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一回戦 第十四試合 日本鬼子 VS 青森さん

作者 ◆6US8U1tkPE

東京ドーム地下闘技場。
そこで行われていたのは、創発世界最強を決めるトーナメントである。
いずれ劣らぬ熱戦の連続に沸いていた場内だったが――
第14試合を迎えた今、会場は静まり返っていた。
選手たちの歯や骨、そして血の混じった砂の敷き詰められた円形のリング中央で、制服姿の女子中学生を細腕一本で吊り上げてた鬼は、唇の端を吊り上げる。
「いやぁ、気分がいい……」
頭頂部付近から二本の角を生やしたその鬼、文字通り創発の鬼子として忌み嫌われている妖艶な美女は、くつくつと笑いをこぼす。
「このまま頭を粉々に潰してやろうか、小娘」
可憐な少女、青森さんの頭部を掴んでいた腕が、ぎりぎりと締まってゆく。
これまでの拷問にも等しい執拗な攻撃で、全身を血塗れにしていた女子中学生の口から迸った絶叫を聞いて、日本鬼子は更に笑った。
「良い声だ」
が、途中から悲鳴は裂帛の気合を纏う。
女子中学生、青森さんは日本鬼子の顔面に渾身の蹴りを見舞っていた。
頭部を拘束していた手を離し、口から血の筋を流した日本鬼子は一瞬で間合いを取る。
「まだそんな元気があったのか。足も折っておくべきだったな」
異様な方向に曲がった右腕を庇いながら鬼と対峙していた青森さんは、制服のポケットからコンパクトを取り出し、叫ぶ。
「プリキュア! オープンマイハート!」
コンパクトから溢れだした純白の光が、少女の身体を包み込む。
収束した光の中から生まれ出たのは、ファンシーな衣装を纏った少女戦士であった。
「――厳寒の地に咲く、一輪の花! キュアアップル!」
会場内にいた、ぴちぴちのアニメTシャツを着ていた小太りな男が最初の歓声を上げる。
「あれは……プリキュアだ!」
それに続き、場内は熱狂的なコールが巻き起こる。
「プリキュアアアアア!」
「青森さんが……プリキュア!?」
「プリキュア! プリキュア!」
「――私は」
聖なる力で傷の完治した少女の口が開くと、一瞬で会場は静寂に包まれた。
「憎しみではなく、愛で闘います」
その言葉が終わると同時、会場は歓声混じりの絶叫で揺れた。
片方の耳を手で抑えていた日本鬼子は、怒号の飛び交う敵地で苦笑する。
「ひどいヒールぶりだなあ、私も」
黒い双眸を赤く染めながら、紅葉柄の着物姿の鬼は手の平を青森さんに向ける。
「まあプリンだかプリキュアだか知らないが、負けたら君の死体を頂くよ。そろそろ腹も減ったし、鬼には似合いの食事だろう?」
手の平の前方に深紅の球体が生まれ、それはプリキュアとなった青森さんに超高速で殺到した。
着弾と同時に爆裂した光弾は巨大な砂煙を巻き起こしたが、砂塵を縫って飛び出した青森さんは一気に日本鬼子との間合いを詰める。
「はあああぁぁぁ!」
一瞬で繰り出された無数の拳打を紙一重で捌きながら、日本鬼子は呟く。
「成程、さっきとはまるで別人だな」
プリキュアの手刀が、日本鬼子の頬を浅く裂く。間髪入れず飛んできた水面蹴りが鬼の体勢を崩し、続く拳掌がリング端にまで吹き飛ばしている。
舌打ちと共に、背中を木製の柵で強打した日本鬼子は光の弾を放つ。
が、プリキュアが取り出した宝石の付いたステッキが、その魔弾も弾き飛ばしていた。
「プリキュア! フローラルパワー・フォルテッシモ!」
光の球体に身を包んだ青森さんは上空に飛び上がり、凄まじい速度でリング端の鬼子の身体に激突していた。
リングの柵が易々と壊れ、観客席の一角とそこにいた客たちが歓喜の悲鳴と共に吹き飛んだ。
光の球体は舞台の中央に戻り、中からプリキュアが姿を現す。
浄化の光で貫かれ棒立ちとなっている日本鬼子に背を向け、青森さんは淡々と言った。
「紅葉の花言葉は、『自制』。あなたが他人を思いやれる心を持った時、また――」
彼女の言葉はそこで途切れた。
鬼の手刀が、彼女の胸の中心を容赦なく貫いて生えていた為だ。
「勝ち名乗りを上げるには少し早すぎたな。今のはかなり効いたが、それでも――」
耳鳴りのような甲高い音と共に、プリキュアを貫いた日本鬼子の手の先に、深紅の光の球体が生まれ、縮んでいく。
「君は弱すぎる」
直後、圧縮された光が瞬間的に膨張し、地下闘技場を紅い閃光が駆け抜けた。
轟音と震動、そして光が止んだリングは、舞い上がった砂煙に覆われる。
「うっ……」
そして煙のベールが取れた頃、会場のそこかしこから嗚咽や呻き声が漏れ始めた。
鬼は、五体の焼け爛れたプリキュアの死体の前に屈み込み、それを喰らっていたのだ。
「強い者が弱い者を喰らう。何か問題あるかな」
肢体から飛び散る鮮血に構わず少女の臓器を引きずり出していた鬼は、やがて会場を包み込まんばかりの哄笑を撒き散らしていた。


支援絵

作者:882 ◆iUS45DEX5
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