総括所見:シリア(OPSC・2006年)


CRC/C/OPSC/SYR/CO/1(2006年10月31日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2006年9月19日に開かれた第1178回会合(CRC/C/SR.1178参照)においてシリア・アラブ共和国の第1回報告書(CRC/C/OPSC/SYR/1)を検討し、2006年9月29日に開かれた第1199回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、代表団との間に持たれた建設的対話も評価するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回定期報告書に関して2003年6月6日に採択された以前の総括所見(CRC/C/15/Add.212)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

B.積極的側面

4.委員会は、何らかの抵触および(または)不一致がある場合、シリア・アラブ共和国が加盟している国際条約が国内法に優先する旨の情報を歓迎する。
5.委員会はさらに、締約国が以下の条約に加入したことを称賛する。
  • (a) 女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(2003年3月28日)。
  • (b) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰に関する条約(2004年8月19日)。
  • (c) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約(2005年6月2日)。
  • (d) 武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(2003年10月17日)。
  • (e) 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関第182号条約(1999年)の批准(2003年5月22日)。
6.委員会はまた、締約国が条約第20条および第21条ならびに選択議定書第3条1項(a)(ii)および同5項に付した留保の撤回を政府が承認し、かつこの決定が最終的公布のために立法議会に提出された旨の、代表団によって提供された情報にも評価の意とともに留意する。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

選択議定書の実施の調整および評価
7.委員会は、選択議定書の実施へのさまざまな省庁および政府機関の関与に関して提供された情報、および、シリア未成年問題委員会に対し、政府機関および非政府機関間の、家族問題に関わるあらゆる活動の調整が委ねられている旨の情報に留意する。委員会はまた、すべての関係機関が、選択議定書に関するそれぞれの権限分野で達成された進展について、シリア家族問題委員会に対して毎年報告しなければならないことにも留意するものである。しかしながら委員会は、実際上、選択議定書が対象とする分野で行なわれている活動の――中央および地方双方のレベルにおける――調整および協力がいまなお不十分であることを、依然として懸念する。
8.委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とする分野における調整を中央および地方双方のレベルで強化するよう、奨励する。委員会はまた、締約国が、選択議定書の実施に関与するさまざまな機関からシリア家族問題委員会が受領した報告書に基づき、選択議定書の実施に関して達成された進展についての簡単な概要を次回の報告書で提供することも、勧告するものである。
普及および研修
9.委員会は、選択議定書の普及のために締約国が行なっている努力およびその規定に関する研修活動を認知するものの、選択議定書で取り上げられている問題に関するアドボカシーおよび社会的動員が依然として不十分であることを懸念する。
10.委員会は、締約国が、シリア社会において、とくに子ども、親その他の養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働いている専門家の間で選択議定書の規定に関する情報を普及することに向けた努力を継続するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働いているすべての専門家集団ならびに他のすべての関連の集団を対象として、選択議定書の規定に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを実施するよう、勧告するものである。この目的のため、公衆意識啓発キャンペーンならびに研修資料および研修講座の開発に対して相当の資源を割り当てることが求められる。
データ収集
11.委員会は、新たに定められた「2006年子ども保護行動計画」の枠組みのもと、あらゆる形態の暴力の被害を受けた子どもに関する情報収集のためのデータベースが創設されたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、選択議定書で取り上げられている問題、とくに児童買春に関するデータおよび情報が依然として不十分であることを遺憾に思うものである。
12.委員会は、締約国が、締約国における子どもの売買、児童買春および児童ポルノの性質および規模を評価するための具体的調査研究が行なわれ、かつ、とくに年齢別、男女別およびマイノリティ集団別のデータが体系的に収集されかつ分析されることを確保するよう、勧告する。このようなデータは、政策の実施状況を数値により評価するための必須手段を提供してくれるからである。
予算配分
13.委員会は、「2006年子ども保護行動計画」の実施に関して、子どもの保護のための特別予算の配分が構想されていることに留意する。委員会は、締約国が、選択議定書の実施にとくに関わる締約国のさまざまな活動に対して配分された予算についての情報を次回の報告書で提供するよう、勧告するものである。

2.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止

現行刑事法令
14.委員会は、選択議定書に列挙された犯罪を刑事法で網羅するために締約国が努力していること、および、現在法律の包括的見直しを進めているシリア家族問題委員会のもとに特別部局が設置されたことに、留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 子どもの売買および児童ポルノに関わる犯罪については他の現行規定が網羅しているとされるとはいえ、これらの犯罪を明示的に対象とした具体的規定が定められていないこと
  • (b) 刑法における年齢制限が、選択議定書が対象するすべての犯罪について18歳とされているわけではないように思われること。
15.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの保護に関する法律案を速やかに採択しかつ実施する等の手段により、選択議定書第2条および第3条にしたがってすべての犯罪を明示的に定義しかつ網羅する目的で刑法を改正すること。
  • (b) 選択議定書で対象とされているそれぞれの犯罪について、子どもの定義のために用いられている年齢制限を18歳と定めること。
  • (c) 国連国際組織犯罪防止条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を批准することにより、立法上の枠組みを強化すること。
  • (d) この点について、とくにユニセフの技術的援助を引き続き求めること。

3.刑事手続

裁判権
16.委員会は、締約国が、選択議定書第4条の遵守状況について、および、とくに第4条で予定されているすべての場合において選択議定書が対象とする犯罪についての裁判権を設定しているか否かについて、次回の報告書でより多くの情報を提供するよう勧告する。
犯罪人引渡し
17.委員会は、刑法第35条において、被告人が公開の法廷で犯罪人引渡しに同意するときは、権限のある機関は裁量によって犯罪人引渡しの請求を受け入れまたは拒むことができると定められていることに留意する。
18.委員会は、締約国が、犯罪人引渡しの請求がその都度精査されること、および、請求を認容しまたは却下する決定がもっぱら被告人の同意に基づいて行なわれないことを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、犯罪人引渡しに関する法律が選択議定書第5条(この規定は、必要であれば、そこに列挙された犯罪に関わる犯罪引渡しの法的根拠として用いられるべきである)と一致することを確保するようにも勧告するものである。

4.被害を受けた子どもの権利の保護

選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置
19.委員会は、特別少年裁判所の設置を含む保護措置が非行少年法に掲げられていることには留意するものの、そこでは基本的に、犯罪の被害を受けた子どもではなく、犯罪について罪を問われかつ(または)有罪判決を受けた子どもが適用対象とされていることを懸念する。委員会はさらに、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 証拠法上、18歳未満の者は、強姦または背徳犯罪が問われている場合を除き、証言能力を認められないこと。
  • (b) 選択議定書が対象とする行為の被害者、とくに売春のために使用された子どもが、訴追され、かつ――外国人である場合には――追放される可能性があること。
20.委員会は、締約国が、選択議定書に基づくいずれかの犯罪の被害者である子どもがそのこと自体を理由として犯罪者にも処罰の対象にもされないことを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、選択議定書第8条にしたがい、刑事司法手続のあらゆる段階で子どもの被害者および証人を保護するよう勧告するものである。この目的のため、締約国は、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20)を指針とするよう求められる。締約国は、とくに以下の措置をとるべきである。
  • (a) 被害者である子どもの個人的利益に影響がある手続において、当該子どもの意見、ニーズおよび関心事が提示されかつ考慮されることを可能にすること。
  • (b) 子どもを司法手続中の困難から保護するための、子どもに配慮した手続(子ども向けに設計された事情聴取室および子どもに配慮した事情聴取法を含む)を用いること。
  • (c) 事情聴取、陳述および審問の回数を少なくする目的で、子どもの被害者および証人から証言を得るための特別手続――子どもの供述の録画および録音など――を設けること。
21.社会問題労働省が、被害を受けた子どもとともに働く人々を対象とした研修講座を組織していることには留意しながらも、委員会は、被害を受けた子どもの治療、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための医療専門家および(または)専門センターが全般的に不足していることを懸念する。
22.委員会は、締約国が、選択議定書第9条3項にしたがい、被害を受けたすべての子どもがあらゆる適当な援助(全面的な社会的再統合ならびに身体的および心理的回復を含む)を受けることを確保するよう、勧告する。この目的のため、締約国は引き続き、選択議定書で禁じられた犯罪の被害者とともに働く者を対象とした適当な研修(とくに法律および心理学に関する研修)を確保するための措置をとるべきである。
23.委員会は、とくに同国の一部地域で一時婚の慣行が行なわれており、12歳という低年齢の女子までが金銭と引き換えに婚姻のために差し出されていることを報告する情報があることについて懸念を覚える。委員会はさらに、このような女子が短期間で夫から遺棄された場合、法律上の婚姻にともなって取得した権利を剥奪され、スティグマの対象となり、かつ、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合の措置にほとんどアクセスできないことを懸念するものである。
24.委員会は、締約国が、子ども、家族およびコミュニティの間で女子の権利、および、一時婚が女子の身体的および精神的健康ならびに全般的ウェルビーイングに与える可能性がある悪影響についての意識を高める等の手段によって、このような形態の婚姻の問題に対応するよう勧告する。締約国はまた、この慣行の被害者に対し、必要な身体的および心理的回復ならびに社会的再統合〔のための援助〕も提供するべきである。

5.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止

選択議定書に掲げられた犯罪を防止するためにとられた措置
25.委員会は、あらゆる形態の搾取の主要な原因のひとつである貧困と闘うための措置として、失業対策公共委員会および統合的農村開発基金がそれぞれ2002年および2001年に設置されたことを歓迎する。委員会はまた、シリア・テレビが子どもに対する暴力についての特別番組を放送したことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根絶を促進するのはその助長要因に対応するホリスティックなアプローチをとることであると考え、以下のことを懸念する。
  • (a) ホームレスおよびストリートチルドレンの問題に取り組むための統合的な計画または戦略が定められていないこと、および、路上にいる子どもが相当数にのぼることは子どもの売買、児童買春および児童ポルノの潜在的可能性を示すものであること。
  • (b) 一部地域においておよび特定の民族的マイノリティ(とくにクルド人)にとって、出生登録がいまなお問題となっていること。
  • (c) 学校中退との闘いがいまのところ功を奏していないこと。
26.委員会は、締約国が、選択議定書に掲げられた犯罪を防止するための適切な措置(立法上、司法上および行政上の措置を含む)、政策およびプログラムを実施する努力を強化するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 搾取される危険性がとくに高いホームレスおよびストリートチルドレンの問題に対応するための包括的な国家的行動計画を策定しかつ実施すること。
  • (b) 社会問題省によって2007年に設置される予定のヘルプラインが、3ケタの番号で、フリーダイヤルで、かつ24時間利用可能とされることを確保すること。子どものためのこの全国的ヘルプラインは、遠隔地においてサービスを提供することも可能とされるべきである。
  • (c) 親の法的地位に関わらず、締約国の管轄内にあるすべての子どもの登録を保障するための努力を強化すること。
  • (d) 学校中退率を削減するための努力を増強すること。
  • (e) すべてのメディアに対し、選択議定書で取り上げられている問題についていっそうの情報を普及するよう奨励すること。

6.国際的な援助および協力

防止および法執行
27.委員会は、締約国が、人身取引との闘いにおいて国際移住機関と緊密に協働していることに留意するとともに、この目的のために省庁間の国家特別委員会が臨時に設置され、かつ同委員会のもとで包括的な人身取引対策法の起草が進められていること(当該法案はまもなく人民議会に提出される見込みである)を歓迎する。しかしながら委員会は、イラク人女子が性的搾取目的の人身取引によってシリア・アラブ共和国に連れてこられる事案がある旨を報告する情報について懸念を覚えるものである。
28.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノを目的とする越境人身取引の規模および性質についてさらなる調査研究を実施するとともに、選択議定書上の犯罪をともなう行為を防止し、摘発し、捜査し、ならびにこれらの行為の責任者を訴追しおよび処罰するための、地域間および二国間の司法共助および捜査共助を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、この点に関するより詳細な情報を次回の報告書で提供するよう、奨励するものである。
29.委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施を向上させる目的で、ユニセフおよび国連難民高等弁務官事務所などの国連専門機関ならびにECPATインターナショナルおよび国際児童虐待・ネグレクト防止会議〔協会〕(IPSCAN)などの国際的非政府組織との協力を継続するよう、奨励する。

7.フォローアップおよび普及

フォローアップ
30.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会、人民議会および地方人民評議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
31.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびにこの勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

8.次回報告書

32.第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回・第4回統合定期報告書(提出期限・2009年2月13日)に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年6月25日)。