マルチジャンルバトルロワイアル@wiki

私のお墓の前で泣かないでください

最終更新:

sqzc8

- view
だれでも歓迎! 編集

私のお墓の前で泣かないでください  ◆YhwgnUsKHs





 墓。それは死者の眠る場所。死者を葬り死者を弔う場所。
 今の世でこそそれは一般人も作る事ができるものであるが、古来では王や皇帝を祀り、その業績を後世に伝えるモニュメントとしての機能も存在した。
 これを陵墓と一般的に呼称する。

 この地で、既に30以上の命が失われた。
 しかし土の中へ埋葬された者はわずかで、墓として正式な体裁をなされた者に至ってはありもしないだろう。
 だがもしこの地で山盛りの土を見たならば人はなんとなく察するだろう。
 墓石がなくともそこは墓なのだと。
 作った人物はどんな思いを込めたかはわからない。
 単に見かけて不憫だから弔ったのかもしれない。
 その人物の成した何かを知っていてそれへの賛辞と感謝を込めて埋葬したのかもしれない。


 そんな稀有な埋葬者たち。その内2人の人物がいる。
 それぞれの眠る場所に来訪者が訪れた。
 それは運命が手繰り寄せたのか、どちらも眠る者と縁ある者たちだった。それも血縁という縁だ。


 さあ見てみよう。
 何も語らぬ埋葬者を見て来訪者がどのような反応をするのか。何を感じるのか。
 そして何が変わるのか。



 *****



 もしも神がいるのなら。



「私達はよほど嫌われていると見える。なあ、ルルーシュ?」



 緑色の髪。スレンダーな体型。それでいてグラマラスな胸、そして纏うマント。
 そんな風貌をした者、ゼロと名簿には記載されているがC.C.という女だ。
 そんな彼女は木々に囲まれた中である者を見下ろしていた。

 あたりには土が散っており近くには大きな穴も開いている。
 彼女の足元の『それ』も大分土に塗れている。
 もしこの光景を見た物が居たなら、『それ』が穴の中から取り出されたものだとわかっただろう。


 そしてC.C.は『それ』を見下ろしながら――唇を噛み締めた。

 皮肉った口調とは裏腹に、彼女の顔に満ちるのは、悔恨。
 余裕を持とうとして、失敗している。そんな様子だった。


 それも無理はない。
 なぜなら『それ』は自分ともう1人の自分が守ろうとしていた存在なのだから。




 『それ』の名は、ナナリー・ランペルージという。


 *****


「自然はー、歩いて、こない♪だーから、歩いていくんだねー♪」
「木や花が歩いてきたらそれはそれでホラーですわ……そもそも、その歌色々まずい気がいたしますわ」
「えー? ホラーかなぁ。僕的には、アットホームコメディパロディミュージカルオペラって感じなんだけど」
「歌か映画かはっきりしてくださいまし」
「なら……ずばり!歌であり映画でもある複合エンターテイメントウィズ自然だね!」
「とうとう日本語と横文字の統一性すらなくなりましたわ!?」
「ふくえん?」
「アルルゥさん、変な略をしてはいけませんですわ」
「あれ? ここもしかして僕がつっこまなくちゃいけないところ?」



 日も高くなり気温も増してきたある駅の構内。
 改札口前のベンチで食事を取る騒がしい3人組がいた。
 クリストファー・シャルドレード、北条沙都子、アルルゥの3人だ。
 3人は人探しの都合上、移動範囲を広げることを優先し、そこで沙都子が電車に乗ることを提案。
 クリスがそれに賛成し電車も汽車も知らないアルルゥには『速く遠くまでいけるもの』と説明して了解を得た。
 駅が3つしかない為細かい探索は行えないが、移動範囲さえ広ければ人に会える可能性も高くなるという作戦だった。
 既にこの殺し合いが始まって14時間程度。
 捜し人である、真紅、圭一、レナ、詩音、梨花、レヴィを見た人物は必ずいるはずだ。見た人物が全員死んだりしていない限り。
 目撃者を見つけてその情報が最近のものであったらその近くを探索すればいい。
 そしてこの駅に辿り着き、遅めの昼飯をとっているところだった。
 ちなみにレヴィもこの辺りにいるのではないかと踏んだのだが、生憎見つけることはできなかった。


 その道中落ちていた拳銃と刀を拾った。刀に関してアルルゥが『トウカのだとおもう』と言っていた。
 なぜこんなところに放置されていたのかはわからないが武器があるに困る事はないので拾っておくことにした。




 自分達の傍に一人の少女が気付かれることもなく倒れているとは3人とも気づくことは出来なかった。




 あまり美味しいとはお世辞にもいえない乾パンをかじりながら、沙都子は手元の3つのボールを見ていた。
 そのボールは外からも中が見えて、その中には3つの生き物が存在している。
 沙都子がクレア戦で頼りにしたニョロボンのニョロはいいとして、後の2匹はレヴィが残していってデイパックの中にいた者だ。
 ボールが同じものであることから、もしかして同じような生き物なのだろうか、と3つのボールを並べてみた。
 するとニョロと猫の耳のようなやけに太っている生き物――説明書によるとカビゴンのゴン――がやけに嬉しそうに互いを見ていた。どうやら互いに知り合いの関係
らしい。

「感動の再会ってところかな? 羨ましい?」
「……クリスってデリカシーがないって言われませんの?」
「うーん…………よく言われる!」
「自信満々に親指立てて言わないでくださいまし!」

 それに比べて残った1体。岩のようなカメのような頭の丸い生き物――説明書によるとゴローニャのゴロすけ――の方は、どうもそこまで親密感はなさそうだ。
 だが反応を見るに、他の2匹と全くの初対面という風ではなさそうだ。
 そのあたりの感情判断はアルルゥの談なのだが。

「アルルゥさんってこういう動物に慣れてらっしゃいますわね。
 わたくしには同じような表情にしか見えないのに『うれしそう』とか『とまどってる』とか、すぐわかってしまうんですのよ」
「あの子も耳についてるしねぇ。ああいう動物?の感情が分かる力とかあるのかもね。あーあ、欲しいなあ僕もそういう能力」
「あら。クリスはその力でどんな動物の声を聞きたいんですの?」
「不自然な都市に生きる自然であるドブネズミくんたちの嘆き悲しみの声を是非同時に1000匹くらいから……沙都子どうしたの、食事の手止まったよ?」
「も、もういいですわ……。
 ゴンさんにゴロすけさん……技とか能力は説明書で把握いたしましたけど、やっぱり制限時間がネックですわね」
「10分ってのもねえ。強いのは認めるけどさ。ま、その子たちのことは沙都子にお任せー」
「思い切り投げましたわね……まあいいですわ。一応あらゆる想定を頭に入れて、技の組み合わせを……」

 と説明書から少し目を離した沙都子の動きが止まった。

「……クリス? 1つよろしいですの?」
「アルルゥならさっきふらふらーっとあっちの出口から外に行ったよ?」
「ああ、そうでございましたの」





 げしぃっ!!




「なんで止めないんですのこの人はーーーーーーーーーー!!!」
「沙都子、流石にスネは僕も痛い」




 *****




 山盛りになった土。その下に人が埋まっているであろうということはすぐに合点がいった。
 学校での惨事の後、目当てのそれがある古城跡から一旦離れ、南へと向かった。
 理由は、古城には確実にあのヴァッシュがいることだ。
 ヴァッシュの実力の程は既に垣間見ている。決して勝てる自信がないからではない。古城に向かい、最後の首輪を奴から奪う事も視野にはあった。
 だが、それにも問題がある。
 今自分は体力を消費している。
 ヴァッシュクラスの相手となるとできれば万全の状態で挑んでおきたい。


(まあ、なによりルルーシュが今だ冷静さを取り戻せてはいない。さっきこそ奇襲でなんとかなったが今度はどうなるかわからないからな)

 ナナリーの死を知り、今だ平静とは呼べないルルーシュに対して時間を与えるのも一環ではあった。
 とはいえ、集団にもぐりこむという目的上古城に戻っても問題はなさそうだが。


(当初の目的をまだ果たしていないしな。中央部の調査。優勝狙いとはいえただひたすら殺していくわけにもいかないしな)


 他の参加者ならいざ知らず、ゼロでもありC.C.でもある彼女はただ他の参加者を殺していくつもりはなかった。
 自分にもあるこの首輪。自分の能力ですら止めることができないそれ。
 優勝した後主催が本当に願いを叶える保証はない。そのまま殺すということも考えられる。
 ギラーミンは必ず殺さなければならない。だがそれは容易ではない。
 主催と参加者。その絶対的パワーバランスを傾けているのは首輪だ。

(ここにいるうちにこれの解除法なり見つけておかないとな。
さっきの奴らはルルーシュが動揺したせいで禄に情報を奪えなかったが、今後は出来る限り情報を引き出さないとな。
 潜り込んで引き出すもよし、拷問するもよし。それと平行してこの会場についても調べておこう。古城の仕掛けが他にもないとは限らない。
 もっとも、あまり古城から離れるわけにはいかんから……そうだな。図書館あたりまでにしておくか)


 そう辺りをつけて南下。そして少し林に入ったところに、それがあった。



 死体があると思えば、躊躇いはなかった。
 首輪があればそれを回収しておくつもりだった。
 古城の仕掛けに使う3つ以外にも、解析用、交渉用、武器用などいくらでも使い道がある以上いくらか確保しておきたかったからだ。
 そう、正しかったはずだ。決して間違っては居なかったはずだ。



 ただ運が悪かった。そういう話。
 ゼロが遭遇する可能性があった死体は30人(実際はもっと死者が出ているが、ゼロには知る手段はない)。
 1/30。たった3%程度の確率だったのに。


 それが当たった。それだけの話。



「っ!!」


 C.C.は自分の体を抱え込むようにして前かがみになった。
 暴れている。自分が、もう1人の自分が暴れている。
 泣いている。激怒している。狂乱している。
 この怒りと悲しみを発散し何もかもを破壊しようと暴れている。


(落ち着けルルーシュ!!こんなところを誰かに見られていたらどうする!!)


 周囲に気配は感じない。
 だがもしも双眼鏡のようなもので遠くから見られていたとしたらここでゼロへの変身を見られるのはまずい。
 何よりこんなところで無駄に暴れるなど愚の骨頂だ。
 だから何としてもルルーシュの怒りを抑える。意地でも押さえ込まなければならない。



 数分後息を切らしながらもC.C.はナナリーの遺体を検分していた。
 なんとかルルーシュは押さえ込んだ。だがいつか吐き出させなければならないだろう。
 彼の怒りを、悲しみを。



(それは相手から情報を引きずり出した後だ。今のルルーシュでは相手を一瞬で粉みじんにしかねないからな)


 C.C.は気持ちを落ち着けて冷静にナナリーの死体を見やった。
 彼女とて動揺はしている。だが自分が落ち着かなければもう『ゼロ』を押さえつけられるものはいなくなる。
 ここは無駄に敵を増やしていい場面ではない。


(全身に火傷、服もほとんどが焼け焦げている……炎で焼かれたにしてはやけに外傷が少ない。
 刺し傷も銃創もない……一部骨が折れているところはあるがどうにも死因がわかりにくい。どういうことだ?)


 C.C.がナナリーの死因を特定しにくいのも無理はない。
 ナナリーはアヴァロンの効果で防御を上げていた為、バズーカの直撃でもバラバラにならなかった。
 本当ならばありえない状態。だからこそ普通の視点では死因の特定が出来ないのだ。


(何よりネモはどうした? 私の細胞で作られているからこそわかる。奴はもうナナリーの傍にはいない。
 この辺りにも……!?)


 辺りを見回したC.C.はある場所に駆け寄った。
 そこに残っていたのは普通なら土くれとしか思えないものの塊だった。
 だがC.C.にはわかる。これは自分の細胞の一部であり、ネモの一部である。


(だが奴がここで崩壊したにしても量が少ない。誰かが持ち去ったのか?
 馬鹿な。まさか新たにエデンバイタルへ繋がった者が出たとでも?)


 新たな契約者。果たしてありえるのだろうか…。


(まあいい。どちらにせよ、お前はナナリーを守れなかった……それに耐え切れるのか、土人形)


 土くれから目を外し、改めてナナリーの近くへと歩み寄った。
 埋められていたナナリーの身なりは整えられていて、埋葬者の気遣いが伝わってくる様相だった。


(通りかかった誰かが死んでいたナナリーを埋めたのか、あるいは同行していた誰かが埋めたか。
 もし後者なら――ルルーシュはそいつも間違いなく殺すだろうな。ナナリーを守れなかったそいつを。
 例えそいつがどれほどナナリーを丁寧に埋葬したとしてもだ)

 C.C.はもう拾える情報は拾ったと認めると、ナナリーの体を抱きかかえた。
 ルルーシュにとっては最愛の妹であるナナリーを実験台にするようで気がひけるが、仕方ない。
 成功すれば自分達にとってはメリットにもなるのだから。

 彼女を抱えていった先にはゼロのデイパックがあった。その口は上に向けて開かれている。
 その口にナナリーの頭を向けて近づけていく。

 城にいた時、一度水銀燈で試した事があった。
『デイパックの中に隠れられれば奇襲できるのではないか』と。
 だが結果は、水銀燈が頭をわずかに入れた瞬間、勢いよく彼女の体が弾かれた。
 ゼロも試したが結果は同じ。結局参加者はデイパックに入れないということでその場は決着した。

 だがあの時の検分には欠けている点があった。
『生きている参加者は入れない。ならば死んだ参加者はどうなのか』

 学校を出てからその疑問に至り次の死体でそこも確かめることにした。
 その実験台がナナリーになったのは不幸でもあり幸いでもあった。

(ナナリーをデイパックに入れられればナナリーの死体の保存性が高まる。
 埋葬されていては私のような参加者が来てナナリーの首を刈り取りかねないからな。
 主催が復活の方法を知っているならば、ナナリーの遺体は完全な状態で留めておかなければ)

 ナナリーから首輪を取ることなど論外だった。
 そんなことは目的が破綻するし、何よりルルーシュがそれに耐え切れない。




 果たしてナナリーの体はすっぽりとデイパックの中へと入った。
 念のためデイパックに手を居れナナリーを出そうと考えると、足を掴む感触が伝わってきた。


(やはりな。
 問題はデイパックが何で入れられた者が生きているか死んでいるか。
 そもそも参加者であるか否かを判断しているかだが。
 …………首輪か)


 サカキや土御門の首から首輪を外した時、爆発は起こらなかった。
 つまり持ち主が死んだ場合首輪は起動を停止するのではないか。
 となれば、参加者であるかを確認でき、かつ生存も判断できるのは首輪しかない。
 思えば水銀燈が頭を入れた時も首輪が入り口に差し掛かったときに拒絶された覚えがある。
 死んで首輪が停止した参加者ならばデイパックに入れることが出来る。

(あとは保存手段か。
 このデイパックの中がどんな空間かは分からないが腐敗を止める作用はないと前提しておこう。
 なら、大規模な氷かドライアイスの冷やすものが必要か。
 どこで手に入れるか)


 C.C.は地図を見ながら思う。
 最愛の妹を氷で保存し持ち歩く。傍から見れば狂気の沙汰だろう。
 埋葬者にいたってはその意志を完全に踏みにじる行いだ。

 それでもゼロはそれを行う。
 最愛だからこそ、何者からも守らなければならない。
 その為には近場に置いて、そして復活の力を手にしたときすぐに行使できなければ。


(そうだ。我らは魔王。
 凡人達には理解など及ばぬ存在だ。
 もうそれは決定された。


 契約したあの日から――)


 見上げた空に上る太陽。
 その日差しは弱まりつつも未だに自分達を照らす光だった。



 *****



「なんで普通に見送ったんですの! もしアルルゥさんが襲われたらどうするんですの!?」
「いやよく言うじゃない。かわいい子にはうろつかせろって」
「言いませんわ!! アルルゥさーん! 待ってくださいましーー!」

 駅から離れた林の中を沙都子とクリスは走っていた。
 すぐに駅を飛び出した2人は、林に入っていくアルルゥを目撃して後を追ってきていた。
 アルルゥは何が目当てなのか一心不乱に走って行き、その足取りはかなり速い。
 林に慣れている沙都子、驚異的身体能力を持つクリスだからこそ距離のハンデがあってもなんとか追いつけているが、なんとか後を追えている状態だ。
 沙都子がこうして叫んでいてもアルルゥは振り返らずに走り続ける。一体何が彼女をあそこまで動かしているのか。


「アルルゥさん!!」
「追いついたみたいだね。って、あれ?」


 茂みから飛び出した二人は、その先に立って背を向けているアルルゥを見つけた。
 さっきまで走っていたのにそこで止まっている。
 何かを見ている。
 アルルゥの後ろにまで追いついた2人がその先を見た。


「え……!?」


 そして沙都子は絶句した。


 そこにあったのは山盛りの土、その前に置かれたデイパック。そして、土の上には金属バットが突き立てられていた。
 そのモニュメントの意味するところを最初に口にしたのはクリスだった。


「お墓、かな?」


 盛り上がった土に墓標のようなバット。捧げられたデイパック。
 確かに墓と見るのが一番だろう。

 となると、ここには誰が眠っているのか。


(そんなわけ、ないですわよね……?)


 沙都子の視線は墓のある一点に集中していた。
 突き立てられた金属バット。別に取り立てて特徴もないその辺のバットのはずだ。

 なのにそのバットにひどく見覚えがある気がする。
 見覚えがあるとしたらそんなバットは1つしかない。



「なんで、なんでにーにーのバットがこんなところに」
「っ!!」


 沙都子がそう呟いた瞬間、アルルゥが突然墓にひざま突いた。
 何事かと2人が思う間もなく、アルルゥは迷わずその土を掘り返し始めた。

「な、何をするんですのアルルゥさん!!」

 突然の暴挙に沙都子はアルルゥを止めようとした。
 だが、アルルゥが掘り始めた衝撃でその上のバットが倒れた。
 そして、その柄の部分が沙都子に向く。


 『悟史』。その文字が沙都子の動きを止めてしまった。


「っ!!!」


 一瞬頭によぎった想像。
 行方不明の兄、北条悟史がここに埋められているのではないかと。
 だがすぐにその考えを打ち消す。悟史の名前は名簿になかった。ここにいるわけがない。
 だからすぐにアルルゥを止めよう。
 どういう意図かはわからないが、これは死者に対して失礼な行為だ。


 だが、沙都子が我に返ったときにはもう全ては終わっていた。



「あ、ああっ……うあああっ!」



 土を掘っていたアルルゥが目を見開き、尋常でない顔をしている。
 とめようとしていた沙都子も、どういう意図か全く手を出さなかったクリスも、そのただならぬ様子に後ろから覗き込んでみた。


「っ!!」
「やっぱり、ね」


 沙都子は絶句し、クリスはただため息を1つ吐いた。


 崩れた土から覗いた顔。その耳から生えた獣の耳。



 アルルゥの知り合いだということは、すぐに察する事ができた。
 そして、それはアルルゥの声で確信へと変わった。


「エルルゥ……ね、ぇ……」



 *****



「なんて、ことですの……」


 沙都子はことの次第にただ呆然と立ち尽くすしかなかった。


 目の前ではアルルゥが、動かぬ姉の顔を見ながらもう何回目かの涙を流している。
 姉が死んでいたのだ。流石にそれでも泣くな、などと沙都子は言えなかった。

 そして、そこに突き立てられていたバットは自分の兄、北条悟史のバット。
 なんてめぐり合わせだろうか。
 共に行動していた2人。その1人の姉の墓に立てられていたのが、もう1人の兄の愛用品だったなどと。

 悪い冗談にも程があった。



 アルルゥがなぜここまで辿り着けたのかは分からない。
 彼女の直感が働いたのか、単に彼女は林を走りたかっただけなのか、あるいは姉が彼女を呼び寄せたのか。
 どちらにしても、今アルルゥが嘆き悲しんでいる現状は変わらない。


「アルルゥさん……」


 そっとしておこうかと思った。
 でも、嘆き悲しむアルルゥが、かつての自分に重なった。
 兄が居なくなり、悲しむ自分。
 あの時の自分に訪れた温もりがあったはずだ。


(梨花……そうですわね。わたくしは今、アルルゥさんのねーねーなんですもの)


 沙都子は思い出す。
 絶望に打ちひしがれた自分に、一緒に暮らそうと手を差し伸べた古手梨花の姿を。
 彼女に救われた自分が居る。
 なら、今度は自分の番だ。




「アルルゥさん」
「! ねー、ねー?」



 問答無用でしがみついた。
 ゆっくりとアルルゥの体を抱きしめた。


「お姉さんは――きっと今でもアルルゥさんのことを見守ってらっしゃいますわ」
「で、でも……でもぉ」
「ここで動いてなくても、たとえ傍にいないように見えても――その人は、いつでもわたくしたちの傍にいますわ」
「え?」


 ぎゅっ、とアルルゥを抱きしめた。
 傍にいるぬくもりを感じて欲しくて。
 貴方は1人じゃないんだと教えたくて。


「だってアルルゥさんはお姉さんを思い出せるでしょう?お姉さんの優しい姿を、お姉さんの強い姿を、あなたは覚えているはずですわ」
「あっ……」


「悲しむ事も大事ですけど、いつまでもここで止まっているわけにはいきませんの。わたくし達妹は、兄や姉の姿から学んで強くならないといけないんですもの」
「ねー、ねー……」
「わたくしも、どこかで全てを諦めきった時があった気がしますの。でも、そんな時仲間がわたくしの目を覚ましてくれた。そんな気がするんですの」


「今は、わたくしが、クリスが傍にいるんですの。だから、アルルゥさんがお姉さんのように強くなるのを手伝いますわ」
「ひっぐ……ねーねー……!」
「一緒に、兄や姉のようになるんですの。それを、お姉さんも望んでらっしゃいますわ」



 *****



「やっぱりああいうのは沙都子の仕事だよね。で、僕はこっちの汚いお仕事と」

 2人でアルルゥの姉、エルルゥに最期の別れをしている2人から少し離れて、クリスはデイパックの口を開いていた。
 それはエルルゥの墓の前におかれていたデイパック。2人はまだ気づいてないが、黙って奪ったと言えばおそらくいい顔はしないだろう。

 だがクリスはそれでも奪うのをやめるつもりはない。
 ココにおいておけば危険人物が容赦なく奪っていく可能性がある。
 もしこの中に強力な武器が入っていたならそれは後に自分達にとって有害となる。

「ちゃんと説明すれば分かってもらえると思うけど、今はやめとこっと。今の自然な流れに不自然な僕は入っていけそうにないからさ」

 後で説明はしようと決めて、デイパックから中身を出した。
 地図やら水やら基本的な支給品。そして


「これは……キノコ? うーん、いい自然の営みだけど……ま、まだ食料はあるし、これは今はいいか。


 あ、これって沙都子の持ってるボールと同じだね。4つ目か。中身は……蜂かぁ。やあ、僕と友達にならないかい?


 でこっちは如雨露かぁ。……あれ?そういえば翠星石が話の中で『翠星石は庭師の如雨露があれば天下無双の無敵人形ですぅ』って言ってたけど、もしかして?」


 と、クリスが振り向いてみると。



 金属バットを持った沙都子がなにやらきびしめな目つきでこっちをじーーーっと見てる。


(うわ、あれ完全に怒ってるや。ごごごごごごごご、って音が聞こえてきそうだよ。
 仕方ないか。よし、ここは歌いながら謝って説得してみよう!)





 *****






「なんであなたはいつもいつもそうなんですのーーー!(ブンブン!)」
「いやあ涼しい風だなぁ(ヒョイヒョイ)」
「ねーねー、クリスあぶない」
「大丈夫ですわアルルゥ! この人にはこれくらいしないとわからないんですの!!(ブンブン!)」
「あれ?いつの間に呼び捨てになってるの?もしかしていつの間にか新密度上がった?
 僕ちょっと嫉妬。というわけで沙都子、僕の呼び方もランクアップの時だとおもうんだけど(ヒョイヒョイ)」
「なら『無反省人間』にランクダウンして差し上げますわーーーーー!!(ブンブン!)」
「わぁお。人間はランクアップだから僕結構嬉しい(ヒョイヒョイ)」
「きーーーーーーーーーーっ!!」
「ねーねー、顔真っ赤」





(なんなんだあのガキ共は)


 ナナリーをデイパックに入れた後、更に南に進んでここに出くわして今木陰から3人を見ているC.C.はただただ呆れていた。
 殺し合いの場で騒ぎながら沙都子という少女がクリスという男に金属バットを振り回してそれを男が余裕に回避。
 そんな2人をアルルゥという少女が離れて観戦している。
 なんとも暢気な光景だった。


(あいつらが重要な情報を持っているとは思えないが……だが、誰がどんな情報を持っているかはわからんし、接触するしかないか)




 物凄く嫌だが致し方ない。それに3人いるとはいえ2人は子供なら、御するのも捕らえるのも殺すのも容易い。
 男の方に警戒を向けていればいい。



(どちらにしろ、お前たちにはルルーシュの怒りを抑える贄になってもらうしかあるまい。
 もちろん情報をあるだけ引き出して充分な休息時間を稼いでからだな。その後は――






 ボロ雑巾のように、な)





 C.C.は3人の未来について残酷な判断を下すと、茂みから出て行った。
 3人の獲物を自らの手に収めるために。






【E-2 エルルゥの墓前/一日目 午後】
【ゼロ@コードギアス ナイトメアオブナナリー】
【状態】:健康 疲労(中)、C.C状態  激しい動揺と怒り、悲しみ≪ルルーシュ≫
【装備】:大戦槍@ワンピース
【道具】:基本支給品一式×4、MH5×4@ワンピース、治療器具一式 投擲剣・黒鍵 3/10@Fate/zero、防刃ベスト@現実 電伝虫@ONE PIECE×2、
     破魔の紅薔薇(ゲイ・シャルグ)@Fate/Zero  忍術免許皆伝の巻物仮免@ドラえもん、和道一文字@ONE PIECE、シゥネ・ケニャ(袋詰め)@うたわれるもの、
     謎の鍵、レナの鉈@ひぐらしのなく頃に、首輪×2(サカキ、土御門) 、ナナリーの遺体(首輪あり)
【思考・状況】
1:殺し合いに優勝し、ナナリーを生き返らせる。
2: 『○』に関しては……
3: ギラーミンを殺して、彼の持つ技術を手に入れる。
4:自分の身体に掛けられた制限を解く手段を見つける。
5:『○』対する検証を行うためにも、首輪のサンプルを手に入れる。
6: C.Cの状態で他者に近づき、戦闘になればゼロへ戻る。
7:3人と接触し休息時間を稼ぎつつ情報を全部引き出す。その後は殺す。
8:ナナリーの遺体を守り抜く。その為に氷の類を捜索。
9:図書館あたりまでの施設を探索し、首輪を集めて古城跡へ戻る。
10:ネモはどこに?
11:ナナリーを守れなかった奴を見つけたら殺す。
【備考】
※ギラーミンにはタイムマシンのような技術(異なる世界や時代に介入出来るようなもの)があると思っています。
※水銀燈から真紅、ジュン、翠星石、蒼星石、彼女の世界の事についてある程度聞きました。
※会場がループしていると確認。半ば確信しています
※古城内にあった『○』型のくぼみには首輪が当てはまると予想しています。
※魅音(詩音)、ロベルタの情報をサカキから、鼻の長い男の(ウソップ)の情報を土御門から聞きました。
※C.Cとの交代は問題なく行えます。
※起動している首輪を嵌めている者はデイパックには入れないという推測を立てています。


【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:健康、L3
[装備]:象剣ファンクフリード@ONE PIECE、レッドのニョロ@ポケットモンスターSPECIAL、悟史の金属バッド@ひぐらしのなく頃に
[道具]:支給品一式×2<沙都子、翠星石>、グラン・メテオ@ポケットモンスターSPECIAL、
     翠星石のローザミスティカ@ローゼンメイデン、翠星石の亡骸首輪つき、
     雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン
     F2000Rトイソルジャー@とある魔術の禁書目録(弾数30%)、5.56mm予備弾倉×4
     カビゴンのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、ゴローニャのモンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL
[思考・状況]
1:私は!クリスが反省するまで!振るのをやめませんわ!!
2:絶対にアルルゥをハクオロに会わせる。
3:真紅にローザミスティカを届ける。水銀燈には渡さない。
4:部活メンバーに会いたい。
5:レヴィと再び会い、ローザミスティカ入手の経緯を聞く。
※参戦時期は具体的には不定。ただし、詩音を『ねーねー』と呼ぶほどに和解しています。『皆殺し編』の救出以降ではありません。
※名簿は確認したようです。
※雛見沢症候群の進度は具体的には不明。L5まで進行した場合、極度の疑心暗鬼と曲解傾向、事実を間違って認識し続ける、などの症状が現れます。
 説得による鎮静は難しいですが不可能ではありません。治療薬があれば鎮静は可能ですが、この場にあるかどうかは不明です。
※真紅、蒼星石、水銀燈に関しては名前しか知りません。
※アルルゥの名を仗助から聞きましたが、アルルゥの家族の詳細についてはまだ把握していません(エルルゥ=姉のみ把握しました)
※レヴィに対して良い印象を持っていません。
 またレヴィがドールを壊して、ローザミスティカを奪ったのではないかと疑い、それが蒼星石のものではないかと考えています。


【クリストファー・シャルドレード@BACCANO!】
[状態]:健康、左手と背中に火傷
[装備]:アウレオルスの暗器銃(装弾100%)@とある魔術の禁書目録、マスケット銃用の弾丸50発
[道具]:大きめの首輪<ドラえもん>、基本支給品一式<エルルゥ>、アミウダケ@ワンピース 、サカキのスピアー@ポケットモンスターSPECIAL、
     庭師の如雨露@ローゼンメイデン、グロック17@BLACK LAGOON(残弾10/17、予備弾薬39)
[思考・状況]
1:ひらり、ひらりと。
2:沙都子とアルルゥを守る。
3:クレアには会いたくない。だけど……
※ローゼンメイデンについて簡単に説明を受けました。他のドールの存在を聞きました。
※名簿を確認しました。
※参戦時期は、『1934完結編』終了時です。



【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]健康、いくらか擦り傷(治療済み)
[装備]トウカの刀@うたわれるもの
[道具]支給品一式×2<アルルゥ、仗助>、ニースの小型爆弾×1@BACCANO!、
    不明支給品(0~1)<仗助> 、ひらりマント
[思考・状況]
1:ハクオロに会いたい
2:沙都子は信用。クリスは怖い(でもちょっと信用)。レヴィは謝るまで許さない。
3:エルルゥに別れを告げる。
※ここが危険な場所である事はなんとなく理解しましたがまだ正確な事態は掴めていません。
※不明支給品(0~1) <アルルゥ>はひらりマントでした
※放送の内容を理解しました。エルルゥ達の死も認識しています。



※D-2、ナナリーの墓が掘り起こされました。死体は掘り出されて穴が開いたままです。





時系列順で読む


投下順で読む


Back Next
クリストファー・シャルドレードは一人淡々と考える クリストファー・シャルドレード 赤目と黒面(前編)
クリストファー・シャルドレードは一人淡々と考える 北条沙都子 赤目と黒面(前編)
クリストファー・シャルドレードは一人淡々と考える アルルゥ 赤目と黒面(前編)
それは誰にも聞こえぬ歌――勇侠青春謳(後編) ゼロ 赤目と黒面(前編)





タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

目安箱バナー