総括所見:英領マン島(2000年)


CRC/C/15/Add.134(2000年10月16日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2000年9月21日に開かれた第647回会合(CRC/C/SR.647参照)において、1998年4月15日および1999年9月14日に受領されたグレートブリテン・北アイルランド連合王国(マン島)の第1回報告書(CRC/C/11/Add.19 and Corr.1)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。
  • (注)2000年10月6日に開かれた第669回会合において。

A.序

2.委員会は、定められたガイドラインにしたがって作成されたマン島に関する締約国の第1回報告書、および委員会の事前質問事項(CRC/C/Q/UK-IM/1)に対する文書回答が提出されたことを歓迎する。委員会は、締約国との間に持つことができた建設的な、開かれたかつ率直な対話を心強く思うとともに、議論中に行なわれた提案および勧告への積極的反応を歓迎するものである。委員会は、条約の実施に直接関与しているマン島の代表が代表団に含まれていたことによって同島の子どもの権利の状況に関してより十全な評価ができたことに、満足の意を表明する。

B.積極的側面

3.委員会は、とくに障害のある子ども、子どもの保護、入所型養護、里親養護および養子縁組、少年司法ならびに家族支援に関する事項を扱った子ども家庭サービス計画(1997~2001年)および同計画の改訂(1999年)に留意する。

C.懸念事項および委員会の勧告

1.実施に関する一般的措置

報告
4.委員会は、締約国がまだ自国のすべての王室属領、具体的にはジャージー島およびガーンジー島に条約の適用を拡大していないことに、懸念とともに留意する。
5.委員会は、締約国が、すべての王室属領に条約の適用を拡大するためにとった措置に関する情報を、次回定期報告書で提出するよう勧告する。
条約に対する留保
6.委員会は、子どもの権利条約第32条および第37条(c)に関して締約国が付した留保がまだ撤回されておらず、かつマン島にも依然として適用されていることを懸念する。委員会は、条約に付されたすべての留保を撤回する可能性についてさらに議論することに対する同島のコミットメントを歓迎するものである。
7.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国に対し、マン島との関連も含めて留保を全面的撤回の方向で見直す可能性を検討するよう奨励する。条約第37条(c)に対する留保の撤回を妨げていると思われる要因を取り除くため、マン島は、自由を奪われた子どもを対象とする別個の保安措置区画の建設を完了させる努力を強化するよう、奨励されるところである。
立法
8.委員会は、マン島が、新たな子ども若者法案、ならびに、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)および欧州人権条約を編入するための法案を議会の次回会期に提出する予定であることに留意する。しかしながら委員会は、マン島の国内法に条約の原則および規定が全面的に反映されていないことを懸念するものである。これとの関連で、委員会は、子ども若者法案が子どもの保護およびケアに対する権利基盤アプローチよりも社会福祉・社会サービス型アプローチに焦点を当てていることに、懸念を表明する。
9.委員会は、締約国に対し、法律が条約の原則および規定に全面的に一致し、かつ子どもの保護およびケアに対する権利基盤アプローチが法律に反映されることを確保する目的で、法律の見直しおよび改正の分野における努力を継続するよう奨励する。
調整
10.委員会は、保健社会保障省がマン島における子どもの福祉を担当する主務機関であることに留意する。委員会はさらに、1997年に導入された「子どものケア戦略」の策定および実施において同省が果たした役割にも留意するものである。しかしながら委員会は、条約を促進しおよび実施し、ならびに、子どもとともにおよび子どものために活動するすべての政府機関ならびにより幅広い市民社会がそのプロセスにいっそう関与することを確保するための、より包括的な調整機構を設置するために十分な努力が行なわれていないことを懸念する。また、マン島の報告書の作成に非政府組織(NGO)が含まれなかったことに対しても、懸念が表明されるところである。
11.委員会は、マン島が、条約を促進しおよび実施するための調整機構を設置し、ならびにその効果的運用を確保するために十分な資源(人的資源および財源)を配分するよう勧告する。委員会は、マン島に対し、「子どものケア戦略」をさらに5年間延長するための努力を継続するとともに、関連のあらゆる政府機関のいっそうの参加を確保する目的で同戦略をさらに発展させるよう、奨励するものである。マン島が、条約実施のための包括的行動計画の作成を検討することも、勧告される。加えて、マン島は、子どもプログラムの促進、調整および実施にNGOを含めるための努力を強化するよう奨励されるところである。また、マン島の次回定期報告書の作成にNGOが参加することを確保するための努力も求められる。
データ収集
12.委員会は、マン島のデータ収集機構に15歳までの子どもに関するデータの収集しか含まれていないことを懸念する。
13.委員会は、マン島が、条約が対象とするすべての分野を編入し、かつ、とりわけ脆弱な立場に置かれている子ども(少年司法制度の対象とされている子ども、婚外子、性的虐待およびネグレクトの被害を受けた子ども、施設に措置されている子ども、薬物濫用の被害者である子どもおよび障害のある子どもを含む)をとくに重視しながら18歳未満のすべての子どもを網羅する包括的なデータ収集機構を発展させるため、あらゆる適当な措置をとるよう勧告する。
監視機構
14.委員会は、警察による人権侵害に対応する警察苦情委員会の創設が警察法で定められていることには留意しながらも、同委員会内に、警察による子どもの権利侵害の苦情申立てに対応する子どもの権利窓口を設けるために十分な努力が行なわれていないことを懸念する。委員会はまた、苦情の陳述を聴取するときに関連の成人が立ち会っていなければ子どもが警察苦情委員会に苦情を提出することが認められていないことに、懸念とともに留意するものである。子どもに影響を与える行政上の決定を審査し、かつ、警察以外の政府関係者による権利侵害についての子どもの苦情に対応する、独立の、子供にやさしい人権監視機構を設置するために十分な努力が行なわれていないことに対しても、懸念が表明される。
15.委員会は、警察苦情委員会内に子どもの権利窓口を設けることを勧告する。委員会はまた、希望する子どもに対し、成人の立会いなしで委員会に苦情を申し立てる便宜を図る措置の導入を検討するようにも勧告するものである。委員会はさらに、マン島が、パリ原則(国連総会決議48/134)にしたがい、自己の権利侵害に関する子どもの苦情に対応しかつそのような侵害に対する救済措置を提供する、警察苦情委員会とは別の、独立した、子どもにやさしい、アクセスしやすい機構の設置をあらためて検討するよう勧告する。これとの関連で、子どもによるこれらの機構の効果的利用を促進するための意識啓発キャンペーンの導入が奨励されるところである。
普及
16.委員会は、マン島が、とくに条約を含む国際協定についての情報へのアクセスを規律する、政府情報へのアクセスに関する実務規範を導入したことに留意する。委員会はまた、マン島が、国連人権条約機関に対するすべての定期報告書をウェブサイト上で利用可能とし、かつ、子どもの権利を含む人権についての研修を導入しようとしていることにも留意するものである。しかしながら委員会は、条約の原則および規定を積極的に普及するための努力が十分に行なわれておらず、かつ、専門家集団、子ども、親および公衆一般が、全般的に、条約およびそこに掲げられた権利基盤アプローチについて十分に理解していないことを、懸念する。
17.委員会は、条約の規定がおとなによっても子どもによっても広く知られかつ理解されることを確保するため、さらなる努力を行なうよう勧告する。委員会は、マン島に対し、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、教職員、学校管理者、心理学者およびソーシャルワーカーを含む保健従事者、ならびに子どものケアのための施設の職員を含む)を対象として条約に関する研修および(または)感受性強化措置を導入するための努力を強化するよう、奨励するものである。子どもの権利に関するメディアの意識を高めるための努力も求められる。委員会はまた、マン島が、あらゆる段階の教育制度のカリキュラムに条約を統合するようにも勧告するものである。

2.子どもの定義

18.委員会は、子ども若者法案において、10~14歳の子どもは責任無能力者である(犯罪を行なう能力がない)という推定を廃止することが提案されてること、すなわち法的には全面的刑事責任に関する最低年齢が14歳から10歳に引き下げられることに、懸念とともに留意する。委員会は、マン島における法定刑事責任年齢が低いこと(10歳)について懸念を表明するものである。加えて、委員会は、17歳に達した子どもの特別な保護およびケアについて法律に十分な定めが置かれていないことを懸念する。
19.委員会は、マン島が、幼い子どもについての責任無能力推定原則を廃止する旨の決定を再検討するよう強く勧告する。委員会はまた、マン島が、刑事責任年齢を引き上げ、かつ条約の原則および規定との全面的一致を確保する目的で法律を見直すようにも勧告するものである。委員会はさらに、18歳未満のすべての子どもに対して十分な保護およびケアが保障されるよう、現行法の見直しを行なうことを勧告する。

3.一般原則

20.委員会は、マン島が、立法、行政上および司法上の決定ならびに子どもに関連する政策およびプログラムにおいて、条約の規定、とくに第2条(差別の禁止)、第3条(子どもの最善の利益)、第6条(生存および発達)および第12条(子どもの意見の尊重)に反映された条約の一般原則を全面的に考慮していないように思われることについて、懸念を表明したい。
21.委員会の見解では、あらゆる法改正ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスに条約の原則が適切に統合されることを確保するため、さらなる努力が行なわれるべきである。委員会は、子どもの権利に関わる政策についての議論および決定において条約の一般原則、とくに子どもの意見の尊重の原則が指針されることを確保するため、マン島があらゆる適当な措置をとるよう勧告する。
差別の禁止
22.委員会は、マン島が、立法、行政上および司法上の決定ならびに子どもに関連する政策およびプログラムにおいて条約第2条(差別の禁止の一般原則)を全面的に考慮していないように思われることに、懸念を表明する。この文脈において、性的指向を理由とする差別に対して十分な努力が行なわれていないことに、懸念が表明されるところである。マン島が同性間の関係に関する法定同意年齢を21歳から18歳に引き下げようとしていることには留保しながらも、委員会は、異性間の関係に関する同意年齢(16歳)と同性間の関係に関する同意年齢との間に乖離が存在し続けていることを、依然として懸念するものである。
23.性的指向を理由とする差別を防止し、かつ条約第2条を全面的に遵守するため、マン島はあらゆる適当な措置(立法上の措置を含む)をとるよう勧告される。

4.家庭環境および代替的養護

ドメスティック・バイオレンス、不当な取扱いおよび虐待
24.委員会は、とくに「子ども保護政策」の導入、危険な状況にある家族を対象として活動する家族援助員の雇用および子育てに関する訓練を提供する家庭センターの設置を通じ、児童虐待(性的虐待を含む)ならびに子どもの不当な取扱いおよびネグレクトを防止するためにマン島が行なっている努力に留意する。これとの関連で、委員会はまた、児童虐待について有罪とされた成人加害者を対象とする性犯罪者治療プログラムが設置されたことにも留意するものである。しかしながら委員会は、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待(性的虐待を含む)ならびに子どもの不当な取扱いおよびネグレクトの発生件数が依然として増えていることを懸念する。
25.第19条に照らし、委員会は、マン島が、ドメスティック・バイオレンス、児童虐待(性的虐待を含む)ならびに子どもの不当な取扱いおよびネグレクトを防止しかつこれと闘うための努力を強化するよう勧告する。さらに、マン島が、ドメスティック・バイオレンス、子どもの不当な取扱いおよび性的虐待の事案が子どもにやさしい司法手続において適正に捜査され、かつ加害者に対して制裁が科されることを確保するためにあらゆる適当な措置をとることも、勧告されるところである。加えて、条約第39条にしたがい、被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を保障するため、あらゆる適当な措置をとることも求められる。
体罰
26.教育法案(2000年)で学校における体罰の使用が禁じられ、かつ刑事司法法案(2000年)で少年司法における体罰の使用が禁じられることには留意しながらも、委員会は、マン島において体罰がなお実践されており、かつ広く受け入れられていることに重大な懸念を抱く。
27.委員会は、マン島が、学校、ケアのための施設および少年司法制度における体罰の使用を法律により禁止しかつ根絶するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、マン島が、家庭における体罰の使用を禁止するためにあらゆる適当な措置をとるよう勧告するものである。この文脈において、公衆の態度を変革するとともに、代替的形態によるしつけおよび規律の維持が子どもの人間の尊厳と一致する方法で、かつ条約、とくに第19条および第28条2項にしたがって行なわれることを確保する目的で、意識啓発および教育のためのキャンペーンを実施することが提案される。

5.基礎保健および福祉

思春期の健康
28.委員会は、とくにアルコール濫用の分野で、思春期の健康に関わる問題に対応するためにマン島が行なっている努力に留意する。これとの関連で、委員会は、アルコール戦略が策定されたこと、および、中等学校および大学段階でアルコール予防プログラムが開発されていることに留意するものである。子どもの喫煙を防止しかつこれと闘うために初等学校および前期中等学校段階で導入された「スモーク・バスターズ」プログラムを歓迎しながらも、委員会は、喫煙がいまなお学齢の子ども、とくに女子の間で蔓延していることに懸念を表明する。委員会は、2000年4月に施行された精神保健法の制定に留意しながらも、子どもの精神保健サービスを強化するためにさらなる努力が必要とされていることを懸念するものである。委員会はさらに、とくに10代の妊娠および性感染症(STD)との関連で思春期のリプロダクティブヘルスに関わる問題への対応を改善するためにも、さらなる努力が必要とされていることに留意する。
29.委員会は、マン島に対し、思春期の子ども、とくに学齢の女子の薬物濫用、アルコール濫用および喫煙に対処する努力を強化するよう奨励する。委員会は、リプロダクティブヘルス教育(男性が避妊手段の使用を受け入れることの促進も含む)を強化するためにあらゆる適当な措置をとるよう勧告するところである。委員会は、思春期のリプロダクティブヘルスに関わる問題(STDの発生を含む)の規模を理解するため、包括的かつ学際的な研究を実施するよう提案する。加えて、マン島が、思春期の子どもに対して若者にやさしいケア、カウンセリングおよびリハビリテーションのサービスが提供されることを確保し、かつ子どもの精神保健サービスを強化するため、十分な人的資源および財源の配分を含むさらなる措置をとることが勧告されるところである。
障害
30.委員会は、障害のある子どもを対象とするプログラム(統合およびコミュニティを基盤とするケアのためのプログラムを含む)を確立するためにマン島が行なっている努力に留意する。しかしながら委員会は、身体的障害のある子どもの十分な法的保護を確保するための努力が不十分であることを懸念するものである。
31.障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96付属文書)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議で委員会が採択した勧告(CRC/C/69, chap. IV.D)に照らし、委員会は、障害を予防するための早期発見プログラムを増進させ、障害のある子どもを対象とする特別教育プログラムを強化し、かつ、可能な場合には、障害のある子どもの、普通学校制度およびより一般的に社会へのインクルージョンを奨励するためにさらなる努力を行なうよう、勧告する。障害のある子どもを対象とするプログラムの効果的実施を確保し、かつこれらの子どもともにおよびこれらの子どものために働く専門家を対象とするさらなる研修を奨励するために、十分な資源が配分されるべきである。委員会はまた、身体的障害のある子どもの権利を保障するための法律を制定するよう勧告する。
社会保障
32.委員会は、マン島の社会保障制度において、子どものいる家庭に対する財政的支援ならびにひとり親および低所得家庭に対する追加的援助が提供されていることに留意する。委員会はまた、社会保障制度において、就労先を見つけることのできない16~17歳の若者の訓練、教育および雇用に関する対応が行なわれていることにも留意するものである。しかしながら委員会は、18歳未満のすべての子どもの経済的、社会的および文化的権利の全面的実施を確保する目的で社会保障制度を強化するため、さらなる努力が必要とされていることを懸念する。
33.委員会は、マン島に対し、経済的に不利な立場に置かれた18歳未満の子どもに対して社会保障を通じて十分な支援および援助を提供するための努力を強化するよう、奨励する。

6.教育、余暇および文化的活動

34.委員会は、行動上の問題を有する生徒に対して追加的支援を提供する「INCLUDE」プログラムおよび「ブリッジ」プロジェクトを歓迎する。学校環境におけるこのような子どもの参加を奨励するため、生徒会が設置されていることにも、評価の意とともに留意されるところである。委員会は、現在、マン島ゲール語がすべての初等学校で2年間の選択科目として教えられていること、および、現在、教育省がゲール語学校の設置の可能性(2002年開校予定)を再検討していることに留意する。義務教育年齢の生徒の定期的通学を確保するため、マン島が無断欠席生徒指導員を任命したことには留意しながらも、委員会は、怠学率および中退率ならびにこれらを防止しかつ抑制するために実施されているプログラムについて提供された情報が不十分であることを懸念するものである。委員会は、14~16歳の生徒向けの学校カリキュラムに全英職業資格協議会(NCVQ)のコースを含めようとする努力が、遺憾ながら成功していないことに留意する。生徒が自己の権利侵害に関わるいかなる懸念についても親を通じて校長と話し合えることには留意しながらも、委員会は、権利を侵害された生徒を対象とする正式な苦情申立て手続を設置するための努力が不十分であることを懸念するものである。
35.委員会は、マン島に対し、学校でゲール語を促進する努力を継続するよう奨励する。委員会は、マン島が、教育の現状、とくに怠学率および中退率に関する追加的情報を次回定期報告書で提供するよう勧告するものである。委員会は、マン島に対し、14~16歳の子どもの職業上の選択肢を発展させる努力を継続するよう奨励する。委員会はさらに、マン島に対し、権利を侵害されたあらゆる段階の生徒を対象とする苦情申立て手続を学校制度内に設置するよう奨励するものである。

7.特別な保護措置

児童労働
36.委員会は、マン島が条約第32条に関して付した留保に留意するとともに、児童労働および子どもの経済的搾取に関わる同島の状況についての情報および十分なデータが欠けていることを懸念する。
37.委員会は、マン島に対し、条約第32条に対する留保の撤回を検討するよう奨励する。委員会は、締約国が、児童労働に関わるマン島の状況を評価するために包括的研究を行なうよう勧告するものである。加えて委員会は、マン島に対し、適切な場合には、労働法の執行を確保し、かつとくにインフォーマル部門における経済的搾取から子どもを保護するための監視機構を導入しおよび(または)強化するよう、奨励する。委員会はまた、締約国が、最悪の形態の児童労働に関するILO第182号条約の適用をマン島に拡大することを検討するようにも提案する。委員会はさらに、締約国が、就業の最低年齢に関するILO第138号条約の適用をマン島に拡大することを検討するよう提案するものである。
薬物および有害物質の濫用
38.委員会は、マン島が薬物に関する5か年戦略を策定し、かつ中等学校および大学段階で薬物防止プログラムを開発したことに留意する。しかしながら委員会は、同島の若者の間で薬物濫用の発生件数が増加していることを懸念するものである。委員会は、「逮捕者送致制度」の導入に留意するとともに、薬物濫用の被害を受けた子どもの刑事司法制度からのダイバージョンを進めるためのすべての措置を歓迎する。
39.条約第33条に照らし、委員会は、マン島が、麻薬および向精神薬の不法な使用からの子どものいっそうの保護を保障し、かつこれらの物質の不法な製造および取引における子どもの使用を防止するためのプログラムを強化するよう勧告する。マン島はまた、薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どもを対象とするリハビリテーション・プログラムを強化するための努力を継続するようにも奨励されるところである。
少年司法
40.委員会は、少年司法の分野におけるマン島の努力、とくに最近の警察権限手続法(1998年)の制定に留意する。同法は、とくに、法律に触れた17歳未満の子どもを対象とする追加的保護措置を導入するものである。委員会は、同法において、18歳未満のすべての子どものための十分な法的保護が提供されていないことを遺憾に思う。委員会は、マン島議会が現在、とくに同島の裁判所が刑として体罰を科すことを禁ずることを意図した刑事司法法案(2000年)を検討中であることに留意する。委員会は、とくに以下の点に関して、少年司法制度においてとられている立法上および政策上の取り組みの実際の実施に関する情報が不足していることを懸念するものである。
  • (a) 少年事件の審理が開かれるまでの期間を短縮するための試み、法律に触れた子ども(女子を含む)のための施設の適切さ、および、この点に関わって子どもとともに活動している、訓練を受けた職員の利用可能性。
  • (b) 教育、保健、カウンセリング、および更生のためのその他のサービスへの十分なアクセス、ならびに、権利を侵害された子どものための苦情申立て機構の利用可能性。
41.委員会は、締約国が、次回定期報告書において、次のことを確保するためにマン島の少年司法制度においてとられている立法上および政策上の取り組みの実際の実施に関する追加情報を提出するよう勧告する。
  • (a) 少年司法制度が、条約、とくに第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のようなこの分野における他の国連基準の精神に照らして改革されること。
  • (b) 少年司法制度に関与するすべての専門家を対象として、関連の国際基準に関する研修プログラムが導入されること。
  • (c) 自由の剥奪が最後の手段として、かつ可能なかぎり短い期間でのみ考慮され、自由を奪われた子どもの権利(プライバシーに対する権利を含む)が保護され、かつ、少年司法制度の対象とされている間も子どもがその家族との接触を維持すること。
42.委員会は、マン島に対し、同島の裁判所が刑として体罰を科すことを法律によって禁ずる刑事司法法案(2000年)を制定するための努力を強化するよう奨励する。

8.選択議定書の批准

43.委員会は、締約国が、武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の2つの選択議定書を批准し、かつマン島にも適用することを検討するよう勧告する。

9.報告書の普及

44.委員会は、条約第44条6項に照らし、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、委員会が採択した総括所見および関連の議事要録とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、政府および一般公衆(NGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。

  • 更新履歴:ページ作成(2011年8月24日)。
最終更新:2011年08月24日 16:09