総括所見:シリア(第2回・2003年)


CRC/C/15/Add.212(2003年7月10日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.子どもの権利委員会は、2003年6月3日に開かれた第883回および第884回会合(CRC/C/SR.883 and 884参照)において、2000年8月15日に受領されたシリア・アラブ共和国の第2回定期報告書(CRC/C/93/Add.2)を検討し、2003年6月6日に開かれた第889回会合(CRC/C/SR.889参照)において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、報告書の時宜を得た提出を歓迎するとともに、報告書そのものは法律偏重的な性質のものであったとはいえ、当該報告書が報告ガイドラインにしたがっていることに留意する。委員会は、豊かな情報を含んだ文書回答の提出および補足報告書を評価するものである。委員会は、ハイレベルな、きわめて適任の部門横断型代表団の出席が、締約国における条約の実施プロセスに関する理解の向上に寄与したことを評価する。

B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は以下のことを歓迎する。
  • (a) 女性に対するあらゆる形態の差別に関する条約および就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約を含む諸国際文書の批准。
  • (b) 委員会はさらに、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の両選択議定書、および、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約の議会承認を歓迎する。
  • (c) 就業が認められるための最低年齢の、15歳への引き上げ。
  • (d) 義務教育〔修了〕年齢の、12歳から15歳への引き上げ。
  • (e) 子どもの問題に関する新たな機関(すなわち文化局、乳幼児教育局および特別教育局)の設置。
  • (f) とくに保健および教育の分野で、子どものための世界サミットの目標の多くが達成されたこと。
  • (g) 子ども期高等評議会の設置(1999年)。
  • (h) 国内法で条約が考慮されていること、すなわち、民事訴訟法および刑事訴訟法において、シリアが加盟する国際条約に反する規定は適用できないと明示的に述べられていること。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

4.委員会は、占領下にあるシリア領ゴラン高原においてシリア人の子どもの権利を確保する際の困難に関する締約国の懸念を共有する。

D.主要な懸念事項および勧告

1.実施に関する一般的措置

前回の総括所見
5.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/28/Add.2)の検討を受けて表明された勧告および行なわれた勧告(CRC/C/15/Add.70)の多く、とくに条約の原則の法律への統合、予算配分における子どもの権利の優先および子どもの不当な取扱いに関連するものへの対応が不十分であることを懸念する。委員会は、同じ懸念表明および勧告の多くがこの文書でも行なわれていることに留意するものである。
6.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうちまだ実施されていないものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の懸念に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。
留保
7.委員会は、第1回報告書が提示されて以降、留保に関して何の再検討も行なわれてこなかったことを遺憾に思う。報告書における締約国の理由説明に留意しつつ、委員会は、一般的留保の性質のために条約の規定の多くが無効にされる潜在的可能性がある旨の懸念をあらためて表明するとともに、条約の趣旨および目的との両立性に関わる懸念を提起するものである。とくに、第14条に関しては、当該留保は思想、良心および宗教の自由の侵害を生ぜしめるものであり、第20条および第21条に関しては、当該留保は不要である。委員会は、条約第20条3項において、代替的養護のひとつの形態としてカファラが明示的に承認されていることを指摘する。第21条は、養子縁組制度を「承認および(または)許容している」国に明示的に言及しており、締約国は養子縁組制度を承認していないのでこの規定は適用されない。
8.委員会は、締約国が、ウィーン宣言および行動計画にしたがい、かつ自由権規約委員会の一般的意見22号を考慮し、とくに第14条、第20条および第21条に関する留保を撤回の方向で精査するよう、勧告する。
立法
9.委員会は、締約国が、条約との関係で国内法を見直す旨の公約を行なっていることに留意する。委員会はさらに、子どもの権利との関連で最近さまざまな立法措置がとられかつ提案されていること(たとえば身分関係法の改正、および、義務教育法の違反に対する処罰の強化の追求)に留意するものの、これらの立法措置において、条約の実施に対する包括的な人権基盤アプローチが十分に反映されていないことを懸念するものである。さらに委員会は、身分関係の分野で、異なる宗教的コミュニティ(すなわちイスラム教徒、ドゥルーズ教徒、キリスト教徒およびユダヤ教徒)を規律する異なる法律(たとえば1953年民事関係法)が適用されており、そのために異なる裁判制度(たとえばシャリーア裁判所、madhabi裁判所およびruhj裁判所)が利用されていることから、子どもの権利の享受における差別につながる可能性があることを、懸念する。
10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 自国の法律、行政規則および訴訟規則が条約を含む国際人権基準に一致することを確保するため、その包括的見直しをいっそう速やかに進めること。
  • (b) 宗教法の解釈を基本的人権と一致させるため、あらゆる可能な措置をとること。
  • (c) 法律が、十分に明瞭かつ正確であり、公表され、かつ公衆にとってアクセス可能であることを確保すること。
調整
11.委員会は、子ども期高等評議会(1999年の決定第1023号)が条約の実施の調整を担当していることに留意する。委員会は、HCC〔子ども期高等評議会〕が県段階に支部を設置する予定であり、かつHCCに対して独自の予算が提供される可能性がある旨の情報を歓迎するものである。委員会はさらに、2003年10月に新たな国家的行動計画が採択される予定である旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、現行の調整が不十分であることおよびHCCが独自の予算を有していないことを依然として懸念するものである。委員会は、中央および地方の行政段階における部門間の調整に欠陥があるため、包括的かつ首尾一貫した子どもの権利政策を達成するのが困難になっている旨の懸念を、あらためて表明する。
12.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくにHCCに対して十分な人的資源および財源を提供することにより、HCCを、条約の実施を調整するための有効かつ効率的な機関とするための努力を継続しかつ強化するとともに、設置が予定されている支部とHCCとの間で良好な協力関係および調整を確保すること。
  • (b) 新たな国家的行動計画の全面的実施のために必要な支援(十分な人的資源、財源その他の資源を含む)を提供するとともに、当該計画が条約の実施に与えた影響を定期的に評価すること。
データ
13.委員会は、保健、栄養および教育の分野におけるデータ収集が改善されたことに留意するとともに、中東統計局内に子ども情報部が設置された旨の情報を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約が対象とする分野についての信頼できる統計データの不足および利用可能性について依然として懸念を覚えるものである。
14.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての者に関する統計(遠隔地に住んでいる子ども、虐待の被害者、障害のある子ども、思春期の健康、罪を犯した少年等に関するデータも含む)を収集すること。
  • (b) 子ども情報部を強化するとともに、当該部局に対して十分な人的資源および財源を提供すること。
  • (c) とくにさまざまな政府省庁間で統計上の定義を調和させることにより、データの信頼性を向上させるための方法を検討すること。
  • (d) 引き続きユニセフの援助を求めること。
監視体制
15.委員会は、HCCが、調整機能に加え、少年裁判所所長(1998年の決定第134号)および司法委員会(1999年の決定第2108号)とともに実施の監視も担当していることに留意する。委員会は、これらの種々の機構間で調整が行なわれていないことを懸念するものである。さらに委員会は、条約の実施における進展を恒常的に監視しおよび評価することを任務とし、かつ子どもからの苦情を受理しおよびこれに対応する権限を与えられた独立の機構が存在しないことを懸念する。
16.委員会は、締約国が、パリ原則および委員会の一般的意見2号にしたがい、国および地方のレベルで条約の実施における進展を監視しおよび評価するための独立した国内人権機関を設置するよう、勧告する。この機関は、十分な資源を有し、子どもがアクセスしやすく、かつ、子どもの権利侵害の苦情を子どもに配慮したやり方で受理しおよび調査しならびにこれに効果的に対応する権限を与えられたものであるべきである。
資源配分
17.委員会は、条約が対象としている分野、とくに保健、教育および子どもの保護に対する予算配分が低額であることを依然として懸念する。このことは、子どもの経済的、社会的および文化的権利を「利用可能な資源を最大限に」用いて実施することに関わる条約第4条に対し、十分な注意が払われてこなかったことを示すものである。
18.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 利用可能な資源を最大限に用いてすべての子どもの経済的、社会的および文化的権利を確保すること。
  • (b) 引き続き、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(たとえば同国の北部および東北部に住んでいる子ども)を対象とする社会サービスへの予算配分を優先させ、かつその対象を明確にすること。
  • (c) 予算配分額が子どもの権利の実施に与える影響を体系的に評価すること。
市民社会との協力
19.委員会は、政府が開発部門および福祉部門の国内団体ならびに国際機関と良好な協力関係にある旨の情報に留意する。しかしながら委員会は、とくに市民的権利および自由の分野において、条約の実施に市民社会を積極的に関与させるための努力がほとんど行なわれてこなかったことを懸念するものである。
20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約の実施(市民的権利および自由との関連における実施も含む)の全段階を通じて子ども団体を含む市民社会の関与を得ることに対し、組織的アプローチをとること。
  • (b) NGOの参加を促進しかつ強化する一歩として、NGOを規制する法律(たとえば民間団体・機関法(1958年法律第93号))が条約第15条および結社の自由に関する他の国際基準に一致することを確保すること。
研修/条約の普及
21.委員会は、条約を普及するために締約国が行なっている努力、および、これらの努力の有効性を評価するための研究を歓迎する。これとの関連で、委員会は、子どもの市民的権利および自由との関連でもっとも意識が低いことに留意するものである。
22.委員会は、締約国に対し、引き続き以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 子どもおよび親ならびに市民社会の間でならびにあらゆる行政部門および行政段階において(市民的権利および自由に注意を向けながら)条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラム(非識字者であるまたは正規の教育を受けていない脆弱な立場に置かれた集団を対象とするための取り組みを含む)を拡大し、かつ継続的なものとすること。
  • (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教員ならびに保健従事者)を対象とした、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。
  • (c) この点に関してとくにOHCHRおよびユニセフの援助を求めること。

2.子どもの定義

23.委員会は、女子の最低婚姻年齢(17歳)を男子のそれ(18歳)まで引き上げる点についてなんらの進展も見られないことを遺憾に思う。この差異は差別的であり、かつ条約第2条に反するものである。委員会は、農村部における早期婚を引き続き懸念する。
24.委員会は、締約国が、女子の最低婚姻年齢を男子のそれまで引き上げるために法律を改正し、かつ、とくに農村部でその法律を執行するためにいっそうの努力を行なうよう、勧告する。

3.一般原則

差別の禁止に対する権利
25.委員会は、条約第2条に反して、とくに以下の点に関して、子どもまたはその親もしくは法定保護者に対する直接間接の差別が根強く残っていることを懸念する。
  • (a) 女子、婚外子およびマイノリティに属する子ども。
  • (b) 保健サービスおよび教育サービスへのアクセスに関する農村部と都市部間の格差、および、とくに同国の北部および東北部が社会指標の面で後れをとっていること。
26.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 第2条にしたがい、自国の管轄内にあるすべての子どもが、条約に定められたすべての権利を差別なく享受することを確保するため、必要なときは法律を制定しまたは廃止すること、格差削減プログラムを実施すること等の効果的措置をとること。
  • (b) この点に関する社会の否定的な態度を防止しかつこれと闘うため、包括的な公衆教育キャンペーンを実施すること。
  • (c) 男女間の権利の平等に関する自由権規約委員会の一般的意見28号を正当に考慮すること。
  • (d) そのような努力を支援するために宗教的指導者を動員すること。
27. 委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。
子どもの最善の利益
28.委員会は、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の一般原則が、子どもに関わるすべての法律に明示的に編入されておらず、かつ、実務上、常に考慮されているわけではないことを懸念する。たとえば委員会は、ある法案において、身分関係法第146条に定められた年齢の引き上げが提案されていることに留意するものである。委員会は、監護に関する判断が、どのような取決めが子どもの最善の利益にかなうかではなく年齢のような基準によって行なわれていることを、依然として懸念する。
29.委員会は、締約国が、条約第3条を立法および実務に全面的に編入するよう勧告する。
子どもの意見の尊重
30.委員会は、間もなく子ども議会が設置される予定である旨の情報を含め、子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもに対する社会の伝統的態度により、とくに家庭および学校において子どもの意見の尊重が制約される可能性があり、かつ、子どもが自己に影響を与える裁判手続および行政手続において制度的に意見を聴かれているわけではないことを、懸念するものである。
31.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約第12条にしたがい、家庭、学校、施設および裁判所における子どもの意見の尊重ならびに自己に影響を与えるすべての事柄への子ども参加を引き続き促進し、かつそのための便宜を図ること。
  • (b) 十分な情報を得たうえでの子どもの意見および見解の表明を支援し、かつこれらの意見を考慮するためのスキル訓練プログラムを、親、教員、ソーシャルワーカーおよび地方官吏を対象として、コミュニティのなかで発展させること。

4.市民的権利および自由

国籍
32.委員会は、シリア国籍法(1969年法律第276号)第3条により、外国人と婚姻したシリア人女性の子どもに対しては、父がシリア人である場合とは異なって自動的に市民権が付与されないことを懸念する。さらに委員会は、シリアで出生した無国籍のクルド人親から生まれ、かつ出生時に他のいかなる国の国籍も有していない子どもが、条約第2条および第7条に反して、シリア国籍を付与されないままであり、かつ差別の対象とされていることを遺憾に思うものである。
33.委員会は、条約第2条および第7条において、締約国の管轄内のすべての子どもが、子どもまたはその親もしくは法定保護者の性別、人種、宗教または民族的出身に関わらず、登録されかつ国籍を取得する権利を有するべきことが求められていることを、あらためて強調する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) いずれかの親の性別に基づいて差別することなく、国籍に対する子どもの権利を確保すること。
  • (b) シリアで出生したクルド人親の子どもに対してシリア国籍を取得する権利を保障するため、緊急の措置をとること。
  • (c) 無国籍者の地位に関する条約(1954年)および無国籍の削減に関する条約(1961年)を批准すること。
表現、思想、良心および宗教〔ならびに〕結社および集会の自由、プライバシーに対する権利ならびに情報にアクセスする権利
34.委員会は、報告書において第1回報告書に掲載された情報を参照するよう求められているのは、これらの問題に関する条約第13条~17条の実施との関連でほとんどまたはまったく進展がなかったことの表れであることを懸念する。
35.委員会は、締約国が、とくにこれらの権利に関する子どもたちの意識を高め、かつ日常的実践におけるこれらの権利の積極的活用を推進することによってこれらの権利の実施を積極的に促進するとともに、次回の報告書でこの点に関する進展を報告するよう、勧告する。

5.家庭環境および代替的養護

暴力/虐待/ネグレクト/不当な取扱い
36.委員会は、家庭における子どもの不当な取扱いならびにドメスティックバイオレンスおよびそれが子どもに与える影響に関する研究および意識啓発に関して、締約国においてほとんど進展がなかったことを遺憾に思う。さらに委員会は、学校における体罰が法律で禁じられていないことを懸念するものである。
37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの不当な取扱いおよび虐待ならびにドメスティックバイオレンスの性質および規模を評価するための包括的研究を実施するとともに、この問題に対応するための政策およびプログラムを立案するために当該研究の結果を活用すること。
  • (b) 子どもの虐待およびネグレクトを防止するために必要な措置(たとえば子どもの不当な取扱いの悪影響に関する教育的公衆キャンペーン、子育て教室)をとるとともに、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進すること。
  • (c) あらゆる形態の暴力(家庭、学校その他の施設における子どもの体罰および性的虐待を含む)を禁止するための立法措置をとること。
  • (d) 苦情を受理し、監視しかつ調査する(必要なときは介入することも含む)ための、効果的かつ子どもに配慮した手続および機構を設置すること。その際、被害者が援助を求めることの妨げとなる社会文化的障壁への対応およびその克服に特段の注意を払うこと。
  • (e) 虐待された子どもが法的手続において被害を受けないことおよびそのプライバシーが保護されることを確保しながら、不当な取扱いの事案を捜査しかつ訴追すること。
  • (f) 被害者のケア、回復および再統合を行なうこと。
  • (g) 教員、法執行官、ケアワーカー、裁判官および保健専門家を対象として、不当な取扱いの事案の発見、通報および処理に関する研修を行なうこと。
  • (h) とくにユニセフおよびWHOの援助を引き続き求めること。

6.基礎保健および福祉

障害のある子ども
38.委員会は、障害者に関する法案が作成されつつあり、かつそこで障害者評議会の設置が提案されている旨の情報を歓迎する。しかしながら委員会は、専門的なサービスおよび教育に対する障害のある子どものアクセスが全般的に不十分であり、かつ家族への支援が不十分であることを懸念するものである。
39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの障害の原因および規模を評価するための調査を実施すること。
  • (b) 障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および「障害のある子ども」に関する一般的討議の際に採択された委員会の勧告(CRC/C/69参照)を正当に考慮しながら、障害のある子どもに関する現行の政策および実務を見直すこと。
  • (c) 必要な専門的資源および財源を利用可能とするためにいっそうの努力を行なうこと。
  • (d) コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム(親の支援グループを含む)を促進しかつ拡大するためにいっそうの努力を行なうこと。
  • (e) あらゆる形態の障害のある子どもを普通教育に包摂するためにいっそうの努力を行なうこと。
  • (f) とくにユニセフおよびWHOの援助を求めること。
保健
40.委員会は、小児期疾病統合管理戦略の採用、および、さまざまな取り組み(共同体学校イニシアティブおよび「健康的な村づくり」など)に対する締約国の支援を歓迎するとともに、最近の複数指標クラスター調査で明らかにされた、児童保健および妊産婦保健における達成に留意する。しかしながら委員会は、以下のことをなお懸念するものである。
  • (a) 同国の保健センターのサービスの範囲および質が限定的であること。
  • (b) 訓練を受けた保健従事者の立ち会いがない出産が約14%にのぼっていること。
  • (c) ケアの質に関して官民の保健サービス間に相当の隔たりがあること、および、ほとんどの人は保険に加入していないために民間サービスにアクセスできないこと。
  • (d) 北部の母親のうち、経口保水療法を用いて子どもの下痢に正しく対応している親が25%にすぎないこと。
  • (e) ヨウ素添加塩を使用している世帯が約60%にすぎないこと。
  • (f) 農村部において、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスが不十分であること。
41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 公的プライマリーヘルスケアに対する締約国のコミットメントに相応した、人的資源および財源の十分な配分が行なわれ、かつ、とくに農村部のすべての子どもが保健ケアにアクセスできることを確保すること。
  • (b) 小児期疾病統合管理戦略を国全域で実施するための努力を引き続き行なうこと。
  • (c) 乳幼児期の家庭看護実践の向上を促進するためにいっそうの努力を行なうこと。
  • (d) 共同体学校イニシアティブおよび「健康的な村づくり」を引き続き支援しかつ拡大すること。
  • (e) 引き続き、とくにユニセフおよびWHOと協力し、かつその援助を求めること。
思春期の健康
42.委員会は、HIV/AIDS啓発キャンペーンに対する締約国の支援を歓迎する。しかしながら委員会は、思春期の健康に関して利用可能な、リプロダクティブヘルスおよび精神保健関連のカウンセリング・サービスが不十分であることを懸念するものである。
43.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 青少年が、リプロダクティブヘルスその他の思春期の健康に関わる問題に関する教育および子どもに配慮しかつ秘密が守られるカウンセリング・サービスにアクセスでき、かつこのような教育およびサービスを提供されることを確保すること。
  • (b) 学校制度において、思春期の健康教育の分野における努力を強化すること。
  • (c) HIV/AIDS啓発予防キャンペーンを継続しかつ強化すること。
  • (d) 引き続き、ユニセフおよびWHOと協力し、かつその援助を求めること。

7.教育

44.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 初等学校および中等学校を中退する児童生徒、とくに農村部の子どもおよび女子の割合が高いこと。
  • (b) 教科書および教材が足りない学校が多いこと。
45.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 校舎の衛生設備の不十分さ、早期婚、通学にともなう間接費用および学校送迎の欠如といった問題に対応することにより、とくに農村部におけるおよび女子による初等中等段階での学校中退の問題を食いとめるための取り組みを強化すること。
  • (b) 学習教材および備品の供給を確保するために必要な資源配分のため、いっそうの努力を行なうこと。
46.委員会は、基礎教育の質向上を目的とした「グローバル教育イニシアティブ」が採択されたこと、および、カリキュラム改革に向けて若干の努力が行なわれてきたことに留意する。にもかかわらず、委員会は、報告書で提示された教育の目的には条約第29条に掲げられた目的が十分に反映されていないこと、および、とくに以下のことを依然として懸念するものである。
  • (a) 公教育制度が、分析的スキルの発達よりも暗記学習を引き続き重視しており、かつ子ども中心のものとはなっていないこと。
  • (b) 人権、寛容ならびに両性間ならびに宗教的および民族的マイノリティ間の平等を発展させることおよびこれらを尊重することが明示的にカリキュラムの一部とされていないこと。
47.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮しながら、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 批判的思考および問題解決スキルの発達の重要性を強調する、カリキュラムおよび教授法の改革プロセスを――子どもの全面的参加を得ながら――進めること。
  • (b) 教育において、子どもの人格、才能ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで発達させることが指向されるようにすること。
  • (c) とくに人権、寛容ならびに両性間ならびに宗教的および民族的マイノリティ間の平等を発展させることおよびこれらを尊重することとの関連で、学校カリキュラムに人権教育(子どもの権利を含む)を含めること。これとの関連で宗教的指導者の動員が図られなければならない。
  • (d) とくにユニセフおよびユネスコの援助を求めること。

8.特別な保護措置

難民および庇護希望者
48.委員会は、とくに保護者のいない未成年者、教育へのアクセスおよび出生登録の確保との関連で、締約国が難民の子どもに関して行なっている努力に評価の意とともに留意する。委員会は、難民の子どもの保護を確保するうえで重要な一歩となるUNHCRとの了解覚書に関する進展を歓迎するものである。しかしながら委員会は、庇護に関わる問題についての立法上または行政上の規定が存在しないことを懸念する。
49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約第2条および第22条にしたがい、難民および庇護希望者である子どものすべての権利を確保するための効果的な措置を引き続きとること。
  • (b) 難民の地位に関する1951年の条約および1967年の同議定書の批准を検討すること。
  • (c) 国際基準に合致した国内難民法を導入するための措置をとること。
  • (d) UNHCRとの協力を継続しかつ強化すること。
経済的搾取
50.委員会は、ILO第138号条約の批准を歓迎する。委員会はさらに、就労が認められるための最低年齢を15歳に引き上げることを目的とした1959年労働法の改正を歓迎するものである。しかしながら委員会は、14歳未満の子どものおよそ7%が労働者として雇用されていること、および、まさに多くの児童労働が集中しており、かつ多くの場合に危険な条件をともなうインフォーマル部門(すなわち家族経営事業、農業)での労働に従事している子どもには効果的な監察を含む労働法の規定が適用されないことを、依然として懸念する。さらに委員会は、1958年農業関係法の改正案においてこれらの懸念への対応が十分に行なわれていないことに留意するものである。
51.条約第32条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) ILO第146号勧告を考慮し、十分な人的資源および財源ならびに研修の提供を通じて労働査察を強化し、かつ防止およびリハビリテーションのためのあらゆる必要な措置をとりながら、子どもの権利条約第32条およびILO第138号条約が法律上も実際上も実施されることを確保するための即時的かつ効果的な措置をとること。
  • (b) ILOおよびユニセフの援助を求めること。
少年司法の運営
52.委員会は、締約国が少年司法制度の改革プロセスを開始した旨の情報には留意するものの、この改正が子どもの権利を基盤とする包括的な計画ではないこと、および、現在、以下のもののようなさまざまな問題が存在していることを、依然として懸念する。
  • (a) 犯罪を行なった7~15歳の子どもが(必ずしも収監刑ではないとはいえ)刑を言い渡される可能性があること。
  • (b) 物乞いのような子どもの問題行動が地位犯罪として犯罪化されていること。
  • (c) 審判前勾留に対する厳格な制限が実際には遵守されていないように思われること。
  • (d) 身柄拘束刑に代わる措置の利用が稀にしか行なわれないこと。
  • (e) 少年を対象とする拘禁所の環境がしばしば過酷なものとなっていること。
  • (f) 条約で唱道されている、少年犯罪問題への対応((たとえば根本的な社会的要因への対応)に対するホリスティックなアプローチ(防止、特別手続およびダイバージョンを含む)が締約国によって十分に考慮されてこなかったこと。
53.委員会は、締約国が、条約の規定(とくに第37条、第39条および第40条)およびこの分野における他の関連の国際基準(北京規則リャド・ガイドライン自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針など)を法律および実務に全面的に統合した少年司法制度を設置するための、包括的な国家的戦略を策定しかつ実施するよう、勧告する。委員会は、締約国が、以下の目的のために特段の努力を行なうよう勧告するものである。
  • (a) 刑事責任に関する最低年齢を15歳のまま維持するとともに、法律に抵触した15歳未満の子どもに対し、刑事司法制度を通じてではなく子ども保護手続を通じて対応するための措置をとること。
  • (b) 18歳未満の者が成人として審理されないことを確保すること。
  • (c) 自由の剥奪が、最後の手段としてのみ、可能なもっとも短い期間で用いられ、かつ裁判所による認可の対象とされること、および、18歳未満の者が成人とともに収容されないことを確保すること。
  • (d) 子どもが法的援助および独立のかつ効果的な苦情申立て手続にアクセスできることを確保すること。
  • (e) 司法制度、政策および社会的支援体制の連携を強化すること。
  • (f) 子どもの社会的更生の分野で専門家の研修を行なうこと。

9.報告書の普及

54.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、締約国のあらゆる段階の統治機構および一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。
55.報告の定期性に関して委員会が採択した勧告(CRC/C/114 and CRC /C/124参照)に照らし、かつ締約国の第3回定期報告書の提出期限が第2回報告書の検討後2年以内であることに留意し、委員会は、締約国に対し、第3回・第4回統合定期報告書を、2009年2月13日(すなわち条約にしたがって定められた提出期限の18か月前)〔まで〕に提出するよう慫慂する。当該報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。


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