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180秒

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180秒◆SqzC8ZECfY



ラズロが動いた。
銃撃に必要なのは、抜く、構える、狙う、撃つの四動作。
だがそれをラズロはワンアクションで全て終了させる。
空手の達人による寸頸のように、剣の達人による居合いのように。
無駄な動きを極限まで廃し、さらに抜くという動作の、ファーストアクションの中に残りの全動作を同一化させる。
抜いた瞬間にすでに構え、狙いをつけ、そして引き金は引かれ、銃弾が放たれる。
それによって生じるのは初速が音を超えてノーモーションで放たれる、加えて射程距離が十数メートルという一撃。
そして威力は人体を軽々と貫通する、まさに必殺のそれだ。

「ぐぁッッ!!」

先ほどまで生意気な長口上を垂れていた、あの男の口から悲鳴が漏れる。
そうだ、自分が狩る側で向こうが狩られる側だ。
ただ仕留めるのは簡単だが、それではラズロの気が済まない。
肩口を掠めるように撃ったのは死ぬ前にそれを分からせるためだ。
45口径の威力は直撃すれば骨をも砕く。
だから掠めるだけでも肉は削りこそがれる。
それによって生じた出血は男が倒れた場所に早くも血溜まりを作ろうとしていた。
ラズロは嗜虐の笑みを浮かべて、倒れた男に傲然と歩み寄る。

「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおいおい。
 吉良とか言ったっけかぁ? なんだぁそりゃぁ? 避けるなりしろよ、何喰らっちゃってんだよぉ?
 あんだけでかい口叩いといてこれかよ、ふざけんじゃぁねーぞオイ」
「むっ……」
「ギャハハ、そうだよそうそう、それだけ確認しておきたかったんだよ。
 テメーは俺にグッチャグチャにやられて無様にぶっ殺される側の存在だ……。
 そうやって這いつくばって俺を見上げながら、泣いて命乞いするのがお似合いなんだよ! …………あ?」

ラズロは疑問に顔をゆがめた。
その疑問が生じたのは、吉良の表情によるものだ。
奴は脅えた顔などしていなかった。
明らかな敵意を真っ直ぐにこちらに向けている。
ラズロが初撃を撃つ前と変わらない表情。
私は誰にも負けない――そう言い放った、あの表情だった。

「……なんだテメェ」
「そうくると思っていたよ……貴様のような人種は謙虚にさっさととどめを刺すなど考えない。
 私にあれだけ挑発されればなおのこと……正直、私のキラークイーンは格闘はあまり得意でなくてね……。
 東方仗助や空条承太郎のスタンドなら弾丸を弾くこともできるのかもしれないが」
「…………もういいや――――死」
「――――キラークイーンッッ!!」

爆発。
ラズロの足元がその爆心地だった。
それによって右足が砕かれ、ラズロの体勢が崩れる。
爆発とほぼ同時に放たれた弾丸はそれによって狙いが外れ、吉良が這う場所からややずれた床で高い音を立てて跳ね飛んだ。

「ぐあっ!?」
「貴様が撃った瞬間に床を転がすようにして、爆弾に変えたペンを足で蹴飛ばした……先ほど長々と喋ったとき、密かにこの部屋で拾って仕込んでおいた爆弾だ。
 だがやはり正確なコントロールは無理だったな。貴様の右足がまだくっついているのがその証拠だ……。
 さて先ほど私に向かって、這い蹲るのがお似合いと言ってくれたが……貴様も這いつくばるその姿が実に良く似合っているよ」
「テメ……」
「――――シアーハートアタックはすでに攻撃を開始している」

倒れたラズロが上体を起こし、銃を吉良に向けた。
だがそれを前もって予測していたというように、預言者さながらに吉良は堂々と宣言する。
その時、数々の修羅場をくぐり抜けて身についたラズロの危険察知能力が新たな攻撃を察知した。


「コッチヲミロォ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!」


ガリガリと音を立てる二つのキャタピラ。
それに挟まれた直径数十センチほどの丸い物体の真ん中に髑髏の紋章があった。
小さな戦車のような形だが砲身は無い。
奇妙な形の砲身の無い戦車が奇怪な声をあげて、床に倒れたラズロへ向かって飛び掛る。

「っだこりゃあ!?」

吉良に向けた銃をそいつに向けた。
二発の銃声。
だがそれによって放たれた通常弾丸を髑髏の戦車は易々と弾いた。

「――く!!」

咄嗟の判断。
ラズロは残った左足でその戦車を蹴り飛ばし、遠ざけようとした。
がしり、と金属に強く衝撃を与えたような激突音。
だが――吉良はその時ぼそりと呟いた。

「……シアーハートアタックは無敵だ」

再度の爆発が起こった。
目の前が爆風で埋め尽くされる。
ラズロは声にならないうめきを漏らし、だがそれすらもかき消された。

「――ガッ……!」

吹き飛ばされて部屋の壁に激突。
だがそれでも極限まで強化された肉体によって気絶までは至らない。
ラズロは激痛をこらえて前を見る。
戦いでは一瞬といえども集中の途切れが致命的となるからだ。
あの戦車からはまだ数メートルの距離があり、すぐに飛び掛っては来ない。
馬鹿が、と考え追撃をしてこない甘い敵に反撃を食らわせてやろうと立ち上がる。
だがそうしようとしてできなかった。


「……あ?」


戦車を蹴った左足が膝の下から完全に消失していたからだ。
ラズロは起き上がろうとしてそれに気付かず崩れ落ち、再び床を這うことになる。

「な……っだ……こりゃあッッ!?」
「貴様が負けたということだ。いや、まだ勝負はついていないな。私は貴様とは違う……素早く謙虚にとどめを刺すとしよう」

淡々と告げる吉良のそばにピンク色の人形。
そばの机から取り出したペンを手に取っている。

「コッチヲミロォ~~~~~~~~~~~!」

そして髑髏の戦車が再びラズロへと襲い掛かる。
同時に吉良のそばにいる人形が、手に持ったペンをラズロに向かって放り投げた。
戦車とは別方向からラズロの逃げ道を塞ぐように。
おそらくは一撃目と同じものだと判断する。

「死ね」

吉良は淡々と。
まるで養豚場でこれから殺される豚を見るように一切の感情を込めず。
すでに奴にとって自分の存在はそういうものなのだろう。
部屋を出て人形が吹き飛んだ階段のほうへと向き直って歩き出す。

「……そうかい」

戦闘機械としての集中力が一瞬をスローモーションの意識へと変える。
ゆっくりと死の爆弾が迫ってくる。
だがラズロのダメージが何か変わるわけではない。
左膝からしたの吹き飛んだ部分が煙のようなものを発して再生を始めているが、間に合うはずもない。
爆発によってズタズタにされた右足は猛烈な新陳代謝によって煙を上げ、再生の途中。
だが脚の指先の何本かには感覚がない。
神経が切れているのか。
これでは強く踏み込むことなど到底不可能。
動けないと、ラズロは現状を認識。

「素早く謙虚に、か」

爆弾が迫る。
あと一秒もかからず爆発するだろう。
認めよう。
反省しよう。


そして――殺そう。


次瞬、床を何かが強く叩く音。
強く足で踏む込むような。
だがラズロの両脚でそれは無理なことだ。
足の代わりは――丸太のような二本の腕と、そして折れかけ、再生途中の右脚だった。
治りかけの右脚は踏み込みの負荷がかかって、メキリと嫌な音を立てた。
それは骨が折れる音だ。
だが構わない。
銃を口に加え、空いた腕で床を叩く。爪がひび割れるほどに強く掴む。
弾け飛んだ――まるで獣のように。弾丸のように。
ラズロは地を這いながら戦車とペンの間を潜り抜けて突貫した。

「――!!」

吉良の眼が驚愕に見開かれる。
ラズロの背中から二つの爆弾による爆圧がくる。
スローモーションの刹那。
またもや腕と右脚で床を叩き再加速。
右脚から生木が折れるような、先ほどよりも大きな音。
完全に折れたか。
だが一切構わず駅長室を飛び出し、廊下へ出て標的の眼前へと。

「しばッッ!」

それを吉良のそばにいた人形が拳を打ち下ろして迎撃に入る。
対するラズロは獣の姿勢だ。
頭を床にこすらんばかりに身を低く屈めて突進する。
見下ろす吉良の視点から見えるのはラズロの背中と頭だけ。その下に隠れて腕と脚は見えない。
ゆえにその動作に対して吉良の反応は遅れた。
吉良の目の前で逆立ちするように、二本の腕で今度は上に向かって己の身体を飛ばしたのだ。
吉良の視点では腕が隠れているがゆえに予備動作が見えない。
そして人間の目は縦の動きを捕らえにくい。
横方向と比べて視覚範囲が狭いことでもそれは明らかだ。
ゆえに吉良からはまるで目の前からラズロが消えたように認識される。
上空でラズロが上下逆さの体勢のまま、天井に折れた脚をつく微かな音。
それを知覚した吉良が上へと目を向けようとしたとき、すでに勝負は決していた。


「俺は……反省すると強いぜ」


あらかじめベルトに挟んでいた二挺の銃を引き抜き、構え、上から吉良の延髄部分に銃口を突きつけ――そして正確無比の射撃で撃ちぬいた。
電流が走ったように大きく震える吉良の身体。
延髄から背骨にかけての神経部分を撃ちぬき、破壊した。
それを確認してもラズロの攻撃は止まらない。
空中で身を翻して回転をつけた勢いのままハンマーのような拳が顔面にめり込み、そこから血を吹き出させて吉良は階段のそばにある壁に向かって吹き飛んだ。


   ◇   ◇   ◇


なんだ……なにがおこった……

痛みはない……だが感覚がないのはどういうことだ……

そうか……夢か……

悪い夢だったな……長くて悪い夢だ……

殺し合いに強制的に参加させられるなど……

私が欲しいのは……平穏なのだ……

無駄な勝利など要らない……

平和な生活……

ほんのちょっとだけ人殺しをしなければいけないだけの普通の人間なのだ……

おや……

目の前に手が……

なんだろう……

とても……とても美しい手だ……

ああ……夢だものな……

悪い夢ではあったが……いい夢だって見れたということか……

ああ……だが参ったぞ……体の感覚がない……

でも……手で触れないが……ああ……むしゃぶりつきたくなるような美しい手だ……

目の前に……ああ……目の前にある……

美しい手……しゃぶりつきたくなるような……

美しい……真っ白で……汚れない……やわらかそうな……


…………美しい…………手…………


   ◇   ◇   ◇


「う……」

視界がぼんやりと光を示した。
今まで眠っていたのか。
だが見慣れない風景だ。
やや遠くに凶暴そうな男がいてこっちを睨んでいる……。

「……っそうだ、僕は……!」

何かに吹き飛ばされた。
そして壁に叩きつけられてここにいる。
だがまだ生きていて、そして動ける。
戦わなくては――そう思って、そこで何がが自分に覆いかぶさっているのを蒼星石は認識した。


ぴちゃ……ぬちゃ……


右手。
怖気が走る感覚。
反射的に手を引っ込めようとするが、覆いかぶさっているモノによって動きが封じられている。

「な、何ッ……!?」

何かぬめった軟らかいものが右手の指の間を這い回っていた。


ぬちゃ……ぴちゃ……


指の先から丹念に指の間までを執拗に這い回る、ぬめりを帯びた何か。
蒼星石の感覚が吐き気を催すほどの嫌悪一色に染まる。

「いやぁ……!」

そこで蒼星石は見た。
自分の右手を嘗め回していたのは舌だ。
覆いかぶさっていたのは人間だ。
その顔は殴られたのか、鼻がへし曲がって鼻血を大量に吹き出し、口元からも多量の出血。
それと透明な唾液が混ざりあった薄紅の粘液がぬめりの正体だった。
赤く染まった舌がさらに動く。

「ひ……!」


ぴちゃ……ぬちゃ……


醜悪な舌が音を立てて右手を嘗め回す。
人間が何か言っているが聞き取れない。聞きたくもない。
だが、そこでいきなり爆音が聞こえた。

「え……?」

何が起こったのか蒼星石は判断がつかない。
だが右手からおぞましい感覚が消えた。
あのナメクジが這い回るような感覚が。
しかし消えたのはそれだけではなかった。
右手の感覚そのものが消えていた。
右手そのものが消し飛んでいた。
蒼星石には分かるはずもない。
それがボムボムの実を食した吉良の体液による爆発だということに。
もはや何が起こったのか、何もかもが分からなかった。



「やだぁ……!!」




力を振り絞って人間の身体を押しのけようとする。
だが、そこで唐突に蒼星石の意識は断絶した。
その人間が吉良吉影だと気付くこともなく。
永遠に。
そしてここまで、戦闘開始から180秒。


   ◇   ◇   ◇


「ちっ」

ラズロは舌打ち一つ。
視線の先には人形と人間の残骸が一体ずつ。
それらは二度と動かぬ無残な姿を晒していた。
人間は上半身を丸ごと抉られ、人形は足の先だけしか残っていない。
エンジェルアーム弾頭による必殺の一撃で空間ごと抉り取った結果だ。
ここまでやれば絶対確実にしとめたはずだ。
その予想通り、敵は二度と動かない。
しかしそれと引き換えに脚のダメージは深刻だ。
とりあえず殴り飛ばした拍子に吉良が落としたデイパックの支給品は、ラズロのそばにあったので即座に回収した。
だが階段の近くに転がっている、あの人形のデイパックを拾うのも現状では一苦労だ。
下から聞こえる声は複数。
今は相手にするのは得策ではない。
少なくとも脚のダメージが回復するまでの時間が欲しいところだ。
ならばさっさと退却するか。
だがせっかくの獲物をこのままにしておくのもどうかという思いもある。

「さて……どうするかな」

下から聞こえる賑やかな声。
ラズロの決断は――。




【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険 死亡】
【蒼星石@ローゼンメイデン 死亡】


【G-7駅・2階廊下/一日目 午前】
【リヴィオ・ザ・ダブルファング@トライガン・マキシマム】
[状態]健康。ラズロ状態。内臓にダメージ(治癒中)、右脚骨折(治癒中)、左足欠損(治癒中)、背中のロボットアーム故障
[装備]M94FAカスタム・ソードカトラス×2@BLACK LAGOON、.45口径弾×4、.45口径エンジェルアーム弾頭弾×20@トライガン・マキシマム
[道具]支給品一式×4、
    スチェッキン・フル・オートマチック・ピストル(残弾15発)@BLACK LAGOON、スチェッキンの予備弾創×1(20発)、
    神威の車輪@Fate/Zero、ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、.45口径弾24発装填済みマガジン×4、45口径弾×24(未装填)
[思考・状況]
 0:ダメージはあるが……下の奴らはどうするか。
 1:片っ端から皆殺し。
 2:ヴァッシュとウルフウッドを見つけたら絶対殺す。あとクーガーとゾロも。
 3:機を見て首輪をどうにかする。
 4:ギラーミンも殺す。
【備考】
 ※原作10巻第3話「急転」終了後からの参戦です。
 ※ニューナンブM60(残弾4/5)、GPS、チックの鋏@バッカーノ! はAA弾頭の一撃で消滅しました
 ※蒼星石のデイパック(支給品一式、不明支給品0~1、天候棒(クリマ・タクト)@ワンピース)が二階廊下に落ちています。




【G-7駅・1階事務室内/一日目 午前】
【佐山・御言@終わりのクロニクル】
[状態]:右腕に痺れ
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、空気クレヨン@ドラえもん、不明支給品0~1(確認済み)
[思考・状況]
0:はははは、ほらやってみたまえ
1:G-7駅を捜索する
2:新庄くんと合流する。
3:協力者を募る。
4:本気を出す。
※ポケベルにより黎明途中までの死亡者と殺害者を知りました。
※小鳥遊が女装させられていた過去を知りました。
※会場内に迷宮がある、という推測を立てています。



【小鳥遊宗太@WORKING!!】
[状態]:健康
[装備]:秘剣”電光丸”@ドラえもん
[道具]:基本支給品一式、獏@終わりのクロニクル
[思考・状況]
0:忘れろ、忘れろーーーーーー!
1:G-7駅を捜索する
2:佐山たちと行動する。
3:伊波まひるを一刻も早く確保する。
4:ゲームに乗るつもりはない。
※ポケベルにより黎明途中までの死亡者と殺害者を知りました。
※過去で新庄の顔を知りました。
※獏の制限により、過去を見る時間は3分と長くなっています。




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