刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針(1997年)

国連経済社会理事会決議1997/30
原文英語(日本語訳・平野裕二)


1.刑事司法制度における子どもについての行動に関する本指針は、1996年7月23日の経済社会理事会決議1996/13にしたがい、オーストリア政府の財政的支援を受けて1997年2月23日から25日にかけてウィーンで開かれた専門家グループ会合において作成されたものである。本行動指針の作成にあたり、専門家グループは各国政府から表明された意見および提出された情報を考慮にいれた。
2.当該会合には、地域を異にする11か国出身の29人の専門家、国連事務局人権センター、国連児童基金および子どもの権利委員会の代表ならびに少年司法に関心を持つ非政府組織のオブザーバーが参加した。
3.本規則は、国連事務総長ならびに関連する国連の機関および計画に対して、子どもの権利条約の実施に関連してその締約国に対して、かつ少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則の活用および適用に関して国連加盟国に対して、それぞれ宛てられたものである。以上の国際文書は、以下「少年司法に関する国連の基準および規範」と称する。

I.目的、目標および基本的考慮事項

4.本行動指針の目的は、以下の目標を達成するための枠組みを提示することである。
  • (a) 子どもの権利条約を実施し、かつ少年司法の運営の対象とされた子どもに関して条約に掲げられた目標を追求するとともに、少年司法に関する国連の基準および規範、ならびに、犯罪および権力濫用の被害者のための司法に関する基本原則宣言のようなその他の関連文書を活用および実施すること。
  • (b) 子どもの権利条約および関連文書の効果的実施のための、締約国に対する援助の提供を促進すること。
5.本行動指針の効果的活用を確保するためには、各国政府、国連システムの関連機関、非政府組織、専門家グループ、メディア、学術機関、子どもおよび市民社会のその他の構成員とのあいだの協力のあり方を改善することが不可欠である。
6.本行動指針は、条約を実施する責任は明らかにその締約国に存するという原則にもとづかなければならない。
7.本行動指針を活用する基盤は子どもの権利委員会の勧告であるべきである。
8.本行動指針を国際社会および国内のいずれのレベルでも活用するにあたっては、以下の点が考慮されなければならない。
  • (a) 条約を通底する4つの一般原則、すなわち差別の禁止(ジェンダーへの配慮を含む)、子どもの最善の利益の擁護、生命、生存および発達に対する権利ならびに子どもの意見の尊重と合致する、人間の尊厳の尊重。
  • (b) 権利を基盤とする志向。
  • (c) 資源および努力を最大限に用いることを通じた、実施に対するホリスティックなアプローチ。
  • (d) 分野を超えたサービスの統合。
  • (e) 子どもおよび社会の関連部門の参加。
  • (f) 発展過程を通じたパートナーのエンパワーメント。
  • (g) 外部機関に絶えず依存することのない、持続可能性。
  • (h) もっとも援助を必要とする者に対する公平な適用およびアクセス可能性。
  • (i) 説明責任、および運用の透明性。
  • (j) 防止と事後対応のための効果的措置を基盤とした積極的対応。
9.あらゆるレベル(国際社会、地域、国、州および地方)において、かつ各国政府、国連機関、非政府組織、専門家グループ、メディア、学術機関、子どもおよび市民社会のその他の構成員ならびにその他のパートナーを含む関連のパートナーとの協力により、充分な資源(人的、組織的、技術的および財政的資源ならびに情報)が配分され、かつ効率的に活用されなければならない。

II.子どもの権利条約の実施、その目標の追求ならびに少年司法に関する国連の基準および規範の活用および適用のための計画

A.一般的適用のための措置

10.子どものあらゆる権利は相互依存的でありかつ相互不可分であることに関連して、少年司法分野において国レベルで包括的かつ一貫したアプローチをとることの重要性が認識されなければならない。
11.以下のことを確保することを目標として、政策、意思決定、リーダーシップおよび改革に関連する措置がとられるべきである。
  • (a) 子どもの権利条約ならびに少年司法に関する国連の基準および規範の原則と規定が、国および地方の立法政策および実行に全面的に反映されること。とりわけ、そのための手段として、子どもの権利を保障し、子どもの権利の侵害を防止し、尊厳および価値に関する子どもの感覚を促進し、かつ、子どもの年齢、発達段階、および社会に意味のある形で参加しかつ社会に貢献する権利を全面的に尊重する、子ども中心の少年司法制度を確立すること。
  • (b) 上述の文書の関連の内容が、子どものアクセスしやすい言葉で、広く子どもに知らされること。加えて、必要な場合には、子どもひとりひとりが、少なくとも刑事司法制度と接触した最初の段階から上記文書に掲げられた自己の権利に関する関連の情報を提供され、かつ法律を守る義務について思い起こすよう促されることを確保するための手続が設けられるべきである。
  • (c) 子ども中心の司法の精神、目的および原則についての公衆とメディアの理解が、少年司法に関する国連の基準および規範にしたがって促進されること。

B.具体的目標

12.各国は自国の出生登録プログラムの実効性を確保するべきである。司法制度に関わった子どもの年齢が不明なときは、独立のかつ客観的な評価により子どもの真の年齢が確認されることを確保するための措置がとられなければならない。
13.国内法で定められた刑事責任年齢、民事上の成人年齢および同意年齢に関わらず、各国は、子どもが国際法によって保障された権利、この文脈において具体的には条約第3条、第37条および第40条に掲げられたすべての権利を享受することを確保するべきである。
14.以下の点に特段の注意が向けられるべきである。
  • (a) 包括的な子ども中心の少年司法手続が設けられているべきである。
  • (b) 独立の専門家またはその他のタイプの委員会により、少年司法に関する現行法および法案ならびにそれが子どもに及ぼす影響についての審査が行なわれるべきである。
  • (c) 法定刑事責任年齢に達しないいかなる子どもも刑事告発の対象とされてはならない。
  • (d) 各国は、犯罪行為を行なった少年に第一義的管轄権を有する少年裁判所を設置するべきであり、かつ特別手続は子どもの具体的ニーズを考慮にいれられるようなものでなければならない。これに代わる措置としては、通常裁判所においてそのような手続が適切な形で編入されるべきである。必要なときは常に、子どもが少年裁判所以外の裁判所に引致された場合に条約第3条、第37条および第40条にしたがってすべての権利および保護を子どもに認める国内法上その他の措置が検討されなければならない。
15.現行手続の見直しが行なわれるべきであり、かつ、可能な場合には、罪に問われた青少年を対象として刑事司法制度を利用することを回避するため、ダイバージョン、または古典的な刑事司法制度に代わるその他のイニシアチブが開発されるべきである。再犯を防止し、かつ罪を犯した子どもの社会復帰を促進する目的で、逮捕前、審判前、審判時および審判後の各段階における広範な代替措置および教育的措置を全国で利用できるようにするための適切な措置がとられなければならない。適切な場合には常に、罪を犯した子どもに関わる事件の紛争を非公式に解決するための機構が活用されるべきである。このような機構には、調停および修復的司法実践、とくに被害者が関与する手続が含まれる。さまざまな措置をとるにあたっては、罪を犯した子どものためになるかぎりにおいて、家族の関与が求められるべきである。各国は、代替的措置において、条約、少年司法に関する国連の基準および規範、ならびに、非拘禁措置に関する国連最低基準規則(東京規則)のような、犯罪防止と刑事司法に関するその他の現行の基準および規範が遵守されることを確保しなければならない。そのさい、そのような措置を適用するさいの適正手続上の規則、および最低限の介入の原則を尊重することに特別な考慮が払われなければならない。
16.法的援助、および通訳のようなその他の援助を必要であれば無償で子どもに提供し、かつ、とくに、拘禁された時点からそのような援助にアクセスするすべての子どもの権利が尊重されることを確保するための機関およびプログラムの確立に、優先順位が置かれるべきである。
17.路上で生活しもしくは働いている子どもまたは家庭環境を恒久的に奪われた子ども、障害を持った子ども、マイノリティ、移民または先住民族の子どもおよびその他の傷つきやすいグループに属する子どものような、特別な保護措置を必要とする子どもの問題を軽減するための適切な措置が確保されるべきである。
18.子どもを閉鎖型施設に措置することは減らされなければならない。子どものそのような措置は、条約第37条(b)にしたがって、最後の手段としてかつ可能なもっとも短い期間でのみ行なわれるべきである。少年司法制度および児童福祉制度における体罰は禁じられなければならない。
19.自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および条約第37条(b)は、いずれかの司法機関、行政機関その他の公的機関の命令による公的もしくは私的な環境への措置であって、子どもがみずからの意思で離れることを許されないいかなる措置にも同様に適用される。
20.拘禁された子どもとその家族およびコミュニティとのつながりを維持し、かつその社会的再統合を促進するため、親族、および子どもに対して正当な関心を有する者が、子どもが自由を奪われている施設に容易にアクセスできることを確保することが重要である。ただし、子どもの最善の利益に照らして別段の判断が必要と思われるときはこのかぎりでない。
21.必要な場合には、身柄拘束施設の環境について定期的に監視および報告する独立機関が設置されなければならない。監視は、少年司法に関する国連の基準および規範、とくに自由を奪われた少年の保護に関する国連規則を枠組みとして行なわれるべきである。各国は、子どもが監視機関と自由にかつ秘密裡にコミュニケーションをとることを認めなければならない。
22.各国は、適切な場合、関心のある人道団体、人権団体その他の団体による身柄拘束施設へのアクセスの要請を前向きに検討するべきである。
23.刑事司法制度における子どもとの関連では、政府間機関、非政府組織その他の関係者が提起する問題、とくに、不適切な措置や、自由を奪われた子どもに影響を及ぼす長期の遅延を含む制度的問題が正当に考慮されなければならない。
24.刑事司法制度における子どもと接触する者またはそのような子どもに責任を持つ者はすべて、その養成・研修プログラムの不可欠な一部として、人権、条約の原則および規定、ならびに少年司法における他の国連の基準および規範についての教育と研修を受けなければならない。そのような者には、警察官その他の法執行官、裁判官、検察官、弁護士および司法行政職員、刑務所吏員および子どもが自由を奪われている施設で働くその他の専門家、ならびに、保健従事者、ソーシャルワーカー、平和維持部隊隊員、および少年司法に関係するその他の専門家が含まれる。
25.現行国際基準に照らし、各国は、職員が子どもの基本的権利および自由を意図的に侵害したという申立てが迅速に、徹底的にかつ公正に調査されることを確保するための機構を設置しなければならない。各国は、同様に、責任を認められた者が適正な制裁を受けることを確保するべきである。

C.国際レベルでとられるべき措置

26.国連システム全体の行動の枠組みにおけるものを含め、少年司法に対する正当な注意が国際的、地域的および国家的に向けられるべきである。
27.この分野のすべての機関、とりわけ国連事務局の犯罪防止刑事司法局、国連人権高等弁務官事務所/人権センター、国連難民高等弁務官事務所、国連児童基金、国連開発計画、子どもの権利委員会、国際労働機関、国連教育科学文化機関および世界保健機関のあいだで緊密な協力を図ることが、緊急に必要である。加えて、世界銀行その他の国際的および地域的金融機関ならびに非政府組織および学術機関も、少年司法分野における助言サービスおよび技術的援助の提供を支援するよう要請される。したがって、とくに調査研究、情報の普及、養成および研修、子どもの権利条約の実施および監視、ならびに現行基準の活用および適用に関して、かつ、技術的助言および援助のプログラムを提供することに関して、たとえば少年司法に関する既存の国際的ネットワークを活用することによって協力が強化されなければならない。
28.技術的協力および助言サービスのプログラムを通じた子どもの権利条約の効果的実施ならびに国際基準の活用および適用が、とりわけ、拘禁された子どもの人権の保護および促進、法の支配の強化ならびに少年司法制度の運営の改善に関わる以下の側面に特段の注意を向けることにより、確保されなければならない。
  • (a) 法改正の援助。
  • (b) 国内の能力およびインフラストラクチャーの強化。
  • (c) 警察官その他の法執行官、裁判官、検察官、弁護士、司法行政職員、刑務所吏員および子どもが自由を奪われている施設で働くその他の専門家、保健従事者、ソーシャルワーカー、平和維持部隊隊員、ならびに少年司法に関係するその他の専門家を対象とした研修プログラム。
  • (d) 研修マニュアルの作成。
  • (e) 少年司法における権利を子どもに知らせるための情報および教材の作成。
  • (f) 情報システムおよび運営システムの発展の援助。
29.平和構築時および紛争後の状況、または発生しつつあるその他の状況における犯罪の被害者および加害者としての子どもと青少年の問題を含め、子どもの権利の保護が平和維持活動に関わっていることにかんがみ、国連事務局内の犯罪防止刑事司法局と平和維持活動局との緊密な協力が維持されるべきである。

D.技術的助言・援助プロジェクトの実施のための機構

30.条約第43条、第44条および第45条にしたがい、子どもの権利委員会は条約の実施に関する締約国報告書を審査する。条約第44条にしたがい、当該報告書は、条約にもとづく義務の履行の程度に影響を及ぼす要因および困難が存在する場合、それを示さなければならない。
31.条約の締約国は、その第1回報告書および定期報告書において、条約の規定の実施、ならびに少年司法に関する国連の基準および規範の活用および適用に関する包括的な情報、データおよび指標を提供するよう要請されている。
32.条約にもとづく義務を履行するにあたって締約国が達成した進展を検討する過程を経た結果、子どもの権利委員会は、条約の全面的遵守を確保するための提案および一般的勧告を行なうことができる(条約第45条(d))。条約の効果的実施を促進し、かつ少年司法分野における国際協力を奨励するため、委員会は、適当と認める場合には、助言サービスおよび技術的援助を要請しているか、またはこれらの必要性を指摘している締約国からの報告書を、もしあればこれらの要請または指摘についての委員会の所見および提案とともに、専門機関、国連児童基金および他の資格のある機関に送付する(条約第45条(b))。
33.このように、締約国の報告書および委員会による審査の過程において、国連または専門機関の技術的助言・援助プログラムによる援助によるものも含めて少年司法分野において改革を開始する必要性が明らかになった場合、締約国は、犯罪防止刑事司法局、人権センターおよび国連児童基金による援助も含むそのような援助を要請することができるのである。
34.このような要請に応えて充分な援助を提供するため、少年司法に関する技術的助言・援助に関する調整委員会が設置され、国連事務総長によって少なくとも年1回召集されるべきである。当該委員会は、犯罪防止刑事司法局、国連人権高等弁務官事務所/人権センター、国連児童基金、国連開発計画、子どもの権利委員会、国連犯罪防止刑事司法プログラム・ネットワークを構成する諸機関および他の関連の国連機関、ならびに、後述三九項にしたがって技術的助言・援助の提供に携わっているその他の関心ある政府間機関、地域機関および非政府組織(少年司法に関する国際的ネットワークおよび学術機関を含む)の代表によって構成されることになろう。
35.調整委員会の最初の会合に先立ち、少年司法分野におけるさらなる国際協力をどのように活性化するかという問題に対応する戦略が作成されなければならない。調整委員会はまた、共通の問題の特定、望ましい実務の実例の収集および共有された経験とニーズの分析も促進するべきである。このことにより、ニーズ評価、および行動のための効果的提案に対するいっそう戦略的なアプローチをとれるようになろう。そのような積上げを行なうことにより、少年司法に関する協調的な助言サービスと技術的援助が可能になるはずである。これには、そのような援助を要請する政府、および国別プロジェクトのさまざまな部分を実施する能力と権限を有する他のすべてのパートナーと早期に協定を結ぶことが含まれ、もってもっとも効果的かつ問題志向型の行動を確保することができるであろう。このような積上げは、すべての関係当事者と緊密に協力しながら絶えず発展させられなければならない。そこでは、少年司法の運営を改善し、少年拘置所や審判前拘禁の使用を少なくし、自由を奪われた子どもの処遇を改善し、かつ再統合と回復のための効果的なプログラムを創出することを目的としたダイバージョンのプログラムおよび措置が考慮にいれられることになろう。
36.少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)で求められているように、包括的な防止計画の策定が重視されなければならない。プロジェクトにおいては、とくに家族、コミュニティ、仲間集団、学校、職業訓練および仕事の世界を通じ、すべての子どもと若者がうまく社会化および統合できるようにするための戦略に焦点が当てられるべきである。これらのプロジェクトにおいては、路上で生活しもしくは働いている子どもまたは家庭環境を恒久的に奪われた子ども、障害を持った子ども、マイノリティ、移民または先住民族の子どもおよびその他の傷つきやすいグループに属する子どものような、特別な保護措置を必要とする子どもに特段の注意が払われなければならない。とりわけ、このような子どもを施設に措置することはできるかぎり禁止されるべきである。このような子どもが犯罪者として扱われるおそれを限定するため、社会的保護の措置が発展させられなければならない。
37.上述の戦略においては、条約の締約国に対して国際的助言サービスおよび技術的援助を調整のとれた形で提供するための手段も定められることになろう。そのような提供は、長期的な技術的援助プログラムを立案する目的で、適切な場合には常に、関連のさまざまな組織および機関の職員により、合同ミッションとして行なわれる。
38.国レベルで助言サービスおよび技術的援助プログラムの提供を行なうさいの重要な主体は国連の駐在コーディネーターであり、国連人権高等弁務官事務所/人権センター、国連児童基金および国連開発計画の現地事務所が重要な役割を果たすことになる。国連国別戦略覚書を通じてのものも含め、少年司法に関する技術的協力を国別の計画およびプログラム立案に統合することの重要性が強調される。
39.調整委員会の調整機構と、条約の遵守を向上させるために立案された地域別および国別プロジェクトの双方に対し、資源が動員されなければならない。以上の目的(前掲パラ34~38参照)のための資源は、通常予算または予算外の資源のいずれからももたらされることになろう。具体的プロジェクトのための資源のほとんどは外部から動員せざるを得ないであろう。
40.調整委員会は、この分野での資源の動員に対する調整のとれたアプローチを奨励し、かつそれどころかその媒介者となることができよう。このような資源の動員は、この分野における世界的プログラムを支える形で作成されたプログラム文書に掲げられる、共通の戦略にもとづいて行なわれなければならない。関心あるすべての国連機関、およびこの分野における技術的協力サービスを提供する能力が実証されている非政府組織に対し、このようなプロセスへの参加が要請されるべきである。

F.国別プロジェクトの実施に関するさらなる考慮事項

41.少年非行の防止および少年司法における明白な教義のひとつは、長期的な変化は症状が治療されたときのみならず根本的原因への対応が行なわれたときにもたらされるということである。たとえば、少年の拘禁の過度な使用に対しては、捜査、訴追および司法ならびに刑務所制度のあらゆるレベルにおける運営体制および管理体制が関与する包括的なアプローチをとることによってしか、充分な対応が行なえない。そのためには、とくに、警察、検察官、裁判官、地方行政機関、行政機関および拘禁センターの関連機関との、相互間および内部のコミュニケーションが必要である。加えて、相互に緊密に協力しようとする意思および能力も必要とされる。
42.子どもの行動に対応するためにこれ以上刑事司法上の措置に過剰に依存するのを防止するため、適切な場合には司法制度からの子どものダイバージョンを可能にする社会的援助を強化すること、および身柄拘束以外の措置と再統合プログラムの運用を改善することを目的としたプログラムを確立および適用するための努力が行なわれなければならない。そのようなプログラムを確立および適用するためには、少年司法部門、法執行を担当する諸機関、社会福祉部門および教育部門間の緊密な協力を促進することが必要である。

III.子どもの被害者および証人に関わる計画

43.犯罪および権力濫用の被害者のための司法に関する基本原則宣言にしたがい、各国は、子どもの被害者および証人に対し、司法および公正な取扱い、被害回復、賠償ならびに社会的援助への適切なアクセスが提供されることを確保するとりくみを行なわなければならない。適用可能な場合、刑事上の問題を司法制度外の賠償により解決することを、それが子どもの最善の利益に沿わないときは防止するための措置をとるべきである。
44.警察官、弁護士、裁判官およびその他の法定吏員は、子どもが被害者である事件への対応に関する研修を受けなければならない。各国は、子どもに対する犯罪に関わる事件に対応する特別部局をまだ設置していない場合には、その設置を検討するべきである。各国は、適切な場合、子どもが被害者である事件の適切な処理に関する行動規範を定めなければならない。
45.子どもの被害者は、共感と、その尊厳への尊重の念をもって取り扱われなければならない。子どもの被害者は、みずからが受けた被害に対し、国内法で規定されている方法にしたがって司法機構および迅速な救済にアクセスする権利を有する。
46.子どもの被害者は、弁護、保護、経済的援助、カウンセリング、保健サービス、社会サービス、社会的再統合ならびに身体的および心理的回復のためのサービスのような、そのニーズを満たす援助にアクセスできなければならない。障害を持った子どもまたは病気の子どもに対しては特別な援助が与えられるべきである。施設措置よりも家庭およびコミュニティを基盤としたリハビリテーションが重視されなければならない。
47.必要な場合、子どもの被害者が迅速、公正かつアクセスしやすい公式または非公式の手続を通じて救済を得られるようにするため、司法上および行政上の機構が設置および強化されるべきである。子どもの被害者および(または)その法定代理人に対してしかるべき情報提供が行なわれなければならない。
48.人権侵害、とくに拷問および他の残酷な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いまたは処罰(強姦および性的虐待、違法なまたは恣意的な自由の剥奪、正当な理由のない拘禁ならびに誤審を含む)の被害を受けたすべての子どもに対し、公正かつ充分な補償へのアクセスが認められなければならない。適切な裁判所または審判所において訴訟を行なうための必要な法的代理、および、必要な場合には子どもの母語への通訳が、利用可能とされるべきである。
49.子どもの証人は司法手続および行政手続において援助を必要とする。各国は、子どもの権利が全面的に保護されることを確保するため、証拠法および手続法における、犯罪の証人としての子どもの状況を必要に応じて再検討、評価および改善しなければならない。それぞれ異なる法的伝統、実務および法的枠組みにしたがいながら、捜査手続および訴追手続ならびに公判の最中の子どもの被害者と犯罪者の直接の接触はできるかぎり回避されるべきである。子どものプライバシーを保護するために必要なときは、メディアにおいて子どもの被害者を特定することが禁じられなければならない。禁止することが加盟国の基本的な法的原則に逆行するときは、そのような特定が抑制されるべきである。
50.各国は、とくに子どもの証言をビデオに記録すること、およびビデオに記録された証言を正式な証拠として法廷に提出することを認めるため、必要なときは刑事訴訟法を改正することを検討するべきである。とりわけ、警察官、検察官および裁判官は、たとえば警察活動および子どもの証人の事情聴取において、いっそう子どもに優しい実務を適用しなければならない。
51.司法上および行政上の手続における、子どもの被害者および証人のニーズに対する配慮が、以下の方法により促進されなければならない。
  • (a) 子どもの被害者に対し、とくに犯罪が重大である場合に、その役割、手続の範囲、時期および進展、ならびに事件の処分について情報を提供すること。
  • (b) 証言に先立って子どもが刑事司法手続に慣れることを可能にする、子ども証人準備計画の発展を奨励すること。子どもの証人および被害者に対し、法的手続全体を通じて適切な援助が提供されなければならない。
  • (c) 子どもの被害者の個人的利益に影響が及ぶ場合に、被告人の権利を損なうことなく、かつ関連の国内刑事司法制度にしたがって、子どもの被害者の意見および関心が手続の適切な段階で提出および検討されることを認めること。
  • (d) 刑事司法手続における遅延を最小限に抑えるための措置ととり、子どもの被害者および証人のプライバシーを保護し、かつ、必要な場合には、脅迫および報復からの安全を確保すること。
52.国境を越えて不法に移動させられまたは不当に身柄を抑えられた子どもは、出身国に送還するのが一般的原則である。その安全に正当な注意が払われるべきであり、そのような子どもは送還までのあいだ人道的に取り扱われ、かつ必要な援助を与えられなければならない。子どもの権利条約の遵守を確保するため、このような子どもの送還は迅速に行なわれるべきである。国際私法に関するハーグ会議が承認した、子の奪取の民事面に関する1980年のハーグ条約もしくは国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する1993年のハーグ条約、または親の責任に関する裁判権、適用法、承認、執行および協力ならびに子どもの保護のための措置に関する条約が適用可能な場合、子どもの送還に関するこれらの条約の規定が迅速に適用されなければならない。子どもが送還されたさい、出身国は、人権に関する国際的原則にしたがって尊重の念をもってその子どもを取り扱い、かつ家庭を基盤としたリハビリテーションのための充分な措置を提供するべきである。
53.国連犯罪防止刑事司法局(プログラムのネットワークを構成する諸機関も含む)、国連人権高等弁務官事務所/人権センター、国連児童基金、国連開発計画、子どもの権利委員会、国連教育科学文化機関、世界銀行および関心ある非政府組織は、法執行官その他の刑事司法関係者(警察官、検察官および裁判官を含む)を対象とした分野横断的な研修、教育および情報提供の活動を発展させていくにあたり、国連予算または予算外の資源の全体的配分額の枠内で、要請に応じて加盟国を援助しなければならない。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年2月26日)。