総括所見:スウェーデン(第4回・2009年)


CRC/C/SWE/CO/4(2009年6月26日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2009年5月27日に開かれた第1403回および第1404回会合(CRC/C/SR.1403 and 1404参照)においてスウェーデンの第4回定期報告書(CRC/C/SWE/4)を検討し、2009年6月12日に開かれた第1425回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、報告ガイドラインにしたがい、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.248)のフォローアップに関する情報を記載した、締約国の第4回定期報告書の提出を歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/SWE/Q/4/ and Add.1)に対する締約国の文書回答により、スウェーデンにおける子どもの状況についての理解を向上させることができたことも歓迎するものである。
3.委員会は、さまざまな省庁の専門家を擁する、締約国のハイレベルな代表団との率直かつ開かれた対話に、評価の意とともに留意する。
4.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書に関して2007年6月8日に採択された総括所見(CRC/C/SWE/OPAC/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

5.委員会は、報告対象期間中に見られた、以下のものを含む多くの進展を歓迎する。
  • (a) 差別事由のひとつに年齢を含み、かつ教育制度のあらゆる部分における差別を禁止した反差別法(2009年1月1日施行)、およびその実施を担当する平等オンブズマン事務所の設置。
  • (b) 子どもの保護を強化するため、2008年4月に社会サービス法(2001:453)および青少年ケア(特別規定)法(1990:52)に導入された新たな規定。
  • (c) 犯罪の結果死亡した子どもについての調査に関する法律(2007:606、2008年1月1日施行)。
  • (d) 国家犯罪防止委員会(BRA)による、スウェーデン刑法第6章への新たな性犯罪規定の導入(2007年)。
  • (e) 保護者のいない未成年者の受け入れおよび居住に関する責任がスウェーデン移民庁から市町村へと移管されることにつながった、2006年7月1日に導入された法改正。
  • (f) 子どもの権利の促進および保護に関する具体的プログラムを含んだ第2次国家人権行動計画(2006~2009年)の採択および実施、ならびに、スウェーデンにおける人権の全面的尊重を確保する活動の支援を目的としたスウェーデン人権代表団の任命(2006年3月)。
6.委員会はまた、2005年に第3回報告書が検討されて以降、締約国がとくに以下の文書を批准しまたはこれに加入したことにも、評価の意とともに留意する。
  • (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2007年)。
  • (b) 障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書(2008年)。
  • (c) 拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは刑罰に関する条約の選択議定書(2005年)。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告
7.委員会は、締約国の第3回定期報告書(CRC/C/125/Add.1)の検討後に表明された懸念および勧告(CRC/C/15/Add.248参照)の多くが立法上、行政上その他の措置を通じて対応されてきたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、その他の懸念および勧告(独立の監視、データ収集、研修および条約の普及、家庭環境を奪われた子ども、健康および保健サービス、教育ならびに性的搾取および人身取引のような問題に関するものを含む)が十分に対応されまたは実施されていないことを遺憾に思うものである。
8.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。
立法
9.委員会は、条約が国内法体系に正式に編入されていない理由について、報告書および事前質問事項に対する文書回答で締約国が行なっている説明に留意する。しかしながら委員会は、条約が引き続きスウェーデン法として正式に承認されていないことにより、条約に掲げられた諸権利および当該権利の適用に影響が生じうることを懸念するものである。
10.委員会は、締約国に対し、国内法が条約と全面的に一致することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう慫慂するとともに、締約国が、条約をスウェーデン法として正式に承認することに向けた努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はさらに、国内法の規定が条約に掲げられた法律〔ママ〕と抵触するときは常に条約が優先するべきことを勧告するものである。
調整
11.委員会は、政府内に監視部局である子どもの権利政策調整局が設けられていること、政府と子どもとともにおよびこどものために活動しているNGOとの構造的対話の場として「子どもの権利フォーラム」が設置されたこと(2005年6月)、および、組織的比較が適用されていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子どものための取り組みの調整および一貫性が中央においても地方レベルでも不十分であることを懸念するものである。さらに、市町村および県が高度の自治権を享受していることには留意しながらも、委員会は、条約の実施に関して市町村、県および広域行政圏の間で大きな格差が残っていること(子どもの貧困の水準、危険な状況にある子どものための社会サービスに対して利用可能とされている資源ならびに学校間および広域行政圏間の学業成績の違いとの関連を含む)を懸念する。
12.委員会は、中央および地方の公的機関の間の十分な協力ならびに子ども、親および非政府組織との協力を確保するため、締約国が、子どものための取り組みの一貫性および調整を向上させるための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。委員会はまた、依然として残る格差に対応し、かつあらゆるレベルでの条約の実施(レーンを通じてのものも含む)を確保するため、締約国が、市町村および広域行政圏のレベルで行なわれる決定を監視しかつフォローアップするための措置を強化することも、勧告するものである。
国家的行動計画
13.子どもの権利に関わる多くの措置が掲げられた第2次国家人権行動計画(2006~2009年)の採択は歓迎しながらも、委員会は、子どもに関する具体的な国家的行動計画が存在しないことに、遺憾の意とともに留意する。
14.委員会は、締約国が、子どもに関する包括的な国家的行動計画を採択するとともに、当該計画において条約のすべての分野が網羅され、かつ2002年総会特別会期の成果文書「子どもにふさわしい世界」および中間レビュー(2007年)が正当に考慮されることを確保するよう、勧告する。
独立の監視
15.委員会は、子どもの権利の実施のために子どもオンブズマンが行なっている多くの活動に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、子どもがオンブズマンに対して個別の苦情を申し立てられないことを懸念するとともに、パリ原則にしたがい、オンブズマンの役割を政府から明確に独立したものとする必要があることも懸念するものである。
16.委員会は以下の措置を勧告する。
  • (a) 締約国が、子どもオンブズマンに対し、個別の苦情申立てを調査する権限を与えることを検討すること。
  • (b) 子どもオンブズマンの年次報告書を、子どもオンブズマンの勧告を実施するために政府がとりうる措置についての提案とともに、リクスダーゲン(議会)に提出すること。
  • (c) 子どもオンブズマンがその権限を効果的にかつ独立して行使するための十分な人的資源および財源を有することを確保するために必要な措置を、締約国が引き続きとること。
  • (d) とくに県および広域行政圏間の資源格差を考慮に入れながら、すべての子どもが子どもオンブズマンにアクセスできることを確保する目的で地方事務所を設置するために必要な支援を、締約国が子どもオンブズマンに対して提供すること。
資源配分
17.条約の実施に充てられている資源の配分について利用可能とされた情報は歓迎しながらも、委員会は、子どものためのサービスへのアクセスおよびその利用可能性について、子どもが住んでいる場所により、当該サービスの内容についても執行についても格差が存在することに、懸念を表明する。
18.委員会は、締約国が条約第4条に基づく義務をどの程度履行しているかに関する適正な評価を可能にする目的で、締約国が、条約の実施に関わる国家予算の金額および割合についての具体的情報の提供を継続しかつ強化するよう、勧告する。締約国はまた、すべての子どもが、どこに住んでいるかに関わらず、サービスに平等にアクセスできかつサービスを平等に利用できることを確保するための措置も強化するべきである。これとの関連で、委員会は、締約国が、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議を受けて委員会が行なった勧告を考慮するよう、勧告する。
データ収集
19.委員会は、保健福祉庁の統計報告書およびスウェーデン統計庁(SCB)の活動を含め、さまざまな措置がとられていることに留意する。委員会はまた、子どもの権利政策における取り組みの状況を測定しかつ監視するための指標開発を委ねられた作業部会が、条約に基づく一連の目標を活用したフォローアップ制度を提案していることにも、留意するものである。しかしながら委員会は、障害のある子どもの総数および虐待の被害を受けた15~18歳の子どもに関するデータが存在せず、かつ性的搾取の被害を受けた子どもの総数が精確でないことに対し、あらためて懸念を表明する。
20.委員会は、締約国が、子どもに関するデータを収集するあらゆる機関間で調整のとれたアプローチを確立し、かつ、あらゆる子どもの状況、とくに障害のある子ども、虐待の被害を受けた15~18歳の子どもおよび性的搾取の被害を受けた子どもに関する細分化されたデータの体系的収集を向上させるための努力を強化するよう、勧告する。
条約の普及および研修
21.政府の資金による「条約実施ハンドブック」スウェーデン語版の発刊(2008年1月)およびエーレブルー大学におけるスウェーデン子どもの権利アカデミーの設置(2007年3月)は歓迎しながらも、委員会は、条約およびその2つの選択議定書に関する子どもの意識が依然として低いままであり、かつ子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が子どもの権利に関する十分な研修を受けているわけではないことを、懸念する。
22.委員会は、締約国に対し、すべての子どもが条約およびその2つの選択議定書について知り、かつ自己の権利の擁護のためにこれらの文書を活用できることを確保するための措置を強化するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が、
子どものためにおよび子どもとともに働くすべての者(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、教員、ソーシャルワーカー、保健従事者およびとくに子どもたち自身)を対象とする、子どもの権利も含む人権についての体系的かつ継続的な研修プログラムを確保するよう、勧告するものである。
国際協力
23.委員会は、子どもの権利の促進および保護に関するものも含む政府開発援助および国際協力への継続的コミットメントについて、締約国を称賛する。これとの関連で、委員会は、締約国が国内総生産の0.7%以上を政府開発援助に配分していること(ODA目標)に、評価の意とともに留意するものである。
24.委員会は、締約国に対し、子ども影響評価を実施すること、および、他の締約国との二国間協力において条約および選択議定書ならびに当該国に関する委員会の総括所見および勧告に特段の注意を払うこと等の手段により、国際協力の分野における活動を継続しかつ強化するよう、奨励する。委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する2007年の一般的討議後に発表された勧告を考慮するよう、慫慂するものである。

2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
25.委員会は、新たな反差別法を含む立法上の保障が採択されたにも関わらず、差別の禁止の原則が実際には全面的に尊重されていない旨の前回の懸念をあらためて表明するとともに、民族的マイノリティの子ども、子どもの難民および庇護希望者ならびに移住者の家族に属する子どもに対する事実上の差別ならびに排外主義的および人種主義的態度について、とくに懸念を覚える。
26.委員会は、締約国が、条約第2条の全面的遵守を監視しかつ確保するとともに、差別の禁止の原則を保障した現行法が自国の管轄内にあるすべての子どもとの関連で実施されることを確保するよう、勧告する。
子どもの最善の利益
27.委員会は、外国人法(スウェーデン法典-SFS 2005:716)、および監護権、居所およびアクセスに関連する子どもおよび親法の規定の改正を含む、子どもの最善の利益の原則を編入する新たな立法措置に留意する。しかしながら委員会は、子どもの最善の利益の原則が、行政領域等において実際には十分に実施されていないことを懸念するものである。委員会はまた、庇護希望者および移民である子どもの最善の利益が庇護手続において十分に考慮されていないことも、依然として懸念する。
28.委員会は、締約国が、子どもの最善の利益の原則の意味および実務的適用に関する意識を高め、かつ条約第3条が立法および行政措置に適正に反映されることを確保するための措置を強化するよう、勧告する。委員会はまた、とくに移民庁および社会福祉機関の職員に対して定期的研修を行なう等の手段により、とくに子どもが関わる庇護事件において子どもの最善の利益の原則が基盤とされかつ手続および決定の指針となることを確保するため、締約国が適当かつ効果的な措置をとることも勧告するものである。
子どもの意見の尊重
29.意見を聴かれる子どもの権利を増強するためにとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、学校、施設ならびに子どもおよび若者のための社会的養護サービスにおける子どもの積極的参加に関して地域格差および不十分さが残っていることを懸念する。委員会はまた、社会で自己の生活に関わる事柄についての真の影響力を何ら有していないと感じている子どもがいることも、依然として懸念するものである。
30.条約第12条にしたがい、かつ、意見を聴かれる子どもの権利についての一般的討議(2006年9月15日)の際に採択された委員会の勧告に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約第12条にしたがい、子どもの意見の尊重および自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を、家庭、学校、施設、裁判所および行政機関において、立法等も通じて引き続き促進しかつその便宜を図ること。
  • (b) 意見を表明する力のある子どもに対してそのための十分な機会が提供されることおよびその意見が正当に重視されることを効果的に確保するための研修を、子どもとともに働くおとなが受けることを確保すること。
  • (c) 子どもによる積極的参加の要件をすべての市町村が満たすことを確保するとともに、子どもの意見がどの程度考慮されているか(子どもの意見が関連の政策およびプログラムに与える影響も含む)に関する定期的検討を行なうこと。

3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a))

適切な情報へのアクセス
31.委員会は、インターネット上で身元を偽って(すなわちおとなが子どものふりをして)子どもに接近しようとするいかなる意図も犯罪とする新法の制定(2009年7月1日施行予定)、および、政府委員会であるメディア評議会(Medieradet)が、インターネット上の不法なおよび有害なコンテンツと闘うことを目的として、とくにスウェーデン学校改善庁と協力しながら行なっている活動を、歓迎する。
32.委員会は、締約国に対し、条約第17条(e)に一致する形で、子どもの福祉にとって有害となる情報および資料から子どもが保護されることを確保するため、適切な法律の執行、親教育の提供、学校における教育および子どもの意識啓発によるものを含むあらゆる必要な措置を引き続きとるよう、奨励する。
子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ
33.子どもに対する暴力に関する国連研究について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) ヨーロッパ・中央アジア地域協議(2005年7月5~7日、リュブリャナ)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。とくに、委員会は、締約国が以下の勧告に特段の注意を払うよう勧告する。
    • (i) 防止を優先すること。
    • (ii) 非暴力的な価値観および意識啓発を促進すること。
    • (iii) 回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。
    • (iv) 子どもの参加を確保すること。
    • (v) アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい通報制度およびサービスを創設すること。
  • (b) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保し、かつ、このような暴力および虐待を防止しかつこれに対応するための具体的なかつ期限を定めた行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながら、かつとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。
  • (c) 子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表と協力し、かつ同代表を支援すること。
  • (d) 次回の定期報告書において、締約国による同研究の勧告の実施に関わる情報を提供すること。

4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

家庭環境
34.委員会は、家族から分離され、かつ里親ホームその他の施設で生活している子どもの人数が多いことを懸念する。委員会はまた、家出をする子どもまたは自宅を離れることを余儀なくされる子どもの人数についても懸念を覚えるものである。
35.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家族から分離される子どもおよび家出をしまたは自宅を離れることを余儀なくされる子どもの人数が多いことの原因に対応する措置をとるとともに、家出をしまたは自宅を離れることを余儀なくされた子どもがサービスにアクセスできかつ必要な助言および支援を受けることを確保すること。
  • (b) とくに、もっとも脆弱な立場に置かれた家族に支援および指導を提供すること、脆弱な立場におかれた家族の親を対象とする親訓練プログラムを発展させ、これらのプログラムに資金を拠出しおよびこれらのプログラムを提供することならびに意識啓発キャンペーンを実施することによって子どもの施設措置を防止するためのプログラムおよび政策を、さらに発展させかつ実施すること。
  • (c) 自然な家庭環境の保護を優先するとともに、家族からの分離および里親養護または施設への措置は子どもの最善の利益にかなう場合にのみ用いられることを確保すること。
家庭環境を奪われた子ども
36.委員会は、代替的養護施設(民間の代替的養護または養護居住ホームを含む)の監督および監視が不十分であること、および、親のケアを受けていない子ども(民間の代替的養護に措置された子どもを含む)のための効果的な苦情申立て機構が存在しないことに、懸念を表明する。
37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 里親ホームまたは施設(民間の代替的養護または養護居住ホームを含む)に措置された子どもの状況の十分な監督および監視を確保すること。
  • (b) 親のケアを受けていない子どものために効果的な、十分に周知された、独立のかつ公平な苦情申立て機構が提供されることを確保するため、必要な措置をとること。
  • (c) 施設養護を離れた子どもに対し、フォローアップおよび再統合のための十分な支援およびサービスを提供すること。
虐待およびネグレクト
38.スウェーデン子どもヘルプラインの存在を含め、子どもの虐待およびネグレクトに関する意識を高めかつこれを減少させるために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、子どもの虐待およびネグレクトその他の形態の家族間暴力が高い水準にあることを依然として懸念する。委員会はまた、家庭で暴力にさらされている子どもが必ずしも十分なケアおよび援助を受けていないことも懸念するものである。
39.委員会は、締約国が、以下の措置をとることも含め、児童虐待の被害を受けた子どもに十分な援助を提供するための努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。
  • (a) 児童虐待がともなう事案を早期に発見しかつ対応すること。
  • (b) 子どもを虐待するおそれがある家族をとくに対象とする子育てプログラム。
  • (c) すべての暴力被害者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。
  • (d) 家庭で虐待の被害を受けている子どもに対し、十分な保護を提供すること。
  • (e) スウェーデン子どもヘルプラインを支援し、子どものために24時間対応のヘルプライン・サービスを提供できるようにすること。
  • (f) 不当な取り扱いの悪影響に関する公的な意識啓発キャンペーンおよび教育キャンペーン、ならびに、積極的かつ非暴力的形態のしつけおよび規律を促進する防止プログラム(家族発達プログラムを含む)。

5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項))

障害のある子ども
40.締約国が障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書を批准したことは歓迎しながらも、委員会は、障害のある子どもが文化的活動およびレクリエーション活動への参加を制約されていることに、懸念とともに留意する。委員会は、障害のある子どものための個別支援計画数が増加したことには留意するものの、締約国報告書によれば、障害のある子どもが目に見えない存在となっており、かつ社会は子どもではなく障害自体に焦点を当てることが多いことを懸念するものである。委員会は、締約国が、障害のある子どもに関する細分化されたデータの収集についての勧告を実施していないことを遺憾に思う。
41.委員会は、締約国が、条約第23条にしたがい、かつ一般的意見9号(2006年)ならびに障害のある人の権利に関する条約およびその選択議定書を考慮に入れながら、とくに以下の措置をとることにより、障害のある子どもの権利を保護しかつ促進するための措置を引き続き強化するよう、勧告する。
  • (a) 障害のある子どもの保護および社会サービス、教育サービスその他のサービスに対する障害児の平等なアクセスに関する包括的な政策を策定しかつ実施すること。
  • (b) 障害者の機会均等に関する基準規則(総会決議48/96)を考慮に入れながら、障害のある子どもに対してサービスへの平等なアクセスが提供されることを確保すること。
  • (c) 障害のある子どもに関する、細分化された正確な統計データを収集するために必要な措置をとること。
  • (d) 必要な支援を提供し、かつ教員が普通学校で障害のある子どもの教育を行なうための訓練を受けることを確保する等の手段により、障害のある子どもに対して平等な教育機会を提供すること。
健康および保健サービス
42.委員会は、補完代替医療(CAM)がヨーロッパにおいても世界的にも承認された医療分野のひとつであることに留意する。そのため委員会は、締約国が、8歳未満の子どもならびに妊婦および分娩時の女性の検査、治療およびケアにおけるCAMの利用を禁じていることを、懸念するものである。委員会は、このような禁止が、治療手段を選択する締約国のすべての個人(子どもを含む)の権利に異を唱えるものであり、かつ到達可能な最高水準の健康に対する権利の剥奪につながる可能性があることを懸念する。
43.委員会は、年齢によって区別されることなくすべての子どもがCAMの検査、治療およびケアにアクセスでき、かつ到達可能な最高水準の健康に対する権利を享受できることを確保するため、締約国が現行法の見直しおよび改正を検討するよう、勧告する。
思春期の健康
44.バーチャル青年クリニックの設置を含む努力が行なわれていることには留意しながらも、委員会は、青少年の摂食障害、具体的には女子の過食症および拒食症の発生件数が多いことを依然として懸念する。さらに委員会は、運動の少なさと劣悪な食事があいまってスウェーデンの子どもの体重過多および肥満の問題が増大していること、および、現在の研究によれば、自覚されたストレスがいまなお青少年の間で問題となっていることを懸念するものである。
45.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら、子どもおよび青少年の健康に細心の注意を払うよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下のことのための措置を強化するよう勧告するものである。
  • (a) 過食症および拒食症を含む摂食障害の発生に対応すること。
  • (b) 体重過多および肥満の問題に対応し、かつ青少年の間で運動を含む健康的なライフスタイルを促進すること。
  • (c) 青少年のストレス水準を低減させ、かつ青少年がストレスの影響に対処するのを援助すること。
  • (d) 治療およびカウンセリングのための措置がジェンダーに配慮したものであり、かつ部門を超えた統合的アプローチの対象とされることを確保すること。
46.委員会は、性感染症(STI)が蔓延していること、および、15~19歳の女子の間で10代の望まない妊娠率および妊娠中絶率が上昇していることに、懸念を表明する。
47.委員会は、締約国が、STIの蔓延について分析しかつこれと闘うための措置を増強するとともに、10代の望まない妊娠および妊娠中絶の件数を減らす目的で、青少年を対象とする、学校内外におけるセクシュアルヘルス教育およびリプロダクティブヘルス教育を強化し、かつ、妊娠した10代の女子に対して必要な援助ならびに保健ケアおよび教育へのアクセスを提供するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、妊娠中絶および早期妊娠に関して保健福祉庁が実施した調査に関心をもって留意し、締約国に対し、次回の定期報告書にこの調査の成果に関する情報を記載するよう慫慂する。
薬物およびアルコールの濫用
48.薬物およびアルコールの濫用の防止を目的として多数の取り組みが行なわれていることには留意しながらも、委員会は、18歳未満の薬物使用者について治療の可能性が制約されていることを懸念する。委員会はまた、18歳未満の強度の薬物使用者が何名おり、かつそのうち何名が薬物の静注を行なっているかに関する統計が存在しないことも懸念するものである。委員会はまた、親の薬物濫用により苦しんでいる子どもが多いことも懸念する。
49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 有害物質濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を子どもおよび親に提供するための努力を強化すること。
  • (b) 有害物質濫用の影響を受けているすべての子ども(18歳未満の薬物使用者および親の薬物濫用により苦しんでいる子どもを含む)に対し、当該濫用の有害な影響を効果的に低減させることを目的とした、証拠に基づく必要な支援ならびに回復および再統合のためのサービスが提供されることを確保すること。
  • (c) この現象の蔓延状況を判断する目的で研究を実施しかつデータを収集すること。
精神保健サービス
50.委員会は、精神保健サービスを強化するための措置がとられたこと(小児・思春期精神医学へのアクセス向上のための措置を通じて当該精神医学に特別な焦点が当てられることへの投資が開始されたこと、および、締約国がスウェーデン統計庁に対して子どもおよび若者の精神保健に関する全国調査の実施を委託したことを含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、精神保健上の問題および精神疾患を有する子どもが必要な治療およびケアを受けられるようになるまでの待機期間が相当に長いこと、10代(とくに女子)の自殺および自殺未遂が多数発生していること、ならびに、異なる部門(保健、教育、社会福祉)のサービス間でいまなお欠落がありかつ調整が行なわれていないことなど、課題が残っていることを懸念するものである。
51.委員会は、締約国に対し、十分な治療およびケアがそれを必要とするすべての子どもに対して不当に遅延することなく提供されることを確保するため、防止プログラムおよび介入プログラムの双方を含む精神保健ケア制度を強化するよう、奨励する。加えて、締約国は、関連のサービス(学校、社会的養護ホーム、少年司法制度、薬物・アルコール濫用治療センター等)間の調整の改善を確保するべきである。委員会は、締約国に対し、自殺の危機にある人々のための保健ケア資源を強化するとともに、危険な状況におかれた集団の自殺を防止するための措置をとるよう、促す。
生活水準
52.近年、貧困下で暮らしている子どもの人数が全体として減少していることには留意しながらも、委員会は、市町村内および市町村間ならびに都市町村間で子どもの貧困水準の格差が大きいことに懸念を表明する。委員会はまた、一貫して低所得の世帯で暮らす移民の子どもの割合が非常に高く、かつ、非スウェーデン系の子どもおよびひとり親世帯で暮らす子どもの経済状況が継続的に悪化していることにも、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、金融危機が、脆弱な立場に置かれたこのような集団の子どもの状況に重大な影響を与えかねないことも懸念する。
53.委員会は、締約国が、すべての子どもが貧困線以下の生活を送らないことを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、子ども、とくに社会的に不利な立場に置かれた家庭(ひとり親世帯を含む)の子どもおよび非スウェーデン系民族の子どもが、その居住地に関わらず貧困下で生活しないことを確保するため、締約国が特別支援措置を含む十分な措置をとることも勧告するものである。締約国は、経済危機の時期に子どもの貧困と闘うための行動計画の策定を検討するべきである。

6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
54.条約に掲げられた目標を保障するために締約国が教育分野で行なっている多数の努力には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、在留許可のない子ども、とくに「隠れた子ども」および在留資格証明書のない子どもが教育に対する権利を享受していないことを依然として懸念する。しかしながら委員会は、事前質問事項に対する回答で締約国が行なった、政府はどのようにすれば教育に対する権利をさらに拡大できるかについて提案するための補足的検討の担当者を任命する計画である旨の説明に留意するものである。委員会はまた、条約に関する体系的かつ一貫した教育が学校で行なわれていないことも懸念する。
55.委員会は、締約国が、すべての子ども(「隠れた子ども」および在留資格証明書のない子どものような在留許可のない子どもを含む)が教育に対する権利を享受することを確保するための努力を追求するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、新教育法の流れを踏まえてカリキュラムに条約その他の関連の人権条約を編入するとともに、初等・中等教育のいずれにおいてもそのような教育を強化するよう、勧告するものである。
56.委員会は、教育庁が、初等中等学校の生徒に対して労働市場および雇用の前提条件に関する情報を提供していることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、学校修了後に失業したままであり、学校から労働市場への移行に関していっそう対象の明確な援助を必要とするであろう青少年の人数が多いことを懸念するものである。
57.委員会は、締約国が、職を見つけるために必要な職業上の能力および資格を青少年が獲得するのを支援する措置を拡大しかつ強化するよう、勧告する。労働市場へのアクセスに関して困難を有する青少年を訓練しかつさらなる資格を与える学校および施設に対しては、学校から労働市場への移行に際してそのような青少年を効果的に援助するために十分な金銭的および人的資源が与えられるべきである。
いじめ
58.学校におけるいじめと闘うためにとられた多数の措置、とくに、児童生徒の差別その他の形態の品位を傷つける取り扱いを禁ずる法律(2006:67)の関連規定、スウェーデン教育庁の責任のもとで行なわれるいじめに関する取り組みおよび児童生徒オンブズマン(BEO)による取り組みを歓迎しながらも、委員会は、学校におけるこの現象、とくに障害のある子どもおよび外国系の子どもに対するものが根強く残っていることを依然として懸念する。
59.委員会は、締約国が、いじめと闘うためにとられる措置を強化し、かつ障害のある子どもおよび外国系の子どもに対して特段の注意を払うとともに、いじめを削減するための取り組みへの子どもの参加を確保するよう、勧告する。このような措置においては、教室外または校庭で行なわれる新たな形態のいじめおよびいやがらせ(携帯電話によるものおよびバーチャルな会合場所におけるものを含む)への対応も行なわれるべきである。

7.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条)

子どもの庇護希望者および難民
60.委員会は、庇護希望者および元庇護希望者または「隠れた子ども」に対し、同国に合法的に在留している子どもと同一の条件で保健ケアおよび医療サービスを受ける権利を認めた、庇護希望者の保健ケアに関する新法(2008:344)を歓迎する。しかしながら委員会は、在留資格証明書のない子どもは緊急医療ケアに対する権利しか有しておらず、補助金も得られないことを懸念するものである。
61.委員会は、在留資格証明書のない子どもを含むすべての子どもが、同国に合法的に在留している子どもと同一の条件で保健ケアおよび医療サービスを受ける権利を有することを確保するため、締約国が必要な措置をとるよう勧告する。
62.委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者の受け入れおよび居住に関する責任がスウェーデン移民庁から市町村に移管されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、締約国の受け入れセンターから失踪する、保護者のいない子どもの庇護希望者が多いことを引き続き懸念する。委員会はとくに、これらの子どもが虐待および搾取の被害を受けやすいことを懸念するものである。後見人の問題に関する締約国の立場には留意しながらも、委員会は、保護者のいない子どもそれぞれについて、同国への到着後24時間以内に、子どもが置かれている法的状況および利用可能な法的移民手続について子どもに情報を提供することを任務とする一時的後見人(または「被信託人」)を任命することに関する法律を締約国が導入していないことを、依然として懸念する。
63.委員会は、締約国に対し、受け入れセンターで生活している子どもへの十分な支援および監督の提供、ならびに、トラウマを受けた子どもの庇護希望者への十分な心理的および精神医学的ケアを確保するための措置を強化するよう、促す。委員会は、締約国に対し、保護者のいない子どもそれぞれについて、同国への到着後24時間以内に、子どもが置かれている法的状況および利用可能な法的移民手続について子どもに情報を提供することを任務とする一時的後見人(または「被信託人」)が任命されることを確保するために必要な立法上の措置をとるよう、促すものである。委員会はまた、当該後見人の適格性および十分な資格を確保するための努力を強化することも勧告する。委員会は、出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する委員会の一般的意見6号(2005年)に対し、締約国の注意を喚起するものである。
家族再統合
64.委員会は、締約国が、外国籍市民および無国籍者の家族移住の条件として、2010年1月1日以降、扶養要件を導入することを検討していることに、懸念とともに留意する。
65.委員会は、締約国が、認定難民の家族再統合手続への対応が積極的、公正、人道的かつ迅速なやり方で行なわれ、かつ当該手続において条約上の子どもの権利が侵害されるおそれが生じないことを確保するためにとられる措置を強化するべきであるという勧告を、あらためて繰り返す。
性的搾取および人身取引
66.委員会は、子どもの性的搾取に関する国家的行動計画の更新および売買春と性的目的の人身取引に対抗する国家的行動計画の採択、ならびに、国家犯罪防止委員会(BRA)による、スウェーデン刑法第6章への新たな性犯罪規定の導入(2007年)のような、人身取引と闘いかつ人身取引被害者に援助を提供するために締約国がとった措置を歓迎する。委員会はまた、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書についての締約国の第1回報告書が最近提出されたことも歓迎するものである。しかしながら委員会は、とくに性的および経済的搾取を目的とする子どもの人身取引が蔓延していること、および、性的搾取、売買春および人身取引の規模および様式に関して入手できるデータが限られていることを、懸念する。
67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 人身取引から子どもを保護するため、売買春と性的目的の人身取引に対抗する国家的行動計画を全面的に実施すること。
  • (b) 子どもの性的搾取に関わる新たなおよび出現しつつあるリスク状況を監視しかつ予見するための措置を強化すること。
  • (c) 人身取引および買春を含む性的搾取の被害を受けた子どもを保護し、かつ性的虐待および搾取の加害者を裁判にかけるための措置を強化するとともに、このような犯罪の規模および様式に関するデータを次回の定期報告書で提供すること。
  • (d) 秘密を尊重する、子どもに配慮したやり方で苦情を受理し、監視しかつ捜査する方法について、法執行官、裁判官および検察官に対する研修を行なうこと。
  • (e) 第1回、第2回および第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議(1996年、2001年および2008年)で採択された成果文書にしたがい、子どもの被害の防止、被害を受けた子どもの回復および社会的再統合のための適切な政策およびプログラムを実施すること。
  • (f) 人身取引の被害を受けた子どもに対し、教育および訓練ならびに心理的援助およびカウンセリングが提供されることを確保すること。
  • (g) 子どもの売買、取引および誘拐を防止するための二国間協定および多国間協定に関する交渉を関係国(近隣諸国を含む)と行なうとともに、関係国間で合同行動計画を策定すること。
68.委員会は、国外で子どもの性的搾取に関与したスウェーデン市民の人数および犯罪種別に関するデータが存在しないことを懸念する。委員会はまた、加害者の捜査、訴追および処罰に関して提供された情報が限られていることも懸念するものである。委員会はさらに、保釈金の供託後に釈放された者へのパスポートの再発行を禁ずるための措置が何らとられていないとされることにも、懸念とともに留意する。
69.委員会は、締約国が、以下の手段をとること等により、子どもセックス・ツーリズムという憂慮すべき現象を防止しかつこれと闘うための努力を増強するよう勧告する。
  • (a) 国外で行なわれた犯罪について、犯罪者がスウェーデンに帰国したときに一貫した訴追を行なうこと。
  • (b) セックス・ツーリズムに関するデータおよび情報(捜査、訴追および処罰に関するものを含む)を体系的に収集するための機構を設置すること。
  • (c) 貧困下で暮らしている外国の子どもを虐待しかつ搾取するのは受け入れられるという考え方のような態度に取り組むための意識啓発を行なうこと。
  • (d) 観光における性的搾取からの子どもの保護に関して世界観光機関が定めた指針の遵守を向上させるため、非政府組織および観光業界との協力を強化すること。
  • (e) 国外で行なわれた子どもに対する性犯罪および関連の犯罪をスウェーデンで訴追するために必要な、現存するすべての双方可罰性要件を廃止する目的で、法律の見直しおよび改正を検討すること。
少年司法の運営
70.委員会は、少年司法の分野で締約国が達成したさまざまな成果を歓迎する。しかしながら委員会は、現行規則(青少年ケアに関する特別規定法(法1990:52)第15条Cおよび閉鎖型少年ケア執行法(法1998:603)第17条)上、青年拘禁センターに措置されている子どもが暴力的な行動を示し、または全般的秩序を危うくするほどに薬物の影響を受けている場合、その子どもを隔離できることに懸念を表明するものである。加えて、委員会は、このような処遇が懲罰としても用いられているという報告があることに懸念を表明する。委員会は、独居拘禁はやむを得ず必要とされると判断されないかぎり用いられるべきではなく、かつ隔離期間は24時間を超えてはならないという見解に立つものである。
71.委員会は、締約国が、少年司法における子どもの権利に関する一般的意見10号(2007年)および刑事司法制度における子どもに関する行動についての国連指針(経済社会理事会決議2005/20)を考慮に入れながら、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 適切なときは現行法を改正することも含め、独居拘禁に関する現行の実務の見直しを優先事項として行なう。
  • (b) この措置の使用をきわめて例外的な場合に限定し、それが認められる期間を短縮し、かつその最終的廃止を追求すること。
  • (c) 観護措置をとられたすべての子どもに対し、十分な法的代理が提供されることを確保すること。
犯罪の証人および被害者の保護
72.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティックバイオレンス、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するようにも、勧告する。

8.国際人権文書の批准

73.委員会は、締約国に対し、まだ加盟していない国際人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書の批准を検討するよう、奨励する。

9.フォローアップおよび普及

74.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告をリクスダーゲン(議会)、関連省庁および自治体当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
75.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第4回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、公衆一般、市民社会組織、若者グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

10.次回報告書

76.委員会は、締約国に対し、第5回定期報告書を2011年9月1日までに提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。
77.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認され、かつHRI/GEN/2/Rev.5に掲載されている「国際人権条約に基づく報告についての統一指針(共通コア・ドキュメントおよび条約別文書についての指針を含む)」に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するようにも慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年12月7日)。/前編・後編を統合(2012年10月20日)。
最終更新:2012年10月20日 09:05