総括所見:シリア(OPAC・2007年)


CRC/C/OPAC/SYR/CO/1(2007年10月17日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2007年10月2日に開かれた第1278回会合(CRC/C/SR.1278)においてシリア・アラブ共和国の第1回報告書(CRC/C/OPAC/SYR/1)を検討し、2007年10月5日に開かれた第1284回会合(CRC/C/SR.1284)において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、選択議定書に基づく締約国の第1回報告書、および、議定書で保障された諸権利について締約国で適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する追加的情報を提供してくれた事前質問事項(CRC/C/OPAC/SYR/Q/Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、多部門型の代表団との間で行なわれた建設的対話も評価するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、条約に基づく締約国の第2回定期報告書に関して2003年6月6日に(CRC/C/15/Add.212)、かつ子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して2006年9月29日に(CRC/C/OPSC/SYR/CO/1)採択された以前の総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう勧告する。

B.積極的側面

4.委員会は、以下のことに評価の意とともに留意する。
  • (a) 選択議定書の批准の際、締約国が、現行法および国防省に適用される法律においては、18歳未満のいかなる者も実働軍または予備隊に入隊することは認められておらず、かつ当該年齢未満のいかなる者の徴募も認められていないこと、および、たとえ例外的事情がある場合にもいかなる逸脱も認められていないことを宣言したこと。
  • (b) 締約国が、報告書において、大学段階までのあらゆる学校およびあらゆる教育段階で教えられているカリキュラムから軍事教育の科目が削除された旨を確認したこと。
5.委員会はまた、締約国が以下の条約を批准したことに対する評価の意もあらためて表明する。
  • (a) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約(2005年6月2日)。
  • (b) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2004年9月18日〔8月19日〕)。
  • (c) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO条約(第182号、1999年)(2003年5月22日)。
6.委員会はまた、締約国が、子どもの保護の分野で行なわれている研究および活動に関して国連児童基金(ユニセフ)、国連難民高等弁務官(UNHCR)および赤十字国際委員会(ICRC)のような国際機関と連携していることにも、評価の意とともに留意する。

C.議定書の実施を阻害する要因および困難

7.委員会は、占領下にあるシリア領ゴラン高原で人道機関が活動していないこともあり、当該地域における議定書の実施に関する情報が存在しないことを懸念する。

D.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

立法
8.委員会は、締約国の法律に、18歳未満の者の義務的徴募または選択議定書の規定に違反する他のいずれかの行為を犯罪化する具体的規定がないことを懸念する。
9.軍隊または武装集団への子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置を強化するため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの徴募および敵対行為への関与に関わる選択議定書の規定の違反を法律で明示的に禁止すること。
  • (b) 軍のすべての規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定および精神にしたがうことを確保すること。
  • (c) 議定書に反する行為(子どもを軍隊または武装集団に徴集しもしくは徴募することまたは敵対行為に積極的に参加させるために子どもを使用することを含む)に関する、これらの犯罪がシリア国民もしくは締約国と他のつながりを有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合の域外裁判権について、刑法その他の法律に明示的規定を置くこと。
  • (d) 2000年11月22日に署名した国際刑事裁判所規程を批准すること。
国家的行動計画
10.委員会は、締約国が、子どもの保護のための国家的計画(2008~2010年)に条約の規定を統合することを検討していることに留意する。
11.委員会は、締約国に対し、条約およびその2つの選択議定書の趣旨および規定が国家的計画に統合されることを確保するよう、奨励する。
普及および研修
12.委員会は、学校カリキュラムへの包摂および意識啓発キャンペーンを通じて子どもの権利条約に関する情報を普及するために締約国がとった措置に、評価の意とともに留意する。
13.第6条2項に照らし、委員会は、締約国が、選択議定書の規定についても適当な手段によって広く周知されかつ促進されるようにすることを勧告する。委員会はさらに、締約国が、すべての関連の専門家集団(教員、医療専門家、ソーシャルワーカー、警察官、弁護士および裁判官など、武力紛争の影響を受けている国の出身である子どもの庇護希望者、難民および移民とともに働く者を含む)を対象とした、選択議定書の規定に関する体系的な意識啓発、教育および研修を発展させるよう、勧告するものである。
平和教育
14.あらゆる段階の教育カリキュラムに人権教育ならびに社会問題およびジェンダーの問題が統合されたことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、学校カリキュラムの一要素としての平和教育の包摂について締約国から情報が提供されなかったことを遺憾に思う。
15.委員会は、締約国が、学校カリキュラムに平和教育を包摂し、かつ学校内で平和および寛容の文化を奨励するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、教育制度への平和教育の包摂に関する教員研修を発展させるよう、勧告するものである。
武器輸出
16.委員会は、代表団から提供された、武器輸出は行なわれていない旨の情報に留意するものの、締約国の法律に、子どもが徴募されまたは敵対行為において使用されている可能性がある国への武器の販売を禁ずる具体的規定がないことにも留意する。
17.委員会は、締約国が、子どもが徴募されもしくは敵対行為において使用されていることがわかっている――またはその可能性がある――国が最終目的地である場合における武器の販売について、具体的な禁止規定の導入を検討するよう勧告する。
18.委員会はさらに、締約国が、議定書第7条にしたがい、技術的協力および財政的援助等も通じた、この議定書の実施における協力(議定書に反するあらゆる活動の防止ならびに議定書の規定に反する行為の被害を受けた者のリハビリテーションおよび社会的再統合に関するものを含む)を強化するよう、勧告する。

2.身体的および心理的回復ならびに社会的再統合に関してとられた措置

19.委員会は、締約国が子どもの難民、庇護希望者および移民の目的地国のひとつであり、かつ、そのなかには武力紛争の影響を最近受けている国からやってきた子どももいることに留意する。委員会はまた、子どもの難民および庇護希望者の身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を援助するための努力が、市民社会および国際機関と連携して行なわれてきたことにも留意するものである。委員会は、武力紛争に関与している国々からの難民の大量流入により、議定書に反する形で徴募されまたは敵対行為において使用された可能性のある子どもの特定に困難が生じていることに、懸念を表明するものである。
20.武力紛争に関与した可能性のある子どもを具体的に援助する目的で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) シリアに入国する子どもの難民、庇護希望者および移民であって、議定書に反する形で徴募されまたは敵対行為において使用された可能性のある子どもを可能なかぎり早い段階で特定すること。
  • (b) これらの子どもの状況を注意深く評価するとともに、議定書第6条3項にしたがい、これらの子どもに対し、その身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための、文化的に配慮された学際的な援助を直ちに提供すること。
  • (c) 前掲の文脈において、難民としての地位が希望されている場合には難民認定等も通じ、関係する子どもの法的保護を向上させるための方法を検討すること。
  • (d) 身体的および心理的回復ならびに再統合のために提供されている現行のプログラムおよびサービスについて定期的評価を行なうこと。
  • (e) 子どもを出身国に送還するための手配が、それが子どもの最善の利益にかなう場合にのみ行なわれることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (f) この点に関してとられた措置についての情報を次回の報告書に記載すること。
21.これとの関連で、委員会はさらに、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(CRC/GC/2005/6)に対して締約国の注意を喚起したい。

3.フォローアップおよび普及

22.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚、議会、国防省および適用可能なときは県当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
23.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。

4.次回報告書

24.第8条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年6月25日)。