総括所見:カナダ(OPSC・2012年)


CRC/C/OPSC/CAN/CO/1 and Corr.1(20012年12月7日/2013年1月7日))
原文:英語(平野裕二仮訳) ※日本語訳には正誤表による訂正を反映させた。

1.委員会は、〔2012年〕9月27日に開かれた第1743回会合においてカナダの第1回報告書を検討し、2012年10月5日に開かれた第1754回会合において以下の総括所見を採択した。

2.委員会は、第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/CAN/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、多部門から構成される締約国代表団との間に持たれた建設的対話を評価するものである。
3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、子どもの権利条約に基づく締約国の第3回・第4回統合定期報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/CAN/CO/3-4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書に関して採択された総括所見(CRC/C/OPAC/CAN/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。委員会は、締約国報告書の作成が報告ガイドラインにしたがって行なわれなかったことを遺憾に思うものである。

I.一般的所見

積極的側面
4.委員会は、以下の立法措置が取り組まれたことに積極的対応として留意する。
  • (a) 人身取引にとくに対応する起訴罪名を創設した、刑法改正法(人身取引)である法案C-49号(2005年11月25日)。
  • (b) 児童セックス・ツーリズムについての締約国の域外裁判権を強化した法案C-15A号(2002年6月4日)。
5.委員会はまた、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。
  • (a) 人身取引と闘うための国家行動計画(2012年6月)。
  • (b) ホームレス対応パートナー戦略(HPS、2007年4月)。
  • (c) インターネット上の性的搾取から子どもを保護するための国家戦略(2004年5月)。
  • (d) カナダ子ども保護センターを通じての、インターネット上で起きた子どもの性的搾取に関する全国的通報センター(Cybertip.ca)の設置(2004年5月)。

II.データ

6.インターネットを基盤とする搾取について収集された詳細なデータには積極的側面として留意しながらも、委員会は、選択議定書上の他の犯罪に関するデータが存在しないこと、および、データが自治体の警察記録を通じて収集されていて連邦レベルでは収集されていないことを懸念する。委員会は、締約国が十分な情報に基づいて政策を決定することならびに選択議定書の実施における進展を分析しおよび評価することを可能にする、選択議定書上のすべての犯罪を網羅する包括的なデータ収集システムが存在しないことを懸念するものである。
7. 委員会は、締約国が、選択議定書のすべての分野を網羅したデータを連邦レベルで収集し、分析し、監視しかつその影響評価を実施するための、包括的かつ体系的な機構を設置するよう勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい状況または周縁化された状況に置かれた集団の子どもにとりわけ注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在、先住民族としての地位ならびに社会経済的地位によって細分化されるべきである。犯罪の性質別に細分化された、訴追および有罪判決の件数に関するデータも収集することが求められる。委員会はまた、締約国が、さまざまな州および準州を対象とした、データを収集する際の共通指標システムを確立することも勧告する。

III.実施に関する一般的措置

立法
8.2008年に施行され、かつ児童ポルノ事件における子どもの保護を強化した法案C-2号など、選択議定書との関連で多数の法律が採択されたことについて締約国を称賛しながらも、委員会は、このような努力の焦点が人身取引にほぼ限定されていることを懸念する。委員会はさらに、現行法で、子どもの売買(締約国では犯罪化されていない)など、選択議定書で対象とされているすべての犯罪について明示的に対応されているわけではないことを懸念するものである。委員会はまた、選択議定書のすべての規定を包括的にかつ曖昧さを残すことなく実施する連邦実施法が定められていないため、結果的にそれぞれの州および準州で選択議定書について異なる解釈が行なわれており、そのため矛盾が生じていることにも、特段の懸念をもって留意する。
9.委員会は、締約国に対し、選択議定書が締約国の国内法体系に全面的に編入されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう要請する。委員会は、締約国が、選択議定書に掲げられた売買に関する規定を十分に実施する目的で国内法における子どもの売買の定義(人身取引の定義に似ているものの同一ではない)が修正されること、および、選択議定書上のすべての義務がすべての州および準州で一貫して適用されるよう選択議定書のすべての要素が連邦法で網羅されることを確保するよう、勧告するものである。
国家的行動計画
10.選択議定書に関連するさまざまな行動計画、とくに「子どもにふさわしいカナダ」(2004年)、インターネット上の性的搾取から子どもを保護するための国家戦略(2004年)および人身取引と闘うための国家行動計画(2012年)が存在することは歓迎しながらも、委員会は、にもかかわらず、選択議定書でとくに対象とされているすべての問題に対応する包括的な計画が存在しないことを懸念する。
11.委員会は、締約国が、子どものための国家的行動計画である「子どもにふさわしいカナダ」に、選択議定書で取り上げられているすべての問題をとくに対象とする包括的な行動計画が含まれること、および、その実施のために十分な人的資源、技術的資源および財源が提供されることを確保するよう、勧告する。この目的のため、締約国は、ストックホルム(1996年)、横浜(2001年)およびリオデジャネイロ(2008年)で開催された第1回・第2回・第3回子どもの〔商業的〕性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントを考慮に入れながら、選択議定書のすべての規定の実施に注意を払うべきである。
調整および評価
12.委員会は、締約国が、選択議定書に関連するさまざまな国家的行動計画を実施するためのタスクフォースおよびセンター(子どもの権利に関する省庁間作業部会、人身取引に関する省庁間作業部会および子どもの搾取に関する全国調整センター等)を設置したことに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国における子どもの売買、児童買春および児童ポルノの事件への介入について、国ならびに州および準州のレベルでさまざまなタスクフォースおよびセンター間の調整が行なわれていないことを懸念するものである。さらに委員会は、締約国に、選択議定書に基づく活動の実施および評価を全般的に調整するための連邦レベルの機構が存在しないことに留意する。
13.条約に基づく総括所見のパラ14および15を参照しつつ、委員会は、締約国が、子どもの権利に関する政策の策定および実施に取り組んでいるさまざまな機関および委員会の調整を図るとともに、条約およびその選択議定書に基づく子どもの権利についての活動の監視および評価に関して、すべての州および準州の間でリーダシップを発揮しかつ効果的な全般的調整を図ることに責任を負う連邦レベルの機構を指定するよう、勧告する。
普及および意識啓発
14.委員会は、さまざまな州および準州の政府が、条約およびその選択議定書の原則および規定についてさまざまなグループを教育する目的で、市民社会組織と提携し、かつこれらの組織に資金を提供していることに、積極的対応として留意する。にもかかわらず、委員会は、このアプローチが広範囲にわたるものではないことを懸念するとともに、締約国が選択議定書の普及に対する体系的かつ包括的なアプローチを欠いていることにより、公衆、子どもたち自身および子どもとともに働く専門家の間における、選択議定書に関する理解および意識の水準の低さが助長されていることを懸念するものである。
15.委員会は、締約国が、選択議定書の規定を公衆一般に対して広く知らせる(子どもに対して子どもにやさしい方法で、かつその家族およびコミュニティに対しても知らせることを含む)ための努力を強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、以下の措置をとることも促すものである。
  • (a) 選択議定書に関わる問題を初等中等学校のカリキュラムに体系的に編入すること。
  • (b) 市民社会組織、メディア、民間セクター、コミュニティおよび子どもたちと緊密に協力しながら、選択議定書で対象とされている問題に関するキャンペーンを含む意識啓発プログラムを発展させること。これらのプログラムは、締約国のすべての言語で、かつ子どもにとってアクセスしやすい形式で利用可能とされるべきである。
  • (c) 適当なときは、一般住民および子どもたち(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子どもたち)の間で選択議定書の規定に関する中心的なメッセージを普及するためのキャンペーンおよびマスメディアの活用を含む意識啓発プログラムを促進しかつ組織すること。
研修
16.委員会は、締約国が法執行官および司法機関を対象として実施している、人身取引に関する多数の研修活動を評価する。しかしながら委員会は、子どもとともにおよび子どものために働いている専門家を対象として研修を行なう努力が体系的ではなく、かつ選択議定書が対象とするすべての分野を含んでいるわけではないことを懸念するものである。
17.委員会は、締約国に対し、とくにあらゆる行政段階の警察官、裁判官、検察官およびソーシャルワーカーを対象とした、選択議定書に関する学際的研修を強化するよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、このような研修を実施するために必要な資源を使途指定方式で配分するよう促すものである。
資源配分
18.委員会は、とくに犯罪の防止および被害を受けた子どもに対する援助の提供に関わって、選択議定書を実施するためのものとされる活動に割り当てられた予算配分額が明確に特定可能となっていないことを遺憾に思う。
19.委員会は、締約国が、とくに、防止、保護、被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会復帰ならびに選択議定書が対象とする犯罪の捜査および訴追を目的としたプログラムを開発しかつ実施するために必要な人的資源、技術的資源および財源を提供することにより、選択議定書が対象とするすべての分野の実施のための十分な資源が国全体で公平に配分されることを確保する目的で、あらゆる可能な措置をとるよう勧告する。

IV.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(第9条第1項および第2項)

選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置
20.委員会は、オンラインの子どもの性的搾取に関する意識啓発および教育のためにとられた措置ならびに再犯防止を目的とした犯罪者追跡機構の設置など、選択議定書に基づく犯罪を防止するために締約国が行なっている取り組みに留意する。しかしながら委員会は、以下の点との関連も含め、議定書上の犯罪を防止するための措置が不十分であることを懸念するものである。
  • (a) 選択議定書上の犯罪に関して現行法が強力に執行されていないこと。このことは、訴追および有罪判決の件数が少ないこと、ならびに、選択議定書上の犯罪について有罪判決を受けた者に対する刑が不十分であることに明らかである。
  • (b) とくに、不利な立場に置かれた集団および周縁化の状況にある子どもを対象とするコミュニティ・サービスおよび社会保護サービスのための資金拠出が不十分であること。
  • (c) 保護者のいない子どもの庇護希望者および子どもの非正規移民の保護が不十分であること。
  • (d) 法定年齢未満の強制婚を目的として子どもが国外に、またはブリティッシュコロンビア州バウンティフルの一夫多妻制コミュニティなど締約国内の他の宗教的コミュニティに送られること(これは子どもの売買に相当する)を防止するための措置が不十分であること。
21.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の根本的原因に対処し、かつもっとも被害を受けやすい状況に置かれた子どもに焦点を定めた、包括的かつ重点対象型のアプローチを採用するよう促す。委員会はさらに、締約国に対し、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 選択議定書上の犯罪についての訴追率および有罪判決率を向上させるため、法執行機関に対してより多くの資源を提供すること。委員会はまた、締約国に対し、選択議定書上の犯罪について有罪判決を受けた者がその犯罪にふさわしい制裁をもって処罰されることを確保するようにも促す。
  • (b) すべてのコミュニティ(とくに、不利な立場に置かれた集団および周縁化の状況にある子ども)を対象とするコミュニティ・サービスおよび社会保護サービスに対して資金が公平に拠出されることを確保すること。
  • (c) 保護者のいない子どもの庇護希望者および子どもの非正規移民を対象として十分な保護措置(このような子どもに福祉サービスおよびコミュニティ社会サービスを提供する等の手段によるものも含む)がとられることを確保すること。
  • (d) 法律に基づく一夫多妻の禁止を執行し、かつ加害者を訴追するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、早期婚を強制された子どもに保護を提供すること。
児童セックス・ツーリズム
22.委員会は、国外で児童セックス・ツーリズムに関与した締約国の市民についてたとえ犯罪遂行地国が訴追を要請しなかった場合でも訴追できるようにした法案C-15A号の成立など、児童セックス・ツーリズムと闘うために締約国が行なっている新たな取り組みを歓迎する。委員会はさらに、児童セックス・ツーリズムの法的帰結に関して締約国が実施している意識啓発教育キャンペーンにも、積極的対応として留意するものである。にもかかわらず、委員会は、児童セックス・ツーリズムが締約国にとって依然として深刻な問題であり、かつ、法律の定めにもかかわらず訴追が強力に進められていないことを懸念する。
23.委員会は、締約国が、すべての加害者の摘発、捜査、訴追および処罰を向上させることを通じ、児童セックス・ツーリズムに関する法律の執行を強化するための措置をとるよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、児童セックス・ツーリズムの有害な影響について観光業界に働きかけを行ない、旅行代理店および観光業者の間で国連世界観光機関(UNWTO)の世界観光倫理規範を広く普及し、かつ、これらの代理店および業者に対し、旅行・観光業における性的搾取から子どもを保護するための行動規範への署名を奨励するよう、促すものである。

V.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(第3条、第4条(第2項および第3項)ならびに第5~7条)

現行刑事法令
24.委員会は、児童ポルノおよびインターネット上の子どもの性的搾取の多くの側面が犯罪化されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書の規定の一部が国内法に編入されているにもかかわらず、国内法がまだすべての規定に全面的に一致していないことに、懸念とともに留意するものである。とくに、委員会は以下のことに懸念とともに留意する。
  • (a) 刑法で選択議定書上のすべての犯罪が網羅されていないこと。
  • (b) 選択議定書第2条および第3条で定義されているあらゆる形態の子どもの売買が犯罪化されているわけではないこと。
25.委員会は、締約国が、刑法を改正して選択議定書第2条および第3条に全面的に一致させ、かつ刑法が実際に執行されることを確保するよう促す。とくに、締約国は、以下の行為を含む選択議定書上のすべての犯罪が犯罪化されることを確保するべきである。
  • (a) 性的搾取、営利目的の子どもの臓器移植もしくは強制労働に子どもを従事させることを目的として、いかなる手段によるかは問わず、子どもを提供し、引き渡しまたは受け取ること、または、養子縁組に関する適用可能な法的文書に違反し、仲介者として不適切な形で子どもの養子縁組への同意を引き出すことによる、子どもの売買。
  • (b) これらのいずれかの行為を奨励する資料の製造および配布。
訴追
26.インターネット上の子どもの性的搾取および児童ポルノの加害者の責任を問うために行なわれている法執行の取り組みは満足感とともに留意しながらも、委員会は、選択議定書上の犯罪に関する捜査、訴追および有罪判決の件数が少ないことを深く懸念する。委員会はまた、選択議定書上の犯罪について有罪判決を受けた者に対する量刑が、もっとも悪質な犯罪についてさえ、法定刑の上限にはるかに及んでいないことも懸念するものである。委員会はさらに、一部の州および準州で、資源が不足しているために法執行が強力に行なわれていないことを懸念する。さらに委員会は、アボリジナルの女子(性売買に関与し、行方不明となり、または殺害された可能性がある女子を含む)が関わる事件について十全な捜査が行なわれず、加害者が処罰されないままとなっていることを深く懸念するものである。
27.委員会は、締約国が、次回の定期報告書で、選択議定書上の犯罪の加害者の捜査、訴追および処罰に関する具体的情報を提供するよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、以下のことも促すものである。
  • (a) 刑罰が犯罪にふさわしいものであることを確保するため、選択議定書上の犯罪について有罪判決を受けた者に十分な刑を科すこと。
  • (b) 官憲が選択議定書に関連する刑法の条項を全面的に執行できるよう十分な資金を配分し、かつ、これらの官憲が適切な研修を受けることを確保すること。
  • (c) とくにアボリジナル・コミュニティにおける児童買春事件についての法執行の実務を調整しおよび強化し、ならびに、女子が行方不明となっているすべての事件が法律の及ぶかぎり最大限に捜査されかつ訴追されることを精力的に確保するための行動計画を確立すること。
法人の責任
28.委員会は、締約国の法律において、児童セックス・ツーリズムに関与した企業の、選択議定書で定められた犯罪についての責任が明確に確立されていないことを遺憾に思う。委員会はまた、現行法において、インターネット・サービス・プロバイダ(IPS)に対し、児童ポルノおよび関連のコンテンツを配布する者についての情報を法執行機関に提供することが義務づけられていないことも懸念するものである。
29.選択議定書第3条第4項に照らし、委員会は、締約国が、選択議定書上の犯罪に関する法人(児童セックス・ツーリズムに関与した企業およびツアープロモーターを含む)の責任を確立するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、法律を改正することにより、児童ポルノおよび関連のコンテンツを配布する者についての情報を法執行機関に提供することをインターネット・サービス・プロバイダ(IPS)に要求するようにも勧告するものである。
域外裁判権
30.委員会は、児童セックス・ツーリズムについての締約国の域外裁判権を強化する法案C-15A号の制定を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書上のすべての犯罪が域外裁判権の対象となっているわけではないことを懸念するものである。
31.委員会は、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪が域外裁判権の対象とされることを確保するよう勧告する。

VI.被害を受けた子どもの権利の保護(第8条ならびに第9条第3項および第4項)

被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置
32.委員会は、人身取引の被害を受けた子どもの特定について官憲(入国港職員を含む)を訓練するために締約国が行なっている取り組みに、積極的対応として留意する。委員会はまた、締約国が、更新可能な一時在留許可を認めることにより人身取引被害者の保護を向上させてきたことにも、積極的対応として留意するものである。しかしながら、委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) 一部の州および準州が、人身取引の被害を受けた子どもを不法移民として収容および退去強制の対象とし、または売春容疑で刑事告発することによって、このような子どもに再被害を与えていること。
  • (b) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもがそれぞれの法域で補償を求められるようにする法律を、すべての州および準州が制定しているわけではないこと。
  • (c) 一部の州および準州において、被害を受けた子どもが無償で弁護人にアクセスできないこと。
33.委員会は、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益をすべての州および準州で保護するための措置を強化し、かつ、とくに以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 人身取引の被害を受けた子どもの権利を保護するための機構および手続を設置するとともに、これらの子どもが、退去強制まで長期間待機させられず、かつ法執行機関および司法機関によって犯罪者ではなく被害者として扱われることを確保すること。
  • (b) すべての州および準州において、被害を受けた子どもが権利侵害に対する救済措置(補償を含む)を利用できるようにする法律が制定されることを確保すること。
  • (c) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもに対し、十分なかつ無償の法律扶助ならびに心理的、医療的および社会的支援を提供すること。
被害者の回復および再統合
34.委員会は、短期の一時在留許可を得ている人身取引被害者が連邦保健プログラムに基づく保健ケア給付(トラウマ・カウンセリングを含む)の受給資格を有することに、積極的対応として留意する。しかしながら委員会は、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪の被害者についてその回復および再統合のための措置をとっているわけではないことを懸念するものである。とくに委員会は、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子ども(国外で行なわれたセックス・ツーリズムの被害を受けた子どもであって加害者がカナダ市民である場合を含む)をとくに対象とするリハビリテーション・プログラムが存在しないことを懸念する。
35.委員会は、締約国に対し、選択議定書上のすべての犯罪の被害者に対して適切な援助(このような被害者の全面的な社会的再統合ならびに身体的、心理的および心理社会的回復を含む)を提供するための措置をさらに強化するよう、促す。委員会はとくに、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 選択議定書上の犯罪の被害を受けたすべての子ども(国外で行なわれた犯罪の被害者である子どもを含む)がふたたび被害者とならず、かつ再統合のために人生の機会を向上させられることを確保する目的で、これらの子どもにリハビリテーション・サービスおよびカウンセリング・サービスを提供するための、資金的裏付けのあるプログラムを発展させること。
  • (b) 締約国の領域全体で児童精神保健の専門家にアクセスできるようにする等の手段によるものを含め、被害を受けた子どものための専門的な心理社会的・心理的ケアサービスを引き続き発展させること。
  • (c) 選択議定書上のいずれかの犯罪の被害者にとくになりやすいアボリジナルの子どもについて、被害を受けた子どもの再統合のための具体的措置をとること。
  • (d) これらの勧告の実施についてユニセフおよび国際移住機関(IOM)の技術的援助を求めること。

VII.国際的な援助および協力

36.第10条第1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするいずれかの犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。

VIII.フォローアップおよび普及

37.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所ならびに州および準州の公的機関の長に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
総括所見の普及
38.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および文書回答ならびに採択された関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループ、コミュニティおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

IX.次回報告書

39.第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。


  • 更新履歴:ページ作成(2014年4月3日)。
最終更新:2014年04月03日 12:22