総括所見:スウェーデン(OPSC・2011年)


CRC/C/OPSC/SWE/CO/1(2012年1月23日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2011年10月3日に開かれた第1662回会合(CRC/C/SR.1662参照)においてスウェーデンの第1回報告書(CRC/C/OPSC/SWE/1)を検討し、2011年10月7日に開かれた第1669回会合において以下の総括所見を採択した。

2.委員会は、豊かな情報を含み、分析的かつ自己批判的である締約国の第1回報告書、および事前質問事項(CRC/C/OPSC/SWE/Q/Add.1 and Add.2)に対する文書回答が提出されたことを歓迎する。委員会は、部門横断型の締約国代表団との建設的対話を評価するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの権利条約に基づく締約国の第4回定期報告書について採択された総括所見(CRC/C/SWE/CO/4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書について採択された総括所見(CRC/C/OPAC/SWE/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

I.一般的所見

4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野でとられたさまざまな積極的措置、とくに性的目的で子どもと親しくなろうとする行為を犯罪化した刑法第6章第10条aの採択(2009年7月1日)を歓迎する。
5.加えて、委員会は、人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(2005年)が締約国によって2010年5月に批准されたことに、評価の意とともに留意する。

II.データ

6.委員会は、包括的なデータ収集システムが設置されていないことを懸念する。委員会は、締約国における児童買春および人身取引の被害を受けた子どもに関する全国的な統計データが存在しないことを、とくに遺憾に思うものである。
7.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 選択議定書の実施に関わるあらゆる分野で体系的データ収集を行なうための機構をさらに発展させかつ中央集権化すること。
  • (b) 議定書上の犯罪にとくに関連し、このような犯罪のすべての被害者および加害者を網羅し、かつ年齢、性別、地理的所在および社会経済的背景ごとに細分化されたデータを収集するための、調整のとれたシステムを設置すること。
  • (c) 選択議定書上のすべての犯罪の根本的原因および蔓延の度合いならびにこれらの犯罪に対応するために実施されている政策および提供されているサービスの効果に関する、質的および量的な研究および分析を行なうこと。

III.実施に関する一般的措置

宣言
8.委員会は、第2条(c)について、同条の「あらゆる表現」(any representation)という文言は児童ポルノの「視覚的表現」に関連するものとしてのみ解釈すると述べる締約国の宣言により、あらゆる形態の児童ポルノに対応するための選択議定書の全面的実施が阻害されることを懸念する。
9.委員会は、あらゆる形態の児童ポルノへの対応に関して選択議定書を全面的に実施するため、締約国が第2条(c)に関する宣言の撤回を検討するよう、勧告する。
立法
10.委員会は、条約およびその選択議定書が締約国の法律に全面的に編入されていないことを遺憾に思う。委員会は、とくに以下のことを懸念するものである。
  • (a) 締約国の法律で、選択議定書第1条、第2条および第3条に定められたすべての犯罪が具体的に定義されかつ禁じられているわけではないこと。
  • (b) 性的搾取がそれにふさわしい刑事的制裁の対象とされていないこと。
  • (c) 締約国の判例および法律が、15歳以上の子どもの被害者に対し、一貫して十分な保護を提供しているわけではないこと。
  • (d) 未成年者の性的行為の購入および性的姿態をとらせる目的での子どもの搾取のような犯罪が「子どもに対するそれほど重大ではない性犯罪」に分類されていること。
11.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとること等の手段により、条約およびその選択議定書を自国の法律に全面的に編入するよう勧告する。
  • (a) 商業的性的搾取が刑事司法制度においてそれにふさわしい制裁の対象とされることを確保すること。
  • (b) 子どもの虐待の被害者全員、とくに15歳以上の被害者に対して十分な法的保護が提供されることを確保すること。
  • (c) 未成年者の性的行為の購入および性的姿態をとらせる目的での子どもの搾取に関する、「子どもに対するそれほど重大ではない性犯罪」という評価を再検討するとともに、このような犯罪が領域外で行なわれた場合の双方可罰性要件の削除を検討すること。
  • (d) 選択議定書第1条、第2条および第3条に基づく、子どもの売買のあらゆる事案を定義しかつ禁止する義務と全面的に一致する法律を制定すること。
 委員会は、締約国に対し、議定書に掲げられた子どもの売買に関する規定を十分に実施するためには、立法において子どもの売買(この概念は人身取引に似てはいるものの同一ではない)に関わる義務が充足されていなければならないことを想起するよう求めるものである。
国家的行動計画
12.委員会は、〔子どもの性的搾取に関する〕締約国の国家的行動計画および売買春と性的目的の人身取引に対抗する行動計画に留意する。しかしながら委員会は、国家的行動計画の更新が2012年に延期されたことを遺憾に思うものである。さらに委員会は、選択議定書の実施のための全般的戦略を締約国が定めていないこと、および、選択議定書上の犯罪につながる根本的な需要要因に対応するためにとられた措置が依然として不十分であることを、懸念するものである。
13.委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施のための包括的枠組みを定めるよう促す。その際、委員会は、締約国が、以下の手段をとることにより、選択議定書の違反につながる需要要因に対処するための措置を考慮に入れるよう、勧告するものである。
  • (a) 犯罪者(女性および少年の犯罪者を含む)についてさらなる調査研究を行なうこと。
  • (b) キャンペーンを含む意識啓発措置を増やしかつ向上させること。
  • (c) 防止措置の活用を増やしかつ強化すること。
調整および評価
14.委員会は、選択議定書の違反に関する機関間の連携および能力が依然として不十分であることを懸念する。この文脈において、委員会はさらに、締約国が、選択議定書の実施および関連する広域行政圏および地方の公的機関間におけるこのような努力の調整を担当する諸機関の監視および評価のための制度を設置していないことを、懸念するものである。
15.委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施および関連する広域行政圏および地方の公的機関間におけるこのような努力の調整を担当する諸機関の監視および評価のための制度を設置する等の手段により、選択議定書上の違反に対応するための機関間の調整を強化する実際的措置をとるよう、促す。
普及および意識啓発
16.委員会は、一般公衆および子どもとともにまたは子どものために働く専門家の間で選択議定書に関する意識が低いままであることに、懸念とともに留意する。
17.委員会は、締約国が、選択議定書第9条2項にしたがい、適切なメディア・キャンペーン、教育キャンペーンおよび専門家研修キャンペーンをとる等の手段により、その規定を公衆、とくに子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家の間で広く知らせるために必要なあらゆる措置をとるよう、勧告する。
研修
18.売買春と性的目的の人身取引に対抗する行動計画との関連で行なわれている締約国の研修プログラムには積極的取り組みとして留意しながらも、委員会は、選択議定書が対象とする犯罪に関わるリスク要因の特定およびこれへの対処ならびにこのような違反の事案(外国人被害者が関わるものを含む)を通報しかつ処理する方法および機関についての知識が、子どもとともにまたは子どものために働く専門家の間で低いままであることを懸念する。
19.委員会は、締約国が、子どもとともにまたは子どものために働くすべての専門家を対象として、選択議定書に関する研修プログラム(選択議定書に関連するリスク要因の特定ならびにそのような違反に対応するための関連のフォローアップ手続、および、そのような犯罪の発生が疑われる事例に具体的に関連するものを含む)を体系的に行なうよう、勧告する。委員会はまた、外国人被害者が関わる事案に関連の専門家が効果的に対応できるようにするため、当該研修プログラムに社会文化的感受性に関する内容を含めることも勧告するものである。
子どもの権利と企業セクター
20.委員会は、4つの国民年金基金が共同で設置している倫理評議会が、基金の投資先である国外企業の、環境および人権に関する国際条約に関わる環境上および倫理上の配慮について検討していることに、関心とともに留意する。
21.委員会は、海外投資を行ない、または国外企業の子会社もしくは関連会社を通じて活動する国営法人(国の年金基金を含む)が、条約および選択議定書の精神にしたがってこれらの文書に基づく犯罪を防止しかつ当該犯罪からこれらの国々の子どもを保護する要件を、相当な注意をもって遵守するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、国外におけるすべてのスウェーデン企業の投資および活動を、同様に、適切な形で規制するよう勧告するものである。

IV.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条1項および2項)

選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置
22.委員会は、以下の点との関連も含め、議定書上の犯罪を防止するための措置が不十分であることを懸念する。
  • (a) 犯罪者を対象とするケアおよび更生のためのサービスを利用できるのが収監された犯罪者のみであり、かつ、その結果、拘禁をともなわない経済的処罰の対象にしかされない大多数の犯罪者に対してそのような防止措置が適用されないこと。
  • (b) 学校カリキュラムでインターネット上の安全に関する訓練が義務化されていないこと。
  • (c) 有罪判決を受けた性犯罪者が、子どもとともに働くことを一貫して禁じられているわけではないこと。
  • (d) 脆弱な立場に置かれた、保護者のいない未成年の庇護希望者および非正規移民の子どもまたは在留資格証明書のない子どもが保護されていないこと。
23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 議定書上の犯罪を行なった加害者(収監刑の対象とされなかった者を含む)全員に対し、更生措置およびカウンセリングが提供されることを確保すること。
  • (b) 学校カリキュラムに、インターネットの安全な利用に関する義務的訓練を含めること。
  • (c) 有罪判決を受けたすべての性犯罪者が子どもとともに働くことを禁ずるための措置をとること。
  • (d) 子どもの養護を委託された者の管理を増強すること等の手段により、保護者のいない庇護希望者または移民の状況にある子どもを対象として十分な保護措置が提供されることを確保すること。
子どもセックス・ツーリズム
24.委員会は、子どもセックス・ツーリズムと闘うための締約国の取り組みの向上に留意する。しかしながら委員会は、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への、締約国における企業の署名率が低いままであることを懸念するものである。委員会はさらに、子どもセックス・ツーリズムならびに前掲行動規範および世界観光機関(UNWTO)の世界観光倫理規範に関する公衆の意識水準が低いことを懸念する。
25.委員会は、締約国に対し、子どもセックス・ツーリズムを防止しかつ根絶するため、効果的な規制の枠組みを定めかつ実施するとともに、あらゆる必要な立法上、行政上、社会上その他の措置をとるよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国に対し、子どもセックス・ツーリズムの防止および根絶のための多国間、地域間および二国間の取り決めによって国際協力を強化するよう、奨励するものである。委員会はさらに、締約国に対し、子どもセックス・ツーリズムの有害な影響に関する観光業界への働きかけを強化し、旅行代理店および観光業者の間でUNWTOの世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励するよう、促す。

V.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条2項および3項、第5条、第6条ならびに第7条)

現行刑事法令
26.児童ポルノの多くの側面(このような資料の閲覧など)が犯罪とされていること、および、児童ポルノについての刑法上の規定における子どもの定義がより幅広いものとなっていることは歓迎しながらも、委員会は、締約国の刑法で選択議定書に掲げられたすべての犯罪が網羅されているわけではないことを、依然として懸念する。とくに、委員会は以下のことを深く懸念するものである。
  • (a) 子どもの性的虐待を描写した文字情報および音声が禁じられていないこと。
  • (b) 子どもの第二次性徴期の発達が終了しているとき、または子どもが未成年であることが写真および付帯状況から明らかでないときは、児童ポルノの描写、配布、購入、譲渡等が犯罪とされないこと。
  • (c) 児童ポルノ関連の犯罪が、スウェーデン刑法第6章の性犯罪ではなく同第16章の「公の秩序」犯罪と見なされていること。
  • (d) あらゆる種類のポルノ的画像が禁じられているにも関わらず、個人的閲覧用のクラフトスケールの制作およびその後の描画の所持については例外が認められていること。
  • (e) 子どものポルノ的描画の輸入および輸出が法律で明示的に禁じられていないこと。
  • (f) 処罰が犯罪の重大性に比例しておらず、しばしば罰金および短期の収監しか定められていないこと。
  • (g) 性犯罪の被害を受けた子どもに関わる事件で、とくに子どもを対象にしようとした加害者の故意が、裁判所が考慮する一貫した要素となっていないこと。
27.委員会は、締約国が、刑法を改正して選択議定書第2条および第3条と全面的に一致するようにするとともに、刑法が実際に執行されること、および、不処罰を防止するために加害者を裁判にかけることを確保するよう勧告する。とくに、締約国は以下の行為を犯罪化するべきである。
  • (a) 売買春目的で子どもを提供し、入手し、周旋しまたは供給すること。
  • (b) 児童ポルノを製造し、流通させ、配布し、輸入し、輸出し、提供し、販売しまたは所持すること。
  • (c) これらのいずれかの行為の未遂および共謀またはこれらのいずれかの行為への参加。
  • (d) これらのいずれかの行為を広告する資料の製造および配布。
裁判権および犯罪人引渡し
28.締約国の法律でそこに定められた犯罪についての域外裁判権が認められていることは歓迎しながらも、委員会は、未成年者の性的行為の購入および性的姿態をとらせる目的での子どもの搾取の犯罪について双方可罰性要件が残っていることを遺憾に思う。
29.委員会は、締約国が、国内法によって域外裁判権(選択議定書上のあらゆる犯罪に関する、双方可罰性の基準を課されない域外裁判権を含む)を設定しかつ行使できることを確保するための措置をとるよう、勧告する。
30.委員会は、議定書上の犯罪を行なった者の引渡しについては犯罪人引渡し協定が必要とされないことに留意する。しかしながら委員会は、このような犯罪人引渡しに制限が課されていること、とくに議定書上の犯罪の一部について双方可罰性要件が設けられていることを懸念するものである。委員会はさらに、1年以上の収監刑をともなう犯罪のすべてについて犯罪人引渡しが行なわれるわけではない可能性があること、および、締約国の国民はほぼ例外なく犯罪人引渡しの対象にできないことを、懸念する。
31.委員会は、締約国に対し、議定書上の犯罪に関する犯罪人引渡しの制限、とくに双方可罰性要件および刑法上の最低刑要件を削除するよう勧告する。委員会はさらに、議定書第5条5項にしたがい、締約国が、犯罪人引渡しの請求を拒否した場合に当該事件を自国の権限ある機関に付託して訴追するために適切な措置をとるよう、勧告するものである。
法人の責任
32.委員会は、締約国が、条約およびその議定書に基づく犯罪に関する法人の責任の確立についてさらなる措置をとっていないこと、および、法人に対する制裁が依然として金銭的処罰に限定されていることに、懸念とともに留意する。
33.委員会は、締約国が、金銭的処罰に加え、これらの犯罪の再発を効果的に防止するための措置がとられることを確保するための法律および相応する刑事上、民事上または行政上の制裁が設けられることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、企業に対して以下のことを奨励するよう慫慂するものである。
  • (a) 子どもの商業的性的搾取に関する倫理方針を定めること。
  • (b) 供給業者との契約にそれぞれの条項を含めること。

VI.被害を受けた子どもの権利および利益の保護(第8条ならびに第9条3項および4項)

選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置
34.性的搾取の被害を受けた子どもを保護するための措置は歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 子どもの性的搾取の実効的訴追率が低く、この10年では事件の85~90%がまったく訴追に至っていないこと。
  • (b) 犯罪被害者ポータルサイトが十分に子どもにやさしいものではないこと。
  • (c) 在留許可の取得がしばしば認められないために、人身取引被害者の脆弱性が悪化させられていること。
  • (d) 被害者に対する出廷の強制を禁ずる規定が存在しないため、国連・国際組織犯罪防止条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(パレルモ議定書)が遵守されていないこと。
35.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 性犯罪者をより組織的かつ効果的に訴追するための機構を設置すること。
  • (b) 犯罪被害者ポータルサイトを子どもにやさしくかつアクセスしやすい形で利用可能とすること。
  • (c) 人身取引によってスウェーデンに連れてこられた子どもが在留許可を受けられるための便宜を図ること。
  • (d) 立法上および手続上の規定がパレルモ議定書と全面的に一致することを確保すること。
被害者の回復および再統合
36.委員会は、性的搾取および売買春を目的とする人身取引の被害者のためのリハビリテーション・プログラムの開発がストックホルム市に委託されたことを歓迎する。委員会はさらに、ストックホルム市が、締約国の資金提供および委託を受けて安全な帰還プロジェクトも運営していることを歓迎するものである。しかしながら委員会は、外国人の子どもが締約国の子どもと同一の質的水準を有する援助および保護サービスを受けていないことを懸念する。委員会はさらに、リハビリテーション・プログラムおよび安全な帰還プロジェクトのいずれもがストックホルム地域に限定されていることを懸念するものである。
37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに、性的搾取および売買春を目的とする人身取引の被害者のために計画されているリハビリテーション・プログラムを迅速に実施することにより、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子ども(とくに外国出身の子ども)に対し、その全面的な社会的再統合ならびに身体的および心理的回復のための援助を含む適切な援助が提供されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 選択議定書第9条4項にしたがい、被害を受けたすべての子ども(締約国の国民または定住者ではない子どもを含む)が、法的に責任のある者に対して差別なく被害賠償を求める十分な手続にアクセスできることを保障するとともに、加害者から被害賠償を得られない事案のために被害者補償基金を設置すること。
  • (c) リハビリテーションおよび安全な帰還のためのプログラムを領域内の全域で利用可能とするための措置をとること。
ヘルプライン
38.児童ポルノ、性的目的の子どもの人身取引および子どもセックス・ツーリズムを通報するためのホットラインが設けられていることには留意しながらも、委員会は、このホットラインが締約国による資源面での十分な支援を享受していないこと、および、このホットラインに関する一般公衆の意識(子どもの間における意識も含む)が低いことを懸念する。さらに委員会は、行方不明の子どもに関する欧州共通ホットライン番号「116 000」が締約国でまだ実施されていないことを懸念するものである。
39.委員会は、締約国が、ホットラインに対し、その効率性、継続性および可視性(子どもの間におけるものおよび締約国の国民が領域外で行なった議定書上の犯罪の発生に関するものも含む)を確保するために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、行方不明の子どもに関する欧州共通ホットライン番号「116 000」を領域内で迅速に運用するために必要な措置をとるよう、勧告するものである。

VII.国際的な援助および協力

40.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。

VIII.国際的および地域的人権文書の批准

41.委員会は、締約国が署名しながらまた批准していない、関連する多数の国際的および地域的人権文書があることに留意する。これには、とくに、親責任および子の保護措置についての管轄権、準拠法、承認、執行および協力に関するハーグ第34号条約(1996年)、子どもの権利の行使に関する欧州条約(1996年)、性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約(2007年)、サイバー犯罪に関する欧州評議会条約(2001年)、および、コンピュータ・システムを通じて行なわれる人種主義的および排外主義的性質の行為の犯罪化に関するサイバー犯罪条約の追加議定書(2003年)が含まれる。
42.委員会は、締約国に対し、同国が署名したあらゆる関連の国際的および地域的人権文書を速やかに批准するよう促すものである。委員会はまた、締約国に対し、同国がまだ加盟していない国際人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書の批准を検討することも、奨励する。

IX.フォローアップおよび普及

フォローアップ
43.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を議会、関連省庁および地方当局、司法府、ならびに、それぞれ県および地区のレベルに設けられた子どもの保護に関する委員会および小委員会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
総括所見の普及
44.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、コミュニティおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

X.次回報告書

45.選択議定書第12条2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回定期報告書に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年12月7日)。/国連の正式文書に基づき、先行未編集版に基づく訳を修正(2012年2月26日)。旧パラ20および40が分割されたことによりパラグラフ総数が43から45になったが、「年齢に関する加害者の故意」が「とくに子どもを対象にしようとした加害者の故意」に修正された(パラ25(g))ほかは、基本的に技術的修正に留まる。
最終更新:2012年02月26日 07:43