総括所見:カナダ(第3~4回・2012年)


CRC/C/CAN/CO/3-4(2012年12月6日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2012年9月26日および27日に開かれた第1742回および第1743回会合(CRC/C/SR.1742 and 1743参照)においてカナダの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/CAN/3-4)を検討し、2012年10月5日に開かれた第1754回会合において以下の総括所見を採択した。

I.序

2.委員会は、締約国の状況に関する理解を向上させてくれた、締約国の第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/CAN/3-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/XCAN/Q/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国の多部門型代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書(CRC/C/OPAC/CAN/CO/1、2006年)および子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書(CRC/CO/OPSC/CAN/CO/1、2012年)に基づく締約国の第1回報告書に関して採択された総括所見とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国報告書の作成が報告ガイドラインにしたがって行なわれなかったことを遺憾に思うものである。

II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

4.委員会は、以下の立法措置の採択を歓迎する。
  • (a) 市民権法改正法(2009年4月17日施行)。
  • (b) 人身取引をとくに対象とする起訴罪名を創設する、2005年の刑法(人身取引)改正法案C-49号(2005年11月25日)。
5.委員会はまた、障害のある人の権利に関する条約が批准されたこと(2010年3月)も歓迎する。
6.委員会は、以下の制度上および政策上の措置に、積極的対応として留意する。
  • (a) 人身取引と闘うための国家行動計画(2012年6月)。
  • (b) ホームレス問題協業戦略(HPS、2007年4月)。
  • (c) 子どものための国家行動計画「子どもにふさわしいカナダ」(2004年4月発表)。
  • (d) インターネット上の性的搾取から子どもを保護するための国家戦略(2004年5月発表)。

III.主要な懸念領域および勧告

A.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告
7.締約国の第1回報告書に関する委員会の2003年の総括所見(CRC/C/15/Add.215、2003年)を実施するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、委員会は、そこに掲げられた勧告の一部について十全な対応がとられていないことに、遺憾の意とともに留意する。
8.委員会は、締約国に対し、条約に基づく第2回定期報告書についての総括所見の勧告のうち未実施のものまたは十分に実施されていないもの(とくに留保、立法、調整、データ収集、独立の監視、差別の禁止、体罰、家庭環境、養子縁組、経済的搾取および少年司法の運営に関するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。
留保
9.条約第37条(c)に付した留保の撤回に向けて締約国が行なっている努力は肯定的に認知しながらも、委員会は、条約第37条(c)に付した留保の速やかな撤回を求めた前回の勧告(CRC/C/15/Add.215、パラ7、2003年)をあらためて強く繰り返す。
立法
10.条約の実施に関わる多数の立法措置は歓迎しながらも、委員会は、国内法において条約のすべての適用範囲を包括的に網羅する法律が存在しないことを、依然として懸念する。この文脈において、委員会はさらに、締約国の連邦制および二元的法体系にかんがみ、このような総括的国内法が存在しないことによって締約国全域における子どもの権利の実施に断片化および不一致が生じているために、同様の状況にある子どもが、どの州または準州に在住しているかによって、自己の権利の充足に関する格差を受けていることに留意するものである。
11.委員会は、締約国が、条約およびその選択議定書の規定を全面的に編入した包括的な法的枠組みを締約国の全領域(州および準州を含む)で定めることを可能にする、憲法上の適切な経路を見出すとともに、その一貫した適用のための明確な指針を提示するよう、勧告する。
包括的な政策および戦略
12.委員会は、子どものための国家行動計画「子どもにふさわしいカナダ」が2004年に採択されたことに留意するものの、当該計画が、委員会の前回の総括所見(CRC/C/15/Add.215、パラ13、2003年)で勧告されたように、一般的な目的以上の明確な責任分担、明確な優先順位、到達目標および予定、資源配分ならびに体系的監視について定めていないこと、および、当該計画について、その影響を評価しかつ次の措置の指針とするための評価が実施されていないことを、懸念する。
13.委員会は、締約国が、連邦、州および準州の各段階の政府を対象とする包括的な実施の枠組みを提示し、条約の全般的実現に関する優先順位、到達目標およびそれぞれの責任について適宜定め、かつ、州および準州がこれにしたがって独自の具体的な計画および戦略を採択できるようにする、国家的な戦略を採択するよう強く勧告する。委員会はさらに、締約国が、この包括的な戦略ならびに関連する州および準州の計画の実施、監視および評価のために十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう、勧告するものである。この文脈において、委員会は、締約国に対し、すべての州および準州による進展報告書の提出および審査を可能とする、調整のとれた監視機構を設置するよう奨励する。委員会はまた、子どもおよび市民社会との協議も勧告するものである。
調整
14.いずれもあらゆる段階の政府から代表が出席している教育担当大臣協議会および学校保健合同コンソーシアムならびにその他の部門別調整機関の活動には積極的対応として留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関する省庁間作業部会(2007年)の任務とされている、条約の実施の全般的調整が実際には有効に行なわれていないことを依然として懸念する。さらに委員会は、締約国が連邦制をとっていることから生じる課題に留意するとともに、全般的調整が行なわれていないため、締約国の州および準州全体を通じて条約の実施に関する相当の格差が生じていることを懸念するものである。
15.委員会は、諸部門全体を通じてならびにすべての州および準州の間で子どもの権利に関する行動を効果的に調整するための能力および権限ならびに人的資源、技術的資源および財源を備えた、条約実施のための調整機関および国家的戦略(前掲13で勧告)を確立するべきである旨の、締約国に対する勧告をあらためて強く繰り返す。さらに委員会は、締約国に対し、子どもの権利に関する省庁間作業部会をしかるべく強化することを検討し、もって条約の全般的実施における調整、一貫性および公平性を確保するよう奨励するものである。委員会はまた、すべてのマイノリティ集団を含む市民社会および子どもに対し、調整機関の一翼を担うよう慫慂することも勧告する。
資源配分
16.締約国が世界でもっとも豊かな経済国のひとつであり、かつ相当量の資源を子ども関連のプログラムに投資していることを心に留めつつ、委員会は、締約国が、国および州/準州段階の予算の策定および配分に関して子どもに特化したアプローチを用いていないことから、子どもに対する投資の効果および予算的観点からの条約の全般的適用状況を明らかにし、監視し、報告しかつ評価することが実務上不可能となっていることに、留意する。さらに委員会は、締約国報告書に種々のプログラムおよびその全般的予算に関する情報が掲げられている一方で、このような投資の効果に関する情報が欠如していることにも留意するものである。
17.子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する委員会の一般的討議(2007年)に照らし、かつ条約第2条、第3条、第4条および第6条を強調しながら、委員会は、締約国が、国、州および準州の段階で子どものニーズを十分に考慮し、関連の部門および機関において子どもに明確な配分を行ない、かつ具体的な指標および追跡システムを備えた予算策定手続を確立するよう、勧告する。加えて委員会は、締約国が、条約の実施に充てられる資源の分配の有効性、妥当性および衡平性を監視しかつ評価するための機構を設置するよう、勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、積極的な社会上の措置を必要とする可能性がある不利な状況または脆弱な状況に置かれた子ども(たとえばアボリジナル、アフリカ系カナダ人その他のマイノリティの子どもおよび障害のある子ども)を対象とした戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保するよう、勧告する。
国際協力
18.委員会は、カナダ国際開発援助〔国際開発庁〕(CIDA)のプログラムを通じて実施されている国際協力を歓迎するとともに、とくに、締約国の援助の約30%が保健、教育および人口〔分野〕に向けられていることを評価する。しかしながら委員会は、2010-2011年度のODA〔政府開発援助〕がGNI〔国民総所得〕の0.33%であり、かつ今後も減少すると予測されていることから、ODAの割合が、OECD/DAC〔経済協力開発機構/開発援助委員会〕の平均よりもさらに低くなり、かつモントレー・コンセンサスで勧告された割合も下回るであろうことに、懸念とともに留意するものである。
19.委員会は、締約国に対し、援助プログラムにおいて子どもに焦点を当てるとともに、援助に関して勧告されている目標(対GNI比0.7%)を達成するため資金拠出水準を高めるよう、奨励する。
データ収集
20.委員会は、条約の全分野を網羅した全国的かつ包括的なデータ収集システムの確立に向けた進展が限られていることに、懸念とともに留意する。委員会は、データ収集のための複雑な諸システムにおいて、州および準州によって異なる定義、概念、アプローチおよび体制が活用されていることから、条約の実施を強化するための進展の評価が困難になっていることに留意するものである。とくに委員会は、締約国報告書に、代替的養護施設に措置されている14~18歳の子どもの人数に関するデータが記載されていないことに留意する。
21.委員会は、全国的かつ包括的なデータ収集システムを設置するとともに、子どもの権利の実現に関して達成された進展を一貫したやり方で評価し、かつ条約の実施の強化を目的とした政策およびプログラムの立案の一助とするための基礎として、収集されたデータを分析するように求めた、締約国に対する勧告をあらためて繰り返す。すべての子どもの状況の分析を容易にするため、データは年齢、性別、地理的所在、民族および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。より具体的に、委員会は、さまざまなレベルにおける政策決定およびプログラムの参考とするため、特別な脆弱状況に置かれた子どもに関する適切なデータを収集しかつ分析するよう、勧告する。
独立の監視
22.カナダのほとんどの州に子どもオンブズマンが設置されていることには留意しながらも、委員会は、連邦レベルで独立の子どもオンブズマンが設置されていないことについての懸念(CRC/C/15/Add.215、パラ14、2003年)をあらためて表明する。さらに委員会は、これらの機関の権限が限定されていること、および、すべての子どもが苦情申立て手続について承知しているわけではない可能性があることを懸念するものである。カナダ人権委員会が連邦レベルで活動しており、かつ苦情を受理する権限を有していることには留意しながらも、委員会は、同委員会が受け付けるのは差別を理由とする苦情のみであり、したがって、条約に基づくすべての権利の侵害について意味のある救済措置を求める可能性がすべての子どもに保障されているわけではないことを、遺憾に思う。
23.委員会は、すべての子どもの権利の包括的かつ体系的な監視を連邦レベルで確保する目的で、締約国が、人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則)に全面的にしたがって連邦子どもオンブズマンを設置するために必要な措置をとるよう、勧告する。さらに委員会は、締約国に対し、それぞれの州および準州ですでに設置されている子どもオンブズマンについて子どもの意識啓発を図るよう、奨励するものである。委員会はまた、一般的意見2号(2002年)に対して注意を喚起しつつ、締約国に対し、独立性および有効性を確保するために必要な人的資源、財源および技術的資源がこの国家的機構〔連邦子どもオンブズマン〕に対して提供されることを確保するようにも求める。
普及および意識啓発
24.委員会は、とくに非政府組織の努力を支援することによって条約に関する意識および理解を促進するために締約国が行なっている努力を評価する。にもかかわらず、委員会は、子ども、子どもとともに働く専門家、親および一般公衆の間で条約に関する意識および知識が限られたままであることを懸念するものである。委員会は、条約に関する情報を組織的に普及し、かつ学校制度に子どもの権利教育を統合するための努力がほとんど行なわれていないことを、とりわけ懸念する。
25.委員会は、締約国に対し、条約を組織的に普及しかつ促進するためにいっそう積極的な措置をとり、公衆一般、子どもとともにまたは子どものために働く専門家および子どもの意識啓発を図るよう、促す。とくに委員会は、締約国に対し、とりわけインターネットおよびウェブへのアクセスを無料で提供する事業者が締約国で広範に利用できる状況を生かした子どもの権利に関するカリキュラム・リソースの開発および活用、ならびに、子どもの権利に関する知識およびその行使を学校におけるカリキュラム、方針および実践に統合する教育上の取組みを拡大するよう、促すものである。
研修
26.出入国管理官および政府の弁護士等の専門家を対象として実施されている、条約に関する若干の研修についての情報にも関わらず、委員会は、子どものためにまたは子どもとともに働くすべての専門家を対象とした、子どもの権利および条約に関する体系的研修が行なわれていないことを懸念する。とくに委員会は、法執行官、検察官、裁判官および弁護士等の少年司法関係者が条約に関する知識を欠いており、かつ条約についての研修を受けていないことを懸念するものである。
27.委員会は、締約国に対し、すべての専門家(政府職員、司法機関、ならびに、保健サービスおよび社会サービスにおいて子どもとともに働く専門家を含む)を対象として子どもの権利に関する研修を実施するための統合的戦略を策定するよう、促す。委員会は、締約国に対し、このような研修プログラムの開発に際して、立法および公共政策、プログラム策定、アドボカシーならびに意思決定プロセスおよび説明責任の確保における条約の活用についての研修に焦点を当てるよう、促すものである。
子どもの権利と企業セクター
28.委員会は、カナダで登記している多国籍企業であってその活動がカナダ領域外の先住民族の権利に悪影響を及ぼしている企業、とくにガス会社、石油会社および鉱業会社に関する措置を締約国がとっていない旨の、人種差別撤廃委員会が表明した懸念(CERD/C/CAN/CO/19-20、パラ14)に賛同する。委員会は、締約国に、国外で行なわれた人権侵害および環境侵害について締約国出身のすべての企業および法人の責任を問うための規制枠組みが存在しないことをとりわけ懸念するものである。
29.委員会は、締約国が、とくに子どもの権利との関連で、かつ2008年6月18日の人権理事会決議8/7(パラ4(d))および2011年6月16日の同決議14/7(パラ6(f))に照らし、企業セクターが人権、労働、環境その他の問題に関わる国際的および国内的基準を遵守することを確保するための規則を確立しかつ実施するよう、勧告する。とくに委員会は、締約国が以下のことを確保するよう勧告するものである。
  • (a) とくにカナダ領域外で操業するガス会社、鉱業会社および石油会社を対象とした、その活動が人権に影響を及ぼしまたは環境その他の問題に関する基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を脅かさないことを確保するための、明確な規制枠組みが確立されること。
  • (b) 国内外の企業による、環境および健康ならびに人権に関する国際的および国内的基準の実施が監視され、かつ、違反が行なわれた場合に、子どもに対する影響にとくに焦点を当てながら、適切な制裁および救済措置が実施されること。
  • (c) 環境上および健康上の汚染ならびに自社の活動が人権に及ぼす影響に対応するための企業の計画について評価および企業との協議が行なわれ、かつ当該計画が公衆に開示されること。
  • (d) その際、人権理事会が2008年に全会一致で採択した国連・ビジネスと人権枠組みを考慮すること。

B.子どもの定義(条約第1条)

30.委員会は、18歳未満のすべての子どもが条約に基づく全面的保護から利益を得られているわけではないこと(とくに、一部の州および準州において成人として裁判の対象とされる可能性がある子ども、および、一部の州および準州において性的搾取から適切に保護されていない16~18歳の子ども)を懸念する。
31.委員会は、締約国に対し、子どもの定義に関する国内のすべての規定が条約第1条と全面的に一致することを確保する(とくに、18歳未満のすべての子どもが成人として裁判の対象とされえないようにし、かつ、性的搾取の被害を受けた18歳未満のすべての子どもが適切な保護を受けることを確保する)よう、促す。

C.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
32.「ストップ人種主義」全国ビデオ・コンテストなど、差別に対応し、かつ異文化間の理解を促進しようとする締約国の努力は歓迎しながらも、委員会は、民族、ジェンダー、社会経済的背景、国民的出身その他の事由に基づく差別が引き続き蔓延していることを懸念する。とくに委員会は、以下のことを懸念するものである。
  • (a) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもが刑事司法制度および家庭外養護において相当過剰に対象とされていること。
  • (b) 脆弱な状況に置かれた子ども(マイノリティの子ども、移民および障害のある子どもを含む)が、基礎的サービスへのアクセスに関する深刻かつ広範な差別に直面していること。
  • (c) とくに、脆弱な状況に置かれた女子が不相応なほどの影響を受けていることに照らし、周縁化されたコミュニティおよび不利な立場に置かれたコミュニティの状況の改善を目的としたプログラム(貧困または暴力事件と闘うためのプログラム等)の策定および実施においてジェンダーの視点が欠けていること。
  • (d) アボリジナルの子どもを対象とした児童福祉サービスに対し、アボリジナルではない子どもに対する場合よりも少ない財源しか提供されていないという会計検査院長の知見を受けて、なんらの措置もとられていないこと。
  • (e) 社会的移転制度その他の社会手当/税控除によって直接間接に経済的差別が生じていること(州および準州に対し、国家子ども手当制度に基づく子ども手当の支給額を、福祉措置を受けている親が受給する社会援助の額から控除することが認められていることなど)。
33.委員会は、締約国が、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択された宣言および行動計画ならびに2009年のダーバン・レビュー会議で採択された成果文書をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての情報を、次回の定期報告書に記載するよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもが刑事司法制度および家庭外養護において過剰に対象とされている状況に対応するため、緊急の措置をとること。
  • (b) 脆弱な状況に直面しているすべての子ども(民族的マイノリティ、障害のある子ども、移民その他の子どもを含む)によるサービスへのアクセスに関する格差に対応すること。
  • (c) いかなるプログラムまたは景気刺激策(とくに暴力との闘い、貧困およびその他の脆弱性の是正に関するプログラム)の策定および実施においてもジェンダーの視点が編入されることを確保すること。
  • (d) アボリジナルの子どもが政府によるすべてのサービスに全面的にアクセスでき、かつ差別なく諸資源を受領できることを法律上も実践上も確保するため、即時的措置をとること。
  • (e) 女性、子ども、高齢者、障害のある人々、アボリジナル、アフリカ系カナダ人およびその他のマイノリティの構成員に特段の注意を払いながら、社会的移転制度その他の社会手当/税控除制度の支給額削減が社会福祉に依拠している人々の生活水準に及ぼす直接間接の影響について詳細な評価を実施すること。
子どもの最善の利益
34.委員会は、子どもの最善の利益の原則が広く知られておらず、〔かつ、〕あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて、この原則が適切に統合されておらず、かつ一貫して適用されていないことを懸念する。とくに委員会は、庇護希望者、難民および(または)入管収容に関わる状況において、子どもの最善の利益が適切に適用されていないことを懸念するものである。
35.委員会は、締約国に対し、子どもの最善の利益の原則が、あらゆる立法上、行政上および司法上の手続ならびに子どもに関わりかつ子どもに影響を与える政策、プログラムおよびプロジェクトにおいて適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を強化するよう、促す。これとの関連で、締約国は、子どもの最善の利益に関する判断指針を示す手続および基準をすべての分野で策定するとともに、当該手続および基準を官民の社会福祉施設、裁判所、行政機関および立法機関に対して普及するよう奨励されるところである。司法上および行政上のあらゆる判決および決定の法的理由もこの原則に基づくものであるべきであり、子どもの最善の利益の個別評価において用いられた基準を明らかにすることが求められる。
子どもの意見の尊重
36.委員会は、すべての子どもが監護事件において意見を聴かれる権利を有する旨判示した、締約国のユーコン準州最高裁判所の決定(2010年)を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、法律、政策および環境に関わる問題ならびに子どもに影響を与える行政プロセスへの、意味がありかつエンパワーメントに基づく子ども参加を促進するための機構が不十分であることを懸念するものである。
37.委員会は、意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、条約第12条にしたがい、意見を聴かれる子どもの権利の実施を引き続き確保するよう勧告する。委員会は、その際、締約国が、家庭、コミュニティおよび学校において、意味がありかつエンパワーメントに基づいたすべての子どもの参加を促進するとともに、望ましい実践を発展させかつ共有するよう勧告するものである。具体的に、委員会は、子どもに関わるすべての公的意思決定手続(監護事件、児童福祉に関する決定、刑事司法、出入国管理および環境〔に関わるもの〕を含む)について子どもの意見を要件のひとつとするよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、司法上および行政上の手続において意見を聴かれる権利が侵害された場合に子どもが苦情を申し立てられ、かつ不服申立て続きにアクセスできることを確保することも、促すものである。

D.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a))

出生登録
38.締約国において出生登録がほぼ完全に行なわれていることには肯定的に留意しながらも、委員会は、とくに親が婚姻していない場合に、政府機関が出生証明書の原本から父の氏名を不法に削除したために、一部の子どもがそのアイデンティティを剥奪されてきたことを深刻に懸念する。
39.委員会は、締約国が、出生登録が不法に修正されまたは親の氏名が削除されてきた州および準州において法律および実務を見直すよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、当該出生証明書に記載されていた氏名が回復されることを確保するとともに、これを達成するために必要であれば法改正を行なうよう、促すものである。
国籍および市民権
40.2009年4月の市民権法改正の積極的側面は歓迎しながらも、委員会は、改正法の一部規定で、カナダ人を親として国外で出生した子どものカナダ市民権の取得について相当の制限が課されていることを懸念する。委員会は、このような制約が、事情によっては無国籍につながる可能性があることを懸念するものである。さらに委員会は、政府職員または軍の要員を親として国外で出生した子どもはカナダ市民権の取得に関するかかる制限を免除されていることを懸念する。
41.委員会は、締約国が、カナダ人を親として国外で出生した子どものカナダ市民権取得に関する制限を廃止する目的で、市民権法改正法の規定のうち条約と一致しないものを見直すよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、無国籍者の地位に関する1954年の条約の批准を検討することも促すものである。
アイデンティティの保全
42.委員会は、著しく過剰に児童福祉制度の対象とされている脆弱な状況に置かれた子ども(アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもを含む)が、しばしば、その家族およびコミュニティとのつながり、ならびに、自己の文化および遺産に関する教育が行なわれていないためにその文化とのつながりを喪失していることを懸念する。委員会はまた、連邦法上、アボリジナルの男性はアボリジナルとしての地位を2世代に承継させる法的な資格を有しているのに対し、アボリジナルの女性はアボリジナルとしての地位をその孫に承継させる権利を有していないことも、懸念するものである。
43.委員会は、締約国に対し、すべての子どものアイデンティティの保全が全面的に尊重されることを確保するとともに、児童福祉制度の対象とされているアボリジナルの子どもが自己のアイデンティティを保全できることを確保するために効果的な措置をとるよう、促す。この目的のため、委員会は、締約国に対し、マイノリティおよび先住民族に属する子どもの権利(名前、文化および言語等)に根拠を与え、かつ、児童福祉制度の対象とされている多数の子どもが自己の文化的背景についての教育を受けることおよびそのアイデンティティを失わないことを確保するための、立法上および行政上の措置をとるよう促すものである。委員会はまた、女性および男性がアボリジナルとしての地位を孫に承継させる平等な法的権利を有することを確保するため、締約国が法律を改正することも勧告する。

E.子どもに対する暴力(条約第19条、第37条(a)、第34条および第39条)

体罰
44.委員会は、刑法第43条に基づき、締約国において体罰が法律で容認されていることに重大な懸念を覚える。さらに委員会は、カナダ子ども・若者・法律財団対カナダ事件における最高裁判所の決定(2004年)が、体罰が正当化されるのは「矯正を目的とする軽度の力の行使であって一時的かつ軽微な性質のもの」の場合のみであると判示しながら同法を支持したことに、遺憾の意とともに留意するものである。さらに委員会は、体罰の合法化が他の形態の暴力につながる可能性があることを懸念する。
45.委員会は、子どものしつけにおける「合理的な力」の使用を認めている現行規定を削除するために刑法第43条を廃止するとともに、家庭、学校および子どもが措置される可能性のある他の施設における、あらゆる年齢層の子どもに対するあらゆる形態の暴力を、いかに軽いものであっても明示的に禁止するよう、促す。加えて委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 体罰の悪影響に関する意識啓発を図りつつ、かつ子どもたちの関与を得ながら、親、公衆、子どもおよび専門家を対象とした、代替的形態のしつけおよび規律に関する意識啓発を強化しおよび拡大し、ならびに子どもの権利の尊重を促進すること。
  • (b) 子どもとともに働くすべての専門家(裁判官、法執行官、保健専門家、社会福祉および児童福祉の専門家ならびに教育専門家を含む)を対象として、子どもに対する暴力のあらゆる事案の速やかな発見、対応および通報のための研修が行なわれることを確保すること。
虐待およびネグレクト
46.「家族間暴力防止プログラム」のような取り組みには留意しながらも、委員会は、「カナダ児童虐待・ネグレクト通報事件研究2008」で明らかにされたように、子どもに対する暴力および不当な取扱いが高い水準で行なわれていることを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。
  • (a) すべての子どもに対する暴力を防止するための国家的な包括的戦略が策定されていないこと。
  • (b) 脆弱な状況に置かれた女性および女子(アボリジナル、アフリカ系カナダ人および障害のある女性および女子を含む)がとくに影響を受けていること。
  • (c) 家族間暴力の事案への介入(禁止命令を含む)の件数が少ないこと。
  • (d) 被害を受けた子どもおよび加害者のためのカウンセリングが行なわれておらず、かつ、ドメスティックバイオレンスの被害を受けた子どもの再統合のためのプログラムが不十分であること。
47.委員会は、締約国が委員会の一般的意見13号(2001年)を考慮するよう勧告するとともに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) すべての子どもに対するすべての形態の暴力を防止するための国家的戦略を策定しかつ実施するとともに、この戦略に対して必要な資源を配分し、かつ監視機構の設置を確保すること。
  • (b) アボリジナルの女性および女子に対して暴力が高い水準で行なわれていることを助長する要因が十分に理解され、かつ国および州/準州の計画で対応されることを確保すること。
  • (c) 暴力の被害を受けたすべての子どもに対し、是正および保護のための即時的手段(保護命令または禁止命令を含む)が提供されることを確保すること。
  • (d) ドメスティックバイオレンスの被害を受けた子どもに対し、家族再統合と同時に効果的なフォローアップ支援を確保するための機構を設けること。
性的搾取および虐待
48.委員会は、インターネット上の性的搾取から子どもを保護するための国家戦略が2004年に発表されたこと、および、締約国がこのプログラムの実施に相当量の資源を配分していることに、評価の意とともに留意する。委員会はさらに、締約国が、インターネット上の子どもの性的搾取と闘うための法執行機関の調整に対し、相当の政治的意思を示してきたことに肯定的に留意するものである。にもかかわらず、委員会は、締約国がこれまで、児童買春および子どもの制定虐待のような他の形態の性的搾取に対応するための十分な措置をとってこなかったことを懸念する。委員会はまた、子どもの性的搾取の防止に注意が向けられていないこと、ならびに、子どもの性的搾取に関する捜査および訴追の件数が少なく、かつ有罪判決を言い渡された者に対する刑が不十分であることも、懸念するものである。とくに委員会は、児童買春の被害を受けたアボリジナルの女子が行方不明になりまたは殺害された事件があること、および、これらの事件について十全な調査が行なわれず、かつ加害者が処罰されないままになっていることに、重大な懸念を覚える。
49.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 現行の政府の戦略およびプログラムを拡大し、すべての形態の性的搾取をその対象とすること。
  • (b) 児童買春事件に関する法執行機関の捜査実務を調整しかつ強化するための行動計画を策定するとともに、女子が行方不明となっているすべての事件について捜査が行なわれ、かつ法律の及ぶ最大限の範囲で訴追されることを精力的に確保すること。
  • (c) 刑罰が犯罪にふさわしいものとなることを確保するため、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書上の犯罪について有罪判決を言い渡された者に対して量刑の要件を科すこと。
  • (d) 性的搾取〔および〕虐待について有罪判決を受けた者を対象とするプログラム(更生プログラム、および、元加害者を追跡する連邦レベルの監視制度を含む)を確立すること。
有害慣行
50.委員会は、とくに移民コミュニティおよび一部の宗教的コミュニティ(ブリティッシュコロンビア州バウンティフルの複婚コミュニティなど)において、強制的な児童婚からの保護が不十分であることを懸念する。
51.委員会は、締約国が、法定年齢に満たない段階での強制婚からすべての子どもを保護し、かつ法律による複婚の禁止を執行するために、立法措置、ならびに、捜査および法執行を重点的に向上させることを含む、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
あらゆる形態の暴力からの子どもの自由
52.子どもに対する暴力に関する国連研究の勧告(A/61/299)を想起し、委員会は、締約国が、子どもに対するあらゆる形態の暴力の撤廃に優先的に取り組むよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、委員会の一般的意見13号(2011年)を考慮し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対処するための国家的な包括的戦略を策定すること。
  • (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対処するための国家的な調整枠組みを採択すること。
  • (c) 暴力が有するジェンダーの側面に特段の注意を払うこと。
  • (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および関連の国連機関と協力すること。

F.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

家庭環境
53.委員会は、とくに立法上および制度上の改革を通じて家族の支援を向上させようとする締約国の努力を歓迎する。しかしながら委員会は、不利な立場に置かれた一部のコミュニティの家族、とくに貧困を理由として危機的状況に置かれている家族が、子どもの養育責任を果たすにあたって十分な援助を得られていないことを懸念する。とくに委員会は、妊娠した女子および10代の母親のうち学校を中退する者の数が多く、そのためその子どもがいっそう貧しい状況に置かれることを懸念するものである。
54.委員会は、締約国が、地方レベルでの時宜を得た対応(子育てカウンセリングが必要な親に対するサービス、および、アボリジナルおよびアフリカ系カナダ住民の場合には親としての役割を果たせるようにするための文化的に適切なサービスを含む)をとることにより、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助を提供するための努力を強化するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、妊娠した女子および10代の母親に教育の機会を提供することにより、これらの女子が教育を修了できるようにするよう奨励するものである。
家庭環境を奪われた子ども
55.委員会は、代替的養護の対象とされている子どもが多いこと、および、ネグレクトもしくは金銭的困難または障害の場合の最初の手段として子どもが家族から頻繁に分離されていることを、深く懸念する。委員会はまた、締約国の代替的養護制度の不十分さおよびそこで行なわれている人権侵害についても深刻に懸念するものである。これには以下のものが含まれる。
  • (a) 措置の理由について貧弱な調査しか行なわれず、かつこのような理由が十分に定義されていないことを理由とする、子どもの不適切な措置。
  • (b) 健康、教育、ウェルビーイングおよび発達の面で、養護を受けている若者にとっての成果が一般住民層の場合よりも芳しくないこと。
  • (c) 養護を受けている子どもの虐待およびネグレクト。
  • (d) 18歳に達して養護を離れる子どもに対して提供される、準備のための支援が不十分であること。
  • (e) 養育担当者のスクリーニング、研修、支援およびアセスメントが不十分であること。
  • (f) アボリジナルおよびアフリカけカナダ人の子どもがしばしばコミュニティ外に措置されていること。
56.委員会は、締約国に対し、親および法定保護者が子どもの養育責任を果たすにあたって適切な援助および支援サービス(親向けの教育、カウンセリングおよびコミュニティ基盤型プログラムを通じてのものも含む)を提供することによって子どもがその家庭環境から分離されることを回避し、かつ施設で生活する子どもの人数を減らす目的で、即時的な防止措置をとるよう促す。さらに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう求めるものである。
  • (a) 施設養護を受けている子ども1人ひとりの措置の必要性について、常に、権限のある学際的な専門家チームによって審査が行なわれること、ならびに、最初の措置決定は最短の期間について行なわれ、かつ当該決定が民事裁判所による司法審査の対象とされることおよびその後も条約にしたがって再審査されることを確保すること。
  • (b) 保育ワーカーおよび家庭外養護の養育担当者の選抜、研修および支援に関する基準を策定するとともに、これらの養育者の定期的評価を確保すること。
  • (c) 養護を受けている子どもに対し、保健ケアおよび教育への平等なアクセスを確保すること。
  • (d) ネグレクトおよび虐待の事案を通報し、かつ加害者に対して相応の制裁を与えるための、アクセスしやすく、効果的な、かつ子どもにやさしい機構を設置すること。
  • (e) 移行の計画に早い段階から関与できるようにし、かつ離脱後にも援助を利用できるようにすることにより、若者に対し、養護を離れる前に十分な準備の機会および支援を提供すること。
  • (f) 代替的養護を必要とするマイノリティ・コミュニティの子どものための適当な解決策(たとえば親族養育等)を見出すため、すべてのマイノリティのコミュニティ指導者およびコミュニティとの協力を強化すること。
養子縁組
57.委員会は、子どもには双方の生物学的親の身元を知る権利があると判示した、オンタリオ対マーチランド(Ontario v. Marchland)事件における最近の裁判所の決定に、積極的なものとして留意する。しかしながら委員会は、養子縁組に関する国内の法律、政策および実務がそれぞれの州および準州によって定められており、かつ法域間で相当に異なっていること、ならびに、その結果、カナダが国レベルの養子縁組法、養護を受けている子どもまたは養子縁組に関する国家的基準および国家的データベースを有しておらず、また養子縁組の結果に関する既知の調査もほとんどないことを、懸念するものである。委員会はまた、養子縁組情報開示法について、前回の総括所見(CRC/C/25/Add.215、パラ31)で勧告されたとおり、出生に関する情報を養子が入手できることを確保するための改正が行なわれていないことも懸念する。委員会はまた、国際養子縁組に関する情報が締約国〔報告書〕で提供されなかったことも遺憾に思うものである。
58.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約および国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約の遵守を確保するための法律を、必要なときは連邦、州および準州のレベルにおけるものも含めて採択すること。
  • (b) 養子の生年月日および出生場所ならびにその実親に関する情報が保全されることを確保するため、遅滞なく法改正を行なうこと。
  • (c) 次回の定期報告書において、国内養子縁組および国際養子縁組に関する詳細な情報および細分化されたデータを提供すること。

G.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条、第27条(1~3項))

障害のある子ども
59.委員会は、障害のある人の権利に関する条約の批准(2010年)を歓迎する。締約国内の障害児のインクルージョンについて進展があったことは認めながらも、委員会は、以下のことを深く懸念するものである。
  • (a) 締約国によってPALS(参加・活動制限調査)が最後に実施されたのが2006年であり、その後、これに代わるものとして障害のある子どもに関するデータを収集するための他のいかなる努力も、いまのところ行なわれていないこと。その結果、障害のある子どもにとってのインクルージョンおよび平等なアクセスに関する政策の基礎とすべき、2006年以降の総合的なまたは細分化されたデータが存在しなくなっている。
  • (b) インクルーシブ教育へのアクセスに関して締約国の諸州・準州間で大きな格差があり、いくつかの州および準州では教育がほとんど分離学校で行なわれていること。
  • (c) 障害のある子どもの養育負担が世帯収入および親の就労にしばしば悪影響を与えていること、ならびに、一部の子どもが必要な支援およびサービスにアクセスできていないこと。
  • (d) 障害のある子どもは障害のない子どもに比べて暴力および搾取の被害を2倍以上受けやすいこと、ならびに、人口全体の殺人率は全般的に低下しているにもかかわらず、障害のある人々に対する殺人および子殺しの割合は上昇しているように思われること。
60.委員会は、締約国が障害のある人の権利に関する条約の規定を実施するよう勧告するとともに、委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、締約国に対して以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 締約国ならびにそのすべての州および準州が障害のある子ども全員を対象とするインクルーシブな政策および機会均等を確立することを可能とする、障害のある子どもに関する総合的なかつ細分化されたデータの収集システムを、可能なかぎり早期に確立すること。
  • (b) 障害のあるすべての子どもがすべての州および準州でインクルーシブ教育にアクセスでき、かつ、障害のある子どものみを対象とする分離学校への出席を強要されないことを確保すること。
  • (c) 金銭的制約がサービスへのアクセスの妨げとならず、かつ世帯収入および親の就労が悪影響を受けないことを確保するため、障害のある子どもおよびその家族に対してあらゆる必要な支援およびサービスが提供されることを確保すること。
  • (d) 障害のある子どもをあらゆる形態の暴力から保護するため、あらゆる必要な措置をとること。
母乳育児
61.カナダ産前栄養プログラム(CPNP)のようなプログラムは歓迎しながらも、委員会はなお、締約国において(とくに不利な状況に置かれた女性の間で)母乳育児率が低いこと、および、これに対応した、締約国のすべての母親の間で母乳育児を奨励することを援助するプログラムが設けられていないことを、懸念する。委員会はまた、締約国が、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を採用したにもかかわらず、同国際基準の諸条項を自国の規制枠組みに統合していないこと、および、その結果、人工乳企業による同基準および関連の世界保健機関決議の違反が常態となっているにもかかわらず処罰の対象になっていないことも、遺憾に思うものである。
62.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 「乳幼児の栄養に関する世界戦略」で勧告されているとおり、乳児の出生後6か月間の完全母乳育児および2年以上の継続的母乳育児を促進し、かつすべての母親がこれに成功できるようにするためのプログラムを確立すること。
  • (b) 母乳育児の促進を強化し、かつ「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を執行するとともに、違反を調査しかつ制裁を科すための適切な措置をとること。
健康
63.委員会は、締約国内において、良質な保健ケアに無償でかつ広範にアクセスできることに、積極的側面として留意する。しかしながら委員会は、締約国で子どもの肥満の発生率が高いことに懸念とともに留意し、かつ、ファストフードその他の健康的でない食品の製造および販売促進が(とくに子どもを対象とするものに関して)規制されていないことを懸念するものである。
64.委員会は、締約国が、とくに子どもの間で健康的なライフスタイル(運動を含む)を促進し、かつファストフードおよび健康的でない食品の製造および広告(とくに子どもを対象とするもの)の規制管理の強化を確保することにより、子どもの肥満の発生に取り組むよう勧告する。
精神保健
65.委員会は、締約国が、5年の期間にわたって「アボリジナル青年自殺防止国家戦略」を実施するために相当の資源を提供したことに、評価の意とともに留意する。このようなプログラムにもかかわらず、委員会は以下のことを懸念するものである。
  • (a) 締約国全体で、とくにアボリジナル・コミュニティに属する若者の間で、若者の自殺率が引き続き高いこと。
  • (b) 行動上の問題を有していると診断される子どもの割合がますます高くなっていること、および、根本的原因を明示的に検討し、または親および子どもに対して投薬に代わる支援および治療法を提供することなく、子どもに薬が過剰に投与されていること。この文脈において、開業医向けの教育資源および資金拠出制度が「応急的解決策」に偏っていることは委員会にとって懸念の対象である。
  • (c) 保健従事者から提供される十分な情報に基づいた子どもおよび親のインフォームド・コンセントが侵害されていること。
66.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 早期発見にとくに注意を払いながら、子どもの自殺を防止するための介入の質を強化しおよび拡大し、ならびに、全学校における、秘密が守られる心理サービスおよびカウンセリング・サービス(家庭におけるソーシャルワーク支援を含む)へのアクセスを拡大すること。
  • (b) 子どもに対する精神刺激薬の過剰な使用についての専門家による監視システムを確立するとともに、行動上および心理上の介入へのアクセスを向上させつつ、根本的原因を理解し、かつ診断の正確性を改善するための措置をとること。
  • (c) 子どもに対する向精神薬の使用に関連した保健従事者によるインフォームド・コンセント実践の監視および監査を目的とする監視機構を、各州および準州の保健省下に設置することを検討すること。
生活水準
67.締約国の大多数の子どもの基礎的ニーズが満たされていることは評価しながらも、委員会は、所得の不平等が広く存在しかつ拡大していること、および、2000年までに子どもの貧困に終止符を打つという議会の決意にもかかわらず、子どもの貧困に包括的に取り組むための国家的戦略が策定されていないことを、懸念する。委員会は、子どもを対象とする、税制上の優遇措置および社会的移転の配分が不公平であることをとりわけ懸念するものである。さらに委員会は、アボリジナルの子ども、アフリカ系カナダ人の子どもおよびその他のマイノリティの子どもに対する福祉サービスの提供が、質およびアクセス可能性の点で他の子どもに提供されるサービスと同等ではなく、かつこのような子どものニーズを満たすのに十分ではないことを懸念する。
68.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) より幅広い国家貧困削減戦略の一環として子どもの貧困を解消するための、国家的な、調整のとれた戦略を策定しかつ実施すること。当該計画には、子どもの貧困削減に関する年次数値目標も含まれるべきである。
  • (b) 税制上の優遇措置および社会的移転の影響を評価し、かつ、もっとも被害を受けやすい状況および不利な状況に置かれた子どもが優先されることを確保すること。
  • (c) アボリジナル、アフリカ系カナダ人その他のマイノリティの子どもに提供される、福祉サービスを含む資金その他の支援(福祉サービスを含む)〔訳者注/重複は原文ママ〕が、質およびアクセス可能性の点で締約国の他の子どもに提供されるサービスと同等であり、かつこれらの子どものニーズを満たすのに十分であることを確保すること。

H.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

69.脆弱な状況に置かれた子どもの教育上の成果を向上させるために締約国が行なっているさまざまな取り組みは歓迎しながらも、委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 子どもを対象とする基礎的な公的学校サービスの一環として必要とされる教材および活動について、義務教育段階で利用料を払う必要があること。
  • (b) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもの中退率が高いこと。
  • (c) 学校において、アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもに対し、停退学および警察への付託のような懲戒措置が不適切にかつ過剰に用いられていること、ならびに、これらの集団が適応指導学校(alternative school)に過剰に措置されていること。
  • (d) 主としてマイノリティの子どもおよび障害のある子どもを対象とする分離学校が多数設置されており、これが差別につながっていること。
  • (e) 学校でいじめが広範に発生していること。
70.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 義務教育で利用料を払う必要がないようにするための措置をとること。
  • (b) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人のコミュニティとのパートナーシップに基づき、アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもの中退率が高い問題に取り組むための国家的戦略を策定すること。
  • (c) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもを対象とした懲戒措置としての停退学および警察への付託を防止しかつ回避すること、ならびに、これらの子どもが適応指導学校に転籍されることを防止すること(同時に、問題に対応するために必要なスキルおよび知識が専門家に対して提供されることを確保すること)を目的とした措置をとること。
  • (d) 分離および差別を防止するため、マイノリティの子どもおよび障害のある子どもが教育環境に統合されることを確保すること。
  • (e) あらゆる形態のいじめおよびいやがらせと闘うための措置(教員および学校で働くすべての職員ならびに生徒が学校およびケアのための施設において多様性を受け入れる能力を向上させること等)ならびに子ども、親および専門家の紛争解決スキルを向上させるための措置を増進させること。
乳幼児期のケアおよび教育
71.委員会は、締約国が相当の資源を有しているにもかかわらず、乳幼児期の発達の向上ならびに負担可能かつアクセス可能な乳幼児期のケアおよびサービスに資金が拠出されていないことを懸念する。委員会はまた、保育費用が高いこと、子どもが利用可能な空きがないこと、〔ならびに、〕すべての保育職員を対象とする統一的な研修要件および良質なケアの基準が設けられていないことも、懸念するものである。委員会は、4歳未満の子どもを対象とする乳幼児期のケアおよび教育が引き続き不十分であることに留意する。さらに委員会は、締約国における乳幼児期のケアおよび教育の大部分が民間の利益追求機関によって提供されており、その結果、ほとんどの家族にとってそのサービスが手の届かないものとなっていることを懸念するものである。
72.委員会の一般的意見7号(2005年)を参照しつつ、委員会は、締約国が、以下の措置をとること等により、乳幼児期のケアおよび教育の質および範囲をさらに向上させるよう勧告する。
  • (a) このようなケアが、子どもの全般的発達および親の能力の強化を包摂するホリスティックなやり方で提供されることを確保する目的で、0~3歳の子どもに対するこのようなケアの提供に優先的に取り組むこと。
  • (b) 国営施設か民間施設のいずれによるものであるかに関わらず、無償のまたは手が届く範囲の乳幼児期ケアの提供を考慮することにより、乳幼児期のケアおよび教育の、すべての子どもにとっての利用可能性を高めること。
  • (c) 保育職員の研修およびその労働条件の向上に関する最低要件を確立すること。
  • (d) 乳幼児期により脆弱な状況に置かれている子どもに焦点を当てながら、乳幼児期の政策およびプログラム(子どものためのすべての給付および移転を含む)に対して現在行なわれている支出についての公正な影響分析を明らかにするための研究を実施すること。

I.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)、第32~36条)

子どもの庇護希望者および難民
73.委員会は、経済移民に関する締約国の進歩的政策を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、最近、非正規移民であることを理由する16~18歳の子どもの収容を認める「カナダ移民制度保護法」という名称の法律が成立したこと(2012年6月)に重大な懸念を覚えるものである。さらに委員会は、締約国が、前回の勧告(CRC/C/15/Add.215、パラ47、2003年)にもかかわらず、保護者のいない子どもおよび庇護希望者である子どもについての国家的政策を採択していないことを遺憾に思うとともに、出入国管理および難民保護法が、保護者のいる子どもおよび保護者のいない子どもを区別しておらず、かつ子どもの最善の利益を考慮していないことを懸念する。委員会はまた、子どもの庇護希望者の収容が、子どもの最善の利益を考慮することなく頻繁に行なわれていることも深く懸念するものである。さらに、保護者のいない子どもについては代理人が任命されることは認知しながらも、委員会は、子どもに対して後見人が常に提供されるわけではないことに、懸念とともに留意する。加えて、委員会は、ロマおよびその他の移民の子どもがしばしば、不安定な地位のまま、長期間(数年に及ぶことさえある)、退去強制に関する決定待ちの状態に置かれることを懸念するものである。
74.委員会は、締約国に対し、出入国管理および庇護に関する法律を条約その他の関連の国際基準に全面的に一致させるよう促すとともに、前回の勧告(CRC/C/15/Add.215、パラ47、2003年)をあらためて繰り返す。締約国は、その際、〔出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱い〕に関する委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮するよう促されるところである。加えて、委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 庇護希望者、難民および(または)非正規移民である子どもを収容する政策を再検討するとともに、収容が、子どもの最善の利益にしたがって例外的な事情がある場合にのみ行なわれ、かつ司法審査の対象とされることを確保すること。
  • (b) 法律および手続において、すべての出入国管理手続および庇護手続で子どもの最善の利益が第一次的考慮事項として活用されること、ならびに、最善の利益の判断が、このような手続を十分に適用してきた専門家によって一貫して行なわれることを確保すること。
  • (c) 保護者のいない移民の子どものための独立した後見人制度を速やかに設置すること。
  • (d) 子どもが決定を長期間待たなくてもよいようにするため、子どもの庇護希望者の事案の処理が迅速に進められることを確保すること。
  • (e) 国連難民高等弁務官「国際的保護に関するガイドライン第8号:1951年条約第1条A(2)および第1条Fに基づく子どもの庇護申請」の実施を検討すること。委員会は、この勧告を実施する際、締約国が、庇護希望者、難民および(または)入管被収容者である子どものための政策および手続において子どもの最善の利益の原則が正当な優越性を与えられること、ならびに、出入国管理機関が子どもの最善の利益の原則および手続についての研修を受けることを確保する必要があることを、強調する。
武力紛争下の子ども
75.対話の際に代表団から口頭で提供された回答には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する条約の選択議定書の実施に関する、第8条第2項にしたがったフォローアップの情報がなかったことに深刻な遺憾の意を覚える。委員会は、志願兵の採用手続において最年長者を優先させ、かつ志願入隊年齢の引き上げを検討するよう求めた前回の総括所見の勧告(CRC/OPAC/CAN/C0/1、パラ9、2006年)にもかかわらず、締約国がこの旨の措置を検討してこなかったことに、深い懸念を表明するものである。委員会は、加えて、新兵募集プログラムが実際にはアボリジナルの若者を積極的対象としている可能性があり、かつ高校の敷地内で実施されていることに懸念を表明する。
76.委員会は、前回の勧告(CRC/OPAC/CAN/C0/1)をあらためて繰り返すとともに、締約国が、子どもの権利委員会に対する次回の定期報告書に、武力紛争への子どもの関与に関する選択条約〔条約の選択議定書〕の実施およびフォローアップ〔に関する情報〕を記載するよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、志願入隊年齢を18歳に引き上げることを検討し、かつ、それまでの間は志願兵の採用手続において最年長者を優先させるよう、勧告するものである。委員会はさらに、アボリジナルの子どもまたは脆弱な状況にある他のいかなる子どもも新兵募集の積極的対象とされるべきではないこと、および、締約国が高校の敷地におけるこれらのプログラムの実施を再考すべきことを勧告する。
77.委員会は、最近になってウマル・カドル(Omar Kadr)が締約国の保護下に戻されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、ウマル・カドルが、元子ども兵として、条約に基づく諸権利および適切な処遇を与えられてきていないことを懸念するものである。とくに委員会は、ウマル・カドルが、グアンタナモで抑留されていた際の不当な取扱いを含む重大な人権侵害を経験し(このことはカナダ最高裁判所も認めている)、かつ、このような侵害に対する適切な補償および救済を与えられていないことを懸念する。
78.委員会は、締約国に対し、軍隊または武装集団に関係した子どもに関するパリ原則および指針にしたがったリハビリテーション・プログラムを速やかにウマル・カドルに対して提供するとともに、ウマル・カドルに対し、カナダ最高裁判所によって同人が経験したと判示された人権侵害に関する十分な救済が提供されることを確保するよう、促す。
経済的搾取(児童労働を含む)
79.委員会は、児童労働および子どもの搾取について締約国報告書で情報が提供されなかったことを遺憾に思い、かつ、児童労働に関するデータがすべての州および準州で体系的に収集されているわけではないことに懸念とともに留意する。委員会はまた、締約国に、州および準州における最低就労年齢を定めた連邦法がないことも懸念するものである。委員会はまた、一部の州および準州で、16歳〔以上〕の子どもが特定の態様の危険な労働に就くことが認められていることにも懸念を表明する。
80.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 義務教育〔修了〕年齢と一致する16歳を全国的な最低就労年齢として定めること。
  • (b) 18歳未満の子どもが危険なかつ安全性を欠いた労働環境から十分に保護されることを確保するため、州および準州の法律を調和させること。
  • (c) 子どもの権利の保護に関する公的説明責任を履行するひとつの形態として、危険な児童労働および労働条件の発生件数に関する、年齢、性別、地理的所在および社会経済的背景の別に細分化された体系的なデータ収集のための統一的機構を設置するための措置をとること。
  • (d) 就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)の批准を検討すること。
売買、人身取引および誘拐
81.委員会は、子どもの人身取引について有罪判決を受けた者に対して必要的に最低限の刑を言い渡すよう要求する法案C-268号が成立したこと(2010年)を歓迎する。しかしながら委員会は、人身取引の被害を受けた子どもを特定したうえで保護する法執行機関の能力が弱いこと、および、この点に関する捜査および訴追の件数が少ないことを懸念するものである。委員会はまた、子どもの人身取引のほとんどが複雑な事件であるため、法執行官および検察官が捜査のための明確な指針を有しておらず、かつ最善の告発のしかたについて必ずしも承知していないことも懸念する。
82.委員会は、締約国に対し、人身取引の被害を受けたすべての子どもを保護し、かつ現行法の執行を向上させる目的で、法執行官および検察官を対象として体系的かつ十分な研修を行なうよう促す。委員会は、このような研修に、こどもの人身取引を犯罪化した刑法の適用箇所に関する意識啓発、捜査手続に関する最善の実務のあり方、および、被害を受けた子どもを保護する方法についての具体的指示が含まれるべきことを勧告するものである。
ヘルプライン
83.委員会は、子どもを対象とするフリーダイヤルのヘルプラインが存在することに積極的側面として留意する。このヘルプラインは、抑うつ、性的搾取および学校におけるいじめの事案について心理社会的支援を求める、締約国の相当数の子どもによって利用されているように思われる。しかしながら委員会は、締約国が、このようなヘルプラインが効果的に機能するようにするために限られた資源しか提供していないことを懸念するものである。
84.委員会は、締約国に対し、当該ヘルプラインを維持し、かつ当該ヘルプラインが締約国全域で24時間のサービスを提供することを確保するため、このヘルプラインに対して財政的および技術的支援を提供するよう促す。
少年司法の運営
85.委員会は、法案C-10号(2012年の安全な街路および地域法)が成人矯正施設への子どもの収監を禁じていることに、積極的側面として留意する。にもかかわらず、委員会は、おおむね条約に一致している2003年青年刑事司法法が法案C-10号の採択によって実質的に改正されたこと、および、後者が子どもに対して過度に懲罰的であって十分に修復的な性質のものではないことを深く懸念するものである。委員会はまた、法案C-110号が条約の規定にしたがうことを確保するための子どもの権利評価が実施されず、またはそのための機構が設置されなかったことも遺憾に思う。とくに、委員会は以下の懸念を表明するものである。
  • (a) 締約国が、刑事責任に関する最低年齢を引き上げるための措置(CRC/C/15/Add.215、パラ57、2003年)を何らとらなかったこと。
  • (b) 18歳未満の子どもが諸事情または罪名の重大性との関連で成人として審理されていること。
  • (c) 拘禁の利用が増えていることによって、プライバシーの保護が縮減し、かつ、ダイバージョンのような司法手続によらない措置の利用の減少につながっていること。
  • (d) 逮捕段階の子どもおよび拘禁されている子どもに対し、法執行官および拘禁センター職員によって過度な有形力の行使(テーザー銃の使用を含む)が行なわれていること。
  • (e) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもおよび若者が過剰に拘禁されており、たとえば、アボリジナルの若者は高校を卒業するよりも刑事司法制度に関わりを持つようになる可能性が高いことを示す統計もあること。
  • (f) 10代の女子が男女混合の青年刑務所に措置され、かつ監視を担当する看守の性別も問われないため、女子が性的いやがらせおよび性的暴行の発生にさらされるおそれが高まっていること。
86.委員会は、締約国が、少年司法制度を、条約(法案C-10号(2012年の安全な街路および地域法)を含む〔原文ママ〕)、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)、刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針および委員会の一般的意見10号(2007年)を含む他の関連の基準と、全面的に一致させるよう勧告する。とくに委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 刑事責任に関する最低年齢を引き上げること。
  • (b) 18歳未満のいかなる者も、諸事情またはその罪名の重大性に関わらず、成人として審理されないことを確保すること。
  • (c) 司法手続によらない措置(ダイバージョン等)の利用を増やすことによって拘禁に代わる手段を発展させるとともに、少年司法制度の対象となっている子どものプライバシーの保護を確保すること。
  • (d) 逮捕された子どもおよび拘禁されている子どもに対する拘束および有形力の行使についての、すべての法執行官および拘禁施設職員が使用すべき指針を策定すること(テーザー銃の使用の廃止を含む)。
  • (e) アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもおよび若者が組織的かつ過剰に刑事司法制度の対象とされていることについて詳細な研究を実施するとともに、アボリジナルおよびアフリカ系カナダ人の子どもおよび若者の有罪率および収監率に関する格差の解消に向けた効果的な行動計画(すべての法曹、刑務所で働く専門家および法執行に従事する専門家を対象とした条約に関する研修のような活動を含む)を策定すること。
  • (f) 性暴力および性的搾取のおそれからの女子の保護を向上させるため、女子が男子とは別に収容されること、および、女子の監視は女性看守が行なうことを確保すること。

J.国際人権文書の批准

87.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう奨励する。委員会はさらに、締約国に対し、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)および家事労働者の適切な仕事に関するILO第189号条約(2011年)を批准するよう促すものである。

K.地域機関および国際機関との協力

88.委員会は、締約国が、締約国および他の米州機構(OAS)加盟国の双方における条約その他の人権文書の実施に向けてOASと協力するよう勧告する。

L.フォローアップおよび普及

89.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所ならびに州および準州の当局の長に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
90.委員会はさらに、条約および選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国による第3回・第4回定期報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

M.次回報告書

91.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2018年7月11日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。
92.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2014年4月3日)。