総括所見:イギリス(第5回・2016年)


CRC/C/GBR/CO/5(2016年7月12日)/第72会期
原文:英語(平野裕二仮訳)

I.序

1.委員会は、2016年5月23日および24日に開かれた第2114回および第2115回会合(CRC/C/SR.2114 and 2115参照)において大ブリテンおよび北アイルランド連合王国の第5回定期報告書(CRC/C/GBR/5)を検討し、2016年6月3日に開かれた第2132回会合(CRC/C/SR.21324参照)において以下の総括所見を採択した。
2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、締約国の第5回定期報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/GBR/Q/5/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国の多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。
3.とくに断らないかぎり、この所見の各パートに掲げられた勧告は、大ブリテンおよび北アイルランド連合王国の政府、ならびに、関連の権限がそれぞれの管轄下にあるときは、ウェールズ、スコットランドおよび北アイルランドの権限委譲行政地域の政府ならびに海外領土および王室属領の政府に宛てられたものである。

II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

4.委員会は、諸国際文書の批准またはこれへの加入が行なわれたこと(条約の批准の効力がジャージー代官管轄区に適用されるようになったことを含む)、ならびに、子どもの権利に関連するさまざまな分野で締約国より進展が達成され、かつ、前回の審査以降、多くの新報ならびに制度上および政策上の措置が採択されてきたことを歓迎する。

III.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条第6項)

留保
5.委員会は、締約国が、海外領土および王室属領に対する条約の一部条項の適用可能性に関する留保、とくに以下の留保を維持していることを遺憾に思う。
  • (a) ケイマン諸島に対する第22条の適用可能性。
  • (b) すべての属領(ピトケアン諸島を除く)に対する第32条の適用可能性。
  • (c) すべての属領に対する第37条(c)の適用可能性。
6.委員会は、1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、当該海外領土および王室属領の政府が、条約に付したすべての留保の撤回を検討するよう勧告する。
立法
7.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約の原則および規定が国内法に基づいて直接に適用可能とされかつ司法判断適合性を有するものとされることを確保するっため、国および権限委譲行政地域のレベルでならびに海外領土および王室属領において、国内法を速やかに条約に一致させること。
  • (b) 聖金曜日協定〔1998年4月10日のベルファスト合意〕で合意された北アイルランド権利章典の制定を速やかに進めること。
包括的な政策および戦略
8.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 「協働、さらなる達成」(Working Together, Achieving More)と題された全英レベルの戦略(2009年)を改訂して条約のすべての領域を網羅するとともに、その全面的実施を確保すること。
  • (b) イングランドおよび北アイルランドで前掲戦略を実施するための包括的行動計画を採択すること。
  • (c) スコットランドにおいて、「正しい対応を」(Do the Right Thing)と題された行動計画(2009年)および国家人権行動計画(2013~2017年)の全面的実施を確保すること。
  • (d) ウェールズにおいて、子ども・若者プログラム(2015年)の全面的実施を確保すること。
9.委員会は、その際、締約国が、戦略および行動計画の実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分し、明確な時間軸ならびに監視および評価のための枠組みを定め、かつ、もっとも被害を受けやすい集団に属する子どもに特段の注意を払うよう勧告する。
子どもの権利影響評価
10.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもに影響を与える法律および政策(国際開発協力に関するものを含む)を策定する際に子どもの権利影響評価を組織的に実施する制定法上の義務を、国および権限委譲行政地域のレベルで導入すること。
  • (b) 当該評価の結果を公表し、かつ、提案する法律および政策でその結果がどのように考慮されたかを明らかにすること。
調整
11.委員会は、締約国が、締約国全域で条約の実施の効果的調整を確保するべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。委員会は、この目的のため、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 各権限委譲行政地域、海外領土および王室属領において、条約の実施に関わるあらゆる活動を諸部門全体を通じて調整する明確な任務および十分な権限を与えられた適切な制定法上の機関を、高い省庁間レベルに設置すること。
  • (b) 当該調整機関に対し、その効果的活動のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。
  • (c) 国レベルにおける条約の実施の調整および評価を強化すること。
資源配分
12.委員会は、近年の金融政策および資源配分が、子どもが自己の権利を享受する際の不平等を助長し、不利な状況に置かれた子どもに不均衡なほどの影響を与えていることを深刻に懸念する。
13.条約第4条ならびに持続可能な開発目標のターゲット10.2および10.4にしたがい、委員会は、締約国に対し、子どもの貧困の根絶ならびにすべての管轄地域内および管轄地域間の不平等の縮小にとくに焦点を当てながら、子どもの権利の実施のために利用可能な資源を最大限配分するよう促す。委員会は、このような取り組みにおいて、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 子どものための資源がどのように配分されかつ使用されているか、予算全体を通じて追跡するためのシステムを実施することにより、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。
  • (b) 子どもたちとの対話を含む公的対話を通じ、透明なかつ参加型の予算編成を確保すること。
  • (c) 積極的是正のための社会的措置を必要とする可能性のある、不利なまたは権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもに関する予算科目を定めるとともに、当該予算科目がたとえ景気後退の時期にあっても保護されるようにすること。
  • (d) 子どもの権利に直接間接に関連する分野で、予算上および経済上の意思決定手続および結果(緊縮財政措置に関わるものを含む)についての子どもの権利影響評価を恒常的に実施すること。
  • (e) 条約の実施に割り当てられる資源の配分の十分性、効率性および公平性を監視しかつ評価する機構を設置すること。
データ収集
14.委員会は、北アイルランド政府が、条約のあらゆる分野を網羅し、かつ、国際連合人権高等弁務官事務所が刊行した「人権指標:測定・実施ガイド」(Human Rights Indicators: A Guide to Measurement and Implementation)に掲げられた概念上および手法上の枠組みを考慮に入れた、子どもの権利指標枠組みを速やかに完成させるよう勧告する。
独立の監視
15.委員会は、締約国の4つの権限委譲行政地域に設置されている子どもコミッショナーの独立性が高められたこと、および、子どもの権利の促進および保護を確保するために多くの取り組みが行なわれていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、北アイルランドおよびウェールズのコミッショナーの権限がいまなお限定されており、かつ、スコットランドのコミッショナーが、個々の子どものための調査を実施する任務の行使を開始していないことを懸念するものである。
16.子どもの権利条約の実施に関する一般的措置〔訳者注/「子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割」の誤り〕に関する委員会の一般的意見2号(2002年)に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 人権の促進および保護のための国家機関の地位に関する原則(パリ原則)にしたがい、設置されている子どもコミッショナーの独立性をさらに強化するとともに、これらの機関が、とくに子どもからまたは子どもに代わって申し立てられる子どもの権利侵害に関する苦情を受理しかつ調査できるようにすること。
  • (b) すべての法域のコミッショナーに対し、その任務を効果的なかつ調整のとれたやり方で遂行するために必要な人的資源および財源を配分すること。
国際協力
17.国際開発協力との関連で、委員会は、締約国が、援助受領国で営利企業が運営している授業料の安い私立の非公式学校に資金を拠出していることを懸念する。このような学校の数が急激に増えていることは、教育の低水準化、無償のかつ良質な公立学校への投資の減少および援助受領国における不平等の深まりを助長し、授業料の安い学校にさえ手の届かない子どもを置き去りにしてしまう可能性がある。
18.委員会は、締約国が、自国の国際開発協力において、無償の義務的初等教育に対する権利をすべての者に保障することに関する支援が援助受領国に提供されることを確保するよう勧告する。そのための手段として、締約国は、公立学校における無償のかつ良質な初等教育を優先し、営利目的の私立学校に資金を拠出しないようにし、かつ、私立学校の登録および規制を推進するべきである。
子どもの権利と企業セクター
19.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)を参照しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) ビジネスと人権に関する第1次国家行動計画の改訂版に、子どもの権利に関する明示的な視点(企業が子どもの権利に関するデュー・ディリジェンス〔相当の注意〕を履行しなければならない旨の要件を含む)を統合すること。
  • (b) 企業セクターが、公共調達との関連も含めて子どもの権利を遵守することを確保するための規制を定め、かつ実施すること。

B.子どもの定義(条約第1条)

20.委員会は、締約国が、すべての権限委譲行政地域、海外領土および王室属領で最低婚姻年齢を18歳に引き上げるよう勧告する。

C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
21.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 平等法(2010年)の多くの規定で、年齢差別からの保護の対象から子どもが除外されており、かつ、北アイルランドでは、年齢差別に関する法案で16歳未満の子どもが除外されていること。
  • (b) テロ対策のためにとられている措置が、透明性を欠いているために公衆の信頼を得られておらず、かつ、子ども(とくにイスラム教徒の子ども)に対して差別的なまたはスティグマを付与する効果を有していると広く捉えられていること。
  • (c) 特定の集団に属する子ども(ロマ、ジプシーおよびトラベラーの子ども、その他の民族的マイノリティの子ども、障害のある子ども、養護の対象とされている子ども、子どもの移住者、庇護希望者および難民ならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもを含む)の多くが、メディアにおけるものを含む差別および社会的スティグマを引き続き経験していること。
22.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 年齢を理由とする差別からの保護を18歳未満のすべての子どもに提供するため、法律の適用範囲を拡大する可能性を検討すること。
  • (b) テロ対策および過激主義対策のためにとられている措置(「防止戦略」(2011年)を含む)の実施状況を評価し、かつ当該措置の実施がいかなる集団の子どもに対しても差別的なまたはスティグマを付与する効果を持たないことを確保するための監督機構(定期的な第三者審査を含む)を強化すること。
  • (c) 差別およびスティグマ化に対する意識啓発その他の防止活動を強化するとともに、必要であれば、被害を受けやすい状態に置かれた子どもたちのために一時的な特別措置をとること。
23.委員会は、締約国が、メディアを含む社会における、「子ども時代に対する不寛容」ならびに子ども(とくに思春期の子ども)に対して向けられる公衆の否定的態度に対応するために緊急の措置をとるべきである旨の前回の勧告を想起する。
24.委員会は、若干の改善が見られたにもかかわらず、一部の子どもに対する法的差別が海外領土で残っていることを懸念する。
25.委員会は、英国政府が、海外領土の各政府に対し、移住者である子どもを含む「非現地人」(non-belongers)および婚外子に対する法律上の差別を完全に廃止するようさらに奨励することを勧告する。
子どもの最善の利益
26.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が、とくに代替的養護、児童福祉、出入国管理、庇護希望者および難民としての認定、刑事司法の分野ならびに軍隊において、子どもに影響を与えるすべての立法事項および政策事項ならびに司法決定にいまなお反映されていないことを遺憾に思う。さらに、一部の海外領土ではこの権利を保障する法律上の規定が設けられていない。
27.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)を参照しながら、委員会は、締約国が、領域内のあらゆる場所で以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) この権利が、すべての立法上、行政上および司法上の手続および決定、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を与えるすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保すること。
  • (b) 公的権限を有するすべての関係者に対し、あらゆる分野で子どもの最善の利益について判断し、かつそれを第一次的考慮事項として正当に重視することに関する指針を提供するための手続および基準を定めること。
生命、生存および発達に対する権利
28.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 調査研究の結果、締約国における乳児および子どもの死亡(自殺を含む)は社会的および経済的剥奪の水準と関連性を有していることが明らかになっていること。
  • (b) 子どもが関わる不慮の死亡または重傷事故を検証するための機構が、締約国のほとんどの場所で設置されておらずまたは運用されていないこと。
29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 乳児および子どもの死亡の根底にある決定要因(社会的および経済的剥奪および不平等を含む)に対処すること。
  • (b) 子どもが関わる不慮の死亡または重傷事故(締約国の全領域に設けられた拘禁施設、ケアのための施設および精神保健ケア施設で生じたものを含む)について、第三者による公的な検討が自動的に行なわれる制度を導入すること。
子どもの意見の尊重
30.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 子どもに影響を与える問題についての政策立案において子どもたちの意見が組織的に聴かれていないこと。
  • (b) 4つの全法域で行なわれた法律扶助の縮小に関する改革が、自己に影響を与える司法上および行政上の手続で意見を聴かれる子どもの権利に悪影響を及ぼしているように思われること。
  • (c) 北アイルランド、ウェールズ、モントセラト、タークス・カイコス諸島またはジャージー代官管轄区で、若者議会が設置されておらずまたは運用されていないこと。
  • (d) 自己に影響を与える事柄(家事手続におけるものを含む)について、ソーシャルワーカー、審査官、有償養育者、裁判官、法律に抵触した子どもを支援する職員またはその他の専門家によって意見を聴いてもらえないと感じている子どもが多いこと。
31.意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 地方および国のレベルで法律、政策、プログラムおよびサービス(差別、暴力、性的搾取および性的虐待、有害慣行、代替的養護、セクシュアル/リプロダクティブヘルス教育、余暇および遊びに関するものを含む)を立案する際に、子どもが主体的にかつ意味のある形で参加できるようにするための体制を設置し、かつ子どもの意見を正当に重視すること。低年齢の子どもおよび被害を受けやすい状況に置かれた子ども(障害のある子どもを含む)の関与を得ることに対し、特段の注意が払われるべきである。
  • (b) 関連の改革によって司法にアクセスする子どもの権利に悪影響が生じないことを確保する目的で、イングランド、ウェールズおよびスコットランドで行なわれた法律扶助改革の影響を評価し、かつその再検討を速やかに進め、かつ、北アイルランドおよびジャージー代官管轄区で提案されている改革について子どもの権利影響評価を実施するとともに、これらの評価および再検討への実効的な子ども参加を保障すること。
  • (c) 自己に影響を与える問題についての国家的な立法過程に子どもたちが実効的に関与するための常設フォーラムとして、すべての権限委譲行政地域および領土で速やかに若者議会を設置すること。
  • (d) 子どもが、子どもとともに働くすべての専門家によって、形式的にではなく真に意見を聴かれ、かつその意見が正当に重視されることを確保すること。
32.委員会は、子どもに対して16歳から投票権を認めるべきであるという要求が増えており、かつ、スコットランドでは地方選挙およびスコットランド議会選挙について16歳および17歳も投票年齢とされたことに留意する。
33.委員会は、締約国および権限委譲行政地域に対し、投票年齢について子どもたちと協議するよう奨励する。委員会は、投票年齢を引き下げる場合、権利の行使は市民性の一環として自律性および責任をもって行使されるべきものであるという認識を子どもたちが早くから持つことを確保する目的で、投票を支えるものとしての積極的なシティズンシップ教育および人権教育が実施されること、ならびに、このような措置が不当な影響力を持たないことを、締約国が確保するよう勧告するものである。

D.市民的権利および自由(第7条、第8条および第13~17条)

出生登録および国籍
34.委員会は、移住者である子ども(とくに当該領土で出生した子ども)が出生証明書を取得する権利を保障する目的で、締約国が、海外領土に対し、地方立法および英国国籍法の改正を奨励するよう勧告する。
思想、良心および宗教の自由
35.委員会は、公的資金を得ているイングランドおよびウェールズの学校において、「完全にまたは主として広くキリスト教的性質を有する」毎日の宗教的礼拝への参加を生徒が法律で要求されており、かつ、子どもは第6学年に達するまで親の許可なくそのような礼拝に出席しない権利を有していないことを懸念する。北アイルランドおよびスコットランドでは、子どもは、親の許可なく集団的礼拝に出席しない権利を認められていない。
36.委員会は、締約国が、公的資金を得ている学校における集団的礼拝への義務的出席に関する法律上の規定を削除するとともに、子どもが、学校で行なわれる宗教的礼拝に出席しない権利を独立して行使できることを確保するよう、勧告する。
結社および平和的集会の自由
37.移動および平和的集会の自由に対する子どもの権利を全面的に保障する目的で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 若者の集まりを解散させるために用いられる音声機器(いわゆる「モスキート音発生装置」)の、公的空間における使用を禁止すること。
  • (b) 反社会的行動への対応および群衆の解散を目的として子ども(10~11歳の子どもを含む)に対して使用されている措置についてのデータを収集するとともに、これらの措置の使用の基準および比例性を監視すること。
プライバシーに対する権利
38.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもに対する、法律に基づかない職務質問および所持品検査を禁止すること。
  • (b) 法律に基づく職務質問および所持品検査が、比例性を満たし(その際、子どもの年齢および成熟度を考慮するものとする)、かつ差別的でないやり方で行なわれることを確保すること。
  • (c) 子どもに対して行なわれる職務質問および所持品検査についての、年齢、性別、障害、地理的所在、民族的出身および社会経済的背景別に細分化されたデータを恒常的に収集し、分析しかつ公表すること。

E.子どもに対する暴力(第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条)

拷問および他の残虐なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰
39.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 4つの権限委譲行政地域において、警察が子どもに対してテーザー銃(北アイルランドの場合には減エネルギー弾)を使用していること。
  • (b) イングランドおよびウェールズで拘禁下にある子どもに対する抑制措置その他の制限的介入措置の使用が増えていること、および、締約国のその場の地域における抑制措置の使用に関するデータが存在しないこと。
  • (c) イングランド、ウェールズおよびスコットランドで、青年犯罪者施設の秩序および規律を維持する目的で身体的抑制措置が用いられており、かつ施設環境に置かれた子どもに対して苦痛を与える手法が用いられていること、ならびに、北アイルランドで、施設環境における抑制措置の使用の包括的見直しが行なわれていないこと。
  • (d) 学校で、心理社会的障害のある子ども(自閉症の子どもを含む)に対して抑制措置および隔離措置が用いられていること。
40.あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利についての委員会の一般的意見13号(2011年)および持続可能な開発目標のターゲット16.2を参照しながら、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) テーザー銃のような放電性の武器、減エネルギー弾(北アイルランド)および他のいかなる有害な装置についても子どもへの使用を禁止するとともに、当該禁止の実施を監視する目的で、これらの装置の使用に関する年齢別のデータを組織的に収集しかつ公表すること。
  • (b) 入所施設か通所施設かを問わず、あらゆる施設環境において、規律の維持を目的として子どもに対して用いられるすべての抑制手段を廃止し、かつ、子どもに苦痛を与えることを目的とするいかなる手法の使用も禁止すること。
  • (c) 子どもに対する抑制措置が、もっぱら自傷他害を防止する目的で、かつ最後の手段としてのみ用いられることを確保すること。
  • (d) あらゆる施設環境(教育施設、拘禁施設、精神保健施設、福祉施設および出入国管理施設を含む)における子どもの規律の維持および行動管理が適切であるかどうかを監視する目的で、子どもに対する抑制措置その他の制限的介入措置の使用に関する細分化されたデータを組織的かつ恒常的に収集しかつ公表すること。
体罰
41.体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利についての一般的意見8号(2006年)および前回の勧告を参照しながら、委員会は、締約国に対し、すべての権限委譲行政地域、海外領土および王室属領において以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 「合理的懲罰」などのあらゆる法的抗弁を廃止すること等を通じ、優先的課題として、家庭におけるあらゆる体罰を禁止すること。
  • (b) あらゆる学校および教育施設ならびにその他のあらゆる施設およびあらゆる形態の代替的養護における体罰が明示的に禁じられることを確保すること。
  • (c) 子育てにおける体罰の使用が一般的に受け入れられている状況を解消する目的で、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律の維持、ならびに、人間の尊厳および身体的不可侵性に対する子どもの平等な権利の尊重を促進するための努力を強化すること。
暴力、虐待およびネグレクト
42.委員会は、イングランドおよびウェールズの重大犯罪法(2015年)で導入されたもののような、親密な関係および家族関係における強制的および支配的行動を捕捉するための新たな家族間虐待罪の導入を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 女性および女子に対するドメスティックバイオレンスおよびジェンダーを理由とする暴力が広く蔓延しており、かつ、このような形態の暴力が、被害者としてであるか目撃者としてであるかにかかわらず、子どもに悪影響を与えていること。
  • (b) 子ども青年法(1933年)において、子どもが、児童虐待およびネグレクトに関する刑法の適用上は16歳未満の者として定義されていること。
  • (c) 子どもに対する暴力への対応および家事手続において子どもの意見が正当に尊重されていないこと。
43.一般的意見13号および持続可能な開発目標のターゲット16.2を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 18歳未満のすべての子どもを児童虐待およびネグレクトから保護する目的で、子ども青年法(1933年)を改正すること。
  • (b) あらゆる場面における子どもに対する暴力(ドメスティックバイオレンス、ジェンダーを理由とする暴力、虐待およびネグレクトを含む)についての組織的なデータ収集および情報の記録、ならびに、関連部門間での情報および付託事案の共有を強化すること。
  • (c) ソーシャルワーカーを増員し、かつ、子どもに対する暴力に対応するソーシャルワーカーの能力を強化すること。
  • (d) 暴力への対応(刑事手続および家事手続におけるものを含む)で当事者の子どもの意見を正当に重視すること。
  • (e) 女性に対する暴力およびドメスティック・バイオレンスの防止およびこれとの闘いに関する条約の批准を検討すること。
性的搾取および性的虐待
44.委員会は、子どもの性的搾取および性的虐待に対応するためにとられた措置(「WePROTECT」をモデルとする国家的対応を含む)、ならびに、部門横断型の行動計画ならびに関連の指針およびツール(ウェールズ)ならびにこの現象に関する第三者調査(北アイルランド)への子どもおよび市民社会による力強い参加を歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 近年、子どもの性的搾取および性的虐待のうち有名人によるもの、組織暴力集団によるものおよび施設環境におけるものが広く行なわれているという訴えがあること。
  • (b) オンラインにおける子どもの性的搾取および性的虐待のリスクが高まっていること。
  • (c) このような搾取および虐待を防止し、発見しかつこれに対応する取り組みにおいて、子どもの意見が十分に尊重されていないこと。
  • (d) 子どもの性的搾取および性的虐待の訴追率が低いこと。
45.委員会は、締約国(権限委譲行政地域、海外領土および王室属領を含む)が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 義務的通報等も通じ、あらゆる場面における子どもの搾取および虐待についての包括的なかつ細分化されたデータを組織的に収集しかつ公表すること。
  • (b) 国および権限委譲行政地域のレベル、海外領土ならびに王室属領において、効果的な防止、早期の発見および介入を確保するための、子どもの搾取および虐待(オンラインにおけるものを含む)に関する包括的なかつ部門横断型の戦略を策定しかつ実施すること。
  • (c) 北アイルランドでの子どもの性的搾取に関するマーシャル調査勧告を実施すること。
  • (d) 性的搾取および性的虐待の被害を受けた子どもまたはそのおそれがある子どもを支援するための包括的サービスをさらに発展させること。
  • (e) 子どもの性的搾取および性的虐待を摘発しかつ訴追する法執行機関および司法機関の能力を強化し、かつ、被害を受けた子どもに実効的な救済措置を提供すること。
  • (f) 性的搾取および性的虐待からの子どもの保護に関する欧州評議会条約の批准を検討すること。
有害慣行
46.委員会は、イングランドおよびウェールズで重大犯罪法(2015年)が制定されたことにより、裁判所が、女性性器切除の被害を受ける可能性のある子どもまたは実際に被害を受けた子どもを保護するための保護命令を発布できるようになったことを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) 女性性器切除を含む有害慣行の影響を受けている子どもの人数、および、締約国の一部地域で行なわれている16~17歳の女子と男子の強制婚が相当数にのぼること。
  • (b) インターセックスの子どもに対し、十分な情報に基づく同意を与えられるようになる前に医学的に不必要な手術その他の治療(これは不可逆的な影響をともなうことが多く、かつ深刻な身体的および心理的苦痛を引き起こしうるものである)が行なわれる事案があり、かつ、このような事案において救済および補償が行なわれていないこと。
47.有害慣行に関する一般的意見18号(2014年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 16~17歳の子どもの婚姻が、例外的事情がある場合にのみ、かつ、当事者である子どもの全面的な、自由な、かつ十分な情報に基づく同意を基礎として行なわれることを確保するために効果的措置をとること。
  • (b) 有害慣行の問題に対応するための防止措置および保護措置を継続しかつ強化すること。これには、データの収集、関連の専門家の研修、意識啓発プログラム、被害を受けた子どもに対する保護およびケアの提供、ならびに、そのような行為を実行したとして有罪と認められる者の訴追が含まれる。
  • (c) 何人も乳児期または児童期に不必要な手術または治療の対象とされないことを確保し、当事者である子どもに身体的不可侵性、自律および自己決定を保障し、かつ、インターセックスの子どもがいる家族に対して十分なカウンセリングおよび支援を提供すること。
  • (d) そのような治療の被害者に対して救済措置を提供すること。
  • (e) さまざまな性的多様性ならびに関連の生物学的および身体的多様性について、またインターセックスの子どもに対する不必要な介入がもたらす影響について、医療専門家および心理専門家を教育すること。
あらゆる形態の暴力からの子どもの自由
48.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) とくにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子ども、障害のある子どもならびにマイノリティ集団に属する子ども(ロマ、ジプシーおよびトラベラーの子どもを含む)に対する、ネットいじめを含むいじめが依然として深刻かつ広範な問題となっていること。
  • (b) 北アイルランドにおいて、子どもが、準軍事的な攻撃に関与する非国家的主体によって行なわれる暴力(銃撃を含む)およびそのような非国家的主体による勧誘に直面していること。
49.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 人権について教育すること、学校における多様性の尊重に関する生徒および職員の能力構築を図ること、生徒の紛争解決スキルを向上させること、学校におけるいじめの発生状況を恒常的に監視すること、ならびに、いじめの解消を目的とする取り組みおよび監視に子どもの関与を得ること等の手段により、学校におけるいじめおよび暴力に対処するための努力を強化すること。
  • (b) デジタルメディアと子どもの権利に関する一般的討議を踏まえてまとめられた勧告に照らし、子どもたち、教員および家族を対象として情報通信技術の安全な利用に関する研修を実施し、ネット上のいじめが同世代の仲間に及ぼしうる深刻な影響に関する意識を子どもたちの間で高め、かつ、ネットいじめと闘う努力にソーシャルメディア業者のいっそうの関与を得ること。
  • (c) 移行期の司法および刑事司法関連の措置等も通じ、準軍事的な攻撃に関与する非国家的主体によって行なわれる暴力およびそのような非国家的主体による暴力的活動への勧誘から子どもを保護するための即時的かつ効果的な措置をとること。

F.家庭環境および代替的養護(第5条、第9~11条、第18条第1~2項、第20条、第21条、第25条および第27条第4項)

家庭環境
50.委員会は、必要とする層への保育の提供に関して締約国および権限委譲行政地域で優れた実践が行なわれていることを認知する。しかしながら委員会は、保育費用が高いことが子どもおよびその家庭環境に与える悪影響について懸念を覚えるものである。
51.委員会は、締約国および権限委譲行政地域政府が、保育および家族支援に対する資金拠出が最近減らされたことについて厳格な子どもの権利影響評価を実施し、かつ、必要とするすべての者が保育サービスを利用できるようにする目的で家族支援政策を修正するよう、勧告する。
家庭環境を奪われた子ども
52.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) イングランド、ウェールズおよび北アイルランドで養護の対象とされる子どもの人数が増えており、かつスコットランドで養護の対象とされる子どもの割合が高いこと。
  • (b) 早期介入措置が適切な時期にとられなかった事案、親に対して十分な家族支援が提供されなかった事案、および、子どもを養護の対象とする決定において子どもの最善の利益が適正に評価されなかった事案があること。家族の経済的状況を理由として、または里親家族の方が子どもにとってより有益な環境を提供できる可能性があるという理由で、子どもが生物学的家族から分離されているという報告もある。
  • (c) 養護の対象とされている子どものソーシャルワーカーが頻繁に交代しており、かつ子どもがしばしば年に2つ以上の家族への措置を経験していて、子どもの生活のあらゆる側面に悪影響が生じていること。
  • (d) 子どもが生物学的家族から離れた場所に措置され、家族の接触を維持できない状態に置かれていること、および、きょうだいが適切な理由もなく相互に分離されていること。
  • (e) 北アイルランドにおいて子どもが閉鎖型施設に措置されていること。
  • (f) 里親養育または施設養護を離脱する子どもが、将来計画に関するものを含む適切な支援およびカウンセリングを受けておらず、しばしば元養育者から遠く離れた場所で生活しなければならなくなっていること。
  • (g) 北アイルランドにおける養子縁組手続が依然として時代遅れのままであり、かつ条約に一致していないこと。
53.子どもの代替的養護に関する指針(総会決議64/142付属文書)に対して締約国の注意を喚起しつつ、委員会は、貧困を直接かつ唯一の原因とする環境が、子どもを親による養育から分離することの唯一の正当化事由とされることがあってはならないことを強調する。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 親および法定保護者(インフォーマルな親族養育者を含む)が子どもの養育責任を果たすにあたって適当な援助を与えるための努力を強化すること。
  • (b) 家族からの子どもの分離が、常に徹底的な調査の対象とされ、子どもの最善の利益にしたがって、かつ最後の手段としてのみ行なわれることを確保すること。
  • (c) 可能な場合には常に、子どもに対し、生物学的な親およびきょうだいとの接触を容易にするような措置先を見つけること。
  • (d) 北アイルランドにおける閉鎖型施設が最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間でのみ用いられることを確保するとともに、そのような施設に繰り返しまたは長期間滞在することになる理由に対処し、かつ閉鎖型施設に代わる選択肢を発展させること。
  • (e) ソーシャルワーカーの交代を控え、かつ不必要な措置変更が行なわれないようにするための努力を含め、養護の対象とされている子どもが安定した生活を送れるようにするためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (f) 養護および移行のための計画について早い段階から子どもへの情報提供および子どもとの相談を行なうとともに、養護を離脱する者に対し、居住、就労または継続教育に関するものを含む十分な支援を提供すること。
  • (g) 北アイルランドにおける養子縁組および子ども法案の承認および制定を速やかに進めること。
親が収監されている子ども
54.委員会は、裁判所と子ども保護機関との間の協力が不十分であるために、親が収監刑を言い渡されてそのまま収監され、子どもが適切なケアを受けられないまま取り残される場合があることを懸念する。
55.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもが見守る者のいない状況に置かれることを回避する目的で、子どものいる者が収監されるときは常に子ども保護機関への通告が行なわれることを確保すること。
  • (b) 親である者に刑を言い渡す際には子どもの最善の利益を第一次的に考慮し、親が子どもから分離されることにつながる刑を可能なかぎり回避すること。

G.障害、基礎保健および福祉(第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1~3項および第33条)

障害のある子ども
56.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 障害のある多くの子どもが、人生における個人的決定(支援および将来の選択を含む)において自分の意見が正当に重視されていないと考えていること。
  • (b) 障害のある多くの子どもがいまなお特別学校または普通学校内の特別班に措置されていること、ならびに、多くの校舎および学校施設が障害のある子どもにとって全面的にアクセシブルなものになっていないこと。
  • (c) 成人期への移行のための支援の提供が十分さ、適時性または十分な調整のいずれの要件も満たしておらず、かつ、その際、障害のある子どもによる十分な情報に基づく決定が確保されていないこと。
57.障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)を参照しながら、委員会は、締約国が、障害に対する人権基盤型アプローチを採用し、障害のある子どものインクルージョンに関する包括的戦略を確立し、かつ以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 自己に影響を与えるすべての意思決定(人的支援および教育へのアクセスならびにその選択に関するものを含む)において自己の意見を表明し、かつその意見を正当に重視される障害のある子どもの権利が全面的に尊重されることを確保すること。
  • (b) インクルーシブ教育をさらに発展させ、特別施設および特別学級への子どもの措置よりもインクルーシブ教育が優先されることを確保し、かつ、普通学校を障害のある子どもにとって全面的にアクセシブルなものとするための包括的措置を確立すること。
  • (c) 関連諸部門全体を通じて立法、政策およびプログラムの調整を図ることにより、障害のある子どもに対し、成人期への移行のための包括的かつ統合的なサービスパッケージを十分に早い段階から提供するとともに、サービスの設計に関して障害のある子どもの関与を得ることならびに利用可能な選択肢についての助言および情報を提供することにより、移行における個人的選択に関する、障害のある子どもによる十分な情報に基づく決定を確保すること。
健康および保健サービス
58.委員会は、保健サービスへのアクセスおよび保健関連のアウトカム(結果)に関して不平等が存在し、ロマ、ジプシーおよびトラベラーの子ども、その他の民族的マイノリティに属する子ども、移住者である子ども、貧困下および貧困地域で暮らしている子ども、養護および身柄拘束の対象とされている子ども、HIV/AIDSとともに生きている子どもならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもに悪影響が生じていることを懸念する。
59.到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)を参照しながら、委員会は、締約国、権限委譲行政地域の政府、海外領土ならびに王室属領が、以下の要素を備えた、子どもの健康に関連する包括的なかつ部門横断型の戦略を策定するよう勧告する。
  • (a) 利用可能な資源が最大限に配分され、かつ、しっかりした監視機構が設けられること。
  • (b) 保健関連のアウトカムおよび保健サービスへのアクセスに関する不平等に強い焦点が当てられること。
  • (c) 健康に関わる根本的な社会的決定要因への対処が行なわれること。
精神保健
60.委員会は、精神保健サービスの向上のために国および権限委譲行政地域の双方のレベルで行なわれている重要な努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) アルコール、薬物および有害物質の濫用に関連するものを含め、精神保健上のニーズを有する子どもの人数が締約国全域で増加していること。
  • (b) 過去10年間、北アイルランドで子どもの自殺件数が着実に増加してきたこと。
  • (c) 精神保健上の病態を有する子どもが、しばしば自宅から遠く離れた場所で治療を受けており(イングランドおよびスコットランド)、子どもに特化した十分な配慮および支援を受けておらず、成人用施設に措置されており、または精神保健診療所の空きが不足しているという理由で警察の留置施設に収容される場合さえあること。
  • (d) イングランド、ウェールズおよびスコットランドで新たに目標として定められたまたは計画された待期期間の短縮が、インフラ(専門家および診療所/センターの数)が整備されていないために実際には実現できない可能性があること。
  • (e) 精神保健サービスの向上に対する相当量の投資が、必ずしもサービスの質の向上にはつながらないこと。
  • (f) コミュニティを基盤とする治療的サービスが十分に発展していないこと。
  • (g) 16歳未満の子どもが、同意のない医学的治療との関連も含めて、イングランドおよびウェールズの意思能力決定法(2005年)ならびに北アイルランドの意思能力決定法(2016年)に基づく保護から除外されていること。
61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 被害を受けやすい状況に置かれた子どもに正当な注意を払い、かつ主要な根本的決定要因を網羅しながら、子どものライフコース全体を通じて細分化された、子どもの精神保健に関する包括的データを恒常的に収集すること。
  • (b) 子どもおよび青少年のための精神保健サービスへの力強い投資を進めるとともに、明確な時間枠、達成目標、測定可能な指標、効果的な監視機構ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源をともなった戦略を、国および権限委譲行政地域のレベルで策定すること。このような戦略には、よりリスクの高い状況に置かれている子ども(貧困下で暮らしている子ども、養護の対象とされている子どもおよび刑事司法制度に関わりを持たされている子どもを含む)に特段の注意を払いながら、これらのサービスの利用可能性、アクセス可能性、受け入れ可能性、質および安定性を確保するための措置を含めることが求められる。
  • (c) 精神保健上のニーズを有する子どもを成人精神病棟または警察署に措置することを速やかに禁止するとともに、年齢にふさわしい精神保健上のサービスおよび便益が提供されることを確保すること。
  • (d) 精神保健上の病態を有する子どものための、コミュニティを基盤とする治療的サービスを支援しかつ発展させること。
  • (e) とくに入院および同意のない治療との関連で、16歳以上の子どもの精神保健に関わる治療事案において子どもの最善の利益および意見が正当に考慮されることを確保するため、精神保健に関する現行法を見直すこと。
62.委員会は、国立保健研究所およびケア・エクセレンスによって、注意欠陥・多動性障害および関連の障害の診断および管理に関する新たな指針が刊行されたことを歓迎する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) メチルフェニデートその他の向精神薬を与えられている子どもの実数が利用可能とされていないこと。
  • (b) 行動上の問題を有する子ども(6歳未満の子どもを含む)への精神刺激薬および向精神薬の処方件数が、これらの薬の有害な作用に関する証拠が増えているにもかかわらず、相当に増加しているという報告があること。
63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもに対して処方される向精神薬(リタリン、コンサータ等)の量および頻度に関するデータを恒常的に収集し、かつ当該データを透明なものとすること。
  • (b) 薬の処方が最後の手段として、かつ子どもの最善の利益の個別評価を行なったうえで初めて実行されるようにすること、ならびに、子どもおよびその親に対し、そのような医学的治療の副作用の可能性および医学的治療に代わる選択肢について適切に情報提供が行なわれることを確保すること。
  • (c) 注意欠陥・多動性障害の診断またはこれに関連する診断について独立の専門家がモニタリングを行なうシステムを確立するとともに、診断の正確性を向上させることも目的として、このような診断の増加の根本的原因に関する研究を実施すること。
思春期の健康
64.委員会は、審査対象期間中、締約国における10代の妊娠が着実に減少してきたことに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 10代の妊娠率がいまなお欧州連合の平均よりも高く、かつ貧困度の高い地域ではさらに高くなっていること。
  • (b) 人間関係およびセクシュアリティに関する教育がすべての学校で必修とされているわけではなく、その内容および質が学校によって異なっており、かつ、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どもが自己のセクシュアリティに関する正確な情報にアクセスできていないこと。
  • (c) 北アイルランドにおいて、中絶があらゆる場合に違法とされており(ただし、妊娠の継続が母の生命を脅かす場合を除く)、かつ制裁として終身刑が科されること。
65.子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達についての一般的意見4号(2003年)および一般的意見15号(2013年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 不平等の縮小に特段の注意を払い、かつ思春期の子どもたちの参加を得ながら、思春期の子どもを対象とする包括的なセクシュアル/リプロダクティブヘルス政策を策定しかつ採択すること。
  • (b) 意味のあるセクシュアル/リプロダクティブヘルス教育が、締約国のすべての地域のすべての学校(アカデミー、特別学校および青年拘禁施設を含む)で必修学校カリキュラムの一部とされることを確保すること。このような教育においては、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する秘密の守られる保健ケアサービス、避妊手段、性的虐待または性的搾取(性的いじめを含む)の防止、そのような虐待および搾取を受けた場合に利用できる支援、ならびに、セクシュアリティ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスの子どものセクシュアリティを含む)についての、年齢にふさわしい情報が提供されるべきである。
  • (c) 北アイルランドにおいてあらゆる場合の中絶を非犯罪化するとともに、女子が安全な中絶および中絶後のケアサービスにアクセスできることを確保する目的で法律の見直しを行なうこと。中絶に関する決定においては、子どもの意見が常に聴かれ、かつ尊重されるべきである。
栄養
66.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 締約国の多くの地域で子どもの過体重および肥満が広く蔓延していること。
  • (b) 子どもの食料安全保障に関する包括的データが存在しない一方で、一部の調査研究は、無償の学校給食プログラムなどの現在利用可能なプログラムでは子どもの飢えに対する効果的対応になっていない可能性があることを示していること。
  • (c) 母乳育児率が著しく低いこと、完全母乳育児を6か月間続けている女性はわずか1%であること(2010年)、および、母乳代替品の販売促進の規制が不十分であること。
67.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの不十分な食料安全保障および栄養不良の根本的原因を特定するため、子どもの食料安全保障および栄養に関するデータ(母乳育児に関連するものを含む)を組織的に収集すること。
  • (b) 子どもの食料安全保障および栄養に関する政策およびプログラム(学校給食プログラムを含む)ならびに乳幼児を対象とするプログラムの有効性を恒常的にモニターしかつ評価すること。
  • (c) 母乳育児が子どもの健康に影響を及ぼすすべての政策分野(肥満、一部の非感染性疾患および精神保健を含む)で母乳育児を促進し、保護しかつ支援するとともに、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を全面的に実施すること。
環境保健
68.委員会は、大気汚染が高い水準で生じていることを懸念する。これは、締約国における子どもの健康に直接影響するとともに、締約国および他の国々の双方でさまざまな子どもの権利に影響を及ぼす気候変動の悪影響を助長するものである。
69.持続可能な開発目標のターゲット1.5を参照しながら、委員会は、締約国(権限を委譲された事柄との関連では権限委譲行政地域を含む)が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) とくに学校近辺および住宅地で大気汚染の水準を引き下げるための計画の規模を拡大し、かつその実施を速やかに進めることを目的として、適切な技術的資源、人的資源および財源をともなった明確な法的コミットメントを確立すること。
  • (b) 新たな気候変動戦略等を通じて、かつ国際的な気候変動プログラムおよび財政支援の枠組みのなかで、国内的および国際的な気候変動適応・緩和戦略の中心に子どもの権利を位置づけること。
生活水準
70.委員会は、以下のことを深刻に懸念する。
  • (a) 子どもの貧困率が依然として高く、障害のある子ども、障害のある人のいる家族または世帯で暮らしている子ども、多子世帯および民族的マイノリティ集団に属する子どもが不均衡なほどの影響を受けており、かつ、ウェールズおよび北アイルランドの子どもがもっとも影響を受けていること。
  • (b) 福祉改革・就労法(2016年)により子どもの貧困法(2010年)が改正され、2020年までに子どもの貧困を根絶するという制定法上の目標、および、英国政府ならびにイングランド、スコットランドおよびウェールズ各政府が負っていた子どもの貧困戦略策定義務が廃止されたこと。
  • (c) 最近行なわれた税額控除法(2002年)、福祉改革法(2012年)および福祉改革・就労法(2012年)の改正により、世帯のニーズにかかわらず、子ども税額控除および社会給付(「世帯給付上限」および「寝室税」)の受給資格が制限されたこと。
  • (d) 審査対象期間中に、子どもの被扶養者がいるホームレス世帯の数がイングランドおよび北アイルランドで増えており、かつ、4つの法域のすべてで、一時宿泊施設に滞在するホームレスの家族(乳児がいる家族を含む)の数も増えていること。
  • (e) スコットランドにおいて、ロマ、ジプシーおよびトラベラーの子どものための、十分なかつ文化的配慮のある宿泊施設が依然として不十分であること。
71.委員会は、持続可能な開発目標のターゲット1.2(貧困削減)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 定められた時間枠および測定可能な指標をともなう具体的達成目標をあらためて設定する等の手段により、子どもの貧困根絶についての説明責任を確保するための明確な機構を設置するとともに、締約国全域における子どもの貧困削減の恒常的な監視および報告を継続すること。
  • (b) 貧困削減に関する締約国の戦略および行動計画(新たに策定された「ライフチャンス戦略」を含む)において子どもに明確に焦点が当てられることを確保するとともに、権限委譲行政地域における子どもの貧困削減戦略の作成および実施を支援すること。
  • (c) 2010年から2016年にかけて導入された、社会保障および税額控除に関するさまざまな改革が子ども(障害のある子どもおよび民族的マイノリティ集団に属する子どもを含む)に与える累積的影響について、包括的評価を実施すること。
  • (d) 必要なときは、これらの改革が異なる集団の子ども(とくに被害を受けやすい状況に置かれた子ども)に及ぼす異なる影響を考慮に入れながら、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利を全面的に尊重する目的で、当該改革を修正すること。
  • (e) イングランド、ウェールズおよびスコットランドにおいて、公的機関が子どもを一時宿泊施設に長期間措置することを禁ずる法的規定を厳格に実施するとともに、北アイルランドでも同様の法律を制定すること。
  • (f) ホームレスの削減のために必要な措置をとるとともに、物理的安全、十分な空間、健康への脅威および構造的危険(寒さ、湿気、熱および汚染を含む)からの保護ならびに障害のある子どもにとってのアクセシビリティを備えた十分な住居へのアクセスを、すべての子どもに対して漸進的に保障すること。
  • (g) スコットランドにおいて、トラベラーに対して安全かつ十分なサイトを提供する、制定法に基づく地方当局の義務を導入するとともに、計画および意思決定のプロセスにおいて、子どもたちを含むロマ、ジプシーおよびトラベラーのコミュニティの意味のある参加を確保すること。

H.教育、余暇および文化的活動(第28条、第29条、第30条および31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
72.委員会は、教育達成度における不平等のギャップが徐々に縮小しつつあること、および、退学措置の使用が減少していることを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) とくに男子、貧困下で暮らしている子ども、ロマ、ジプシーおよびトラベラーの子ども、障害のある子ども、養護の対象とされている子どもならびにニューカマーの子どもについて、教育達成度の面で相当の不平等が根強く残っていること。
  • (b) 退学または停学の措置の対象とされた子どものうち、男子、ロマ、ジプシーおよびトラベラーの子ども、カリブ海諸国系の子ども、貧困下で暮らしている子どもならびに障害のある子どもの人数が不均衡なほど多く、かつ、スコットランドを除き、退学または停学に対する不服申立ての権利を認められているのは障害のある子どもだけであること。
  • (c) 障害のある子ども、とくに心理社会的障害またはその他の「特別な教育上のニーズ」を有する子どもが、行動の統制のため、しばしば「非公式な」停退学または「学校外授業」の対象とされていること。
  • (d) 子どもの規律のために隔離室が用いられていること。
  • (e) 北アイルランドで、宗教による学校分離が根強く残っていること。
  • (f) 貧困下で暮らしている多くの子ども(とくに男子)が就学前の段階で期待される言語的発達水準に達しておらず、その初等教育に悪影響が生じ、かつ人生を通じた発達が妨げられていること。
73.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの社会的背景または障害が学校の成績に及ぼす影響を少なくし、かつ締約国のすべての地域で真にインクルーシブな教育に対するすべての子ども(正規の教育を受けた経験がないニューカマーの子どもを含む)の権利を保障するための努力を増進させること。これとの関連で、イングランドにおけるアカデミーおよびフリースクールの設置および運営を緊密に監視し、かつ必要であれば規制するとともに、北アイルランドにおける初等学校後教育について規制のない入学試験が行なわれている慣行を廃止すること。
  • (b) 懲戒措置としての退学または停学は最後の手段としてのみ用いるものとし、「非公式な」停退学の慣行を禁止しおよび廃止し、ならびに、学校においてソーシャルワーカーおよび教育心理学者と緊密に協力することならびに仲裁および修復的司法を活用することにより、停退学の件数をさらに減少させること。
  • (c) 子どもに対し、停退学に対する不服申立ての権利が認められ、かつ、資産を有さない者を対象とする法的な助言、援助および適切なときは代理人が提供されることを確保すること。
  • (d) 隔離室の利用を廃止すること。
  • (e) 北アイルランドにおいて、全面的統合教育制度を積極的に促進するとともに、混成教育が社会的統合の促進につながることを確保する目的で、その提供状況を、子どもたちの参加を得ながら緊密に監視すること。
  • (f) 持続可能な開発目標のターゲット4.2(良質な乳幼児期発達サービスへのアクセス)に留意しながら、乳幼児期の発達に関する包括的かつホリスティックな政策に基づいて乳幼児期のケアおよび教育を発展させかつ拡大していくことに対し、十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。その際、もっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもに特段の注意を払うこと。
  • (g) 子どもの権利教育を必修とすること。
休息、余暇、レクリエーションならびに文化的および芸術的活動
74.委員会は、遊びに関する政策を採択し、かつ、関連の法律および他の関連の政策に子どもの遊ぶ権利を体系的に統合しようとしてウェールズ政府が進めている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) イングランドで遊び・余暇政策が撤回され、かつ、北アイルランド、スコットランドおよびウェールズで遊び・余暇政策のための資金が十分に拠出されていないこと。
  • (b) 子どもの遊びおよび余暇のための場所および設備(とくに、障害のある子どもならびに周縁化された状況および不利な状況に置かれた子どもを対象とするアクセシブルな場所および設備)ならびに思春期の子どもが交流する公共空間が不十分であること。
75.休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利についての一般的意見17号(2013年)を参照しながら、委員会は、締約国(権限委譲行政地域の政府を含む)が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 十分かつ持続可能な資源をともなう遊び・余暇政策を採択しかつ実施すること等により、余暇および休息に対する子どもの権利ならびに子どもの年齢にふさわしい遊びおよびレクリエーション活動に従事する権利を保障するための努力を強化すること。
  • (b) 子ども(障害のある子どもならびに周縁化された状況および不利な状況に置かれた子どもを含む)に対し、遊びおよび交流のための安全、アクセシブルでインクルーシブなかつ禁煙の空間、ならびに、そのような空間にアクセスするための公的移動手段を提供すること。
  • (c) コミュニティ、地方および国のレベルにおける遊び政策ならびに遊びおよび余暇に関連する活動の計画、立案およびその実施状況の監視に、子どもたちの全面的関与を得ること。

I.特別な保護措置(第22条、第30条、第32条、第33条、第35条、第36条、第37条(b)~(d)および第38~40条)

子どもの庇護希望者、難民および移住者
76.委員会は、締約国が2010年に行なった、出入国管理目的での子どもの収容をやめる旨の決定を歓迎する。にもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 子どもの庇護希望者(年齢について争いがある者を含む)についての信頼できるデータが依然として利用可能とされていないこと。
  • (b) 保護者のいないすべての子どもが、出入国管理手続および庇護手続の過程で独立後見人または法的助言にアクセスできているわけではないこと。
  • (c) 「年齢鑑別」(Assesing Age)に関する内務省の庇護訓令に基づき、子どもが身体的外見に基づいて成人と鑑別される可能性があること。
  • (d) 子どもが庇護手続の過程で収容される場合(締約国への入国直後の短期収容施設における収容を含む)があり、かつ、年齢について争いがある子どもの庇護希望者が成人用施設に収容される場合があること。
  • (e) 締約国の内外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの難民が家族再統合の制限に直面していること。
  • (f) 子どもの庇護希望者、難民および移住者ならびにその家族が、教育および保健ケアのような基礎的サービスへのアクセスについて困難に直面しており、かつ窮乏状態に陥る危険性が高い状況に置かれていること。
  • (g) 出入国管理法(2016年)において、養護の対象とされている保護者のいない子どもであってその出入国管理法上の地位が非正規または未解決である子どもに認められていた、養護を離脱する際の支援の受給資格が廃止され、かつ、「退去強制先行・不服申立てはその後」体制が採用されて、移住者は滞在の不許可に対する不服申立てをイギリス国外からしか行なえなくなったこと(当該退去強制によって子どもの移住者の家族の統合が阻害されるおそれのある場合を含む)。
  • (h) 子どもが、十分な保障措置のないまま出身国または常居所地国に送還されていること。
77.出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての一般的意見6号(2005年)を参照しながら、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 庇護を希望している子ども(年齢について争いがある子どもを含む)の人数に関する細分化されたデータを組織的に収集しかつ公表すること。
  • (b) 締約国全域で、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子ども全員を対象とする、制定法上の独立後見人を設置すること。
  • (c) 年齢鑑別は、重大な疑いがある事案に限って、学際的かつ透明な手続を通じ、あらゆる側面(鑑別対象者の心理的および環境的側面を含む)を考慮に入れながら実施すること。
  • (d) 子どもの庇護希望者および移住者の収容をとりやめること。
  • (e) 欧州連合ダブリンIII規則の実施等を通じ、締約国の内外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの難民の家族再会を促進する目的で、庇護政策を見直すこと。
  • (f) 子どもの庇護希望者、難民および移住者が基礎的サービスにアクセスできるようにするための十分な支援を提供すること。
  • (g) 条約との整合性を確保する目的で出入国管理法(2016年)を見直すこと。
  • (h) 子どもの送還が、十分な保障措置(子どもの最善の利益に関する正式な判断、効果的な家族追跡、リスクおよび安全に関する個別アセスメントならびに受け入れおよびケアのための適切な手配を含む)が整っている場合にかぎって行なわれることを確保すること。
少年司法の運営
78.委員会は、刑事責任に関する最低年齢の引き上げについてスコットランド政府が開かれた姿勢を示していること、および、これらの問題について検討し、かつ協議のための勧告をとりまとめる諮問グループが2016年に設置されたことに留意する。委員会はまた、2016年に成立する予定のモントセラト刑事司法法案によって同最低年齢が10歳から12歳に引き上げられ、かつ刑事犯罪に問われた子どもの権利を保護するために少年司法制度改革が行なわれる見込みであること、および、バージン諸島が、国際連合児童基金(ユニセフ)カリブ海諸国事務所の援助を得て、包括的な少年司法戦略の策定を計画していることにも留意するものである。しかしながら委員会は、以下のことを懸念する。
  • (a) 刑事責任に関する最低年齢が依然として、スコットランドおよびタークス・カイコス諸島では8歳、締約国の残りの地域では10歳のままであること。
  • (b) 一部の子どもの審理が成人裁判所で行なわれていること。
  • (c) 子どもを対象とする終身刑(イングランドおよびウェールズでは「女王陛下の御意による拘禁」、北アイルランドでは「国務長官の随意のままの拘禁」およびスコットランドでは「期限のない拘禁」)が、罪を犯した者が18歳未満のときに行なわれた殺人について必要刑とされていること。
  • (d) 身柄を拘束されている子どもの人数が依然として多く、かつ、そのなかでも民族的マイノリティの子ども、養護の対象とされている子どもおよび心理社会的障害のある子どもが不均衡なほど多いこと、および、拘禁が常に最後の手段として用いられているわけではないこと。
  • (e) 子どもが、成人を対象とする場所と同じ自由の剥奪場所に収容される場合があること。
  • (f) 身柄を拘束されている子どもにとって、教育および保健サービス(精神保健サービスを含む)へのアクセスが不十分であること。
  • (g) 青年犯罪者施設等において、身柄を拘束されている子どもを対象として隔離(独居拘禁を含む)が用いられる場合があること。
79.少年司法における子どもの権利にについての一般的意見10号(2007年)を参照しながら、委員会は、締約国に対し、少年司法制度(すべての権限委譲行政地域、海外領土および王室属領におけるものを含む)を条約その他の関連基準に全面的に一致させるよう勧告する。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 受け入れ可能な国際基準にしたがって刑事責任に関する最低年齢を引き上げること。
  • (b) 法律に抵触した子どもへの対応が18歳に達するまで常に少年司法制度のなかで行なわれること、および、ダイバージョン措置が子どもの犯罪記録に記載されないことを確保すること。
  • (c) 子どもに対する、18歳未満のときに行なわれた犯罪についての必要的終身刑を廃止すること。
  • (d) 拘禁は最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間で用いられるべきである旨の制定法上の原則を確立するとともに、拘禁が特定の集団の子どもに対して差別的に用いられないことを確保すること。
  • (e) あらゆる拘禁場所で、子どもの被拘禁者が成人から分離されることを確保すること。
  • (f) すべての子どもを直ちに独居拘禁から解放し、あらゆる場合における独居拘禁の使用を禁止し、かつ、子どもの拘禁施設における隔離措置および孤立化措置の使用について恒常的査察を実施すること。
犯罪の被害者および証人である子ども
80.委員会は、犯罪の被害者または証人である子どもが出廷して反対尋問を受けなければならないことを深刻に懸念する。
81.委員会は、締約国が、捜査時に行なわれる被害者または証人である子どもの事情聴取のビデオ録画を標準的対応として導入し、かつ、事情聴取のビデオ録画が法廷で証拠として認められるようにすることを勧告する。
子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ
82.委員会は、人身取引に反対する行動に関する欧州評議会条約が批准されたことおよびこの分野で新たな法律が制定されたこと(現代的奴隷制法(2015年)、人身取引・搾取法(北アイルランド、2015年)および人身取引・搾取法(スコットランド、2015年)を含む)、ならびに、制定法上の独立後見人が、北アイルランドでは保護者のいないすべての子どもを対象として、またイングランドおよびウェールズでは人身取引の被害を受けた可能性があるすべての子どもを対象として、導入されたことを歓迎する。委員会はまた、子どもに対するあらゆる形態の暴力(子どもの性的虐待、性的搾取および人身取引を含む)との闘いに対するイギリスの決意にも留意するものである。にもかかわらず、委員会は依然として以下のことを懸念する。
  • (a) 18歳に達するまでのすべての子どもが、選択議定書で対象とされているすべての態様の犯罪から保護されることを確保するための措置、および、締約国全域(権限委譲行政地域を含む)の国内法で、選択議定書で対象とされているすべての犯罪について、双方可罰性の基準を満たさなくとも域外裁判権を設定しかつ行使できるようにするための措置が、何らとられていないこと。
  • (b) 選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもおよびそのような犯罪の被害を受けるおそれのある子どもを特定しかつ付託するためのシステムが脆弱であること。
  • (c) 人身取引の被害を受けた子どもが、いまなお、人身取引との関係で行なうことを余儀なくされた犯罪を理由として訴追される場合があること、および、人身取引の被害を受けた子どもが有する、独立後見人を任命される権利が締約国で全面的に運用されているわけではないこと。
  • (d) 2015年に制定された諸法律で、選択議定書で対象とされている犯罪からのさらなる保護が18歳に達するまでの子どもに提供されている一方、イングランドおよびウェールズの性犯罪法(2003年)および性犯罪(北アイルランド)令(2008年)について、18歳未満のすべての子どもに全面的かつ平等な保護を提供することを目的とした改正が行なわれていないこと。
83.委員会は、締約国が、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書についての締約国の第1回報告書に関する総括所見(CRC/C/OPSC/GBR/CO/1)に掲げられたことを全面的に実施すること、とくに締約国が以下の措置をとることを勧告する。
  • (a) 18歳に達するまでのすべての子どもが、選択議定書で対象とされているすべての態様の犯罪から保護されること、および、締約国全域(権限委譲行政地域を含む)の国内法で、選択議定書で対象とされているすべての犯罪について、双方可罰性の基準を満たさなくとも域外裁判権を設定しかつ行使できることを確保すること。
  • (b) 現行の子ども保護手続に備わっている、人身および搾取の対象とされた子どもを特定するための全国付託機構を強化すること。
  • (c) 訴追を行なわない明確な義務を定める等の手段により、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもの権利を保護するための機構および手続を確立するとともに、このような子どもが、法執行機関および司法機関によって、犯罪者ではなく被害者として取り扱われることを確保すること。
  • (d) 刑事司法手続における、権限のある制定法上の後見人の任命を実際に運用すること。
  • (e) 18歳に達するまでのすべての子どもが、選択議定書で対象とされているすべての態様の犯罪から保護されることを確保する目的で法改正を行なうこと。
武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての委員会の前回の総括所見および勧告のフォローアップ
84.委員会は、以下のことを依然として懸念する。
  • (a) 締約国が、選択議定書第1条に関する、適用範囲の広い解釈宣言を維持していることにより、一定の状況下で、敵対行為が行なわれている地域への子どもの配備および敵対行為への子どもの関与が認められる可能性があること。
  • (b) 志願入隊に関する最低年齢(16歳)が変更されておらず、かつ、イギリス常備軍への最近の入隊者の20%を子どもの志願兵が占めていること。
  • (c) 陸軍委員会が、人員不足を回避するための18歳未満の要員の採用数の増加を支持しており、かつ、これらの新規入隊者のなかで、権利を侵害されやすい状況に置かれた集団出身の子どもが不均衡なほど多いこと。
  • (d) 志願入隊に関する保障措置が、とくに、18歳未満の新規入隊者の大多数の識字水準が非常に低く、かつ、子どもの申請者およびその親または保護者に提供される説明資料で入隊後のリスクおよび義務について明確な情報提供が行なわれていないことに照らして、不十分であること。
  • (e) 軍隊において、子どもの新規入隊者が、成人新規入隊者についての最低期間よりも長い、最低2年間の軍務に就くことを要求される場合があること。
85.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 全般的により高い法的基準を通じて子どもの保護を促進するために、自国の立場の見直しを検討し、軍隊への入隊に関する最低年齢を18歳に引き上げること。
  • (b) 軍隊に子どもを積極的に採用する政策を再検討し、かつ兵員募集の実務において18歳未満の者が積極的に対象とされないことを確保するとともに、軍の新兵募集担当者による学校へのアクセスが厳格に制限されることを確保すること。
  • (c) 18歳未満の者の採用に際し、入隊が真に自発的なものであり、かつ新規入隊者ならびにその親および法定保護者の完全に十分な情報に基づく同意を基礎として行なわれることを確保する目的で、選択議定書第3条で要求されている保障措置を強化するとともに、採用によって民族的マイノリティおよび低所得家庭の子どもに差別的影響が生じないことを確保すること。
  • (d) 軍に入隊した子どもに適用される最低軍務期間が成人の新規入隊者に適用される期間を超えないことを確保すること。
86.委員会は、「捕虜とされた者に関する合同軍事教義公刊1-10」(Joint Doctrine Publication 1-10 for Captured Persons、第2版、2011年10月)によれば、特別な保護を享受できるのは15歳未満の子どものみとされていることに、懸念とともに留意する。
87.委員会は、締約国が、選択議定書についての委員会の前回の勧告のうち捕虜とされた子ども兵士に関するもの(CRC/C/OPAC/GBR/CO/1、パラ29)を、18歳未満のすべての子どもを対象として実施するよう勧告する。

J.通報手続に関する選択議定書の批准

88.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。

K.国際人権文書の批准

89.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、まだ締約国となっていない中核的人権文書、とくにすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約、強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書、および、市民的および政治的権利に関する国際規約の選択議定書を批准するよう勧告する。

L.地域機関との協力

90.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における〔子どもの権利〕条約その他の人権文書の実施に関して欧州評議会と協力するよう勧告する。

V.実施および報告

〔訳者注/IVが抜けているのは原文ママ〕

A.フォローアップおよび普及

91.委員会は、締約国が、この総括所見に掲げられた勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はまた、第5回定期報告書、事前質問事項に対する締約国の文書回答およびこの総括所見を同国の言語で広く入手できるようにすることも勧告するものである。

B.次回報告書

92.委員会は、締約国に対し、第6回・第7回統合定期報告書を2022年1月14日までに提出し、かつ、この総括所見のフォローアップに関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。報告書は、2014年1月31日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.3)にしたがうべきであり、かつ21,200語を超えるべきではない(総会決議68/268、パラ16参照)。定められた語数制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲決議にしたがって報告書を短縮するよう求められることになる。締約国が報告書を見直しかつ再提出する立場にないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できない。
93.委員会はまた、締約国に対し、国際人権条約に基づく報告についての調和化ガイドライン(共通コアドキュメントおよび条約別文書についてのガイドラインを含む)に掲げられた共通コアドキュメントについての要件(HRI/GEN/2/Rev.6, chap.I参照)および総会決議68/268のパラ16にしたがい、最新のコアドキュメントを、42,400語を超えない範囲で提出することも慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2017年1月13日)。