マルチジャンルバトルロワイアル@wiki

仲間はきっとそこに居る

最終更新:

marurowa

- view
だれでも歓迎! 編集

Sの選択/仲間はきっとそこに居る ◆Wott.eaRjU


闇の中で青い人影がゆらめいている。
スプレーを吹きつけたように染まった青色が嫌でも目につく。
これまた目立つ金髪と合わさり、その存在感をこれでもかと醸し出していた。
そう。非常に鬱陶しいくらいに。

「悲しい……悲しい話をしよう」

青色の作業服を着た男、グラハム・スペクターがぼそりと呟く。
同時に、横に居た小さな少女が頭を抱えるような仕草を見せた。
少女の名は北条沙都子という。
彼女の顔には『また始まった』といわんばかりの表情がはりついている。
グラハムと過ごした時間は未だあまり多くないにも関わらず、彼女にはわかっている。
発作が始まったのだ――と。

「俺は今度こそ命の恩人Aの友人、北条沙都子を守ると誓った。誓い……ああ、俺らしくもない立派で神聖な行いだ。
だからこうして、北条沙都子を連れて人気のない場所までやってきている。誰も居ない、我ながら完璧なまでに順調だ。
そこまではいい。何も問題はない……なかったはずだ。だが、こいつはなんだ?
北条沙都子を命の恩人Aや命の恩人Bへ送り届ける俺の誓いを、邪魔するこいつはなんだっていうんだ!?
俺は、俺はまた約束を踏み倒すのか……そうか、結局俺みたいなロクデナシには無理だと神様が言っているのか。
諦めろと、そういうことなのか……!
さしずめこいつはその神様とやらの差し金か……くそくそくそ、この世界はとことん残酷だ!
俺には約束の一つすらも守ることは出来ないボンクラだ、そう言いたいのか!?
ああ、悲しい……悲しすぎるだろうがあああああああああああああああああああああ!!」

もはや絶叫と言うにふさわしい。
ハイになっていくテンションに合わせるように、グラハムは己の世界で叫ぶ。
思い込みと妄想と想像とその他諸々に加え、スパイスとして機能するネガティブさが彼独特の理論をつくっていく。
そんなグラハムを横目で見る沙都子は呆れたように溜息をつくのだった。

「あーーー!静かにしてくださいまし! 騒いでいたら考えられるものも考えられないですわ!!」

大声を上げてグラハムを戒める沙都子。
彼女の小さな右手には一枚の紙が握られていた。
その紙こそ沙都子とグラハムを立ち止まらせた原因だった。


◇     ◇     ◇


『私達はE-6に向かいます』

竜宮レナによって書かれた一枚の紙は数分前、彼女の命を受けた一羽の鳩により沙都子とグラハムに届けられた。
書かれた内容は簡素であるが、沙都子とグラハムを大いに惑わせた。
何故なら二人は消防署を経由し、モール沿いに合流地点であるB-4の民家を目指していた。
合流地点はB-4の民家であると、途中で合流したライダーに教えられていたためだ。

「ライダーさんが私達にウソをついたとは考えにくいですわ。大体、ライダーさんにウソをつく理由はありませんですの」
「そうだな……。あのおっさんでもそれはないだろう」

そう。ライダーは嘘をついたわけではない。
ライダーはレナ、チョッパー、ウルフウッド、梨花――『○同盟』の仲間との取り決めを、二人に伝え損なっていた。
別の参加者に情報が漏れることを防ぐために、決められたルール。
それは『エリアを示す英語、数字は4つずつずらす』というものだ。
何故ライダーが伝え損ねたかというといくつか予想出来るものがある。
合流場所にはライダーも同行するはずだったため、わざわざルールを知らせる必要はないと考えたかもしれない。
また教えるつもりであっても、ライダーがグラハム、沙都子と合流した直後にはクリストファーの死があり、時間がなかった。
更に先刻、ライダーはアルルゥを連れ去ったミュウツーを急遽追いかけることになり、この時も伝える時間はなかった。

「レナさん達に何かあったから……合流場所を変えたところでしょうか?」
「ああ、それにしてもE-6か。あるとしたら神社か……。ん?神社っていうのはなんだ?愉快でおかしなネバーランドへ連れて行ってくれるような場所か?」
「そ、そんな場所じゃありませんの。とにかく、私達はどうするべきかを考えるべきですわ」

沙都子とグラハムにはどうしてレナ達が合流地を変えたかはわからない。
1エリアの違いではなく、B-4からE-6の変更は不自然だろう。
実際は、レナ達は古城の調査も兼ねてA-2に変更したのだが、ルールを知らない二人にその発想を持つのは難しいに違いない。

「そりゃあE-6に行くしかないだろう。命の恩人A達はE-6に行くと言っているんだからな。
だが、そうなると一つ問題が出来てしまう」
「ええ、私達がこのままE-6に向かえば、ライダーさんとアルルゥがB-4で待ちぼうけになりますの。
あの人は私達がB-4に向かっていると思っているでしょうから」
「あんなおっさん知ったことか!!と、以前の俺なら言いたいところだが、さすがのロクデナシでボンクラの俺でも、そうは言っていられないとはわかるぞ。
悔しいがおっさんの腕はなかなかのものだし、アルルゥも連れてくる。
仲間を見捨てるような真似はきっとラッドの兄貴も許してはくれないだろう。だから……このままE-6には行けないな」
「ま、まだ気にしていられてたですのね……。
でも、ライダーさんとアルルゥを見捨てるわけにはいかないのは当然ですわ。
問題はお二人に追いつくか、先にB-4でお二人を待つか……ということですの」

216 名前:Sの選択/仲間はきっとそこに居る ◆Wott.eaRjU [sage] 投稿日:2012/11/25(日) 22:01:11.28 ID:IzQMJNzm [4/9]
沙都子とグラハムの目的地は決まっていた。
レナ達の事情はわからないが、E-6に向かうと書かれている以上、二人もE-6に向かわないわけにはいかない。
ただ、合流地の変更を知らないライダー達とどこで合流するかを考える必要がある。
二人がライダーと別れた地点はG-5であり、ライダーは北へ向かった。
ライダーはアルルゥを保護した後、そのまま中央エリアを通り、E-6に向かうかもしれない。

ちなみに二人が現在居る場所はH-5であり、会場のループを利用すればすぐにB-2に着くことが出来る。
あらかじめB-4でライダー達を待ち、その後全員でE-6に向かうというのも手だ。
もしくはライダーが持っている探知機を当てにし、こちらから再びライダー達と合流し、E-6に向かうという手もあるだろう。


「……おっさんとアルルゥとはさっさと合流したいが場所がわからないとお手上げだ。
悲しい話しだが、この世界は広い……この会場も広い……。
いくらおっさんに探知機という便利な道具があっても、今から追いつくのは難しいんじゃないかと、さっきから俺のなけなしの脳が言っている」
「賛成ですわ。ライダーさんとアルルゥを追って、結局会うことが出来なければ不味い。
更にライダーさんには不思議なお馬さんがあるので、歩くしかない私達とは速さが全く違う。
だったら、ライダーさんとアルルゥと合流出来るように、B-4で先ず待っていた方が確実ですわ!」
「そういうことだ」

結局、二人は前者を選択した。
約束の時間まであまり猶予はなく、確実に合流出来る方を優先したわけだ。
ならば、と言わんばかりにグラハムは歩を速めた。

◇     ◇     ◇

「あの、グラハムさん――」

B-4でライダーとアルルゥを待つという方針を決めて数十分後、沙都子が口を開いた。
その声を背中で受けて、グラハムがぐるりと首を後ろへ回した。
相変わらずその瞳はドブ川に沈んだように暗かった。
見慣れた光景に構わず沙都子は続ける。

「クリスさんは…その、どんな人だったんでしょうか?」

沙都子が呼ぶクリスとはクリストファー・シャルドレードの事である。
クリストファーはホムンクルスと呼ばれる、一種の人造人間であり、沙都子にとってこの殺し合いで最初に出会った人物だ。
そして第三回放送の前で、ゼロの手によりこの殺し合いから脱落してしまった。
だが、沙都子はクリストファーがあまり自分のことを話さなかったこともあり、彼について知っていることはあまり多くはない。
クリストファーの知り合いであるグラハムからは、どういう人物に映ったのかを知りたくなったのかもしれない。

「あいつは気に入らないヤツだったな」
「え、ええ!?」

恐らくクリストファーがグラハムのことについて尋ねられても、同じような反応だっただろう。
グラハムとクリストファーは知り合いといっても友好的ではない。
そもそも殺し合った仲であり、互いのことを気に入らないヤツだと言っておかしくはない。
そう。沙都子が想像するような『知り合い』とはまた意味の異なる関係なのだから。

「だが、あいつはリカルドの坊っちゃんの下で働きだしていた。
沙都子も守ろうとしていたし、そういうところは嫌いじゃなかったな。
まあ――全体的には気に入らなかったけどな。というか勝負をつけたいな俺は!
あれ、あいつ死んじまったらもう勝負がつかない……結局勝負がつかないままか……そ、そんな馬鹿な……!」

それでもグラハムにも思うところはあったのだろう。
たとえ殺し合った仲とはいえ、互いに憎み切っているわけではない。
彼なりの評価を付け加えるが、本根は後半の部分に集約しているに違いない。
苦笑いを浮かべながら相槌をうつ沙都子だが、段々と表情が険しくなった。

「守る……そうですわね。クリスさんは最後まで私達を守ってくれました。
今度は私がアルルゥを守る番ですわ」

思い返せばクリストファーには迷惑をかけっぱなしだった。
殺し合いに放りだされ、錯乱した沙都子をクリストファーは保護してくれた。
クリストファーにとって沙都子は赤の他人であるため、保護する義務もなかった。
それでもクリストファーは最後まで見捨てず沙都子の傍に居た。
陽気な声で『友達になってくれるかい』――と残して。

「でも、時々どうしても思いますの。
私にはクリスさんやグラハムさん、ライダーさんのような力はありません。
何も力がない私が、本当に誰かを守ることが出来るのかと……」


俯きながら沙都子が思い出していたのは先刻の出来事だ。
沙都子の傍にいたアルルゥがミュウツーによりさらわれてしまった。
ポケモンを駆使しても、ミュウツーを止めることは出来なかった。
『ねーねー!』と叫びながら連れ去られていったアルルゥの姿を思い浮かべる度に、沙都子は自らの非力さを呪っていた。

自分は只の小学生で、際立った力はないのだから仕方ない。
だが、沙都子はクリストファーに託され、アルルゥに誓ったのだ。
アルルゥのねーねーとして彼女を守ってみせると。
だから、自分の無力さはどうしても認めたくはなかった。
認めてしまえば、本当に自分に出来ることは無くなってしまう気がしてならなかった。
それでも、不安という風は常に消えることなく沙都子の胸の中に渦巻いていた。

そんな時、不意に鈍い音が軽い痛みと共に聞こえた。

「い、痛ぁ!」

突然の痛みは頭の辺りからやってきていた。
そして目の前にはグラハムが右腕を、沙都子の頭上に丁度突きつけるように振り下ろしていた。
グラハムに殴られたのだと沙都子は悟った。


「命の恩人Aは、俺の命の恩人の一人だ」


命の恩人Aとは誰だったかと一瞬、沙都子は考えるが直ぐにその顔が脳裏に浮かんだ。
彼女は可愛いものには目がなく、不思議な雰囲気を持っていた。
だけど、ここ一番の土壇場には誰よりも冷静で、皆を引っ張ってくれた。
彼女は沙都子にとって大事な、大事な仲間である――竜宮レナのことだ。
そしてグラハムにとっても、レナはただこの会場で知り合った仲ではない。

「川に流された俺を、命の恩人Aは拾ってくれたぞ。
命の恩人Aにだって、ラッドの兄貴や赤目野郎やおっさんのような力はない。
だが、それでも命の恩人Aは俺を救うことが出来た」

グラハムを表すには『不規則』という言葉がまさに相応しい。
躁と鬱をせわしなく繰り返す彼の行動を、正確に予測するのはきっと不可能だろう。
しかし、そんなグラハムにも常に変わらないことはある。
グラハム・スペクターは、一度受けた恩は忘れない。
そして恩人の友人は、グラハムにとって他人ではない。

「沙都子、お前はあいつの仲間なんだろう。命の恩人Aは自分に力がないなんて泣きごとは言わなかった。
そんな命の恩人Aの友人だから、俺はお前を守ると誓った。
だったら、お前も言うな。俺を迷わせるな。俺を失望させるな。お前は命の恩人Aの友人なのだから、自信を持っていろ。
大体、力がなくてもいいだろう。ゼロやギラーミンの相手はこの俺だ。
要するにだ。つまり――」

一呼吸を置くグラハム。
好き勝手に己の理論を展開していく、グラハムだが結局は次の一言に彼の感情は詰まっている。
グラハムの中で存在し続ける、数少ない『ルール』はどんなものにも邪魔はされない。


「――『壊す』のは俺にやらせろ」


『殺す』のではなく『壊す』。
そう言ってのけるグラハムの嬉々とした表情に、沙都子はどこか見知った顔が被った。
一人の実兄と、かけがえのない仲間である一人の少年。
彼ら二人の大きな共通点は、沙都子の味方であったこと。
兄の形身である金属バットを握りしめながら、沙都子はただそう感じていた。



◇     ◇     ◇



力は必要ない。
グラハムはそう言ってくれたが、沙都子は悔しかった。
この殺し合いではいつ自分の命が狙われるかわからない。
グラハムやライダーのように強い力を持っていても、不意をつかれて命を落としてしまうかもしれない。
また更に強い参加者が現れることだってある。
現に、あんなに強かったクリストファーはゼロにより殺されてしまった。
そんな状況だからこそ、自分より幼い者は、自分の身は自分で守りたかった。
しかし、それすらも叶わないのであればせめて何かの役に立ちたい。
グラハムやライダーに対し、戦うこと以外で自分が役に立てれば――と。
そう願っていた。

(っ! そうですわ――)

答えは身近なところにあった。
沙都子は『部活』の活動で日頃から身体を動かしてはいるが、戦闘技術は全くない。
しかし、沙都子が最も得意としている分野がある。
それはトラップに関してであり、トラップの加工も日常的に行っている。
力はなくても、手先の器用さであれば役に立つことが出来るかもしれない。
沙都子には、この場で手先の技術を必要とする作業に心当たりがあった。


(私に、この首輪を外せることが出来れば……脱出に一歩近づきますわ)


沙都子には機械に関する専門的な知識はなく、首輪の解除は難しいだろう。
それでも最初から諦めるような真似はしたくなかった。
きっと、同じような立場なら仲間達も諦めようとはしないだろうから。
そう思えると、不思議と身体の奥底が熱を帯びていくような感触があった。

【H-5 南部/一日目 真夜中】

【チーム名:○同盟グラハム組】


【グラハム・スペクター@BACCANO!】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(中)、青いツナギ姿(いくらか傷)、腕に○印
[装備]:包帯、小型レンチ、スモーカー大佐の十手@ONE PIECE
[道具]:支給品一式(一食分、水1/10消費。うち磁石は破損)、スペアポケット@ドラえもん、かぁいい服
    海楼石の網@ONEPIECE、大きめの首輪<ドラえもん>
[思考・状況]
 1:B-4でライダーとアルルゥを待ち、その後で合流場所であるE-6に向かう。
 2:レナ達と合流するまで北条沙都子を守り抜く。
 3:ウソップやレッドを殺した者を壊す。
 4:イスカンダルに敵意。
 5:殺し合い自体壊す
 6:ラッドの兄貴と合流、交渉。兄貴がギラーミンを決定的に壊す!
 7:イスカンダルの勧誘は断固拒否。
【備考】
 ※レッドたちがクレアを信用していることを知りません。
 ※『○』同盟の仲間の情報を聞きました。
 ※ライダーからの伝聞により劇場での顛末を知りました。
 ※オープニングの映像資料を確認しました。




【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康、L3、悲しみ、不安
[装備]:悟史の金属バット@ひぐらしのなく頃に、レッドのニョロ@ポケットモンスターSPECIAL
[道具]:支給品一式×3<沙都子、翠星石、エルルゥ>、グラン・メテオ@ポケットモンスターSPECIAL
    翠星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、翠星石の亡骸首輪つき、蒼星石の足@ローゼンメイデン
    雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン、庭師の如雨露@ローゼンメイデン
    カビゴンのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、ゴローニャのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
    アミウダケ@ワンピース、マスケット銃用の弾丸50発、グロック17@BLACK LAGOON(残弾15/17)
[思考・状況]
 0:アルルゥ……どうか無事で……。
 1:グラハムについていって、部活メンバーの生き残りと合流する。
 2:真紅にローザミスティカを届ける。水銀燈には渡さない。
 3:時間に余裕が出来た時に、首輪解除について考える。
【備考】
 ※参戦時期は『皆殺し編』にて、帰ってきた北条鉄平と出会った直後です。
 ※名簿は確認したようです。
 ※雛見沢症候群の進度は具体的には不明。L5まで進行した場合、極度の疑心暗鬼と曲解傾向、事実を間違って認識し続ける、などの症状が現れます。
  説得による鎮静は難しいですが不可能ではありません。治療薬があれば鎮静は可能ですが、この場にあるかどうかは不明です。
 ※真紅、蒼星石、水銀燈に関しては名前しか知りません。
 ※アルルゥの名を仗助から聞きましたが、アルルゥの家族の詳細についてはまだ把握していません(エルルゥ=姉のみ把握しました)
 ※ゼロと情報交換しましたが、どこまで教えられたかは不明です。
 ※映画館に行けばDISCの中身を見ることが出来ると思っています。
 ※地下道には何かがあるのではと考えています。



時系列順で読む


投下順で読む



Back Next
When They Cry(後編) グラハム・スペクター [[]]
When They Cry(後編) 北条沙都子 [[]]

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー