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ラッド・ルッソは喪失感に打ちのめされる

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匿名ユーザー

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――声が聞こえてきた。
――耳障りの良い声だ。
――俺のハイなテンションを中和してくれる気の少し弱げな声だ。
――これは……そうか。
――俺の恋人兼彼女兼婚約者のルーアの声だな。

「ねえっ、ラッド。起きて……お願い!」

――少し声がでかいな。
――何だ一体?らしくねえ。

「なんだよルーア………って何だよここは!?」

――こんな場所見たこともねえぞ。
――ルーアの隣には……デューンの奴は居るのか。
――他は……ちっ、見覚えのねえ面ばかりだ。
――しかしどうしてここにいる。
――俺達はフライングプッシーフット号を占拠する手筈じゃなかったか?
――そうだ。そうだよな。
――思い出したぞ。確か今頃俺達は列車内で殺して殺して殺しまくって!
――最高にハイな気分になれるはずだったじゃねえか。
――なのになんでここに俺とルーアとデューンと……あそこで寝てるのグラハムか?
――どうして四人だけ訳のわからねえ場所に連れてこられたんだ。
――理解できねえ。そもそもグラハムの野郎は列車には来ないはずだろうが。
――………やばい。やばいぞ。やばいって。たっぷり殺せると思ってテンション揚げてたのにお預けか?
――調教中の犬じゃねえんだぞ。
――誰だ!俺に舐めた真似してくれた野郎は?
――本来殺す予定だった奴等の代わりに殺して殺して殺しつくしてやる!

「ねえ……ラッド」

と、ラッドがテンションが振り切れる寸前でルーアがラッドを引き戻す。

「っと、何だよ」
「大丈夫?何だか様子が……」
「心配してんじゃねえよ。ちょっと殺す予定の奴が代わっただけだからよ」
「そう」
「ああ、心配すんじゃねえよ」

ラッドは声を低くしてルーアに語りかける。
するとそこで突然部屋の中央に一人の男が現れた。
その男は堂々とした仕草で突如語り始めた。

「全員目覚めたかな。私が君達を集めたギラーミンという者だ」
「ギラーミンっ!」

そこで一人の少年が立ち上がりギラーミンへと呼びかけた。
驚きの表情を隠さずに。

「のび太か。久しぶりだな」
「お前……どうして?」
「どうしては無いだろう。脱獄したのさ」
「まさかっ!」
「勘違いしないでほしい。私は復讐や仕返しなどをするつもりはない。ただね。君に負け、脱獄した後も殺し屋としての
私の仕事は無くなってしまってね。………まあ当然だろう。辺境宇宙の片隅の星の、それも一人の子供に銃で負けたのだ。
しかもその子供はその上で私を殺さなかった。これはもう信用失墜となって必然といえる」
「それでっ!どうして僕とドラえもんを捕まえてどうするつもりだ!まさかまた僕と勝負するつもりか」

のび太はギラーミンに対し強気の姿勢を崩さずに向き合う。
だがギラーミンはその視線を意にも介していなかった。

「半分正解だ。だが単純にリベンジでは意味が無い。そもそも無名の君に再戦して勝利をしても殺し屋として復活は難しい。
一度負けた時点で私の価値は大暴落したのでね」
「だったら何で僕を捕まえた!復讐でも再戦でもないならどうして!」
「そこでこの多くの人々さ。彼等は私が調べぬいた異なる世界の猛者達だ。人間台風の異名を持つ者。幻想殺しの能力を持つ者。
概念というなの武装を施し戦闘力に変える者。三刀流という独特な構えで世界一の剣豪を目指す者。
決して死ぬ事のない不死の身体を持つ者。とにかく多彩な能力を保有する宇宙でも有名な人物ばかりを集めたのだ。
君を含め、彼らには最後の一人になるまで殺し合いをしてもらう。そして生き残った最後の一人と私が戦う。
つまり私は熾烈な殺し合いの勝者と戦い、その上で勝利を掴み取るのだ。単純に殺すのではない。
熾烈な戦いを勝ち抜いた真の強者を私が殺す。これ以上にない汚名返上の方法だ」
「狂ってる!」
「ん?」

ギラーミンは声高らかな演説をするが、のび太は決して引かない。
そしてギラーミンを真っ直ぐ見据えて言い返す。

「そんなのおかしい。やるなら僕だけをやればいいじゃないか。無関係な人を巻き込むなんてふざけてる!」
「だから言ったではないか。ただ君を殺すだけでは私の名誉挽回には至らないのだよ」
「そんな勝手な理由で……」
「勝手で何が悪い。ここに居る者は私に無様に捕まり監禁された弱者に過ぎない。弱者が強者の為に命をささげる生贄となるのは
当たり前の事だ」
「………何が当たり前だよ。殺し合いなんて僕は絶対に許さないぞっ!」
「許さないならそれでもいい。それなら君が優勝して私と戦い殺せば済むだろう」
「ぐっ!」

ギラーミンの『殺せ』という言葉に思わずのび太はたじろいでしまう。
しかしそれは殺しの経験の無い普通の小学生に過ぎないのび太にとっては無理の無いことだった。
だがそれを見ていたラッドは違う。

――なんだあの野郎。ガキに負けた腹いせで俺とルーアを拉致ったってのか?しかも俺の最高の楽しみの邪魔をして。
――いいぜ。まずはあいつを殺すか。

「なあお前。つまり俺達を殺し合わせて自分は高みの見物っての決め込むつもりかい。いいねえ。そういうの。
俺はそういう自分は絶対死なないって場所にいる人間を殺すのが最高に大好きなんだよ。だからさ。お前………俺に殺されろ」

ラッドは大いに語りながらギラーミンへと近づいていく。
しかしギラーミンはラッドに向き直り真正面から見つめ返す。

「ラッド・ルッソか。後ろに居るのは君の婚約者のルーア・クラインか」
「ああ?あれは俺に殺されたがってる俺がいつか殺す俺の女だ」
「ほう」

ラッドのその言葉にギラーミンは不敵な笑みを浮かべる。

「……ラッド」
「心配すんじゃねえよ。俺がいるだろうが」

ラッドはギラーミンから庇うようにルーアの前に立つ。
それは恐らく無意識に取った行動であったが、それをギラーミンは見逃さなかった。

「ちょうどいい。もし殺し合いを全員が放棄した場合にどうなるかを見せてあげよう。これは24時間死者が出ない場合の全員。
私が用意した会場から外に出たとき。そして私が途中で指定する立ち入り禁止区域へと侵入した場合の当人へと起こる罰則だ。
それをその女へと行うので見逃さないように」
「はあ。何するつもりだ。俺の女に手を出してみろ。ただじゃ」

ラッドが言い終えるより前に背後から小さな爆破音が聞こえた。
ラッドはすぐに振り返るが、既に遅かった。
既にルーアは首から大量に血を流して倒れていた。

「ルーアアアアアァァァァァッッッ!!!」

ラッドは急いでルーアの元へと駆け寄る。
まだかろうじて息があったのか、焦点の合わない目で必死にラッドの姿を探していた。
ラッドは宙を彷徨っているルーアの手を握り締める。

「バッ……バカヤロウっ!死ぬんじゃねえよ。俺に殺される前に死ぬなんてありえねえだろうが。おいっ!きいてんのか!」
「………ッド…………」
「なんだ?何言ってんだ?聞こえねえぞ」
「……ラッ………ド…………」

ルーアは必死で最後の言葉を伝えている。
薄れ行く意識を必死で繋げ止めつつ。
そしてラッドはそのルーアの手を強く強く握り締めた。

「……だ…………………い………す……………………………………き」

その言葉を最後にルーアの身体から力が失われていた。

「おい。ルーア?なんだよ。寝てんじゃねえぞ。起きろよ。俺に殺されるんだろ?俺以外に殺されるってありえねえだろ」

ラッドは必死で冷たくなっていくルーアの肩をゆする。
しかしルーアの身体から体温が戻ることは無い。
ラッド・ルッソが世界でたった一人の愛した女。ルーア・クラインは既にこの世界に存在しない。



「ふう、分かりましたかな。これが殺し合いを放棄したり逃げ出しした場合の結果。つまり死。理解できたかな。それでは
君達を殺し合いの会場へと送り届ける事にしよう」
「ふざけんなよっ!ラッドの兄貴の女をよくも!俺が殺してやるぜ」

そこで言うが早い。
車掌服の赤髪の男。車掌室からの銃声を聞きつけ、ドアを空けようというタイミングで連れられたデューン。
最初は混乱してしまい上手く会話についていけなかった彼だがここに来てようやく事情を性格に把握できた。
兄貴分であるラッドの婚約者が殺され、ラッドの兄貴が悲しんでいる。その状況で弟分であるデューンがするべき事等たった一つ。
デューンは自らの懐に隠し持っていた銃を取り出しギラーミンへと狙いをつける。

「うおおおおおおぉぉぉっっっ!死ねえっっっ!!!」
「遅いっ!」

しかし遅かった。
デューンが引き金を引くより早く、ギラーミンの銃弾がデューンを射抜いていた。

「がっ!」

左胸を赤く染めながらデューンは崩れ落ちる。
そしてその身体に更に二発、腹部と頭部へと銃弾を撃ち込む。
確実なトドメとしての二発だ。

「ふう、邪魔が入ったが、これ以上抵抗する者は居ないか。では始めよう。サービスとして会場へは全員をランダムで
各所へとテレポートしてあげよう。存分に殺しあうように」
「待ちやがれ」

と、再度ラッドがギラーミンへと向かい合う。
怒りの炎を纏っているかのような錯覚を覚えさせる威圧感を伴って。

「よくもルーアを殺しやがったな。許さねえ。お前は絶対に殺す。たとえお前が俺を殺しても、俺はお前を殺す。これは絶対だ」
「面白い。待っているぞラッド・ルッソ」
「待てっ!」

そこで再び別の声が聞こえた。
先ほどまで話していたのび太の声だ。

「ギラーミン!よくも関係無い人を殺したな。僕がお前を止める!これ以上の凶行は許さないからなっ!」
「くっくっく。そうか。やはり決心したか。君がどう動くのか楽しみだよ。野比のび太!」

そののび太の言葉を最後に、騒動の中心であった野比のび太とラッド・ルッソは姿をけした。
ギラーミンが言っていたテレポートを行ったのだろう。
そしてその場には二人を除く63人の視線がギラーミンへと向けられていた。
ギラーミンはその中の一人、青色の不思議な形の生物へと声を掛ける。

「ドラえもん。どうして一言も話さない」
「………のび太くんが真剣にしゃべってたから、僕は邪魔しちゃ駄目だと思ったんだよ」
「ほう。その結果あの少年が私と同じ道に入っても構わないと」
「いいや。のび太くんは大丈夫だよ。必ずお前を倒すけど………殺したりしないよ。のび太くんはのび太くんのやり方を貫き通して
その上でこの計画を止めるよ。だって……のび太くんは『殺す』とは一言も言ってなかったから」
「ほう。ではのび太がどのように私を止めるか、楽しみにするとしよう」

ギラーミンは会話を打ち切ると、残り全員をテレポートさせようとする。
だが

「待てっ!」

それは一人の仮面の男によって遮られる。

「何か用か」
「優勝者はお前と殺しあうと言った。そのために世界の猛者を集めたと。ならどうして彼女達がここにいる」

仮面の男は背後にいる二人の少女を一瞥して後、ギラーミンへと詰め寄った。
しかしギラーミンは飄々とした態度で返答を述べる。

「簡単なこと。彼女達は純粋な戦闘力は確かに低い。しかし機転のよさ。運の良さ。洞察力。その他純粋な戦闘の猛者には無い
長所を持っている。単純な戦闘力だけを基準に選んでいるわけではないのだよ」
「そうか。だが残念ながら私は彼女達と殺しあう気など毛頭無い。つまり、貴様のくだらん遊びを妨害する者は先程の少年一人
ではないという事だ。どうする。私と同じ考えを持つ者は決して少なくないぞ。それでもこの殺し合いを決行するつもりか」
「なるほど。確かにそうだな。大事な説明を忘れていた。確かに優勝者は私と殺しあうが、もし私に勝利したのなら大きな褒美を
手に入れることが出来る」
「何だ」
「簡単な事だ。もし優勝し、この私をも殺す事が出来れば、あらゆる願いをかなえることが出来る『力』を手に入れる事が出来る。
無論死者を生き返らせる事も不可能ではない。つまり君が私を殺せば、死んだ仲間を全て生き返らせる事も可能だ。いや違うな。
望みさえすれば、ここで死んだ全ての者、君のいた世界で死んでいった全ての仲間を生き返らせることすら不可能ではないだろう」
「なっ!………ふざけるな。そんな事できるわけが」
「無いというか。身に覚えが無い話でもないだろう」
「っ!?」
「信じるも信じないも自由だ。そしてどのような行動を取ろうが私は介入はしない。……話が長くなったが、もう時間だ。
では君達。健闘を祈る」

ギラーミンの言葉と共に、その場にいた全ては煙のように姿を消した。

ラッド・ルッソ。野比のび太。
境遇も歳も環境も違えば、ギラーミンとの出会いも異なる。
唯一つ。
ギラーミンへの敵意だけは共通だった。
そしてその敵意は様子見を決め込んでいる参加者の何名かも共通して芽生え始めている。
しかし、最後にギラーミンの言った言葉。
「全ての死者を生き返らせる」この言葉の影響も計り知れない物がある。
ギラーミンにとっては殺し屋としての汚名返上の為の殺し合い。
しかしそれは開始早々大きな渦を巻き起こしていた。
参加者達の未来に射すのは眩しい光か、漆黒の闇か。

命がけのBACCANO! (馬鹿騒ぎ)改めバトルロワイアル。
遂に開幕。


最後に笑うのは果たして―――

【ルーア・クライン@BACCANO! 死亡】
【デューン@BACCANO! 死亡】

残り65人




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GAME START ラッド・ルッソ (無題005)
GAME START ハクオロ 招かれたもの
GAME START ドラえもん 上空50メートル
GAME START 野比のび太 笑顔
GAME START ギラーミン 我はここに在り

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