は、子どもの最善の利益の一般原則が、子どもに関わるすべての法律に編入されているわけではなく、したがって立法上、行政上および司法上のすべての手続または子どもに関わる政策およびプログラムにおいて適用されているわけではない旨の懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ28)をあらためて表明する。
36.委員会は、締約国に対し、すべての立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関連しかつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、子どもの最善の利益の原則が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう促す。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由も、この原則に基づくものであるべきである。
生命、生存および発達に対する権利
37.委員会は、同国で2011年3月に始まった抗議行動との関係で100名以上の子どもが殺害され、これよりもさらに多くの子どもが怪我をし、かつ、これらの子どもの死亡については締約国が(軍隊を通じて)直接かつもっぱら責任を負っている旨の、信頼でき、裏づけがありかつ一貫した情報について、最大限の懸念を表明する。委員会はまた、拷問の結果として拘禁中に死亡した子どもの事案が多数報告されていることも、深く懸念するものである。委員会は、抗議行動開始以降に行なわれた人権侵害を調査するため、検事総長を委員長とする特別司法委員会が設置されたことに留意する。しかしながら委員会は、この司法委員会がその任務を客観的に、公正にかつ透明なやり方で遂行するために必要な独立性を欠いていること、および、その調査結果がまだ公表されていないことに、懸念を表明するものである。
38.委員会は、締約国に対し、子どもの殺傷を防止するためのあらゆる必要な措置(軍隊および治安部隊に対する明確な命令を含む)を最優先課題としてとるよう、強く促す。委員会はまた、人権高等弁務官および事務総長の見解と軌を一にして、2011年3月以降行なわれた人権侵害に関する速やかな、独立した、効果的かつ透明な調査を求めるものである。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、人権理事会が2011年8月22日の決議S-17/1によって設置した国際調査委員会に全面的に協力し、かつ無制限のアクセス権を同委員会に対して与えるよう、促す。
子どもの意見の尊重
39.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利を実施するためにさまざまな取り組みが行なわれていること、ならびに、とくに、締約国報告書の起草過程に子どもが包摂されたことおよびデリゾール県でパイロット事業として子ども議会が設置されたことを、歓迎する。しかしながら委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、とくに家庭および学校において子どもの意見の尊重が引き続き制約されており、かつ、子どもが自己に影響を与える司法上および行政上の手続において意見を聴かれることを確保するために締約国がとった措置が不十分であるという懸念(CRC/C/15/Add.212、パラ30)を、あらためて表明するものである。
40.一般的意見12号(2009年)に照らし、委員会は、締約国に対し、意見を聴かれる子どもの権利を全面的に実施するために適当な措置をとる自国の義務を想起するよう求める。委員会は、司法上および行政上のあらゆる手続においてこの権利が尊重されおよび実施することを確保し、ならびに、意見を聴かれる子どもの権利の価値に関する理解を子どもが出席するすべての施設および社会のあらゆるレベル(とくに家庭、コミュニティおよび学校のレベル)で増進する目的で、締約国が、おとなおよび子どもを対象とする意識啓発活動および研修を含む効果的措置をとるよう、勧告するものである。

D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a))

国籍
41.委員会は、シリア国民たるクルド人の地位について定める2011年4月7日の立法令第49号を歓迎する。しかしながら委員会は、この立法令の利益を得られるのは「外国人」(アジャーニブ)として登録されているクルド人のみであり、「マクトゥーミーン」として知られる無国籍のクルド人は利益を得られない可能性があることを懸念するものである。委員会はまた、外国人と婚姻したシリア人の子に対してシリア国籍の取得権を否定するシリア国籍法(1969年法律第276号)第3条の改正がいまなお議会による承認待ちの状態であることも、懸念する。
42.委員会は、締約国には、条約第2条および第7条にしたがい、締約国の領域内にあるすべての子どもが、子どもまたはその親もしくは法定保護者の性別、人種、宗教または民族、社会的出身もしくは地位に関わらず登録されかつ国籍を取得する権利を有することを確保する責任があることを、想起する。したがって委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) シリアで出生したクルド人親のすべての子(マクトゥーミーンとして知られる無国籍のクルド人の子どもを含む)が速やかにシリア国籍を取得し、かつその権利を差別なく享受することを保障するため、即時的措置をとること。
  • (b) 外国人と婚姻したシリア人母の子が母の国籍を取得できるようにするため、国籍法の改正を進めること。
  • (c) 無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)を批准すること。
出生登録
43.委員会は、すべての子どもが出生時に登録されることを確保するために締約国が行なった努力、とくに出生登録を義務化した2007年の身分関係法(1957年法律第376号)改正に、積極的側面として留意する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 身分関係法によれば、イスラム教徒の女性とイスラム教徒ではない男性との婚姻は効力を有しないものとされ、したがってこのような婚姻関係のもとで生まれた子の認知および登録が常に行なわれるわけではないこと。
  • (b) 婚外子は父との関係を確立することができず、このような状況が子の遺棄およびその後の施設措置にしばしばつながっていること。
  • (c) 強姦もしくは近親婚によって生まれた子または婚外子を登録したいと希望する母親は、子の懐胎の事情に関する調査を開始するため、警察による報告書を申請しなければならないとされていること。
  • (d) 遠隔地で生まれた子どもの出生登録に関して依然として問題が生じていること。
44.委員会は、締約国に対し、締約国で生まれたすべての子どもの効果的登録を、その出身に関わりなく、かついかなる差別もなく確保するための努力を強化するよう、促す。この目的のため、委員会は、締約国に対し、身分関係法を改正し、宗教等が異なる夫婦間のすべての婚姻を全面的に承認し、かつ、婚外子および遠隔地の子どもの保護および適正な登録を目的としたあらゆる必要な措置をとるよう、促すものである。
思想、良心および宗教の自由
45.委員会は、締約国が、ウィーン宣言および行動計画にしたがい、かつ自由権規約委員会の一般的意見22号(1993年)を考慮し、条約第14条に関する留保を撤回の方向で、かつ子どもの思想、良心および宗教の自由のあらゆる形態の侵害を撤廃する目的で精査するべきである旨の勧告(CRC/C/15/Add.212、パラ8)を、あらためて繰り返す。
表現ならびに結社および平和的集会の自由
46.委員会は、表現の自由ならびに結社及び平和的集会の自由に対する子どもの権利が実際には尊重されていないこと、および、締約国が、デモ中の子どもの保護を親に依拠していることに懸念を表明する。委員会は、南部の街であるダルアで、校舎の壁にペンキで反政府的な落書きを行なったとして罪に問われた8~15歳の児童生徒の集団が2011年3月に逮捕されかつ隔離拘禁の対象とされたことを、とりわけ懸念するものである。
47.委員会は、締約国に対し、条約第13条および第15条にしたがい、表現ならびに結社および平和的集会に対する自由の、すべての者(親、教員および治安部隊を含む)による全面的かつ効果的実施を確保するために、あらゆる必要な措置をとるよう促す。
適切な情報へのアクセス
48.委員会は、子どもが利用可能な書籍および新聞の欠乏により、適切な情報への子どもによるアクセスがしばしば制約されていることに懸念を表明する。メディアおよびインターネットを通じて伝えられる、暴力およびポルノグラフィー関連の有害な情報にさらされることから子どもを保護するために締約国が行なっている努力には積極的側面として留意しながらも、委員会は、メディアならびに文学作品および芸術作品に対して行なわれている政府の検閲が、適切な情報にアクセスする子どもの権利の制限を助長していることを懸念するものである。
49.委員会は、締約国が、とくに新聞、図書館、ラジオおよびテレビへのアクセスを増強することによって子どもの情報へのアクセスを向上させ、かつ子どもが有害な情報から保護されることを確保するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもが、国境に関わりなく、口頭、手書きもしくは印刷、芸術の形態または子どもが選択する他のあらゆる方法により、あらゆる種類の情報および考えを求め、受けかつ伝える権利を有することを確保するようにも促すものである。
拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰
50.委員会は、抗議行動に関連して拘禁されている際に受けた拷問および四肢切断の結果、多くの子どもが死亡したと報告されていることに、深い懸念を表明する。委員会はまた、子どもがいまなお拘禁され、かつ拷問の危険にさらされていると報告されていることも懸念するものである。委員会は、司法の独立の欠如に関して拷問禁止委員会が表明した懸念(CAT/C/SYR/CO/1、パラ12)を共有するとともに、職務中に行なわれた人権侵害について責任を有する治安機関および情報機関を訴追から免除する立法令第14/1969号および第69/2008号が、やはり独立の調査を阻害し、かつ子どもの拘禁および拷問を継続させる助長要因となる可能性があることに、懸念とともに留意する。
51.委員会はまた、一部の学校が締約国の保安隊によって拘禁施設として使われているという一貫した報告があることにも、重大な懸念を表明する。
52.委員会は、締約国に対し、抗議行動に関連して2011年3月以降に恣意的な逮捕および拘禁の対象とされたすべての子どもを即時にかつ無条件で釈放し、学校を拘禁施設として用いるのをやめ、かつ、人道法および区別の原則の遵守を厳格に確保するよう、強く促す。委員会はまた、締約国に対し、立法令第14/1969号および第69/2008号を廃止し、子どもの恣意的拘禁および拷問の事案を透明、客観的かつ公正なやり方で調査し、かつ、これらの人権侵害の責任者を裁判にかけることも、促すものである。委員会はまた、締約国に対し、拷問の被害を受けた子どもに対してケア、心理社会的回復、再統合および補償のための対応を行なうことも促す。
体罰
53.学校における身体的暴力および言葉の暴力の使用を禁じた教育省通達は歓迎しながらも、委員会は、教員および親による体罰が、刑法および身分関係法第170条によって明示的に認められており、かつ家庭、学校および代替的養護の現場で広く用いられていることを、依然として懸念する。委員会はまた、代替的養護の現場および刑事施設における懲戒措置としての体罰が明示的に禁じられていないことも、懸念するものである。
54.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)に照らし、委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.212、パラ37)を想起するとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 体罰を認めている身分関係法第170条および刑法の諸規定を廃止すること。
  • (b) 家庭、学校および代替的養護の現場ならびに刑事施設における体罰を、法律により、かつこれ以上遅延することなく、明解に禁止すること。
  • (c) 体罰を禁ずる法律が効果的に実施され、かつ、子どもの不当な取扱いに責任を負う者に対し、法的手続が組織的に開始されることを確保すること。
  • (d) 体罰に対する一般的態度を変革する目的で、この慣行の有害な影響(身体的および心理的影響の双方)に関する持続的な公衆教育キャンペーン、意識啓発キャンペーンおよび社会的動員キャンペーンを、子ども、家族、コミュニティおよび宗教的指導者の関与を得ながら導入するとともに、体罰に代わる手段として積極的な、非暴力的なかつ参加型の子育ておよび規律を促進すること。
  • (e) 暴力および他の形態の虐待に対する防止戦略の立案および実施において、子どもたちを含む社会全体の関与および参加を確保すること。

E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

家庭環境
55.委員会は、子どもの権利法案が採択されれば男女の子どもの監護年齢が18歳に定められる旨の、締約国の説明を歓迎する。しかしながら委員会は、2003年に改正された身分関係法にしたがい、離婚の際に母が監護権を保持できるのは、息子について13歳までかつ娘について15歳までにすぎないことを懸念するものである。委員会はまた、妻には扶養と引き換えに夫にしたがう義務があること、および、子を連れて国外に渡航したいと考える母は、子の父、または父がいない場合には子の父方の親族の承認を求めなければならないことも、懸念する。
56.委員会は、締約国に対し、母および父が子について平等を基礎とする責任を共有すること、および、女子に対する責任と男子に対する責任との間になんらの差異もないことを確保するために必要なあらゆる措置をとるよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、身分関係法の規定を改正して、女性が子の父または子の父方の親族の事前の承認を得ることなく子を連れて国外に移動する自由を認めるよう、促すものである。
家庭環境を奪われた子ども
57.委員会は、現在進められている、代替的養護のためのサービスおよび施設に関する評価を歓迎する。しかしながら委員会は、コミュニティを基盤とする選択肢が依然として著しく限られており、したがって施設措置が頻繁に活用されていることに、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、代替的養護施設が十分な訓練を受けた職員を欠いており、かつ労働社会問題省による監視も不十分であることも懸念する。さらに委員会は、親のわかっている孤児と親のわからない孤児が別々の養護施設に隔離されていること、および、孤児院に措置された子どもが養育懈怠、隔離その他の形態の不当な取扱いを受けている事案があることを、深刻に懸念するものである。
58.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに農村部において、コミュニティを基盤とする代替的養護を発展させること。
  • (b) すべての代替的養護施設が登録され、かつ独立機関により監視されることを確保すること。
  • (c) 代替的養護の現場で働くすべての職員が十分な訓練を受けることを確保すること。
  • (d) 親のわかっている孤児と親のわからない孤児が別々の養護施設に隔離される状態を解消すること。
  • (e) 代替的養護施設への子どもの措置を定期的に再審査し、かつ子どもを自己の措置の再審査に全面的に参加させること。
  • (f) 施設措置された子どもが虐待または不当な取扱いを受けたすべての事案を調査すること。
  • (g) 婚外子の遺棄およびその後の施設措置を防止するため、婚外子に適用される法律を見直すこと。
  • (h) 子どもの代替的養護に関する指針(2009年12月18日の総会決議64/142付属文書)を考慮すること。
子どもに対する暴力(虐待およびネグレクトを含む)
59.締約国がドメスティックバイオレンスに関する全国的監視機関および家族保護部を設置しようとしていることには留意しながらも、委員会は、国内法にいまなおドメスティックバイオレンスを犯罪とする具体的規定が設けられていないこと、および、家庭内で広く行なわれている虐待およびネグレクトと闘うための具体的措置が限定的であることを、懸念する。
60.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する一般的意見13号(2011年)に照らし、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) ヨーロッパ・中央アジア地域協議(リュブリャナ(スロベニア)、2005年7月5~7日)の成果および勧告を考慮し、ジェンダーに特段の注意を払いながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)の実施を確保する等の手段により、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むこと。
  • (b) 同研究の勧告、とくに子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表が強調した以下の勧告を締約国がどのように実施しているかに関する情報を、次回の定期報告書で提供すること。
    • (i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を各国で策定すること。
    • (ii) あらゆる場面における、子どもに対するあらゆる形態の暴力の明示的な法的禁止(ドメスティックバイオレンスの明示的禁止を含む)を、国レベルで導入すること。
    • (iii) データを収集し、分析しかつ普及するための全国的システムおよび子どもに対する暴力に関する調査研究事項を強化すること。

F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項))

障害のある子ども
61.委員会は、特別なニーズを有する人に関する法律第34号(2004年)の公布、障害と闘うための国家計画(2008年)の採択、および、障害のある子どもの状況を向上させるために行なわれた多数の取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、障害のある子どものケアおよびリハビリテーションのためのサービスを提供しているのが主として市民社会組織であること、および、障害のある子どものためのプログラムおよび計画に対して締約国が配分している資源が不十分であることを、懸念するものである。
62.障害のある子どもの権利に関する一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、締約国に対し、障害のある子どもが条約上のすべての権利を享受することを確保するとともに、この目的のため、障害のある子どものためのプログラムおよび計画を全面的かつ効果的に実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、促す。委員会は、締約国が、いインクルーシブ教育の質の向上をとくに重視するとともに、非公式な教育プログラム、および、さまざまな障害種別に応じた包括的かつ定期的な教員研修をさらに発展させるよう、勧告するものである。
健康および保健サービス
63.委員会は、乳幼児死亡率および妊産婦死亡率の削減における締約国の目覚ましい成果、および、母子保健ケア・サービスにすべての人がアクセスできるようにするために締約国が行なっている継続的努力を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことについて懸念を表明するものである。
  • (a) 保健サービスへのアクセスに関していまなお地理的格差が存在し、子どもの居住地域によってその健康状態に相当の偏差が生じていて、遠隔地に住んでいる子どもがとくに不利な立場に置かれていること。
  • (b) 国民総生産に占める保健支出の割合が3.2%を超えておらず、かつ保健に投じられるひとりあたり総支出が減少していること。
  • (c) 子ども専門病院の数が不十分であること。
  • (d) 重度の発育阻害状態にある子どもの割合が高いこと。
  • (e) 母乳育児率がきわめて低い水準にあること。
64.委員会は、締約国が、以下のことを目的とする努力を強化するよう勧告する。
  • (a) 遠隔地に住んでいる子どもを含むすべての子どもが良質な保健サービスに平等にアクセスできることを確保する目的で、とくにプライマリーヘルスケアを重視しながら、保健部門に配分される財源および人的資源を増加させること。
  • (b) 子ども専門のサービスを提供する病院を増設すること。
  • (c) 栄養に関わる教育および相談サービスの質を向上させるとともに、優先的介入の対象となる特定の地域、地区および子ども集団を決定すること。
  • (d) 国家的な母乳育児委員会を設置し、かつ母乳育児の実践に関するデータを体系的に収集するとともに、同時に、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」が執行され、赤ちゃんにやさしい病院が推進され、かつ看護師の養成および研修に母乳育児が含まれることを確保すること。
  • (e) 引き続き、ユニセフおよび世界保健機関(WHO)の技術的協力を求めること。
思春期の健康
65.委員会は、青少年の健康状態を向上させるために締約国が行なっている取り組み(とくに、青少年とともに働く保健従事者を対象として保健省が行なっている研修プログラム、および、デリズールにおける思春期保健センターの設立)を歓迎する。しかしながら委員会は、若者にやさしいリプロダクティブヘルス・サービスの利用可能性が限定されており、かつ、リプロダクティブヘルス、HIV/AIDSを含む性感染症ならびにタバコ、アルコールおよび薬物を消費することによる健康上の影響に関する青少年の知識が不十分であること、および、締約国における青少年の状況に関する情報および統計データが欠乏していることを、懸念するものである。
66.委員会は、締約国に対し、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を参照するよう求めるとともに、秘密が守られ、かつ若者にやさしい保健サービスの利用可能性を国全域で高め、リプロダクティブヘルス・サービスの利用可能性を増進させ、かつ、思春期の女子および男子を対象とした性教育およびリプロダクティブヘルス教育を促進するよう、促す。委員会はさらに、締約国に対し、青少年の薬物濫用、アルコール依存症およびタバコの使用を防止するための努力を強化するよう、求めるものである。
有害慣行
67.委員会は、2009年7月1日の立法令第37号により、女性および女子に対して名誉犯罪を行なった者の刑の免除規定が削除されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、早期婚および強制婚が多数行なわれており、かつこの現象を抑制するための適切な措置がとられていないことを懸念するものである。
68.委員会は、締約国に対し、以下のことを目的とする即時的措置をとるよう促す。
  • (a) 名誉犯罪の加害者に対し、これらの犯罪の重大性にふさわしい制裁が与えられることを確保すること。
  • (b) 早期婚および強制婚を禁止するとともに、裁判官に対し、男子の婚姻年齢を15歳まで、かつ女子の婚姻年齢を13歳まで引き下げることを認めた身分関係法の規定を廃止すること。
  • (c) 早期婚および強制婚の有害な影響に関するすべての関係者(コミュニティの指導者および宗教的指導者を含む)の感受性および識見を高めることにつながる意識啓発プログラムおよび教育プログラムを立ち上げ、かつ、ジェンダーに配慮した同様の指導用資料および教科書を開発すること。
  • (d) 早期婚および強制婚を解消するための具体的措置ならびに名誉犯罪の加害者に対して宣告された制裁についての包括的情報を、次回の定期報告書において提供すること。
生活水準
69.委員会は、もっとも不利な立場に置かれたおよび周縁化された家族を保護するために国家社会扶助基金が設置されたことには留意しながらも、貧困の構造的決定要因に対応するためのより持続的な戦略が採択されていないことを依然として懸念する。委員会はまた、天然資源の劣悪な管理および劣化により、農村部から都市部への絶え間ない移住が生じ、かつ、相当の経済成長率にも関わらず締約国における貧困発生率の増加が助長されてきたことも、懸念するものである。委員会は、生活水準の地域格差とともに、乾燥地帯および亜乾燥地帯に住んでいる子どもおよび家族、遊牧民の子ども、ならびに、劣悪な質の空気および汚染された飲料水にさらされているスラム居住の子どもの貧困状況について、特段の懸念を覚える。
70.委員会は、締約国に対し、もっとも不利な立場に置かれたおよび周縁化された子どもの状況ならびに子どもの生活水準の地域格差の縮減に引き続き焦点を当てながら、貧困および周縁化の構造的決定要因に対応するよう、奨励する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利を確保する目的で、天然資源(とくに水資源)の管理を向上させるために必要なあらゆる能力構築措置をとることも、促すものである。

G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
71.委員会は、就学、識字および初等教育におけるジェンダー格差解消の分野で多年にわたり達成されてきた相当の進展について、締約国を称賛する。委員会はまた、遠隔地で働く教員に対する奨励金、遠隔地および砂漠地帯の子どもにサービスを提供するための移動学校の導入、ならびに、難民である多数の子どもが教育にアクセスできるようにするための措置およびこれらの子どもを対象とした職業訓練も、歓迎するものである。しかしながら委員会は、以下のことを懸念する。
  • (a) 高校の中退率および留年率が高く、かつ、とくに早期婚および強制婚ならびに家事労働への女子の参加を理由として、女子のほうが男子よりもはるかに学校を中退する可能性が高いこと。
  • (b) 学校カリキュラムの質が低く、かつ子どもの生活および将来等との関連性も薄いこと。
  • (c) 無国籍であるクルド人の子どもが中等学校および大学への就学に際して困難に直面しており、かつ障害を有している場合にインクルーシブ教育を受けられないこと。
  • (d) 体罰および心理的暴力がいまなお子ども時代のしつけの手段とみなされており、かつ、教員および管理者が代替的形態のしつけおよび規律維持の手段の活用について十分な訓練を受けていないこと。
72.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに、女子に影響を与えている不平等および学校への資源の配分との関連で、教育へのアクセスおよび教育に対する権利の全面的享受に関わる諸県間および諸地区間の格差を縮減するための努力を強化すること。
  • (b) 教育の質を向上させるとともに、学校における留年および未修了を助長する要因に対応するための具体的措置をとることにより、子どもが学校教育を修了することを確保すること。
  • (c) 中退者、とくに女子および遠隔地の子どもを対象とする適当な職業教育またはセカンドチャンス教育の体制を向上させること。
  • (d) クルド人の子どもが、障害、ジェンダーその他のいかなる事由に基づく差別もなく、インクルーシブ教育を含む教育に対する権利を効果的に享受できることを確保すること。
  • (e) 学校における体罰を解消するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、適切な公衆教育および専門家の研修を通じ、積極的な、参加型のかつ非暴力的な形態の規律維持を確保すること。
  • (f) 学校で子どもにやさしいアプローチを発展させるとともに、子ども、親およびコミュニティによる、意思決定および学校運営への効果的参加を確保すること。

H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)および第32~36条)

庇護希望者および難民である子ども
73.委員会は、難民である子どもが子どもにやさしいセンター、プライマリーヘルスケアおよび教育にアクセスできることを確保するために行なわれている継続的努力について、締約国を称賛する。しかしながら委員会は、少なくとも7000名のパレスチナ難民(子どもを含む)が、治安部隊が2011年8月に行なったキャンプおよび周辺地域への激しい砲撃により、ラタキアのエルラメル地区に位置するキャンプから避難せざるを得ず、かつこれらの軍事作戦中に数名の難民が殺害された旨の、一貫したかつ裏づけのある報告について深い懸念を覚えるものである。
74.委員会はまた、庇護希望者および難民に関わる法律上および制度上の枠組みがいまなお設けられていないこと、および、難民である子どもおよびその家族が身分証明書類の入手に際して困難に遭遇しているために、場合により、これらの子どもおよびその家族が無国籍となりかつ(または)出身国に強制送還されていることも、懸念する。委員会は、加えて、難民である子どもが送還手続中に家族から分離された事案が報告されていることを懸念するものである。
75.委員会は、締約国に対し、難民キャンプ内外における軍事作戦を中止し、かつ人道機関が難民に全面的にアクセスできるようにするよう、強く促す。委員会はまた、締約国に対し、難民および庇護希望者のための国内法の採択手続を加速させることも促すものである。委員会は、締約国に対し、以下の措置をとることも促す。
  • (a) 難民である子どもおよびその家族が、その登録および身分証明書類の迅速な処理を保障されることを確保すること。
  • (b) 子どもまたはその家族構成員を国外追放その他の手段により出身国に強制送還することによって、外国人の子どもをその家族から分離しないようにすること。
  • (c) 1951年の難民の地位に関する条約および1967年の同議定書の批准を検討すること。
  • (d) 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)との協力を継続しかつ強化するとともに、子どもの庇護に関する2009年のUNHCR指針を参考にすること。
経済的搾取(児童労働を含む)
76.ディーセントワーク・パイロットプログラムおよびあらゆる形態の児童労働の撤廃のための国家的プログラムの存在には留意しながらも、委員会は、児童労働の現象がとくに農村部で増加していること、および、労働活動に従事するために学校を中退する子どもが増えていることに、深い懸念を表明する。委員会はまた、以下のことも懸念するものである。
  • (a) 児童労働の発生状況に関する情報および最新の、細分化されたかつジェンダー別の統計データが利用可能とされていないこと。このことは、この現象に対応する締約国の能力に影響を与えている。
  • (b) 使用人として子どもを採用することを禁じた法律があるにも関わらず、シリア人の女子ならびに東南アジアおよび東アフリカ出身の女子が、ときには奴隷類似の条件下で家事使用人として働いており、かつ性暴力を含むあらゆる形態の搾取にさらされていること。
  • (c) 15歳以上の子どもについては危険な労働を行なうことが認められていること。
  • (d) 法律を執行し、かつ労働法の尊重状況を効果的に監視する労働監察官の能力が弱いままであること。
  • (e) 家業および農業部門で働く子どもが労働法制による保護の対象とされておらず、そのため搾取および教育に対する権利の否定にさらされることが多いこと。
77.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 子どもの経済的搾取を防止するためにいっそう積極的な措置をとること。そのための手段として、とくに、児童労働の力学を理解し、かつ児童労働の根本的原因および危険に全国的に対応する勧告の裏づけとする目的で、信頼のできる有効なデータを収集すること。
  • (b) 家事労働者として働く子どもが置かれた状況に遅滞なく対応するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、これらの子どもを搾取しかつ虐待する者を訴追すること。
  • (c) あらゆる部門における労働搾取から子どもを十分に保護し、かつ子どもが危険な労働を行なうことが認められないことを確保する目的で、労働法を改正すること。
  • (d) フォーマル部門およびインフォーマル部門の双方における児童労働法の実施を効果的に監視する労働監察官の能力を強化すること。
  • (e) 児童労働を撤廃するためのあらゆる努力に、子どもたちおよび子ども団体代表を含めること。
  • (f) 家族の生存のために働かなければならない子どもに対し、教育の機会を提供すること。
  • (g) 公衆教育プログラム(オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)を通じて、児童労働の悪影響に関する意識啓発を図ること。
路上の状況にある子ども
78.委員会は、路上の状況にある多数の子どもが複合的形態の虐待および差別にさらされており、かつ、これらの子どもの状況に対応するための適当な、十分なかつ緊急の措置がとられていないことを、懸念する。
79.したがって委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 根本的原因について正確な理解を得る目的で、路上の状況にある子どもの境遇について体系的評価を行なうとともに、次回の報告書で委員会に対して情報を提供すること。
  • (b) この現象の発生を防止しかつ削減するため、当事者である子どもたちの積極的関与を得ながら包括的政策(そこでは根本的原因への対応が行なわれるべきである)を策定しかつ実施すること。
  • (c) NGOとの調整を図りながら、路上の状況にある子どもたちに対し、必要な保護、十分な保健ケア・サービス、教育その他の社会サービスを提供すること。
  • (d) 子どもたちに対し、自分の身を守る方法および搾取する者を告発する方法に関する十分な情報を提供すること。
  • (e) 家族との再統合が子どもの最善の利益にかなうときは、そのためのプログラムを支援すること。
性的搾取および虐待
80.委員会は、子どもの性的搾取について重い刑罰(刑法で定められた12年以上の収監刑を含む)が規定されていること、および、強姦犯が被害者と婚姻したときはいかなる刑も免除すると定めていた刑法第508条が2011年1月3日の立法令第1号によって廃止されたことに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国に在留するイラク人女子で売春を強要される者の人数が増えていること、締約国がますます子どもセックスツーリズムの目的地国と成りつつあること、および、売買春に関与した子どもがしばしば犯罪者として扱われていることを、懸念するものである。
81.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 包括的な戦略を通じて性的虐待および搾取を防止しかつ終わらせるため、あらゆる必要な措置をとること。そのための手段として、とくに、加害者の訴追ならびに公開討論会の開催および公衆教育プログラム(オピニオンリーダー、家族およびメディアと協力しながら組織されるキャンペーンを含む)の実施を進めること。
  • (b) 性的虐待および搾取の被害者が犯罪者として扱われず、かつ回復および再統合のための適切なプログラムおよびサービスにアクセスできることを確保すること。
  • (c) とくにWHOおよびユニセフの援助を求めること。
売買および取引
82.委員会は、国連国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書が批准され(2009年)、人身取引の禁止に関する立法令第3号が公布され(2010年)、かつ、人身取引被害者のための2つのシェルターがダマスカスおよびアレッポに設置されたことを、歓迎する。しかしながら委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づいた委員会の勧告(CRC/C/OPSC/SYR/CO/1)の実施について締約国が達成した進展が限定的であることを懸念するものである。委員会はさらに以下のことを懸念する。
  • (a) 新法で人身取引の明確な定義が定められておらず、かつ、人身取引の被害を受けた子どもの発見、事情聴取および付託に関する明確な手続が設けられていないこと。
  • (b) 選択議定書の規定にしたがって子どもの売買および児童ポルノを犯罪化する具体的規定が国内法に存在しないこと。
  • (c) 一時婚の慣行が根強く残っており、12歳という低年齢の女子までが金銭と引き換えに婚姻のために差し出されていること。
  • (d) 人身取引関連犯罪を捜査しおよび処罰し、人身取引が行なわれていることについて公衆に情報を提供し、ならびに法執行官を対象として人身取引対策研修を行なうために締約国が行なっている努力が限定的であること。
  • (e) 人身取引の被害を受けた子どもが売春容疑で告発され、かつ少年拘禁施設に送致されまたは人身取引元の国に送還される事案があること。
83.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づいた委員会の勧告を実施するためにあらゆる必要な措置をとるよう、求める。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。
  • (a) 人身取引対策法を改正して人身取引の定義および付託手続について明確な定めを置くとともに、法執行官を対象として、人身取引対策法に関する研修を体系的に行なうこと。
  • (b) 以前に勧告されたとおり(CRC/C/OPSC/SYR/CO/1、パラ15(a))、選択議定書で対象とされているすべての犯罪を明示的に定義しかつ犯罪化する目的で刑法を改正すること。
  • (c) 一時婚が女子の身体的および精神的健康ならびに全般的ウェルビーイングに与える悪影響に関する子ども、家族およびコミュニティの意識を高める等の手段によって一時婚の問題に対応するとともに、このような婚姻を組織した者に対して法的手続がとられることを確保すること。
  • (d) 人身取引を防止するための、とくに情報交換を通じた、国際協力、地域間協力ならびに出身国、通過国および目的地国との二国間協力に関する努力を増強すること。
  • (e) 子どもの人身取引を行なった者を積極的に訴追しおよび処罰し、人身取引の被害を受けた子どもを保護し、ならびに、人身取引の被害を受けた子どもが今後は刑務所または非行少年を対象とする矯正センターに送致されないことを確保すること。
  • (f) 搾取および人身取引の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を確保するための努力を強化すること。
  • (g) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての者を対象として、知識を高め、かつ子どもの人身取引の防止に役立ちうる研修および意識啓発プログラムが行なわれることを確保すること。
武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づいたフォローアップ
84.委員会は、子どもの徴募および敵対行為への参加に関連した武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書の違反を法律で明示的に禁止し、かつ国際刑事裁判所ローマ規程を批准するべきであるという委員会の勧告(CRC/C/OPAC/SYR/CO/1、パラ9(a)および(d))をあらためて繰り返す。
少年司法の運営
85.委員会は、締約国と国連開発計画との間で、少年司法制度の増進を目的とした「少年司法事業文書」が調印されたこと(2010年2月)に、積極的措置として留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 2003年の立法令第52号によって7歳から10歳に引き上げられた刑事責任年齢が、依然として国際的に受け入れられる水準よりもはるかに低い水準に留まっていること。
  • (b) 少年法(1974年法律第18号)の適用対象が15歳未満の子どものみであること。
  • (c) 警察から不当な取扱いを受けた子ども、および、更生施設における収容中に強姦その他の形態の性的虐待にさらされた子ども(とくにバブムサラ少年更生施設に収容されている女子)の事例が一般的に報告されていること。
  • (d) 拘禁施設における子どもと成人との分離が必ずしも保障されていないこと。
  • (e) 条約の規定に関する法執行官および少年司法制度関係者の知識が依然として限られたままであること。
86.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約の規定(とくに第37条、第39条および第40条)、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)および刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針を含む他の関連の国際基準および少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年)に全面的にしたがったものとするべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.212、パラ53)をあらためて繰り返す。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 刑事責任に関する最低年齢はいかなる場合でも12歳未満と定められるべきではないことを考慮しながら、刑事責任に関する法定年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。
  • (b) 少年法(法律第18号)の保護をすべての子どもに拡大すること。
  • (c) いかなる子どもも、法律に関わることになりまたは法律に抵触した際に虐待および拷問の対象とされないことを、とくに逮捕および捜査の段階において確保すること。
  • (d) 子どもの拘禁が最後の手段としてのみかつ可能なかぎり短い期間で行なわれること、および、拘禁が法律を遵守して行なわれることを確保すること。
  • (e) 可能なときは常に、ダイバージョン、保護観察、カウンセリング、地域奉仕または刑の執行猶予のような、拘禁に代わる措置を促進すること。
  • (f) 子どもがけっして成人とともに収容されないこと、これらの子どもに対して安全なかつ子どもに配慮した環境が与えられること、および、これらの子どもが家族と定期的接触を維持し、かつ食料、教育および職業訓練を提供されることを確保すること。
  • (g) いずれかの形態で自由を奪われた子どもに対し、措置決定の再審査を受ける権利を認めること。
  • (h) 専門の少年裁判所を国全域に拡大し、少年司法裁判官を養成し、かつ、警察隊、裁判官およびソーシャルワーカーを対象とする、少年司法制度および拘禁に代わる措置に関する技術的能力および知識を強化することを目的とした包括的な研修プログラムを発展させるための努力を強化すること。
  • (i) 少年司法に関する機関横断パネルおよびその構成組織(国連薬物犯罪事務所、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所およびNGOを含む)が開発した技術的援助ツールを利用するとともに、同パネルの構成組織に対し、少年司法の分野における技術的援助を求めること。
犯罪の証人および被害者の保護
87.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人。このような犯罪には、2011年3月の抗議行動以降に国および国以外の主体によって行なわれたものも含まれる)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するよう、勧告する。

I.国際的および地域的人権文書の批准

88.委員会は、締約国に対し、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、ならびに、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約、市民的および政治的権利に関する国際規約、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約および拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の各選択議定書を含む、すべての中核的人権文書に加入するよう奨励する。

J.フォローアップおよび普及

89.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、最高裁判所、議会、関連省庁および地方当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
90.委員会はさらに、条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回・第4回統合定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

K.次回報告書

91.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2015年8月13日までに提出し、かつこの総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう、慫慂する。委員会は、委員会が2010年10月1日に採択した条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、報告ガイドラインにしたがった報告書を提出するよう促す。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。
92. 委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。条約別報告書および共通コア・ドキュメントは、一体となって、子どもの権利条約に基づく調和化された報告義務を構成するものである。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年6月25日)。/前編・後編を統合(10月20日)。