自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)

国連総会決議45/113(1990年12月14日)
原文英語(日本語訳・平野裕二)

第1部 基本的視点

1.少年司法制度は少年の権利と安全を擁護し、かつその身体的および精神的福祉を促進するようなものであるべきである。収監は最後の手段として用いられなければならない。
2.少年は、本規則および少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)に掲げられた原則および手続にしたがう場合でなければ自由を奪われてはならない。少年の自由の剥奪は最後の手段かつ必要最小限の期間の処分でなければならず、かつ例外的な場合に限られるべきである。制裁の期間は司法機関によって決定されなければならず、かつ早期の釈放の可能性が排除されてはならない。
3.本規則は、あらゆる形態で自由を奪われた少年を人権と基本的自由に合致する形で保護することに関して、国連が受け入れる最低基準を確立することを意図したものである。その目的は、あらゆるタイプの拘禁の有害な影響を中和し、かつ社会への再統合を促進することにある。
4.本規則は、人種、皮膚の色、性別、年齢、言語、宗教、国籍、政治的その他の意見、文化的信条もしくは慣習、財産、民族的もしくは社会的出身および障害によるいかなる種類の差別もなく、公正に適用されるべきである。少年の宗教的および文化的信条、慣習および道徳観は尊重されなければならない。
5.本規則は、少年司法制度の運営に携わる専門家を対象とした利用しやすい参照基準として機能し、かつそのような専門家に対して奨励と指針を提供することを目的としたものである。
6.本規則は、少年司法職員がその自国語で容易に利用できるようにされるべきである。拘禁施設職員が話す言語を難なく用いることのできない少年は、必要な場合には常に、とくに医療検診および懲戒手続においては、無償で通訳サービスを受ける権利を有するものとする。
7.適当な場合、各国は本規則を国内法に編入しまたは本規則にしたがって国内法を改正するとともに、その違反に対し、少年が傷害を負った場合の補償を含む効果的救済を提供するべきである。各国はまた、本規則の適用を監視しなければならない。
8.権限ある機関は、拘禁された少年をケアし、かつその社会復帰に向けた準備を行なうことがきわめて重要な社会サービスであるという公衆の意識を高めるよう、常に努めるべきである。この目的に向けて、少年と地域コミュニティとのあいだの開かれた接触を促進するため積極的な措置がとられなければならない。
9.本規則のいかなる規定も、国際社会が承認した関連の国連文書および国連基準ならびに人権文書および人権基準であって、少年、子どもおよびあらゆる青少年の権利、ケアおよび保護の確保にいっそう貢献するものの適用を排除するものとして解釈してはならない。
10.本規則の第2部から第5部に掲げられた特定の規定を実際に適用することが第1部に掲げられた規則に何らかの形で抵触するさいには、第1部に掲げられた規則にしたがうことが優先的に求められると解さなければならない。

第2部 規則の適用範囲および実際の適用

11.本規則の適用上、以下の定義が用いられなければならない。
  • (a) 少年とは、18歳未満のすべての者を指す。子どもの自由を奪うことが許されない最低年齢が法律で定められなければならない。
  • (b) 自由の剥奪とは、いずれかの司法機関、行政機関その他の公的機関の命令によるあらゆる形態の拘禁もしくは収監または公的もしくは私的な身柄拘束環境への措置であって、対象とされた者がみずからの意思で離れることを許されないものを指す。
12.自由の剥奪は、少年の人権の尊重を確保するような条件と環境のもとで実施されなければならない。施設に収容された少年に対しては有意義な活動とプログラムの利益が保障されるべきである。そのような活動およびプログラムは、少年の健康と自尊心を促進および維持し、その責任感を醸成し、かつ、少年が社会の構成員として本来有している能力を発達させる役に立つような態度とスキルを奨励するものでなければならない。
13.自由を奪われた少年は、その地位に関連するいかなる理由によっても、国内法または国際法にもとづき享受を認められた権利であって、自由の剥奪と両立する市民的、経済的、政治的、社会的または文化的権利を否定されない。
14.少年の個人としての権利は、拘禁措置の執行の合法性を特別に考慮しながら、権限ある機関によって確保されなければならない。同時に、少年を訪問する権限を認められかつ拘禁施設に所属しない、適正に構成された機関が国際基準、国内法および国内規則にしたがって遂行する定期的査察その他の統制手段により、社会的統合という目的が確保されるべきである。
15.本規則は、少年が自由を奪われるすべてのタイプおよび形態の拘禁施設に適用される。本規則の第1部、第2部、第4部および第5部は、少年が収容されるすべての拘禁施設および施設的環境に適用される。第3部は、逮捕された少年または審判前の少年に対してとくに適用される。
16.本規則は、各加盟国を覆っている経済的、社会的および文化的条件の文脈に照らして実施されなければならない。

第3部 逮捕された少年または審判前の少年

17.逮捕によりまたは審判のために(「未決」)拘禁されている少年は無罪と推定され、かつそのように扱われる。審判前の拘禁は可能なかぎり回避され、かつ例外的状況に限定されなければならない。したがって、代替的手段を用いるためにあらゆる努力が行なわれるものとする。それにも関わらず予防拘禁が用いられるときは、少年裁判所および捜査機関は、拘禁期間を可能なかぎり短くすることを確保するため、そのような事件を最大限に迅速に処理することを最優先しなければならない。未決拘禁者は有罪宣告を受けた少年から分離されるべきである。
18.未決少年が拘禁される条件は以下に掲げる規則に合致するものとし、かつ、無罪推定の要請、拘禁期間ならびに少年の法的地位および状況に照らして必要かつ適切な特別規定が追加されるべきである。追加されるべき規定には以下のものが含まれるが、かならずしもこれに限られない。
  • (a) 少年には弁護人選任権が保障されるべきであり、かつ、無償の法律扶助が利用可能な場合にはそのような扶助を申請すること、および弁護人と定期的に接見交通することを可能とされなければならない。そのような接見交通にあたってはプライバシーおよび秘密の保持が確保されるものとする。
  • (b) 少年は、可能な場合には報酬をともなう作業に従事し、かつ教育または訓練を継続する機会を与えられるべきであるが、ただしそうすることを義務づけられてはならない。作業、教育または訓練を理由として拘禁が継続されてはならない。
  • (c) 少年は、司法の運営の利益と両立するかぎりにおいて、余暇およびレクリエーションのための用具を支給されかつ保持することができなければならない。

第4部 少年施設の運営

A.記録

19.法的記録、医学上の記録や懲戒手続の記録を含むすべての報告、および処遇の形態、内容と詳細に関わるその他のすべての文書は、秘密保持の対象とされる個人ファイルに保管されるべきである。当該ファイルは、常に更新され、許可を受けた者だけがアクセスできるものとされ、かつ、容易に理解できるような方法で分類されていなければならない。不正確な、根拠のない、または不公正な記述を訂正できるようにするため、可能な場合には、すべての少年に対し、自己のファイルに記載されたいかなる事実または見解についても異議を申し立てる権利が認められるべきである。この権利を行使できるようにするため、適切な第三者が請求にもとづいてファイルにアクセスし、かつファイルを調査することを可能にする手続が定められていなければならない。少年の記録は釈放と同時に封印され、かつ適当な時点で廃棄されるものとする。
20.いかなる少年も、司法機関、行政機関またはその他の公的機関による有効な措置命令なくして、いかなる拘禁施設にも収容されてはならない。当該命令の詳細はただちに記録簿に記載されるべきである。いかなる少年も、そのような記録簿を備えない施設に拘禁されてはならない。

B. 入所、登録、移動および移送

21.少年が拘禁されるすべての場所において、収容された少年ひとりひとりに関して、以下の情報についての完全かつ確実な記録が保管されるべきである。
  • (a) 少年の身元に関する情報。
  • (b) 措置の事実関係および理由ならびに措置を行なった機関。
  • (c) 入所、移送および釈放の日時。
  • (d) 措置の時点で少年を養育していた親および保護者に対する、少年のすべての入所、移送または釈放に関する通知の詳細。
  • (e) 薬物およびアルコールの濫用を含む、既知の身体的および精神的健康上の問題の詳細。
22.入所、措置場所、移送および釈放に関する情報は、当該少年の親および保護者またはもっとも身近な親族に対し、遅滞なく提供されるべきである。
23.収容後できるだけ早い時点で、各少年の個人的状況および環境に関する網羅的報告書および関連の情報が作成され、かつ管理者に対して提出されるべきである。
24.入所にさいし、すべての少年に対して、当該拘禁施設の管理規則の写し、および少年の権利と義務を少年が理解できる言葉で説明した文書が渡されなければならない。それとともに、苦情を受理する権限のある機関の住所と、法的援助を提供する公的または民間の機関および団体の住所も渡されるものとする。非識字の少年または書き言葉を理解できない少年に対しては、全面的理解を可能にするような方法で当該情報が伝達されるべきである。
25.施設の内部運営に関する規則、提供されるケアの目標と方法、懲戒の要件と手続、情報の請求または苦情申立てのために認められた方法、および、拘禁中の自己の権利と義務を全面的に理解するために必要なその他のあらゆる事項を理解するための援助が、すべての少年に対して提供されるべきである。
26.少年の移送は、管理者の負担により、充分な換気と光を備えた輸送手段で、かつ少年をいかなる意味でも虐待または屈辱にさらすことのない条件のもと実施されるべきである。少年は、ある施設から別の施設へと恣意的に移送されてはならない。

C.分類および配置

27.入所の時点からできるだけ速やかに、各少年の面接が行なわれ、かつ、少年が必要とするケアおよびプログラムの具体的タイプとレベルに関連するすべての要素を特定した心理学的および社会的報告書が作成されるべきである。この報告書は、入所時に診察を行なった医務官が作成した報告書とともに、少年にとってもっとも適切な施設内の配置と、必要でありかつ追求されなければならないケアおよびプログラムの具体的タイプとレベルを決定する目的で、施設の長に送付されなければならない。社会復帰のための特別な処遇が必要とされる場合であって、施設の収容期間によって可能であるときは、訓練を受けた施設職員が個別の処遇計画書を作成するべきである。当該計画書においては、処遇の目標と時間枠、ならびにその目標に近づくための手段、段階および猶予期間を定めるものとする。
28.少年の拘禁は、その年齢、性格、性別および罪種に応じた特有のニーズ、地位および特別な要件ならびに精神的および身体的健康を全面的に考慮にいれ、かつ有害な影響や危険な状況から少年が保護されることを確保するような条件のもとでなければ、行なってはならない。自由を奪われた少年をさまざまなカテゴリー別に分離するさいの第一の基準は、当該少年の特有にニーズにもっともふさわしいタイプのケアを提供することと、その身体的、精神的および道徳的不可侵性および福祉を保護することであるべきである。
29.すべての拘禁施設において、同じ家族の構成員である場合を除き、少年は成人から分離されるべきである。当該少年の利益となることが明らかにされた特別プログラムの一環として、管理された条件のもと、少年を慎重に選ばれた成人といっしょにすることは認められる。
30.少年を対象とした開放型の拘禁施設が設置されるべきである。開放型の拘禁施設とは、保安措置がまったくとられていないまたは最小限に抑えられている施設を指す。そのような拘禁施設の収容人数はできるだけ少数であるべきである。閉鎖型施設に拘禁される少年の人数は、個別処遇を可能にするのに充分な規模に抑えられなければならない。少年を対象とした拘禁施設は各地に分散して設置され、かつ、少年とその家族とのあいだのアクセスおよび接触を容易にするような規模であるべきである。小規模な貢献施設が設置され、かつコミュニティの社会的、経済的および文化的環境に統合されなければならない。

D.物理的環境および居住設備

31.自由を奪われた少年は、健康および人間の尊厳の要求をすべて満たすような便益およびサービスに対する権利を有する。
32.少年を対象とした拘禁施設の設計および物理的環境は、社会復帰という居住型処遇の目的にのっとり、かつプライバシー、感覚刺激、仲間との交流やスポーツ活動への参加の機会、体操ならびに余暇活動に対する少年のニーズを正当に考慮したものであるべきである。少年拘禁施設の設計および構造は、火災のおそれを最小限に抑え、かつ敷地からの安全な避難を確保するようなものでなければならない。火災に備えた効果的な警報システムを設けるとともに、少年の安全を確保するための正式な手続を定め、かつそれにしたがった避難訓練を行なうべきである。拘禁施設は、健康上その他の危険またはそのおそれの存在が知られている地域に設置されてはならない。
33.就寝設備は、その地域の水準を念頭に置きながらも、少人数の共同部屋または個室が通例とされるべきである。各少年の保護を確保するため、就寝時には、個室および共同部屋を含むすべての就寝区域が定期的に、かつ睡眠の妨げとならない形で監督されなければならない。各少年に対し、その地域または国の水準にしたがって、個別のかつ充分な寝具が提供されるべきである。当該寝具は、提供時に清潔であり、その後もよい状態に保たれ、かつ清潔さを確保するのに充分な頻度で交換されなければならない。
34.衛生設備は、すべての少年がプライバシー、清潔さおよび品位を確保された方法で必要なときにその身体的ニーズを満たせるような場所に設けられ、かつそのための充分な水準を備えたものであるべきである。
35.私物の所持はプライバシーに対する権利の基本的要素であり、かつ少年の心理的福祉にとって必要不可欠なものである。私物を所持し、かつその保管のための充分な便益を与えられるすべての少年の権利が全面的に承認および尊重されなければならない。少年が手元に置かないことにした私物または没収された私物は安全に保管されるべきである。その目録には少年の署名がなされなければならない。当該私物をよい状態で保管するための措置がとられるべきである。そのようなすべての金品は釈放時に少年に返還されなければならないが、少年が金銭を使用し、またはそのような財産を施設外に送付することを認められていた場合はこのかぎりでない。少年がいずれかの医薬品を受け取りまたは所持していることが認められたときは、それをどのように使用すべきかについて医務官が決定するべきである。
36.少年は可能なかぎり私服を着用する権利を有する。拘禁施設は、気候に適しており、良好な健康状態を確保するのに充分であり、かついかなる意味でも品位を傷つけまたは屈辱的となることのない私服を、各少年が保持できるようにするべきである。いずれかの目的で施設から退出させられまたは退出する少年は、私服の着用を認められなければならない。
37.すべての拘禁施設は、適切に調理され、通常の食事時間に提供され、かつ、栄養、衛生および健康の水準ならびにできるかぎり宗教的および文化的要求も満たすだけの質と量を備えた食糧がすべての少年に与えられることを確保しなければならない。すべての少年が清潔な飲料水をいつでも利用できるようにするべきである。

E.教育、職業訓練および作業

38.義務教育年齢にあるすべての少年は、そのニーズと能力に適合し、かつ社会復帰の準備を目的とした教育に対する権利を有する。そのような教育は、釈放後も少年が困難なく教育を継続することができるよう、可能な場合には常に拘禁施設外のコミュニティの学校において、かついかなる場合にも資格のある教職員により、国の教育制度に統合されたプログラムを通じて提供されるべきである。拘禁施設管理者は、外国出身の少年または特定の文化的もしくは民族的ニーズを有する少年の教育に対し、特別な注意を向けなければならない。非識字の少年または認知障害または学習障害を有する少年は特別な教育に対する権利を有する。
39.義務教育年齢を超過した少年であって教育を継続したいと望む者に対しては、教育の継続が許可および奨励されるべきであり、かつ、そのような少年に対して適切な教育プログラムへのアクセスを提供するためにあらゆる努力が行なわれるべきである。
40.拘禁中の少年に授与される修了証書または履修証明書は、少年が施設に措置されていたことをいかなる形でも明らかにするものであってはならない。
41.すべての拘禁施設において、少年にふさわしい教育書および娯楽書ならびに定期刊行物を充分に備えた図書館へのアクセスが提供されるべきである。少年は、図書館の全面的活用を奨励され、かつそれを可能とされなければならない。
42.すべての少年は、将来の就業の備えになると思われる職種についての職業訓練を受ける権利を認められるべきである。
43.職業上の適切な選択および施設管理上の要請を正当に考慮したうえで、少年は自分が行ないたいと望む作業のタイプを選択できるべきである。
44.児童労働および若年労働者に適用されるすべての国内的および国際的保護基準は、自由を奪われた少年にも適用されるべきである。
45.コミュニティに復帰したときに適切な就業先を見つける可能性を高める目的で、少年は、可能な場合には常に、提供される職業訓練を補完するものとして、可能であれば地域コミュニティのなかで報酬をともなう労働に従事する機会を提供されるべきである。作業のタイプは、釈放後の少年の利益となる適切な訓練を提供できるようなものでなければならない。拘禁施設で提供される作業の運営と方法は、少年に通常の職業生活の環境に向けた備えをさせられるよう、コミュニティにおける類似の作業の運営と方法にできるかぎりよく似たものであるべきである。
46.作業に従事するすべての少年に、公正な報酬に対する権利が認められるべきである。少年およびその職業訓練の利益が、拘禁施設または第三者利得を得る目的のために二の次にされることがあってはならない。少年の収入の一部は、釈放時に少年に渡されるべき貯金として積み立てるのを通例とするべきである。少年には、収入の残りを、自己使用のための物品を購入しもしくは自己の犯罪により損害を受けた被害者に償いをするために用い、または拘禁施設外の家族その他の者に送付する権利を認められなければならない。

F.レクリエーション

47.すべての少年には、毎日適切な時間の自由運動を、天候が許す場合には常に屋外で行なう権利が認められるべきである。運動時間中には、適切なレクリエーション的な訓練および身体的訓練が提供されるのを通例としなければならない。このような活動のために充分な空間、設備および用具が提供されるべきである。すべての少年に、これに加えて毎日の余暇活動のための時間が認められなければならず、その時間の一部は、少年が希望する場合には、美術および工作技能の発達に充てられるものとする。拘禁施設は、利用可能な体育プログラムに各少年が物理的に参加できることを確保するべきである。治療的な体育および身体療法が、医師の監督のもと、それを必要とする少年に対して提供されなければならない。

G.宗教

48.すべての少年は、とくに拘禁施設で行なわれる礼拝もしくは集会に参加すること、またはみずから礼拝を行ない、かつ自己の宗派の宗教的戒律および教義に関わる必要な書物または物品を所持することにより、その宗教的生活および精神生活のニーズを満たすことが認められるべきである。特定の宗教に属する少年が拘禁施設に相当数収容されているときは、資格のある当該宗教の代表を一名または複数名任命または承認し、定期的に礼拝を行なうこと、および少年の求めに応じて立会いなしに少年と宗教上の面会を行なうことを認めなければならない。すべての少年に、自己の選択したいずれかの宗教の資格のある代表と面会する権利とともに、宗教上の礼拝に参加せず、かつ宗教上の教育、カウンセリングまたは教化を自由に拒む権利が認められるべきである。

H.医療上のケア

49.すべての少年に対し、予防のためか治療のためかを問わず充分な医療上のケアが与えられなければならない。このようなケアには、歯科、眼科および精神保健上のケアならびに医師の指示による医薬品および特別食が含まれる。このようなすべての医療上のケアは、可能な場合には、少年に対するスティグマ(烙印)を防止しかつ自尊心とコミュニティへの統合を促進する目的で、拘禁施設が設けられているコミュニティの適切な保健施設および保健サービスを通じて、拘禁されている少年に提供されるべきである。
50.すべての少年は、入所前の不当な取扱いの証拠を記録し、かつ医学上の注意を要するいずれかの身体的または精神的状態を発見する目的で、拘禁施設への入所後ただちに医師による診察を受ける権利を有する。
51.少年に提供される医療サービスは、いかなる身体的もしくは精神的疾病、有害物質の濫用または社会への少年の統合を妨げるおそれのあるその他の状態も発見するように努め、かつそれを治療するものでなければならない。少年を対象とするすべての拘禁施設は、収容者の人数と必要にふさわしい充分な医療上の便益および設備にただちにアクセスできるべきであり、かつ、予防保健上のケアおよび医学上の緊急事態への対応の訓練を受けた職員を擁しているべきである。病気の少年、病気を訴える少年、または身体的もしくは精神的困難の症状を示している少年はすべて、医務官による迅速な診察を受けなければならない。
52.いかなる医務官も、拘禁の継続、ハンガーストライキまたは拘禁のいずれかの条件によって少年の身体的または精神的健康が重大な影響を受けたまたは受けるおそれがあると信ずるに足る理由があるときは、当該施設の長、および少年の福祉の保障に責任を負う独立の機関に対し、ただちにその事実を報告しなければならない。
53.精神病の少年に対しては、独立の医療管理のもとに置かれた特別施設で治療が行なわれるべきである。適切な機関との提携により、釈放後も必要に応じて精神保健上のケアが継続されることを確保するための措置がとられなければならない。
54.少年拘禁施設は、資格のある職員によって運営される、薬物濫用の防止およびリハビリテーションのための特別プログラムを採用するべきである。このようなプログラムは、対象となる少年の年齢、性別その他の必要に適合したものでなければならない。薬物依存またはアルコール依存の少年に対しては、訓練を受けた職員が配置された、依存症の治療のための施設およびサービスが利用可能とされるべきである。
55.薬品の投与は、医学上の理由から必要とされる治療のためにのみ、かつ可能な場合には当該少年のインフォームド・コンセント(充分な情報を知らされたうえでの同意)を得たのちに行なわれるべきである。とりわけ、情報または自白を引き出す目的で、または処罰もしくは抑制の手段として薬品が用いられてはならない。少年が薬や治療の治験における被験者とされることがあってはならない。いかなる薬の投与も、常に、資格のある医療職員によって承認および実施されるべきである。

I.疾病、負傷および死亡の通知

56.少年の家族または保護者および少年が指定したその他の者は、請求にもとづく場合、および少年の健康にいずれかの重要な変化が生じた場合に、少年の健康状態について情報を受ける権利を有する。拘禁施設の長は、少年が死亡したとき、少年を外部の医療施設に移送することが必要な疾病が生じたとき、または拘禁施設内部で48時間以上の臨床的ケアを要する状態が生じたときは、当該少年の家族もしくは保護者または指定されたその他の者にただちに通知しなければならない。少年が外国人であるときは、当該少年が市民権を有する国の領事館に対しても通知が行なわれるべきである。
57.自由を剥奪されている期間中に少年が死亡したときは、直近の親族に、死亡証明書を点検し、遺体を目にし、かつ遺体の処置の方法を決定する権利が認められるべきである。拘禁中の少年が志望した場合、死因について独立の機関による調査が行なわれ、かつその報告書に対する直近の親族のアクセスが認められなければならない。このような調査は、拘禁施設からの釈放後6か月以内に少年が死亡した場合であって、当該死亡が拘禁期間と関連していると信ずるに足る理由がある場合にも行なわれるべきである。
58.少年は、直近の家族のいずれかの構成員の死亡または重大な傷病について可能なもっとも早い時点で知らされるべきであり、かつ、故人の葬儀に参列する機会または危篤の親族を見舞う機会が与えられるべきである。

J.広範なコミュニティとの接触

59.少年が外部の世界と充分なコミュニケーションを保つことを確保するため、あらゆる手段が提供されなければならない。このようなコミュニケーションは、公正かつ人道的な取扱いに対する権利の不可欠な一部であり、かつ少年の社会復帰を準備するうえで必要不可欠である。少年は、家族、友人その他の者または定評のある外部の団体の代表とコミュニケーションをとること、自宅や家族を訪問するために拘禁施設から外出すること、および、教育上、職業上またはその他の重要な理由で拘禁施設から外出する特別許可を受けることを認められなければならない。少年が刑に服しているときは、拘禁施設外で過ごした時間も刑期に算入されるべきである。
60.少年がプライバシーを認められ、かつ家族および弁護士と接触しかつ制約を受けないコミュニケーションをとる必要があることを尊重するような状況のもとで、原則として週一回、および少なくとも月一回の定期的かつ頻繁な訪問を受ける権利が、すべての少年に対して認められるべきである。
61.すべての少年に対し、適法に制限される場合を除き、少なくとも週二回、みずから選択する者と手紙または電話でコミュニケーションをとる権利が認められるべきであり、かつこの権利を効果的に享受するために必要な援助が提供されるべきである。すべての少年に対し、通信を受ける権利が認められなければならない。
62.少年は、新聞、定期刊行物その他の刊行物を読み、ラジオやテレビの番組ならびに映画にアクセスし、かつ少年が関心を持ついずれかの合法的なクラブまたは団体の訪問を受けることにより、新しい情報を定期的に知る機会を与えられるべきである。

K.身体の抑制および実力の行使の制限

63.戒具の使用および実力の行使は、以下の規則64に定める場合を除き、いかなる目的であっても禁じられなければならない。
64.戒具の使用および実力の行使は、他のすべての統制手段が尽くされかつ失敗した例外的な場合であって、法律および規則で明示的に許可および規定されている方法にしたがう場合にのみ認められる。そのような手段は屈辱的または品位を傷つけるようなものであってはならず、かつ、限定的におよび可能なもっとも短い時間でのみ用いられなければならない。そのような手段は、管理者の長の命令により、少年の自傷、他害または財産の重大な破壊を防止するために用いることができる場合がある。この場合、管理者の長はただちに医務官その他の関連の職員と協議し、かつ上級の管理機関に報告しなければならない。
65.職員による武器の携帯および使用は、少年が拘禁されているいかなる施設においても禁じられなければならない。

L.規律の維持のための手続

66.規律の維持のためのいかなる措置および手続も、安全および秩序ある共同生活という利益を維持するものであり、かつ、少年の固有の尊厳の支持および施設ケアの基本的目的、すなわち正義、自尊、およびすべての人の基本的権利の尊重の感覚を醸成することに合致したものでなければならない。
67.残酷な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いに相当する規律の維持のための措置はすべて厳格に禁じられなければならない。このような措置には、体罰、暗室または閉鎖房への収容もしくは独居拘禁、または対象とされる少年の身体的または精神的健康を害するおそれのある他のいずれかの処罰が含まれる。減食および家族の構成員との接触の制限または拒否は、いかなる目的でも禁じられなければならない。労働は常に教育手段として、およびコミュニティへの復帰に備えて少年の自尊心を促進する手段として見なされるべきであり、懲戒上の制裁として科されてはならない。いかなる少年も、同一の規律違反について重ねて制裁を受けることがあってはならない。連帯責任にもとづく制裁は禁じられるべきである。
68.権限ある管理機関が定める法律または規則により、少年の基本的特質、ニーズおよび権利を全面的に考慮にいれた、次の点に関わる規範が確立されるべきである。
  • (a) 規律違反となる行為
  • (b) 科される可能性のある懲戒上の制裁の種類および期間
  • (c) そのような制裁を科す権限のある機関
  • (d) 不服申立てを審査する権限のある機関
69.違反行為の報告は権限ある機関に迅速に提出されるべきであり、当該機関は不当に遅滞することなく決定を行なうべきである。権限ある機関は事案を精査しなければならない。
70.いかなる少年も、効力を有する法律と規則の条項に厳格にしたがう場合を除き、懲戒上の制裁を科されてはならない。いかなる少年も、少年が全面的に理解するのにふさわしい方法で違反の疑いについて知らされ、かつ、権限ある公正な機関に不服申立てを行なう権利を含めて防御を行なう適切な機会を与えられたのちでなければ、制裁を科されてはならない。すべての懲戒手続の完全な記録が作成および保管されるべきである。
71.いかなる少年も、特定の社会活動、教育活動もしくはスポーツ活動の監督を行なう場合または自治プログラムにおける場合を除き、規律の維持の任務を負わされてはならない。

M.査察および苦情申立て

72.資格のある査察官または適正に構成された同様の機関であって施設の管理機関に属しない査察官または機関に対し、定期的に査察を行ない、かつ職権で事前通告なしの査察を行なう権限が与えられるべきである。査察官は、職務の遂行にあたって独立性を全面的に保障されなければならない。査察官に対しては、少年が自由を奪われているまたはその可能性がある施設で雇用されているまたは働いているすべての者、すべての少年、およびそのような施設のすべての記録へのアクセスが無制限に認められるべきである。
73.査察を行なう機関または公衆保健機関に所属する資格のある医務官が査察に参加し、物理的環境、衛生、居住設備、食糧、運動および医療サービスに関する規則の遵守状況と、少年の身体的および精神的健康に影響を及ぼす施設生活のその他の側面または環境について評価を行なうべきである。すべての少年に対し、いかなる査察官とも秘密裡に話をする権利が認められなければならない。
74.査察の終了後、査察官は認定結果に関する報告書を提出するよう求められなければならない。当該報告書には、本規則および国内法の関連規定を拘禁施設が遵守しているかに関する評価と、それらの遵守を確保するために必要と思われる措置についての勧告が記載されるべきである。査察官が、少年の権利または少年拘禁施設の運営に関する法規定の違反が行なわれたことをうかがわせる事実を発見した場合、当該事実はすべて権限ある機関に通報され、調査および訴追の対象とされなければならない。
75.すべての少年に対し、拘禁施設の長またはその代理人として認められた者に要望または苦情申立てを行なう機会が与えられるべきである。
76.すべての少年に対し、内容について検閲を受けることなく、認められた手段を通じて中央管理機関、司法機関または他の適切な機関に要望または苦情申立てを行ない、かつ遅滞なくその返答を知らされる権利が認められるべきである。
77.自由を行なわれた少年からの苦情申立てを受理および調査し、かつ公正な解決の達成を援助する独立事務所(オンブズマン)を設置する努力が行なわれるべきである。
78.すべての少年に対し、苦情を申し立てるために、可能な場合には家族の構成員、法的助言者、人道団体、または可能な場合にはその他の者の援助を要請する権利が認められるべきである。非識字の少年に対しては、法的助言を提供しまたは苦情受理の権限を有する公的または民間の機関および団体のサービスを利用するための援助が、必要に応じて提供されなければならない。

N.コミュニティへの復帰

79.すべての少年は、釈放後に少年が社会、家族生活、教育または仕事に復帰するのを援助することを目的とした諸便宜から利益を得ることができなければならない。この目的のため、早期釈放を含む手続、および特別課程が設けられなければならない。
80.権限ある機関は、少年が社会で立ち直るのを援助し、かつそのような少年に対する偏見を軽減するためのサービスを提供または確保するべきである。このようなサービスにおいては、再統合の成功を促進することを目的とした適切な居住先、就業先、衣服および釈放後に自活するための充分な手段を少年が提供されることが、可能な限度で確保されなければならない。そのようなサービスを提供される機関の代表は、少年のコミュニティへの復帰を援助する目的で、協議の対象とされ、かつ拘禁中の少年へのアクセスを認められるべきである。

V.職員

81.職員は資格を有する者であり、かつ、教科指導員、職業訓練士、カウンセラー、ソーシャルワーカー、精神科医および心理学者などの充分な人数の専門家を含むものでなければならない。このような専門家その他の専門家は常勤で雇用されることを通例とするべきである。ただし、このことは、非常勤職員またはボランティア・ワーカーが提供できる支援および訓練の水準が適切かつ有益である場合に、その活用を妨げるものであってはならない。拘禁施設は、拘禁されている少年の個別のニーズおよび問題に応じて、適切であってコミュニティにおいて利用しうるあらゆる治療的、教育的、道徳的、精神的その他の資源および援助形態を活用するべきである。
82.拘禁施設の適切な運営は職員の誠実さ、人間性、能力、および少年に対応する専門的技量ならびに職務への個人的適性にかかっているのであるから、管理者は、あらゆる階梯および職種の職員を慎重に選抜および採用する体制を整えるべきである。
83.上記の目的を確保するため、職員は、かつふさわしい女性および男性を惹きつけかつ職に留めるのに充分な報酬を保障された専門職として任命されるべきである。少年拘禁施設の職員は、その職務と職責を人道的、献身的、専門的、公正かつ効率的に遂行すること、少年の尊敬にふさわしく、かつ実際にその尊敬を得られるような方法で常に行動すること、および、少年に対して前向きな役割モデルおよび展望を与えることを絶えず奨励されなければならない。
84.管理者は、少年と直接接する職員がその職責を効率的に果たすのに望ましい条件下で職務を遂行できるようにすることを目的として、職員と管理者とのあいだのコミュニケーションとともに、少年のケアに携わるさまざまなサービス部門間の協力を増進するための、拘禁施設の各職種の職員間のコミュニケーションを促進するような組織形態および管理形態を導入するべきである。
85.職員は、その責任を効果的に果たせるようにするための研修、とりわけ児童心理学、児童福祉、ならびに人権および子どもの権利に関する国際的な基準および規範(本規則を含む)に関する研修を受けるべきである。職員は、その職業生活の全期間を通じて適切な間隔を置いて組織されるべき現職者研修課程に出席することにより、その知識および専門的技量を維持しかつ向上させなければならない。
86.施設の長は、管理能力を備えかつふさわしい訓練および経験を経た、その任務に対する充分な資格を備えた者でなければならず、かつ、その職責を常勤で遂行するべきである。
87.拘禁施設の職員は、その職責を果たすにあたり、すべての少年の人間の尊厳と基本的人権を尊重および保護しなければならない。とくに、次のことが求められる。
  • (a) 拘禁施設またはその他の施設のいかなる職員も、いかなる名目または状況のもとであれ、いかなる拷問行為も、またはいかなる形態の苛酷な、残酷な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱い、処罰、矯正もしくは懲戒も、実行、煽動または容認してはならない。
  • (b) すべての職員は、いかなる汚職行為に対しても厳重に反対しかつこれと闘うべきであり、そのような行為を権限ある機関に遅滞なく報告しなければならない。
  • (c) すべての職員は本規則を尊重しなければならない。本規則の重大な違反が行なわれたまたは行なわれようとしていると信ずるに足る理由のある職員は、上級機関、または審査および是正の権限を与えられた機関に対し、その問題を報告するべきである。
  • (d) すべての職員は、身体的、性的および情緒的虐待および搾取からの保護を含む、少年の身体的および精神的健康の全面的保護を確保するべきであり、必要な場合には常に、医師による診察と治療を保障するための措置をただちにとらなければならない。
  • (e) すべての職員はプライバシーに対する少年の権利を尊重するべきであり、とりわけ、職務上知り得た少年またはその家族に関わるすべての秘密を守らなければならない。
  • (f) すべての職員は、拘禁施設の内外における生活の違いを最小限に抑えるよう努めなければならない。そのような違いは、少年の人間としての尊厳に対する正当な尊重を減少させる傾向がある。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年2月26日)。