総括所見:スウェーデン(第3回・2005年)


CRC/C/15/Add.248(2005年3月30日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2005年1月11日に開かれた第1001回および第1002回会合(CRC/C/SR.1001 and 1002参照)においてスウェーデンの第3回定期報告書(CRC/C/125/Add.1)を検討し、2005年1月28日に開かれた第1025回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、条約第44条1項(b)に基づいて締約国によって提出される定期報告書の形式および内容に関する一般指針(CRC/C/58、1996年11月20日)にしたがって、参加型の方法で作成されかつ期限どおりに提出された、締約国の第3回定期報告書の提出を歓迎する。委員会は、事前質問事項(CRC/C/Q/SWE/3)に対する締約国の文書回答により、スウェーデンの子どもの状況についての理解をいっそう明確なものにすることができたことも歓迎するものである。委員会はさらに、省庁横断型の代表団の構成員による率直な対話および提供された回答を歓迎する。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.3)の検討を受けて行なわれた委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.101)を実施するために締約国がとったフォローアップ措置を、高く評価する。これには議会における公開討議の開催も含まれ、その後、委員会の勧告を実施することを目的とするさまざまな立法上、行政上その他の措置がとられたことにより、とくに以下のような成果につながった。
  • (a) 子どもの権利条約の実施のための国家戦略(1999年)、議会への通告(Comm. 2003/04:47)によるその更新および継続。
  • (b) 国家障害政策行動計画(2000年)、および、障害のある子どもの権利の実施を向上させるための関連法の改正。
  • (c) 虐待からの子どもの保護を向上させるための社会保障法改正(2002年)。
  • (d) 2004年5月1日に施行された法律による、早期婚および強制婚の不承認。
  • (e) 国際養子縁組に関する改正法(Bill 2003/04:131)の施行(2005年1月1日)。
  • (f) 性的虐待および搾取からの子どもの保護を向上させるための、さまざまな立法上の措置。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
4.委員会は、締約国の第2回定期報告書の検討を受けて行なわれた委員会の勧告が実施されていることをあらためて歓迎する。しかしながら委員会は、一部の懸念表明および勧告、とくにパラ11(「隠れた子ども」に対する差別)、16(無償の家族カウンセリング・サービスの提供)、18(経済格差)および19(いじめ)に掲げられたものへの対応が不十分であることを遺憾に思うものである。委員会は、これらの懸念および勧告がこの総括所見で繰り返されている場合もあることに留意する。
5.委員会は、締約国に対し、第3回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた懸念に対応するためにあらゆる努力を行なうよう促す。
独立の監視
6.委員会は、子どもオンブズマンの役割を強化する2002年法案の制定を歓迎するとともに、子どもの権利の実施のために子どもオンブズマンが行なった多くの活動に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、さらなる改善が達成可能であるという見解に立つものである。
7.委員会は以下の措置を勧告する。
  • (a) 締約国が、子どもオンブズマンに対し、個別の苦情申立てを調査する権限を与えることを検討すること。
  • (b) 子どもオンブズマンの年次報告書を、子どもオンブズマンの勧告を実施するために政府がとろうとしている措置についての情報とともに、議会に提出すること。
実施、調整、評価および国家的計画
8.委員会は、スウェーデンにおける子どもの権利条約の実施のための戦略が1999年に議会によって承認されたこと、および、その後、同戦略の実施に関する調整機関として保健社会問題省が指定されたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、条約の実施に関わる政策の調整が自治体、県および省庁間においてしばしば弱いことを懸念するものである。
9.委員会は、総括所見を含む条約の実施をすべてのレベルで確保するためにあらゆる主体間の行動を調整する目的で、非政府組織ならびに関連省庁、県および自治体が参加する常設の体制を設置するよう、勧告する。
データ収集
10.委員会は、以下の点に懸念とともに留意する。
  • (a) 障害のある子どもの総数に関するデータが入手可能とされていないこと。
  • (b) 虐待の被害を受けた15~18歳の子どもに関するデータが入手可能とされていないこと。
  • (c) 性的搾取の被害を受けた子どもの総数が精確でないこと。
11.委員会は、締約国が、子どもに関するデータを収集するあらゆる機関間で調整のとれたアプローチを確立するとともに、条約が対象とするすべての分野を編入した包括的なデータ収集システムを導入するよう、勧告する。とくに、委員会は以下のことを勧告するものである。
  • (a) 障害のある子どもに関するデータを収集し、かつ障害種別に細分化すること。
  • (b) 虐待の被害を受けた子どもに関するデータを成人に関するデータから分離すること。
  • (c) 性的搾取の被害を受けた子どもに関するデータをいっそう精確なものとすること。
研修/条約の普及
12.委員会は、条約の普及に関して締約国報告書で提供された情報、ならびに、条約について知らせるために子どもオンブズマン、さまざまなNGOおよび教育庁がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、子どもたち自身ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家によって、とりわけ司法制度内、政治家間および自治体レベルで、条約の精神が十分に知られかつ理解されていない可能性があるという見解に立つものである。
13.委員会は、締約国に対し、子どもならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(とくに法執行官および必要に応じて議員、裁判官、弁護士、保健従事者、教員、学校管理者その他の専門家)を対象として子どもの権利に関する十分かつ体系的な研修および(または)感受性強化措置を行なうための努力を継続するよう、奨励する。
市民社会との協力
14.委員会は、NGOとのすばらしい協力関係について締約国を称賛する。にもかかわらず、委員会は、この協力関係がしばしばその場限りのものであることに留意するものである。
15.委員会は、NGOとの協力関係を体系的かつ構造的なものとするよう勧告する。
国際開発協力
16.委員会は、国際協力および国際開発援助の分野における締約国の傑出した業績に、評価の意とともに留意する。これとの関連で、委員会は、締約国が国内総生産の相当割合を対外援助に配分しており、かつ、その60%は子どもに対して、または子どもとともに、子どものためにもしくは子どもに代わって活動しもしくは子どもの利益を保護する専門家等に対して支出されていることに、留意するものである。
17.委員会は、締約国が、とくに開発途上国との二国間協力において当該国に関する委員会の総括所見および勧告を考慮し、かつその実施のための支援を提供することによって、子どもに関わる国際開発協力プロジェクトにおける指導的役割を引き続き果たしかつ強化するよう、勧告する。

2.一般原則

差別の禁止
18.委員会は、とくに子どもとの関連で人種主義と闘い、かつ、条約第29条1項にしたがい、子どもの教育が、自己の文明と異なる文明の尊重および諸人民間の友好の発展を目的として行なわれることを確保するために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに学校における人種主義および13歳未満の子どもを勧誘する人種主義的団体についての報告があることを懸念するものである。
19.委員会は、締約国が、人種主義および外国人嫌悪と闘うためにとられる措置(教育分野におけるものを含む)を引き続き強化するよう勧告する。
20.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置のうち条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。
子どもの最善の利益
21.委員会は、子どもの最善の利益の原則を編入した新たな立法上の措置およびプログラム、とくに1998年の親法改正、保健福祉庁に与えられた指示、社会サービス法の1998年改正および青少年ケア法を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、庇護希望者および移民である子どもの最善の利益が庇護手続において十分に考慮されていないことを懸念するものである。
22.委員会は、とくにスウェーデン移民庁の指針および手続を改革することにより、子どもが関わる庇護事件において子どもの最善の利益の原則が基盤とされかつ手続および決定の指針となることを確保するため、締約国が適当かつ効果的な措置をとるよう勧告する。
子どもの意見の尊重
23.委員会は、自己に関わるすべての事柄について自由に意見を表明し、かつその意見を正当に考慮される子どもの権利を強化するために締約国が行なった、「影響力フォーラム」および法手続・学校問題について意見を聴かれる子どもの権利のような、さまざまなプログラムおよび法改正を歓迎する。しかしながら委員会は、このような注目すべき取り組みにも関わらず、社会で自己の生活に関わる事柄についての真の影響力を何ら有していないと感じている子どもおよび若者がいることを、依然として懸念するものである。
24.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもに関連する行政上その他の決定に、子どもの意見がどのように引き出され、子どもの意見がどの程度採択されたかおよびそれはどのような理由によるものかについての情報が記載されることを確保すること。
  • (b) 監護権および面接交渉権をめぐる、争いの非常に激しい紛争の当事者である子どもへの、適切な援助の提供を検討すること。

3.市民的権利および自由

情報へのアクセス
25.委員会は、子どもがインターネットでアクセス可能な暴力および夕方の早い時間にテレビで放映される暴力の度合いについて懸念を覚える。委員会はさらに、児童ポルノおよび暴力的なコンピューターゲームからの子どもの保護が不十分であることを懸念するものである。
26.委員会は、締約国が、インターネット、テレビおよびコンピューターゲームにおける暴力ならびに児童ポルノの表示から子どもを効果的に保護するためにあらゆる必要な措置(適切な法律の執行、親教育の提供および子どもの意識啓発によるものを含む)をとるよう勧告するとともに、この点に関する国際協力を奨励する。

4.家庭環境および代替的養護

不法な移送および不返還
27.委員会は、不法に移送されまたは返還されない子どもを取り戻す際に個人が負担した費用を補償するための金銭的援助が利用可能であること、および、国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ第28号条約(1980年)の実施状況の検討が進められていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、国際結婚の子どもが関与する事案で係争中のものがいまなお多いことに留意するものである。
28、委員会は、締約国が、子どもの最善の利益を正当に考慮しながら、子どもの不法な移送および不返還を防止し、かつ係争中の事案を解決するための措置を引き続き強化するよう、勧告する。
代替的養護
29.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 里親ホームではなく施設に措置される子どもの人数が増えていること。
  • (b) 外国の背景を有する子どものうち施設に措置される子どもの割合が、スウェーデン国籍の子どもの割合よりも高いこと。
  • (c) 施設養護庁が自主規制の役割を担っていること。
30.委員会は以下のことを勧告する。
  • (a) 子どもの養護措置が必要となる段階まで事態が発展する前に援助を提供できるよう、締約国が、外国の背景を有する家族をとくに対象とする防止措置(社会サービス機関内における、文化的背景および移民としての地位の関連性に関する意識啓発を含む)をとること。
  • (b) 子どもがその意思に反して養護の対象とされる事案の規制が施設養護庁とは別の組織のもとで行なわれるようにし、かつ当該規制において養護の質も確保されるようにすること。

5.基礎保健および福祉

健康および保健サービス
31.委員会は、母親、乳児および学童の保護に関して締約国報告書に記載された情報を歓迎する。委員会は、保健ケア開発国家行動計画(1999/2000:149)を心強く思うものである。しかしながら委員会は、保健ケアおよび保健サービスのこの側面が県の担当とされていることに留意するとともに、これとの関連で、諸地域間で不平等が生じうることを懸念する。委員会は、とくに、ストレスの影響を感じている生徒の人数が増えていること、自殺、過食症、拒食症、体重過多および肥満の発生件数が増加していること、ならびに、子どもの精神保健に関するプログラムが設けられていないことを懸念するものである。
32.委員会は、締約国が、以下のことのために必要な措置をとるよう勧告する。
  • (a) 生徒のストレス水準を低減させ、かつ生徒がストレスの影響に対処するのを援助すること。
  • (b) 自殺を防止すること。
  • (c) 過食症および拒食症の問題に対応すること。
  • (d) 体重過多および肥満の問題に対応すること。
  • (e) 子どものための精神保健プログラムを、防止プログラムおよび介入プログラムのいずれについても強化すること。
思春期の健康
33.委員会は、学校における性教育、薬物およびタバコの使用ならびにアルコール濫用に関して行なわれている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、10代の妊娠中絶が2002年に急増したこと、ならびに、タバコおよび薬物の使用ならびにアルコール濫用が蔓延していることを依然として懸念するものである。
34.委員会は、締約国が、思春期の健康政策を促進し、かつ学校における健康教育プログラムを強化するための努力を増強するよう勧告する。委員会はさらに、とくにリプロダクティブヘルスに関わる健康教育訓練プログラムの有効性を強化し、かつ、子どもの最善の利益にかなうときは親の同意を得ることなくアクセスできる、若者に配慮した、かつ秘密の守られるカウンセリング、ケアおよびリハビリテーションのための便益を発展させるための措置(十分な人的資源および財源の配分を含む)を勧告するものである。委員会はまた、締約国が、タバコおよび薬物の使用ならびにアルコール濫用を防止しかつこれと闘うための努力を継続することも勧告する。

6.教育、余暇および文化的活動

いじめ
35.委員会は、教育法(Skollagen - 1985:1100)および全国カリキュラムへのいじめ対策規則の編入および「ともに」(Tillsammans)と題された2001~2002年のいじめ反対キャンペーンのような、いじめ根絶のために行なわれている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、当該規則がいまなお全面的に実施されなければならない状態にあり、かつ、障害のある子どもおよび外国系の子どもに対するいじめが引き続き懸念事項となっていることに留意するものである。
36.委員会は、締約国が、いじめを防止しかつこれと闘うための努力において障害のある子どもおよび外国系の子どもに対して特段の注意を払うこと、および、いじめ対策規則が、子どもの関与を得ながらすべての学校その他の施設で全面的に実施されるべきことを、勧告する。
教育
37.委員会は、無償の義務的学校教育を16歳まで(4~5歳のすべての子どもを対象とする無償の就学前教育を含む)提供しようとする締約国の努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 在留許可を受けていない子ども、とくに「隠れた」子どもが教育にアクセスできていないこと。
  • (b) 諸地域間で成績に相当の偏差があること。
38.委員会は、締約国が、以下のことを確保するための努力を追求するよう勧告する。
  • (a) 在留許可を受けていない子どもおよび「隠れた子ども」を含むすべての子どもが教育に対する権利を享受すること。
  • (b) 学校間および地域間の成績偏差および差異が根絶されること。
  • (c) 職業訓練が利用可能とされ、かつ学校から職業への移行が支援されること。

7.特別な保護措置

保護者のいない子ども
39.委員会は、保護者のいない未成年者が置かれた状況に対応し、かつ子どもの庇護希望者の受け入れおよび事情聴取の質を高めようとする締約国の努力を歓迎する。しかしながら、委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) スウェーデン移民庁の監護者のいない子ども担当特別部局のもとから行方不明になる、保護者のいない子どもの人数が多いこと。
  • (b) 庇護申請の処理に非常に時間がかかり、子どもの精神保健に悪影響が生じる可能性があること。
40.委員会は、締約国が、この分野における努力、とくに以下のことを目的とする努力を追求するよう、勧告する。
  • (a) 情報および統計の収集に対する調整のとれたアプローチを確保し、ニーズに応じた対応がとれるようにすること。
  • (b) 子どもが失踪したときに効率的にかつ時宜を得たやり方で対応するため、さまざまな主体間、とくに警察、社会サービス機関およびスウェーデン移民庁間の調整を強化すること。
  • (c) 保護者のいない子どもそれぞれについて到着後24時間以内に一時的後見人を任命することを検討すること。
  • (d) 子どもとともにおよび子どものために働く専門家を対象とする、これらの子どもの権利に関する研修を継続しかつ強化すること。
  • (e) とくに、子どもの申請を優先し、かつ、難民の地位に関する条約(1951年)に基づく子どもの庇護希望者の申請を評価する際に子ども特有の形態の迫害を考慮することにより、子どもに関する難民認定手続を子どもに配慮したやり方で実施すること。
家族再統合
41.委員会は、認定難民の家族再統合手続に過度の時間がかかることを懸念する。
42.委員会は、締約国が、認定難民の家族再統合手続への対応が積極的、公正、人道的かつ迅速なやり方で行なわれることを確保するためにとられる措置を強化するよう、勧告する。
性的搾取および人身取引
43.委員会は、1996年にストックホルムで開催された第1回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議後、子どもを性的な虐待および不当な取り扱いから保護するための国家行動計画が採択され、かつ、横浜(日本)で開催された第2回世界会議に向けて当該計画が2001年に改訂されたことに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、性犯罪に関して提案されている、採択されれば性的搾取からの子どもの保護の向上につながる刑法改正も歓迎するものである。しかしながら、委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) スウェーデンにおいて、かつスウェーデン市民の手によって国外で、子どもの人身取引、買春および関連の問題が発生していること。
  • (b) インターネット経由の接触の結果として性的虐待を受ける子どもの事案が報告されていること。
  • (c) 児童ポルノに関わる刑法上の子どもの定義が主観的かつ不完全であることも理由として、スウェーデン法による保護がほとんど提供されていないこと。
44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) サービスプロバイダ、親および教員と協働すること等の手段も用いながら、インターネットを利用している子どものための保護措置およびインターネットの否定的側面に関する子どもの意識啓発プログラムを強化すること。
  • (b) メディア・キャンペーンも含む教育を通じ、子どもの性的虐待および人身取引の問題に関する専門家および一般公衆の感受性を強化すること等の手段も用いながら、性的搾取および人身虐待の発生を削減しかつ防止するための措置を強化すること。
  • (c) サービスプロバイダによるインターネット上での児童ポルノの表示を禁止し、かつ、児童ポルノに関わる刑法上の子どもの定義を改正して18歳という明確かつ客観的な年齢制限を定めること等の手段により、児童ポルノの所持および製造を禁ずる法律を強化すること。
  • (d) 保釈金の供託後に釈放された者へのパスポートの再発行を禁ずる等の手段も用いながら、国外で子どもの性的搾取に関与したスウェーデン市民の訴追を認めた法律を強化すること。
  • (e) 第1回・第2回子どもの商業的性的搾取に反対する会議(それぞれ1996年および2001年に開催)で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、非政府組織との協力を増進させることも含む調整のとれたやり方で、性的搾取および人身取引の被害者に対して提供される保護(防止、証人保護、社会的再統合、保健ケアへのアクセスおよび心理的援助を含む)を増強すること。
少年司法
45.委員会は、犯罪の有害な影響を低減させる目的で、刑法上の犯罪との関連における調停についての法律(2002年)が制定されたこと、ならびに、罪を犯した若者に対する制裁として監護ケア(1999年)および青年地域奉仕活動が導入されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子どもの問題に対応する専門の検察官および裁判官が存在しないことを懸念するものである。
46.委員会は、締約国が、委員会が1995年に開催した少年司法の運営に関する一般的討議を踏まえながら、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)ならびに第40条2項(b)および(ii)~(iv)および(vii)、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針の全面的実施を確保するため、法律、政策および予算を見直すよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう、とくに勧告するものである。
  • (a) 子どもの問題に対応する検察官および裁判官全員が適切な訓練を受けることを確保すること。
  • (b) 懲罰的措置が、適正手続および法的援助をともなう形で司法機関によってのみとられることを確保すること。
  • (c) 非行および犯罪のような問題につながる社会的条件の解消の一助とするため、家族およびコミュニティの役割を支援することのような防止措置を強化すること。

8.条約の選択議定書

47.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書の、締約国による批准を歓迎する。委員会はさらに、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を早期に批准する意図を締約国が明らかにしたことを歓迎するものである。
48.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書を批准すること。
  • (b) 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく第1回報告書を期限どおりに、すなわち2005年3月20日に提出すること。

9.フォローアップおよび普及

フォローアップ
49.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能なときは州の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
50.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

10.次回報告書

51.委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国による定期的なかつ時宜を得た報告はきわめて重要であり、委員会は、この点に関する締約国の実績を評価する。委員会は、締約国に対し、2007年9月1日までに、120ページを超えない範囲で(CRC/C/118参照)第4回定期報告書を提出するよう慫慂するものである。


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最終更新:2011年12月07日 17:31