創作発表板@wiki

温泉界へご招待 ~蹴は剣よりも強し~

最終更新:

mintsuku

- view
だれでも歓迎! 編集
Top > 【シェア】みんなで世界を創るスレ【クロス】 >温泉界・温泉界へご招待 ~蹴は剣よりも強し~

温泉界へご招待 ~蹴は剣よりも強し~


「さて…それじゃ行ってくるよ。みんなに神の御加護を」

といつものように微笑を浮かべてクラウスは正面入り口前を警護する忍者5人に向けてかけ出した。当然のように忍者は彼に気付くが、
遅いよ、と言わんばかりにクラウスはその忍者の一人の顔面に飛び膝蹴りをクリーンヒットさせる。100mを十秒フラットで走り抜けるスピードと彼の全体重が乗せられたその飛び膝蹴りは忍者を一撃で卒倒させる。
突然の奇襲に混乱しつつも忍者は背中に装着された鞘から日本刀を引きぬき、クラウスを囲むように構える。
クラウスは壁を、正面玄関の扉を背にしてしまっているために逃げ場はなかった。しかしこれこそ彼の狙い通りの展開であった。
忍者4人の意識は今や完全にクラウス一人に集中しており、他の7人が彼らの背後30mを余裕で通り抜けてアジトに侵入したことなど
知る由もないだろう。うん、序盤は思い通りの展開だね。とクラウスは満足した。さて、問題はここからである。

「う~ん、初めて戦った忍者さんたちがあんまり弱かったから君たちもそうだろうと思って奇襲なんて仕掛けたけど…結構なやり手みたいだね」

まだ手を合わせていないというのにこの4人の忍者の実力をオーラだけで見抜くクラウス。事実、刀の構えにしても暁の部下であった4人の忍者とは明らかに違う。
隙がないのだ。侍ではなく忍者であるにもかかわらず。クラウスは忍者とは手裏剣やクナイといった飛び道具系の武器で敵を仕留めるスタイルだと読んでいた。
しかし、剣技もなかなかやりそうだ。一人は刀を大きく頭上に振り上げる上段構え。一人は刀を自分の真正面に構える正眼。
一人は刀の切っ先を地面に向けて構える下段。そして最後に…この男がこの区域の警備隊長なのだろう。
両腕の脇を締めて頬のあたりで柄を握り刀を構える八相。思わず苦笑いを浮かべてしまう。だが、忍者たちはなかなか切りかかってこない。
それどころかその顔にはうっすらと恐怖の色すら浮かんでいる。彼らもまたクラウスの実力をオーラだけで見抜きその圧倒的な実力に怯えているのだ。
しかも、忍者たちに隙がないようにクラウスにもまた隙がない。お互いに構えたまま5分がたち、しびれを切らしたクラウスが忍者に話しかける。

「あの、忍者なら手裏剣だとかクナイだとか持ってないのかな。それ投げればいいだけだと思うんだけどね」
「…生憎全て砥ぎ師に渡してしまっていてな。取りに戻ろうにもその間に他の3人は貴様に倒されてしまうだろうしな」

彼の言葉通り、今この状況は忍者が4人いるからこそ成り立っているのだ。圧倒的な実力差を数で埋め合わせているのである。
しかし、ここからさらに一人抜けたらたちまちそのバランスはクラウスに大きく傾くだろう。
それは忍者も重々承知している。だからこそここでにらみ合いを続けるしかないのだ。しかし、忍者は気付いていなかった。
自分たちが完全にクラウスの術中に陥ってしまっていることを。忍者とは基本的に暗殺を主な任務としている。
故にこのように睨み合いになることなどはほとんどないはずである。つまり、睨みあいによるいらだちと強敵を前にした恐怖からどこかで隙が生まれるだろうと
クラウスは読んだのである。さらにここでクラウスは次の一手を打つ。挑発である。

「ねえ、4人がかりで僕を囲んで一人として切りかかってこないってどういうことかな。今君たちが構えてるその刃はお飾りなのかい?」
「ふん…怒車の術か…生憎だがその手は食わんぞ」

怒車(どしゃ)の術とは、相手を怒らせることで冷静さを失わせる心理的な作戦の一つである。忍者とは身体能力だけではなくこういった
心理的な部分まで踏まえて戦うのである。挑発作戦は失敗に終わった。が、この状況は時間がたてばたつほどクラウスに有利になっていく。
先の理由に加えて忍者たちは刀を構えている。その重さは約1kg。いかに鍛えているとはいえ、そんなものを長時間構えを変えずに握り続けていられるはずはない。
そして睨みあいを続けておよそ10分。ついにクラウスの待ちわびた瞬間が訪れた。上段構えの忍者の腕が疲労で震えだしたのだ。
それを見逃さず、クラウスはその忍者に飛びかかり刀を握るその手を取り、足払いをかけて体重をうまくコントロールしながらその忍者の身体を投げる。
投げられたことによって大きく態勢を崩されてしまった忍者の顔面にクラウスの無情のミドルキックが炸裂した。
そのままノックアウトされてしまう忍者。しかし大きく動いた情勢を忍者もまた見逃さず、正眼の構えの忍者がクラウスに横薙ぎの一閃を浴びせようとする。
しかし、クラウスは大きく身体をのけ反らせることでそれを回避し、さらにそのまま背を地につけて再び足払いをかける。
うつ伏せに転倒した忍者の後頭部にかかと落としを炸裂させてやはり失神させる。しかしこのクラウスの態勢を千載一遇のチャンスと見た残りの2人が一斉に
切りかかってきた。が、彼は少しも焦ることなく仰向けのまま両掌を頭の横の地につけてそこから驚くべきことに逆立ちをして見せ、
さらに両脚を180度の角度まで開きヘリコプターのプロペラの要領で大きく振り回すのだった。『フォーリャ』と呼ばれるカポエイラのアクロバティックな
蹴り技である。これが忍者2人の刀を握る手に直撃し、刀は大きく吹き飛ばされてしまう。この機を逃さずクラウスはフォーリャから前転を経て起き上がり
その反動を利用した上段後ろ回し蹴りを忍者の顔面にヒットさせる。遠心力を伴う強烈な回し蹴りを見舞われ、やはりその忍者も一撃のもとに倒される。
これで残る忍者は後一人、八相構えのリーダーである。といっても刀は10m先に吹き飛ばされ、今は丸腰だ。しかしそれでも他の3人とは違い少しも臆することなく
クラウスと相対する。そして、彼に向けてファイティングポーズを取る。どうやら正々堂々と格闘戦を挑むようである。
しかし、忍者はなにを思ったかファイティングポーズを解き、両手を組み合わせて何かをやり始めた。九字護身法である。
臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前と唱えながら両の手で印を結ぶことによって災いから身を守ると信じられてきた術である。
九字護身法を終えて忍者はクラウスに言った。

「貴様…なぜ襲いかかって来なかった?」
「いや、だって儀式の最中だったから邪魔したら悪いかなぁ…なんて」
「面白い男だな…貴様とはうまくやれそうだ」
「いや、本当に僕もそう思うよ、フフフフフ…」

そして、忍者がクラウスに殴りかかる。しかし彼はなぜか忍者の右拳を避けることなくそれを頬で受け止める。
そこには彼の二つの目的があった。一つはその拳を頬で受け止めることにより忍者の素手での力量を計ること。その結果クラウスが導き出した結論は…
この人弱いな、である。踏み込み、拳のキレ、打撃点、何もかもが浅い。これがアスナだったら僕は一撃KOだったろうな。
そしてもう一つの狙いは、殴らせることによって忍者を拍子抜けさせ、精神的な隙を生みだすことであった。
実際、追撃は飛んで来なかった。上出来だ。さて、彼と拳をじっくり交えたいところだけど僕もなかなか忙しい。そろそろ終わりにしよう。
クラウスは忍者に1発の右ミドルキックを打ち込む。しかしそれは遅く忍者にも余裕で防げるものだった。
そして忍者は、クラウスの狙い通りそのミドルキックを左腕で防ごうとしたその瞬間、彼の右足は大きく軌道を変えてその踵を忍者の顔面に思い切り叩きこむ。
最初のミドルキックはフェイントであり、それに意識を集中させることで無防備の顔面に強烈な一撃をヒットさせることで一撃のもとに相手を沈めるのが
クラウスの得意な戦い方であった。その一撃により、忍者はあっけなく倒れる。忍者たちは死んではいない。だが4人とも
頭部にクラウスの強力なキックを見舞われ気絶して最低でも半日は目覚めない。たった今ノックアウトしうつ伏せに倒れ伏す忍者の傍らに
跪いて片膝をついて胸元で十字を切り、クラウスは彼らが守っていた正面玄関から堂々と忍者たちのアジトに潜入するのであった。


[[]]

+ タグ編集
  • タグ:
  • シェアードワールド
  • 温泉界

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー