総括所見:カナダ(第2回・2003年)


CRC/C/15/Add.215(2003年10月27日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2003年9月17日に開かれた第894回および第895回会合(CRC/C/SR.894 and 895参照)においてカナダの第2回定期報告書(CRC/C/83/Add.6)を検討し、2003年10月3日に開かれた第918回会合(CRC/C/SR.918参照)において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、締約国の第2回定期報告書、および、締約国における子どもの状況について最新情報を提供してくれた、事前質問事項(CRC/C/Q/CAN/2)に対する詳細な文書回答の提出を歓迎する。しかしながら、連邦および州の報告書に基づいた総合的報告書が提出されていれば、委員会にとって、条約の実施についての比較による分析とともに、条約を実施するためにカナダがとった貴重な措置の、いっそう調整のとれた、かつ包括的な把握が可能になったであろう。委員会は、締約国がハイレベルな代表団を派遣したことに評価の意とともに留意し、かつ、議論の過程で行なわれた提案および勧告に対する前向きな反応を歓迎する。

B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、締約国が行なっている多数の取り組みを心強く思うとともに、これらの取り組みをさらに組織立ったものとし、かつその効果的実施を確保することにつながるであろう、子どものための国家行動計画の完成を待望する。とくに委員会は、以下の行動およびプログラムに留意したい。
  • 「全カナダ子どもアジェンダ」。
  • 全国子ども手当。
  • 子ども・若者担当国務長官の設置。
  • 社会政策改訂に関する連邦・州・準州閣僚評議会。
  • 「社会的団結枠組み協定」・
  • C-27号刑法改正法案の制定。
  • カナダ通信教育網。
  • 「力の結集:カナダ先住民族行動計画」
  • 開発途上国による自国の子どもの権利の充足を援助するためにカナダ国際開発庁(CIDA)が果たしている建設的役割、および、カナダは2010年までに国際援助を倍増させる旨の代表団主席による宣言。

C.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
4.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/11/Add.3)の検討後に委員会が行なった勧告(CRC/C/15/Add.3、1995年6月20日付)の一部が実施されたことには留意しながらも、残りの勧告、とくに、留保の撤回に言及したパラ18、データ収集に関わるパラ20、一般原則が国内法に反映されることの確保に関わるパラ23、第22条の実施に関わるパラ24、体罰を許容する刑法の見直しを提案したパラ25に掲げられた勧告への対応が行なわれていないまたは不十分であることを、遺憾に思う。委員会は、これらの懸念がこの文書でもあらためて表明されていることに留意するものである。
5.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見に掲げられた勧告のうち未実施のものに対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた一連の勧告を効果的にフォローアップするためにあらゆる努力を行なうよう、勧告する。
留保および宣言
6.委員会は、条約第37条(c)に対する留保の撤回に向けて政府が行なっている努力には留意しつつも、手続にやや時間がかかっていることを遺憾に思うとともに、締約国には第21条に対する留保を撤回する意思はない旨の代表団による発言をなおいっそう遺憾に思う。委員会は、第21条および第37条(c)に関して締約国が維持している留保についての懸念をあらためて表明するものである。
7.1993年のウィーン宣言および行動計画に照らし、委員会は、締約国に対し、条約に対して付した留保を再検討し、かつその撤回を速やかに進めるよう促す。委員会は、条約第21条に対する留保を撤回する目的で、先住民族との対話を継続するよう慫慂するものである。
立法および実施
8.委員会は、条約の相当部分の適用が州および準州の権限であることに留意するとともに、このため、場合によって、州および準州段階における違いを理由として条約の最低基準がすべての子どもに適用されない状況が生じるおそれがあることを懸念する。
9.委員会は、連邦政府に対し、州および準州が自らの条約上の義務を理解すること、および、条約上の権利が、立法および政策その他の適当な措置を通じ、すべての州および準州で実施されなければならないことを確保するよう、促す。
調整・監視
10.多部門型の取り組みである「全カナダ子どもアジェンダ」が1997年に開始されたこと、および、子ども・若者担当国務長官の役職が創設されたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、人権に関する常設官公吏委員会および子ども・若者担当国務長官のいずれに対しても条約の実施の調整および監視が具体的に委任されているわけではないことを、依然として懸念するものである。
11.委員会は、締約国に対し、前回勧告したとおり(CRC/C/15/Add.37、パラ20)、条約の実施において格差または差別が生ずるいかなる可能性も低減させかつ払拭する目的で、子ども〔の権利〕を促進しかつ保護するための政策の実施における、とくに連邦、州および準州の当局間の効果的な調整および監視を強化するよう、奨励する。
国家的行動計画
12.委員会は、「力の結集:カナダ先住民族行動計画」の導入(1998年1月)に留意するとともに、子どもの権利条約および子どもに関する国連総会特別会期の最終成果文書(「子どもにふさわしい世界」)にしたがって国家的行動計画が作成されていることを心強く思う。委員会はまた、カナダが、この点に関する行動は条約にしたがってとられなければならないと確信していることも心強く思うものである。
13.委員会は、締約国に対し、すべての子ども、とくにもっとも脆弱な立場に置かれた集団(先住民族、移住者および難民の子どもを含む)を対象とする、首尾一貫した、包括的なかつ権利基盤型の国家的行動計画が採択されることを確保するよう、奨励する。当該計画では、市民社会と協力しながら、連邦、州、準州および地方のレベルにおける責任分担、明確な優先順位、予定、および、条約にしたがった必要な資源の予備的配分についても定められるべきである。委員会はまた、政府に対し、国家行動計画の実施に関する組織的監視機構を指定するようにも促す。
独立の監視
14.委員会は、カナダの8つの州に子どもオンブズマンが設置されていることに留意するものの、すべての子どもオンブズマンが、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則、1993年12月20日の総会決議48/134付属文書)にしたがった完全に独立した国内人権機関として任務を行なうための十分な権限を与えられているわけではないことを、懸念する。さらに委員会は、このような機関が連邦レベルで設置されていないことを遺憾に思うものである。
15.委員会は、締約国が、子どもの権利担当のオンブズマン事務所を連邦レベルで設置するとともに、その効果的運用のための適当な資金を確保するよう、勧告する。委員会は、このような事務所をまだ設置していない州、および、脆弱な立場に置かれた子どもが高い割合で住んでいる3つの準州においても、このような事務所が設置されるべきことを勧告するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が、パリ原則および国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号を全面的に考慮するよう、勧告する。
資源配分
16.委員会は、多くの取り組みおよびプログラム(とくに、子どもの貧困を削減しかつ防止することによって、危険な状態で暮らしているカナダの子どもの福祉を向上させることを目的とした全国子ども手当(NCB)制度)への資源配分を通じて政府が行なっている子どもの権利の充足に対する貢献に関して報告書で提供された情報を歓迎する。しかしながら委員会は、一部の州におけるNCBの実施のあり方について社会権規約委員会(E/C.12/1/Add.31、パラ22)および自由権規約委員会(CCPR/C/79/Add.105、パラ18・20)が表明した懸念を、あらためて繰り返すものである。
17.委員会は、締約国に対し、全国子ども手当制度によって一部集団の子どもに生じる可能性があるいかなる否定的または差別的効果も払拭する目的で、当該制度の効果ならびに州および準州における当該制度の実施に関する定期的評価を活用しながら制度の見直しを行なうよう、慫慂する。
18.委員会は、締約国が、「利用可能な資源を最大限に用いることにより」子ども、とくに周縁化されたおよび経済的に不利な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施を確保するための予算配分を優先させることにより、条約第4条の全面的実施に特段の注意を払うよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、子どもの権利の問題に関する優先順位を毎年明確に述べるとともに、子どもに関する支出の効果およびその有効な活用について評価できるようにする目的で、連邦、州および準州のレベルで子ども(とくに周縁化された集団)に費やされている予算の額および割合を明らかにするよう、奨励するものである。委員会は、締約国に対し、子どもが将来の経済的変動の影響を不相応に受けないようにするための措置を引き続きとり、かつ、条約の普及に関する活動を行なっている非政府組織への支援を継続するよう、奨励する。
データ収集
19.委員会は、報告書の付属文書および事前質問事項に対する文書回答の付属文書で提供された豊富な統計データの価値を認めるとともに、締約国が先住民族に関する統計研究所を設置しようとしていることを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、条約が対象とするすべての分野について情報が十分に整備され、細分化されおよび十分に総合化されているわけではなく、ならびに、子どもに関連するデータ収集に18歳未満のすべての者が体系的に包摂されているわけではないという見解に立つものである。委員会は、情報収集に関する前回の懸念および勧告(CRC/C/15/Add.37、パラ20)を想起しつつ、これに対する対応が十分ではないことを主張したい。
20.委員会は、締約国が、もっとも脆弱な立場に置かれた集団(すなわち先住民族の子ども、障害のある子ども、虐待およびネグレクトを受けた子ども、ストリートチルドレン、司法制度の対象とされている子ども、子どもの難民および庇護希望者)をとくに重視しながら、条約が対象とするすべての分野および18歳未満のすべての子どもに関する、体系的に細分化されたデータを収集しかつ分析するための機構を強化しかつ中央集権化するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、開発された指標および収集されたデータを、立法、政策および資源配分プログラムの立案および評価ならびに条約の実施および監視のために有効に活用するよう、促すものである。

2.一般原則

差別の禁止
21.委員会は、文化的多様性を促進しかつ保護するための措置および差別に関わる具体的な立法上の措置に関連した積極的進展に留意する。後者には、多文化主義法(とくに寄宿学校制度との関連において)、雇用平等法、および、加重事由として人種差別を導入した刑法改正が含まれる(人種差別撤廃委員会(CERD)の2002年版年次報告書(A/57/18)、パラ315-343も参照)。しかしながら委員会は、CERDの懸念を、とくに、子ども(インディアン法に関するものなど)、先住民族ならびにアフリカ系およびアジア系の人々に対する拘禁中の暴力およびこれらの人々の拘禁中の死亡、メディアで見られる差別および偏見表現のパターン、ならびに、在留資格を有しない移住者の子どもの学校制度からの排除との関連で共有するとともに、一部集団の子どもに対する差別が根強く残っていること(前掲パラ332、333、335および337も参照)を依然として懸念するものである。
22.委員会は、締約国が、差別の禁止に対する権利(条約第2条)を子どもに関わるすべての関連の法律に全面的に統合するための立法上の努力を引き続き強化するとともに、この権利が、政治上、司法上および行政上のすべての決定、ならびに、すべての子ども(とくに、障害のある子どもおよび先住民族の子どものような、マイノリティ集団その他の脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども)に影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスにおいて効果的に適用されるべきことを、勧告する。委員会はさらに、締約国が、社会の否定的な態度および慣行を防止しかつこれと闘うため、引き続き、包括的な公衆教育キャンペーンを実施しかつ必要なあらゆる積極的措置をとるよう、勧告するものである。委員会は、締約国に対し、条約の一般原則を考慮しながら、文化的多様性を促進するための努力に関するさらなる情報を次回の報告書で提供するよう、要請する。
23.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画についてカナダが表明した留保に留意しつつも、ダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報が、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載されるべきことを勧告する。
子どもの最善の利益
24.委員会は、締約国が、子どもに関わるあらゆる立法、プログラムおよび政策の発展において子どもの最善の利益の原則がきわめて重要であると考えていることを高く評価するとともに、この点に関わる進展を認識する。しかしながら委員会は、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されるべきであるという原則が、一部の子ども(とくに、離婚、監護および退去強制の状況に直面している子ども)および先住民族の子どもに影響を与える一部の立法、裁判所の決定および政策においていまなお十分に定義されかつ反映されていないことを、依然として懸念に思うものである。さらに委員会は、この点に関する調査研究および専門家の研修が不十分であることを懸念する。
25.委員会は、第3条に掲げられた「子どもの最善の利益」の原則が、さまざまな状況にある子ども個人および子どもの集団(たとえば先住民族の子ども)との関連で適切に分析されおよび客観的に実施され、ならびに、子どもに関わる立法のあらゆる再検討、裁判所における法的手続ならびに司法上および行政上の決定ならびに子どもに影響を及ぼすプロジェクト、プログラムおよびサービスに統合されるべきことを、勧告する。委員会は、締約国に対し、調査研究、および、子どもに対応する専門家のための教育プログラムが強化されること、ならびに、条約第3条が全面的に理解されることおよびこの原則が効果的に実施されることを確保するよう、奨励するものである。

3.市民的権利および自由

アイデンティティに対する権利
26.委員会は、カナダ市民によって国外で養子とされた子どもの市民権の取得を容易にする新カナダ市民権法が採択されたことを心強く思う。委員会は同様に、先住民族の子どもおよび家族に対し、そのコミュニティ内で文化的に配慮されたサービスを提供する、「ファーストネーションズ子ども家族サービス」が設立されたことを心強く思うものである。
27.委員会は、締約国が、無国籍の子どもの状況を解決するため、条約第7条にしたがってさらなる措置(出生登録を確保するための措置および市民権の申請を容易にするための措置を含む)をとるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、無国籍者の地位に関する条約(1954年)を批准することも提案するものである。

4.家庭環境および代替的養護

不法な移送および不返還
28.委員会は、カナダが国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の加盟国であることに満足感とともに留意し、かつ、親による子どもの誘拐の問題が拡大しつつあるという締約国の懸念に留意する。
29.委員会は、締約国が、カナダに誘拐されてきたすべての子どもに当該ハーグ条約を適用し、当該ハーグ条約の未加盟国に対してこれを批准しまたはこれに加入するよう奨励し、かつ、必要なときは、国際的な子どもの誘拐に十分に対処するための二国間協定を締結するよう、勧告する。委員会はさらに、不法な移送および不返還の事件を当事者の子どもの最善の利益にかなう形で解決するため、外交ルートおよび領事ルートを通じて最大限の援助が提供されるべきことを勧告するものである。
養子縁組
30.委員会は、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)をカナダ内外で促進することについて締約国が優先順位を与えていることを、心強く思う。しかしながら委員会は、養子縁組が州および準州の管轄事項である一方、法律上その他の適当な措置による当該ハーグ条約の批准のフォローアップがすべての州で行なわれているわけではないことに、留意するものである。委員会はまた、一部の州で、可能なかぎり自己の実親を知る養子の権利(第7条)が認められていないことも懸念する。
31.委員会は、養子の生年月日および出生場所ならびにその実親に関する情報が保全され、かつ当該養子がこれを入手できることを確保するため、締約国が法改正を検討するよう勧告する。さらに委員会は、連邦政府が、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)の全面的実施を自国の領域全体で確保するよう、勧告するものである。
虐待およびネグレクト
32.委員会は、子どもの体罰に代わる手段に関する調査研究を促進し、虐待の発生件数に関する研究を支援し、健康的な子育てを促進し、かつ児童虐待およびその影響に関する理解を向上させることによって体罰を抑制するために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国が、あらゆる形態の体罰を明示的に禁止する法律を制定しておらず、かつ、体罰を許容する刑法第43条を削除するための行動をなんらとっていないことを、深く懸念するものである。
33.委員会は、締約国が、子どものしつけにあたって「合理的な有形力」を使用することを認めた現行の規定を削除するための法律を採択するとともに、家庭、学校および子どもが措置される可能性のあるその他の施設における子どもに対するあらゆる形態の暴力を、たとえ軽いものであっても明示的に禁止するよう、勧告する。

5.基礎保健および福祉

健康および保健サービス
34.委員会は、とくに予算を増額し、かつ先住民族保健プログラムに焦点を当てることによってカナダ国民のための保健ケアを強化することに対する、政府のコミットメントを心強く思う。しかしながら委員会は、締約国も認めているように、相対的に高い健康水準がすべてのカナダ国民によって平等に共有されているわけではないことを懸念するものである。委員会は、とくに農村部および北部のコミュニティにおけるならびに先住民族コミュニティにとってのサービスの普遍性およびアクセス可能性に関して、州および準州による均等な法令遵守が懸念の対象となっていることに留意する。委員会は、先住民族の子どもの間で乳幼児突然死症候群および胎児性アルコール症候群の発生率が不相応に高いことを、とりわけ懸念するものである。
35.委員会は、締約国が、先住民族の子どもならびに農村部および遠隔地の子どもにとくに注意を払いながら、すべての子どもが同一の質の保健サービスを平等に享受することを確保するための措置をとるよう、勧告する。
思春期の健康
36.委員会は、締約国における乳児死亡率が平均して減少していることを心強く思うものの、先住民族の死亡率が高く、かつこの集団に属する若者の自殺率および有害物質濫用率が高いことを深く懸念する。
37.委員会は、締約国が、若者の自殺の原因として考えられる要因およびもっとも危険な状況にあると思われる若者の特徴に関する研究に引き続き優先的に取り組むとともに、この悲劇的現象の発生の削減につながる可能性がある、たとえば精神保健、教育および雇用の分野における支援、防止および介入のための追加的プログラムを整備するための措置を、実際的に可能なかぎり早期にとるよう、提案する。
社会保障ならびに保育サービスおよび保育施設
38.委員会は、親休暇の拡大、税控除の増額、子ども手当および先住民族のための特別プログラムを通じ、家族に対して援助を提供するために政府がとっている措置を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、保育費用が高いこと、入所枠が不足していることおよび全国的基準が定められていないことに関する報告について懸念を覚えるものである。
39.委員会は、締約国に対し、保育の提供状況およびそれが子どもに対して与えている影響に関する違いを明らかにするために州および準州のレベルで比較分析を行なうとともに、すべての子どもがその経済的状況または居住地に関わらず良質な保育を利用できるようにすることに対する、調整のとれたアプローチを創案するよう、奨励する。
生活水準
40.委員会は、データの出典が限られているため、カナダ住宅貸付協会がホームレス問題を調査研究の優先課題に位置づけたことを知り、心強く思う。しかしながら委員会は、カナダの10大都市の市長がホームレス問題を国家的惨事であると宣言し、かつ政府に対してホームレス状態および貧困の削減のための国家的戦略を実施するよう促したことに留意した、社会権規約委員会の懸念(E/C.12/1/Add.31、パラ24・46)を共有するものである。
41.委員会は、子どもの貧困が問題として浮上してきていることに関する前回の懸念をあらためて表明するとともに、経済的および構造的変動ならびに女性の間で深刻化する貧困(これはとくにシングルマザーその他の脆弱な立場に置かれた集団に影響を与えている)、ならびに、その結果として子どもに生じる可能性がある影響についての、女性差別撤廃委員会(CEDAW)の懸念を共有する。
42.委員会は、とくに子どものホームレス状態が広がっていることの原因、および、ホームレス問題と児童虐待、児童買春、児童ポルノおよび子どもの人身取引との間に存在するいずれかの関係を明らかにするため、さらなる調査研究が行なわれるべきことを勧告する。委員会は、締約国に対し、この現象の発生を削減しかつ防止するための措置をとりながら、ホームレスの子どもに提供する支援サービスをさらに強化するよう奨励するものである。
43.委員会は、締約国が、貧困下で暮らす子どもの増加の原因となっている要因に引き続き対応するとともに、CEDAWが提案したようにシングルマザーの状況(A/52/38/Rev.1、パラ336)および脆弱な立場に置かれたその他の集団の状況に正当な注意を払いながら、すべての家族が十分な資源および便益を有することを確保するためのプログラムおよび政策を発展させるよう、勧告する。

6.教育、余暇および文化的活動

44.委員会は、締約国における模範的な識字率および基礎教育の水準の高さを高く評価するとともに、カナダ国内および国際社会の双方において良質な教育を促進するために行なわれている多数の取り組みを歓迎する。委員会は、居留地に住む先住民族の教育水準を高めるための取り組みを、とくに心強く思うものである。委員会はさらに、低所得の生徒が中等教育以降の教育を受けようとする際の金銭的障壁への対応に関する社会権規約委員会の懸念(E/C.12/1/Add.31、パラ49)に対応するためにとられた措置に留意する。にもかかわらず、委員会は、在留資格のない移住者の子どもが一部州で学校から排除されているという訴えについての人種差別委員会の懸念(A/57/18、パラ337)をあらためて繰り返すものである。さらに委員会は、教育支出の削減、教員ひとりあたりの生徒数の増加、教育委員会の数の減少、先住民族の子どもの中退率の高さ、および、両方の公用語による指導が「生徒数に関する基準が満たされた場合」にのみ利用可能とされていることについて、懸念を覚える。
45.委員会は、締約国が、条約第29条1項および教育の目的に関する委員会の一般的意見1号に掲げられた目標を達成するため、とくに以下の措置をとることによって、締約国全域で教育の質をさらに向上させるよう勧告する。
  • (a) 農村部の子ども、先住民の子どもおよび難民または庇護希望者ならびに不利な立場に置かれたその他の集団の子どもおよび特別な注意を必要とする子どもにとくに注意を払いながら、子ども1人ひとりの文化的アイデンティティに配慮した無償のかつ良質な初等教育(子ども自身の言語によるものも含む)が、すべての子どもにとって利用可能でありかつアクセス可能であることを確保すること。
  • (b) 適用可能なときはさまざまな指導言語による人権教育(子どもの権利に関する教育を含む)が学校カリキュラムに編入されること、および、教員が必要な研修を受けることを確保すること。
  • (c) 国連教育科学文化機関の教育差別禁止条約(1960年)を批准すること。
  • (d) 学校におけるいかなる形態の体罰の使用も禁止するために適当な立法上の措置をとるとともに、規律の維持のための措置に関する議論への子ども参加を奨励すること。

7.特別な保護措置

子どもの難民
46.委員会は、新出入国管理および難民保護法(2002年)に子どもの最善の利益の原則が編入されたこと、および、国連難民高等弁務官事務所および非政府組織と協力しながら出入国管理手続における子どもの懸念に対応するための努力が行なわれていることを、歓迎する。しかしながら委員会は、前回表明された懸念の一部について十分な対応が行なわれておらず、とくに家族再統合、退去強制および自由の剥奪の事案において、援助をもっとも必要としている人々が優先されていないことに留意するものである。委員会は、以下のことをとくに懸念する。
  • (a) 保護者のいない子どもの庇護希望者に関する国家的政策が定められていないこと。
  • (b) このような子どもについて法定後見人を任命するための統一手続が設けられていないこと。
  • (c) 「養育者から分離された子ども」の定義が定められておらず、かつ子どもの庇護希望者に関する信頼できるデータが存在しないこと。
  • (d) 脆弱な立場に置かれた子どもの公的福祉機関への付託について、十分な研修が行なわれておらず、かつ連邦当局が一貫したアプローチをとっていないこと。
47.条約の原則および規定、とくに第2条、第3条、第22条および第37条にしたがい、かつ子ども(庇護を希望しているか否かは問わない)との関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 養育者から分離されてカナダで庇護を希望している子どもについての国家的政策を採択しかつ実施すること。
  • (b) 後見の性質および範囲を明確に定めたうえで、後見人の任命手続を実施すること。
  • (c) 保護者のいない未成年者の収容は行なわないことを方針とし、かつこのような収容は「最後の手段」としての措置である旨の立法者意思を明確にするとともに、条約第37条にしたがい、収容の合法性を速やかに争う権利を確保すること。
  • (d) 養育者から分離された子どもであって国際的保護を必要としない者の出身国への送還について取り扱う、よりよい政策および実務指針を策定すること。
  • (e) 子どもの難民および庇護希望者が教育および保健のような基礎的サービスにアクセスできること、および、庇護希望者の家族のための手当の受給資格について、子どもに影響を与える可能性がある差別が行なわれないことを確保すること。
  • (f) 家族再統合への対応が迅速な方法で進められることを確保すること。
武力紛争の影響を受けた子どもの保護
48.委員会は、カナダが、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に関して批准時に宣言を行ない、軍隊への志願入隊を16歳から認めていることに留意する。
49.委員会は、締約国が、条約第38条3項に照らし、志願兵の採用手続において最年長者を優先させるためにとられた措置、ならびに、採用を18歳以上の者に限定するための努力(および法律をしかるべき形で見直すための努力)に関する情報を、来年提出予定の当該選択議定書に関する報告書において提供するよう、勧告する。
経済的搾取
50.委員会は、カナダが、子どもの経済的搾取に終止符を打つことに向けて国際的レベルで行なわれている活動に対して資源を投入してきたことを、おおいに評価する。しかしながら委員会は、カナダにおける状況についての情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思うものである。さらに委員会は、就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関第138号条約をカナダが批准していないことを懸念するとともに、13歳未満の子どもが経済活動に従事していることを懸念する。
51.委員会は、締約国が、就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関第138号条約を批准し、かつその効果的実施のために必要な措置をとるよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、必要なときはカナダにおける子どもの搾取的就労を防止するための効果的措置をとる目的で、子どもがどの程度働いているのかを十全に評価するための全国的調査研究を実施するよう、奨励するものである。
性的搾取および人身取引
52.委員会は、性的搾取に関する意識の促進およびその削減に向けた活動(1997年の刑法改正(法案C-27号)および2002年の法案C-15A号の導入により、性的搾取の被害者である子どもに対してサービスを求めた者の逮捕および訴追を容易にし、かつカナダ国民が国外で行なったあらゆる子どもの性的搾取行為についてカナダで訴追を行なえるようにしたことも含む)においてカナダが国内外で果たしている役割を、心強く思う。しかしながら委員会は、ストリートチルドレンおよびとくに先住民族の子どもが被害を受けやすい状況に置かれており、人口比に照らして不相応に多く、生存のための手段として最終的に性産業に行き着いているという懸念があることに留意するものである。委員会はまた、人身取引によってカナダに連れてこられる外国人の子どもおよび女性が増えていることも懸念する。
53.委員会は、締約国が、非政府組織および出身国との協力を増進させる等の手段も用いながら、文化的に適切なかつ調整のとれたやり方で、性的搾取および人身取引の被害者に対して提供される保護および援助(防止措置、社会的再統合、保健ケアへのアクセスおよび心理的援助を含む)をさらに増強するよう、勧告する。
ストリートチルドレン
54.委員会は、一定数の子どもが路上で生活しているのに、締約国報告書にストリートチルドレンに関する情報がないことを遺憾に思う。委員会の懸念は、子どもがカナダのホームレス人口の相当部分を占めていること、先住民族の子どもがこの集団においてきわめて過剰に代表されていること、および、この現象の原因には貧困、虐待的な家庭状況およびネグレクトを行なう親が含まれていることを示す、主要都市中心部から得られた統計によって際立つところである。
55.委員会は、締約国が、子どもがホームレスとなる現象の範囲および原因を評価するための研究を行なうとともに、これらの子どもの最善の利益にかなう形でかつこれらの子どもの参加を得ながらこの現象を防止しかつ削減する目的で、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に特段の注意を払いながら、これらの子どものニーズに対応するための包括的戦略を確立することを検討するよう、勧告する。
少年司法
56.委員会は、2003年4月に新法が制定されたことを心強く思う。委員会は、犯罪防止のための取り組みおよび司法手続に代わる手段を歓迎するものである。しかしながら委員会は、成人を対象とする刑が14歳という若年の子どもにも拡大して用いられていること、拘禁されている青少年の人数が先進工業諸国でも最高の部類に入ること、罪を犯した少年と成人を拘禁施設にいっしょに収容することが依然として適法であること、公衆が少年の記録にアクセスすることが認められていること、および、罪を犯した青少年の素性が公表されうることを、懸念する。加えて、青少年犯罪に関する公衆の認識は不正確であり、かつメディアによるステレオタイプに基づいていると言われている。
57.委員会は、締約国が、条約の規定および原則、とくに第3条、第37条、第40条および第39条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止のための国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針のような、この分野における他の関連の国際基準を立法、政策および実務に全面的に統合した少年司法制度を確立するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 18歳未満のいかなる者も、諸事情またはその罪名の重大性に関わらず、成人として裁判の対象とされないことを確保すること。
  • (b) すべての裁判事件において、当事者である子どもの意見が十分に聴取されかつ尊重されることを確保すること。
  • (c) 条約第40条2項(b)(vii)にしたがい、法律に抵触したすべての子どものプライバシーが全面的に保護されることを確保すること。
  • (d) 拘禁されている子どもの人数を相当に削減するために必要な措置(たとえば拘禁に代わる社会内処遇措置および条件付釈放)をとるとともに、拘禁が最後の手段としてかつ可能なかぎり短い期間でのみ用いられること、および、拘禁の際、子どもが常に成人から分離されることを確保すること。
マイノリティ集団または先住民族集団に属する子ども
58.委員会は、とくに寄宿舎学校制度において先住民族に対して行なわれた歴史的不正に対するカナダとしての深い遺憾の意を表明した、連邦政府による和解声明を歓迎する。委員会はまた、カナダ全域の先住民族の生活向上に対し、第1回報告書の検討以降開始された、連邦予算で定められた多数の取り組みによって、政府が優先順位を与えていることにも留意するものである。しかしながら委員会は、先住民族の子どもが、先住民族ではない他の子どもよりもはるかに高い頻度および深刻さで、多くの問題(いくつかの分野における差別を含む)を経験し続けていることを懸念する。
59.委員会は、締約国に対し、先住民族の子どもと先住民族ではない子どもとの間に存在する人生の機会の格差に対応するための努力を継続するよう、促す。これとの関連で、委員会はとくに、自由権規約委員会(CCPR/C/79/Add.105、パラ8)、人種差別撤廃委員会(A/57/18、パラ330)および社会権規約委員会(E/C.12/1/Add.31)のような国連人権条約機関が行なってきた、とくに土地および資源配分に関する所見表明および勧告をあらためて繰り返すものである。委員会は同様に、王立先住民族委員会の勧告に留意するとともに、締約国に対し、適切なフォローアップを確保するよう奨励する。

8.選択議定書の批准

60.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書の批准、および、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書への署名を歓迎する。委員会は、締約国に対し、後者の早期批准を検討するよう促すものである。

9.文書の普及

61.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、締約国のあらゆる段階の行政および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。

10.次回報告書

62. 委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、国連・子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、一部の締約国が時宜を得た定期的報告書の提出に関して困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回定期報告書の提出期限である2009年1月11日までに第3回および第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。この統合報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。


  • 更新履歴:ページ作成(2012年4月30日)。