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When They Cry(後編)

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marurowa

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When They Cry(後編) ◆/VN9B5JKtM






「AAAALaLaLaLaLaie!!」

雷轟のような雄叫びを上げ、騎英が猛烈な勢いで突進する。
すれ違い様に振るわれる強烈な斬撃。
サーヴァントの膂力に英馬の突進力を上乗せしたその一撃を、ミュウツーはV-Swを盾にして何とか受け流す。
ミュウツーが体勢を立て直すも、その僅かの間に騎兵は手の届かない距離へと駆け去ってしまっている。
既に四度、同じような攻防が繰り返されている。

乗り物がバイクから馬へと変わっているものの、この男の手強さは相変わらずだという事はたった一合斬り結ぶだけでも十分に理解できた。
まだ毒も抜け切っていない今のミュウツーでは些か分が悪い。
何より『24時間以内に人数を半分以下に減らせ』というノルマは既に達成しているのだ。今ここで無理してこの男を倒す必要はない。
ミュウツーは早くもこの場からの撤退を決意していた。

(だが、ただでは退かん……!)

五度目の交錯。
ミュウツーは今までのように斬撃を受け流すのではなく、その勢いを利用して背後に跳躍した。
そして空中でクルリと向き直り、着地と同時に地を蹴る。
ミュウツーが見据える先では二人の少女が驚愕に目を見開いている。
確かに巨漢は強敵だが、彼女達に戦闘能力があるとも思えない。
優勝を義務付けられた身としては、見るからに無力そうな少女達を前にして手傷の一つも負わせずに逃げ出す訳にも行くまい。

獲物を狙い、駆けるミュウツー。
その前に、青い影が立ちはだかる。
少女達を守るように。両の手に大小の得物を構えた解体屋グラハム・スペクターが行く手を阻む。


大剣を携え襲いかかるミュウツーに対し、グラハムが小型レンチを投擲する。
高速で回転し、銀色の円盤のようにも見えるレンチがミュウツーに迫る。
ミュウツーは走るスピードを緩めずにV-Swを一振りし、眼前に迫った凶器を叩き落とす。
金属同士のぶつかり合う甲高い音が鳴り響く。
レンチが防がれると同時、グラハムが地を擦るように十手を振り抜く。
十手の向かう先には拳大の石が転がっている。
硬質な音を響かせ、石が十手の先端に掬い上げられる。
打ち上げられた石が飛礫となってミュウツーの顔面に飛来する。
ミュウツーはV-Swを大きく右に振り払い、これを弾く。

飛礫が防がれる事も読んでいたのか、グラハムが十手を振りかぶり、大剣を振り抜いた直後の隙を突いてミュウツーに殴りかかる。
ミュウツーはV-Swでの迎撃は不可能と判断。左手に念を集中させてスプーンを作り出し、グラハムの一撃を受け止める。
巨大なスプーンが虚空から現れる瞬間を見たグラハムは僅かに目を見開くが、一瞬後には嬉しそうに目を細めて狂ったように語り出す。

「ハハハハッ! やるじゃないか! 面白い! 面白いぞ、お前!
 そう言えばお前、どう見ても人間には見えないんだが、宇宙人か何かか? となると、やっぱり骨格なんかも普通の人間とは違うのか?
 いいねえ。実に壊しがいがありそうだ。流石の俺も宇宙人をバラすのは初めてだ……ああ、考えただけでもワクワクしてきた!
 さあ! その関節をバラバラに壊して、愉快な、愉快な話を紡ぎ出そうじゃないか!」

拮抗していたのは一瞬。
グラハムが真っ向から押し合う力の向きをズラし、ミュウツーの力を受け流す。
金属の擦れ合う耳障りな音を残しながら、スプーンが十手の上を滑る。
十手の根元にある鉤に引っ掛かりスプーンの動きが停止したところで、グラハムがクイッと手首を捻る。
ガチリ、と十手の鉤がスプーンの柄に咬み合う。
グラハムはそのまま十手を引っ張り、ミュウツーの体勢を崩そうとする。


その瞬間、ミュウツーは自らの武器であるスプーンをあっさりと消し去った。


「!?」

その手に感じていたはずの抵抗が突如消え去り、逆にグラハムが体勢を崩してしまう。
その隙をミュウツーが見逃すはずもなく、両手で構えたV-Swを力任せに叩きつける。
グラハムは咄嗟に十手で受け止めて致命傷は避けたものの、バランスを崩した状態では踏ん張りが効かず、後ろへ吹き飛ばされてしまう。
ヨロヨロと後退しながら十手を構え直すグラハムを一瞥するミュウツー。
これまでの短い攻防でグラハムも一筋縄ではいかない相手だと判断し、追撃は諦める。
ミュウツーは再び当初の獲物である沙都子達へと視線を向け、駆け出す。


「ニョ、ニョロさん!」

グラハムが稼いだ数秒で我に返った沙都子がモンスターボールを放り投げる。
その中から現れたのはレッドの相棒とも言えるポケモン、ニョロ。
両の拳を構え、自らを呼び出した少女に殺意を向けるミュウツーを敵意の篭った眼差しで睨みつける。

(皮肉な話だ……最後にオレの行く手を阻むのがレッドのポケモンだとはな……)

いや、考えてみればそれも当然の報いか。
もしレッドが今のミュウツーを見れば、戦ってでも止めようとするだろう。
あの真っ直ぐな少年が、このような殺し合いを良しとするはずが無い。
恐らくは命尽き果てるその瞬間までギラーミンを打倒しようと戦い抜いたのだろう。
そのような少年だからこそ、ミュウツーもテレパシーで会話を交わす程にレッドの事を信頼していたのだ。
対して今のミュウツーはどうか。
マスターを人質に取られ、ただ課せられたノルマをこなすためだけに行動している。
いや、人質の存在を疑いもしているが、未だ確信が持てずにギラーミンの言うがまま殺戮に手を染めている。

情けないとは思う。
だが、マスターがギラーミンの手の内にあるかもしれないという可能性は到底無視できるものではない。
結局はミュウツーに選べる道など、ギラーミンの言に従って優勝する以外には無いのだ。
その邪魔をするのならば、たとえ相手がレッドの相棒でも力ずくで押し通るのみ。
ミュウツーは真っ直ぐに突進してくるニョロの腹部へと手を翳し、念力をぶつける。

ニョロはレッドと共にロケット団を始めとした強敵達との激戦を潜り抜けてきたとは言え、やはりミュウツーと比べれば地力が違いすぎる。
何の策も無しに突っ込んでも勝算など見えるはずも無く。

「ああっ! ニョロさん……きゃぁあっ!」

ニョロは自らが突進したコースをそのまま逆になぞるように吹き飛ばされ、沙都子を巻き込んで倒れ込む。

もはや邪魔者は無い。ミュウツーは目前に立つ獣耳の少女、アルルゥへと視線を向ける。
年の頃は十に届くかどうかといったところか。かつて共に戦ったイエローよりも年下だろう。
このような幼子を参加者に選んだギラーミンへの怒りと、それを手にかける事への罪悪感が胸を占める。


(だが、それでも……マスターの命には代えられん!)



僅かに生じた迷いをマスターへの思いで押さえ込み、V-Swを握る手に力を込める。





「おとーさんのため?」
(ッッ!!!??)


その動きが、剣を振る寸前で停止する。

確かにミュウツーを生み出す際にはマスターの細胞も使用されている。そういった意味では父と呼んでも間違いではないだろう。
だがミュウツーは少女に向けて念を飛ばした訳でもなければ、もちろん人語を発した訳でもない。
それなのに何故、この少女はミュウツーがマスターを助けるために殺し合いに乗っているのだと分かったのか。

(まさか……この少女、ポケモンと心を通わせる能力を持っているとでも言うのか……? だとすれば……)

気にはなる。とは言え、今ここで考えている暇など無い。
背後からは駿馬に跨る巨漢と青い作業着の男が射殺すような殺気を向けて来ている。
横を見れば、ニョロを使役していた少女も既に身を起こし、新たなモンスターボールを手にしている。
今すぐに二人の少女を斬り伏せたところで、どこでもドアを取り出して逃亡する間があるかどうか。
失敗すれば二対一、下手すれば三対一の圧倒的に不利な戦いを強いられる。

(……潮時だな)

ここで欲を出すのは不味い。
ミュウツーは獣耳の少女を小脇に抱えると、その喉元にV-Swを突き付ける。
それを見た二人の男が苦虫を噛み潰したような表情で動きを止め、もう一人の少女は顔面を蒼白にしてモンスターボールを取り落とす。
言葉を発する必要も無く、その意味するところは伝わったようだ。

三人を警戒したまま包囲を逃れるように、じりじりと後退する。
岸辺に辿り着いたミュウツーの体がふわりと、僅かに浮き上がる。
そのまま湖上を滑るように、アルルゥを抱えて北西へと飛行を開始する。

「ああっ! アルルゥ! アルルゥ!!」
「ねーねー! ねーねー!」

止める者も無く、白い影は湖の対岸へと姿を消した。
後にはただ、残された少女の悲痛な叫び声が木霊する。



【F-4 湖畔/1日目 夜中】


【ミュウツー@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:疲労(中)、背中に火傷(小)、毒(小)
[装備]:機殻剣『V-Sw(ヴィズィ)』@終わりのクロニクル
[道具]:基本支給品一式、どこでもドア@ドラえもん(残り1回)、第一の湖の鍵(E-)
[思考・行動]
 0:…………この少女をどうするべきか……?
 1:生き残り、カツラを救う。
 2:F-4の湖を調べる。
 3:隙を見て参加者に攻撃を加える。
 4:イエローを殺した相手を見つけたらたとえ後回しにしたほうが都合がよさそうでも容赦しない。
 5:もしギラーミンの言葉に嘘があったら……?
【備考】
 ※3章で細胞の呪縛から解放され、カツラの元を離れた後です。
  念の会話能力を持ちますが、信用した相手やかなり敵意が深い相手にしか使いません。
 ※念による探知能力や、バリアボールを周りに張り浮遊する能力は使えません。
 ※ギラーミンに課せられたノルマは以下のとおり
  『24時間経過するまでに、参加者が32人以下でない場合、カツラを殺す。
   48時間経過するまでに、ミュウツーが優勝できなかった場合も同様。』
 ※カツラが本当にギラーミンに拉致されているかは分かりません。偽者の可能性もあります。
 ※V-Swは本来出雲覚にしか扱えない仕様ですが、なんらかの処置により誰にでも使用可能になっています。
  使用できる形態は、第1形態と第2形態のみ。第2形態に変形した場合、変形できている時間には制限があり(具体的な時間は不明)、制限時間を過ぎると第1形態に戻り、
  理由に関わらず第1形態へ戻った場合、その後4時間の間変形させる事はできません。
 第3形態、第4形態への変形は制限によりできません。
 ※ギラーミンから連絡のないことへの疑問、もしカツラが捕まっていないという確証を得られたら?
 ※なぜギラーミンの約束したカツラからの言葉が無くなっていたのかは不明です。
 ※概念空間の存在を知りました。



【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:深い悲しみ、ダメージ(小)
[装備]:無し
[道具]:支給品×2<アルルゥ、仗助>、不明支給品(0~1)<仗助>、ひらりマント@ドラえもん
    トウカの刀@うたわれるもの、サカキのスピアー@ポケットモンスターSPECIAL
[思考・状況]
 1:ねーねー達と会いたい。
【備考】
 ※ここが危険な場所である事はなんとなく理解しましたがまだ正確な事態は掴めていません。
 ※放送の内容を理解しました。エルルゥ達の死も認識しています。



   ◇   ◇   ◇



「あぁっ……そんな……! アルルゥ……!」

ミュウツーが消えた対岸を見つめながら、沙都子が搾り出すような声を漏らす。
その表情は悲愴感に溢れ、見るからに痛々しい。

「悲しい……悲しい話をしよう……。俺は目の前でみすみす少女を攫われてしまった……守ると誓った少女をだ……。
 そう、俺は彼女を守ると誓った。……では誓いとは何だ? 中々に難しい質問だが、俺はこう考える。誓いとは即ち自分自身との約束だと。
 …………ああ……つまりその誓いを守れなかった俺は、自分自身との約束すら守れない最低野郎だったってことじゃないか……。
 たった一つの約束も守れない俺が誰かを守ろうだなんて、土台無理だったってことか……。ああ、悲しい……何て悲しい話なんだ……」

その隣では、同じく湖を見つめながらグラハムが呟いている。
こちらはその独特の語り口のせいで、喋る内容の割に余り悲しそうには聞こえないのだが。

「グラハムよ、貴様はその鬱陶しい語りを止めんか。こっちまで気が滅入ってくるわい。
 良いか、これより余は彼奴を追撃する。貴様は沙都子を連れて先にレナ達と合流しておれ」

このライダーの指示に、鬱々と独り言を呟いていたグラハムが噛み付く。

「おい。ちょっと待てよ、おっさん。いくら俺が最低野郎でも、てめえの失敗をあんたに尻拭いさせるほど落ちぶれちゃいないつもりだぞ」
「何を言うか。責の所在を問うならば、彼奴を貴様達の方へと逃した余とて責められるべきであろう。
 それに沙都子を保護したと手紙で伝えた以上、余か貴様か、どちらかがレナ達の下へと送り届けるのが道理と言うもの。
 我らが二人でアルルゥを追う訳には行かん。沙都子を連れて行く事など出来んし、ここに一人で残して行くなど論外だ。
 ならば事は一刻を争うのだ。機動力に優れる余が救出に向かうのは当然であろうが」

そう言われ、グラハムが反論できず押し黙る。
グラハムはこれまでにライダーがV-MAXを乗りこなし、ブケファラスを駆り、電車を操縦する姿を目の当たりにしている。
こと機動力という点において、ライダーの右に出る者はいないという事はグラハムも認めざるを得ない。

「チッ……確かに責任がどうこう言ってる場合じゃねえな……。癪だが任せたぜ。
 だがな、おっさん。そんだけ大見得を切ったんだ。間に合いませんでした、じゃ済まされねぇぞ」
「フン、言いよるわ。貴様こそ、レナ達との再会まで沙都子を守り切ってみせよ。くれぐれも余を失望させるでないぞ」
「そんな事、今更おっさんに言われるまでもねえよ」

グラハムは沙都子の前に進み出ると、片膝を着いて目線を合わせる。

「いいか、北条沙都子。これからお前を仲間のところへと連れて行く。それまでは俺が命に代えても守り抜く。今度こそ、絶対にだ。
 ケジメを付けるためにも、これだけはどうしても言っておきたかった。俺なんかの言葉じゃ信じられないかもしれないがな……」
「いいえ……。信じられないなんて……そんな事、ありませんわ……。グラハムさん……ありがとうございます」

沙都子は小さく頭を振ると、ライダーに向き直って深々と頭を下げる。

「ライダーさん……お願いします。どうか、どうかアルルゥを……」
「うむ。余に任せておけい」

ライダーは大きく頷くと、馬を走らせ森の中へと駆け去って行く。
その背を見送りながら、沙都子は兄のバットを強く、強く抱きしめる。
祈るように。願うように。……あるいは、縋るように。



【G-5/一日目 夜中】


【チーム名:○同盟グラハム組】

【グラハム・スペクター@BACCANO!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、青いツナギ姿(いくらか傷)、腕に○印
[装備]:包帯、小型レンチ、スモーカー大佐の十手@ONE PIECE
[道具]:支給品一式(一食分、水1/10消費。うち磁石は破損)、スペアポケット@ドラえもん、かぁいい服
    海楼石の網@ONEPIECE、大きめの首輪<ドラえもん>
[思考・状況]
 1:合流場所に向かう。
 2:レナ達と合流するまで北条沙都子を守り抜く。
 3:ウソップやレッドを殺した者を壊す。
 4:イスカンダルに敵意。
 5:殺し合い自体壊す
 6:ラッドの兄貴と合流、交渉。兄貴がギラーミンを決定的に壊す!
 7:イスカンダルの勧誘は断固拒否。
【備考】
 ※レッドたちがクレアを信用していることを知りません。
 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
 ※ライダーからの伝聞により劇場での顛末を知りました。
 ※オープニングの映像資料を確認しました。



【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康、L3、深い悲しみ、不安
[装備]:悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃に、レッドのニョロ@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:支給品一式×3<沙都子、翠星石、エルルゥ>、グラン・メテオ@ポケットモンスターSPECIAL
    翠星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、翠星石の亡骸首輪つき、蒼星石の足@ローゼンメイデン
    雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン、庭師の如雨露@ローゼンメイデン
    カビゴンのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、ゴローニャのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
    アミウダケ@ワンピース、マスケット銃用の弾丸50発、グロック17@BLACK LAGOON(残弾15/17)
[思考・状況]
 0:アルルゥ……どうか無事で……。
 1:グラハムについていって、部活メンバーの生き残りと合流する。
 2:真紅にローザミスティカを届ける。水銀燈には渡さない。
 3:鳩に付けた手紙が無事に梨花達に届きますように。
【備考】
 ※参戦時期は『皆殺し編』にて、帰ってきた北条鉄平と出会った直後です。
 ※名簿は確認したようです。
 ※雛見沢症候群の進度は具体的には不明。L5まで進行した場合、極度の疑心暗鬼と曲解傾向、事実を間違って認識し続ける、などの症状が現れます。
  説得による鎮静は難しいですが不可能ではありません。治療薬があれば鎮静は可能ですが、この場にあるかどうかは不明です。
 ※真紅、蒼星石、水銀燈に関しては名前しか知りません。
 ※アルルゥの名を仗助から聞きましたが、アルルゥの家族の詳細についてはまだ把握していません(エルルゥ=姉のみ把握しました)
 ※ゼロと情報交換しましたが、どこまで教えられたかは不明です。
 ※映画館に行けばDISCの中身を見ることが出来ると思っています。
 ※地下道には何かがあるのではと考えています。



   ◇   ◇   ◇



G-6エリア映画館前。

鋼鉄の騎馬に跨るライダーがアクセルをひねる。
獣が咆哮するごとく、V-MAXのエンジンが唸りを上げる。
車体を腕力で押さえ込み、その膨大なトルクを余すところ無く推進力に変えて爆発的な加速を得る。
風圧で外套がはためく。
スピードメーターの表示はたった今、時速150kmを超えたところだ。


『ピーーーーーーーー!!!』

瞬間、ライダーの首元からアラーム音が鳴り響く。

『警告。現在あなたは禁止区域に侵入しています。
 30秒以内に当該区域より退去しない場合は首輪が爆破されます。
 繰り返します。現在あなたは禁止区域に……』

更にはバイクの排気音に掻き消されほとんど聞こえないが、首輪が電子音声による警告を発している。
そう。映画館からライダーが向かった先は北。
この征服王はあろう事か、禁止エリアを突っ切ろうとしているのだ。



連れ戻すとは言ったものの、探知機の反応によればアルルゥの現在地はF-4の湖岸。
遊園地を抜けて行くにしても、G-7駅に向かい電車を利用するにしても、G-5からアルルゥの下へ辿り着くまでには時間がかかり過ぎる。
そうこうしている内に手遅れになっては目も当てられない。
ならばどうするか。
ライダーは僅かに逡巡し、ごく簡単な解決策を思い付いた。


『首輪が爆破されるまでの30秒の間に禁止エリアを突っ切れば良い』


実に単純、それでいて馬鹿げた答えだ。
確かにG-6からF-6へと侵入し、E-6に抜けるまでの距離は1km余り。理論上では、平均時速120km以上で走行すれば30秒以内に抜けられる。
マトモな神経を持つ者ならば禁止エリアを突っ切るなどという無茶はやらかさないが、残念ながらこの男はマトモではない。
そもそも本気で世界を征服しようと考えるような人間にマトモな神経などというものを期待するだけ無駄だろう。

征服王が騎乗するのはセイバー用に様々な改造を施された、最高時速300kmを超えるモンスターマシンだ。
騎乗スキルでそのスペックを最大限に引き出せるライダーにとって、たかが1kmを駆けるのには30秒もあれば十分過ぎる。
幸いにしてF-6エリアの道はほぼ直線状に続いているため、サーヴァントの超人的視力を存分に活かす事ができる。
最悪、行く先に何か異常があっても――例えばB-4のように橋が崩落していたとしても――すぐさま引き返す事が可能。ライダーはそう考えた。



『20秒以内に当該区域より退去しない場合は首輪が爆破されます。
 繰り返します。現在あなたは禁止区域に……』



アルルゥを人質にして逃走したミュウツーを卑怯だと謗るつもりはない。
幼い少女が戦闘力において劣っているのは一目瞭然だし、敵の弱点を見つけたのならばそこを突くのは戦略の基本だ。
この戦場で自らが生き延びるために最適だと判断したのなら、それに従うのはむしろ当然の事だと言える。

だが、それはあくまで主観を取り去った場合の話だ。

アルルゥはライダーと行動を共にしていたが、まだ臣下として迎えた訳でもなければ同盟を結んだ訳でもない。
レナ達との合流後に新たな仲間を纏めて勧誘しようと考えてはいたが、それまでは沙都子もアルルゥも、ライダーの被保護者という立場だ。
言わば、守るべき民。
奴はそれを拐かしたのだ。
他でもない、このイスカンダルの民を征服したのだ。

「その所業、余への宣戦布告と受け取った!」

ならば征服王として退く訳には行くまい。
真の征服とは何たるかを、その身に刻み込んでやらねばなるまい。
正々堂々と受けて立ち、その目論見の尽くを叩き潰してやらねばなるまい。



『10秒以内に当該区域より――』


言葉の途中で、首輪からの電子音声が鳴り止んだ。
つまり、禁止エリアを抜けたという事だ。


スピード表示は既に時速200kmを超えている。
これなら程なくして追いつけるだろう。

来る闘争の気配に胸を躍らせ、鋼鉄の騎馬を駆る征服王は獰猛に笑う。



【E-6 南/1日目 夜中】


【チーム名:○同盟ライダー組】
1:主催者の打倒。
2:E-2駅からG-7駅に向かい、映画館、消防署、モールを訪れ21時までにB-4民家へ向かう。禁止エリアの場合H-4、G-4へ。
3:サカキ、ミュウツー、片目の男(カズマ)、赤髪の男(クレア)、リヴィオ、ラッド、電気の少女(美琴)を警戒。
  クレアという女性、佐山、小鳥遊、アルルゥ、ヴァッシュを信用。アーチャーはやや信用。
  ハクオロも一応信用。真紅は情報不足で保留。


【ライダー(征服王イスカンダル)@Fate/Zero】
[状態]:魔力消費(やや大)、疲労(中)、腹部にダメージ(大)、全身に傷(小)および火傷(小)、腕に○印
[装備]:包帯、象剣ファンクフリード@ONE PIECE、ヤマハV-MAX@Fate/zero
[道具]:基本支給品一式×3、無毀なる湖光@Fate/Zero
    イリアス英語版、各作品世界の地図、ウシウシの実・野牛(モデル・バイソン)@ワンピース
    探知機、エレンディラのスーツケース(残弾90%)@トライガン・マキシマム
[思考・状況]
 0:ミュウツーを追い、連れ去られたアルルゥを救い出す。
 1:バトルロワイアルで自らの軍勢で優勝。
 2:首輪を外すための手段を模索する。
 3:北条沙都子とアルルゥを守る。
 4:サーヴァントの宝具を集めて戦力にする。
 5:有望な強者がいたら部下に勧誘する。
【備考】
 ※原作ギルガメッシュ戦後よりの参戦です。
 ※臣下を引きつれ優勝しギラーミンと戦い勝利しようと考えています。
  本当にライダーと臣下達のみ残った場合ギラーミンがそれを認めるかは不明です。
 ※レッド・レナ・チョッパー・グラハムの力を見極め改めて臣下にしようとしています。
 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
 ※自分は既に受肉させられているのではと考えています。
 ※ブケファラス召喚には制限でいつもより魔力を消費します
 ※北条沙都子、アルルゥもまずは同盟に勧誘して、見極めようとしています。
 ※現在の魔力残量では『王の軍勢』をあと一度しか発動できません
 ※別世界から呼ばれたということを信じました。
 ※会場のループを知りました。
 ※オープニングの映像資料を確認しました。



   ◇   ◇   ◇



最後に一つ『もしも』の話をしよう。



現在、H-3からB-4に向かって一羽の鳩が飛んでいる。
レナ達がライダー達へ手紙を届けようと送り出した鳩だ。
その手紙には『私達はE-6に向かいます』とある。
言うまでもなく彼女達の本当の目的地はA-2の古城跡で、これは『英語、数字はそれぞれ4つずつズラす』という取り決めに従ったものだ。

だが、ちょっと待って欲しい。
劇場でこのルールを決めた時にその場に居たのはレナ、チョッパー、梨花、ウルフウッド、ライダーの五人。
そう、グラハムも沙都子もその場で直接レナ達の話を聞いた訳ではないのだ。

ならば。


『もしもグラハム達がこのルールを知らないとすれば?』


もちろんライダーが二人にその事を伝えている可能性は高い。
彼らが合流したのは第三回放送が流れるよりも前だ。今までに一言伝えるだけの時間は十分にあった。
だが、これは元々チーム内でメンバーがはぐれたりした際、仲間に合流場所を伝えるために定められたルールだ。
もしライダーが『手元に探知機があるから別れても合流は容易だろう』と、そう判断したとすれば。
二人にこの事を伝えていない可能性も、無いとは言い切れないのではないだろうか。



これはあくまで可能性に過ぎない。
もしかしたら見当外れの妄言に終わるかもしれない。
でも、もしかしたら近い将来、本当に起こるかもしれない。
何が正しいのかは蓋を開けてみるまで分からない。そんな可能性の話。


レナ達からの手紙を受け取った時、二人は何を考え、どう行動するのだろうか。

文面をそのまま受け取りE-6の神社へ向かうのか。
それとも本当の合流場所であるA-2の古城跡へ向かうのか。
あるいはどこか近場の施設でライダー達の帰還を待つのか。


果たして、彼らの行く先は……。



 ※クリストファー・シャルドレードのデイパックの中身は、以下のように分配されました。
ライダー……無し
グラハム……大きめの首輪<ドラえもん>
アルルゥ……サカキのスピアー@ポケットモンスターSPECIAL
沙都子……その他

 ※オープニングの映像資料@○ロワオリジナルは、映画館の映写機にセットされたままになっています。

 ※グラハム達が『英語、数字はそれぞれ4つずつズラす』というルールを知っているかは不明です。



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