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F-1-351

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Top > ファンタジーっぽい作品を創作するスレ> スレ1> 1-351 *小ネタ 少しSFっぽくなってしまった。

少しSFっぽくなってしまった。


351 :少しSFっぽくなってしまった。:2009/02/05(木) 17:36:02 ID:6HYADT4Q

「そろそろ、お目覚めの時間です」
と、初音ミクのような抑揚と声質の声。
生命感にあふれた緑の匂いがする。
ボクは草むら、感触からすると多分、芝生の上で、仰向けで目をつぶっている
状態らしい。

目を開ける。

あまりまぶしくない。見上げると、巨大な何かがちょうど、ボクの真上の上空に
浮いていて、黒い影を落としていた。

「……気球?」

クウキクジラです、と初音ミク(仮)は答える。
彼女の言葉の意味を掴みかねて、ボクはクウキクジラ、とオウム返しにつぶやいた。

クウキクジラ。つまり、空気鯨?
確かに、クウキクジラはシロナガスクジラのような形をしていて、上空を案外素早い動きで
"泳いで"どこかに行ってしまった。

上半身を持ち上げる。
夕焼けが目に飛び込んでくる。そして、夕焼けをバックに鳥の群れを……いや、魚の群れを
確認する。

「あれは、サンマ?」とボクは問うてみる。
「そうです」初音ミク(仮)は答える。

「驚かないんですか?」と、初音ミク(仮)。
「驚いてるよ」と、ボク。

すみません、そうは見えなかったもので、と謝る初音ミク(仮)をボクはなだめる。
いいよ、ボクは誤解されやすいタイプなんだ。
でも、なんで、空中を魚が泳いでいるの?鯨は魚じゃないとしてもさ。

「そういう設定なんです」
「へぇ。変わった設定だね」
「"シュレーディンガーの猫"をご存じですか?」
「……箱を開けない限り、放射線が放出されて猫が死んでいるか分からないというあれ?」
「そうです。この世界が入っている"箱"はまだ開けられていないのです」
「……ボクという"観測者"がいるよ、"箱"の中に」
「……非常に残念ですが、『"箱"の外の世界が滅んでいないという保証はありません』」
「ボクが"実存"しているかどうかよく分からないというわけ?」
「……残念ですが」

ふーん、とつぶやいて、ボクはようやく初音ミク(仮)の顔を見た。
強制的にこの世界に連れてこられたと思って、ボクはひそかに怒っていたのだ。

初音ミク(仮)は、確かに初音ミクそっくりだった。猫耳以外は。

〈了〉

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