人外と人間

悪役ロボ×少女 Evil love 和姦

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Evil love 859 ◆93FwBoL6s.様

 全身が、鈍く軋む。
 砕けそうな膝を起こして顔を上げると、胸部装甲を縦に分断している傷からオイルが零れ出した。視覚センサーを焦がす炎は凄まじく、双方の体から零れたオイルが煮え立って煙を発していた。無数のコンクリート片と折れた鉄骨の下から這い出すが、左足の関節は言うことを利かなかった。回路から送られたはずの電気信号が腰の辺りで途切れているので、ケーブルが切れたのだろう。だが、まだ倒れるわけにはいかない。アストロスは拳を固め、咆哮を放ちながら立ち上がった。

「おおおおおおっ!」

 瞬間的に向上したパワーで瓦礫の山を吹き飛ばすと、足を引き摺りながらも身構えた。

「まだ俺は死ぬわけにはいかない、俺は、俺は!」

 黒々とした煙が溢れる中を進み、過熱したアストロランチャーを掲げる。

「あの攻撃を喰らってまだ死なぬか、アストロス」

 重厚な砲身を向けた先の炎が揺らぎ、黒い剣を携えた巨体の異形が立ち上がる。

「余程、我に命を吸われたいと見える」
「ほざけ、ストームブリンガー! 貴様に与えるような命は持ち合わせていない!」

 アストロスは猛り、両足を広げて腰を据える。だが、武器に注げるほどの余力は残っていなかった。アストロランチャーの照準の先では、漆黒の機甲戦士、ストームブリンガーが不気味な笑みを零した。金属で成された体でありながら生物的な印象を受ける滑らかな外装は、炎を浴びて鈍く輝いていた。その左腕からは引き摺るほど長い漆黒の剣が生え、煤と砂埃にまみれていても威圧感を失っていない。
 これまで、何度戦っただろう。アストロスは、思考回路を駆け巡った様々な感情のパルスを感じた。母星の重力刑務所を脱獄したストームブリンガーは、殺せるだけの同族を殺して外宇宙へ逃走した。ありとあらゆる悪意を漲らせて生まれてきたストームブリンガーは、過去にも凶悪犯罪を重ねてきた。強奪、略取、殺戮、蹂躙、虐殺と、その左手の剣によって命を奪われた者達は数え切れないほどだ。その中には、アストロスの数百万年来の戦友や、心から尊敬して目標としていた上官が含まれていた。ストームブリンガーを追って辺境の惑星である地球に至ってからは、奴を殺すためだけに生きてきた。
 憎しみで戦うな、と皆は言ってきた。母星を旅立つ前も、地球で出会った友人達もそう言ってくれた。掛け替えのない者達をこれ以上失わないために、憎しみではなく、それを乗り越えた心で戦え、と。だが、今ばかりは正義を見失いそうだ。ストームブリンガーの右手には、少女が収められていたからだ。

「沙耶!」

 アストロスが手を伸ばすが、ストームブリンガーはこれ見よがしに少女を収めた右手を掲げた。

「何をする気だ、アストロス。これは我のものだ」
「来ないで、アストロス!」

 刃のような指に握られている少女、沙耶は首を横に振った。

「大丈夫だ、今助ける!」

 アストロスが駆け出そうとすると、沙耶はその力強い足音に負けぬほどの声で叫んだ。

「違うの!」
「何が違うと言うんだ、沙耶! 俺を信じろ!」
「お願い、来ないで、アストロス!」

 沙耶は髪を振り乱し、頭を抱えた。その耳朶では、宝石に似た集積回路のイヤリングが輝いた。

「もう…やめて。これ以上、ストームブリンガーを傷付けないで」
「沙耶…?」
 信じがたい言葉に、アストロスは足を止めた。沙耶は涙を滲ませながら、アストロスを睨んだ。

「アストロスには死んでほしくないの、だからもう戦わないで! ストームブリンガーを逃がしてあげて!」
「ストームブリンガー、貴様、沙耶に何を吹き込んだんだ!」

 アストロスが激昂するが、ストームブリンガーは平然としていた。

「さあてな」
「おのれっ!」

 アストロスは焼けた瓦礫を踏み砕いて駆け出し、アストロランチャーを振り下ろした。

「アストロショットォオオオッ!」

 ストームブリンガーの目前に据えられた砲口から鮮烈な光線が迸ったが、漆黒の剣によって遮られた。そればかりか受け流され、後方で爆発が起きた。アストロスが身動ぐと、剣が翻り、砲身を弾き飛ばした。よろけたアストロスの胸部装甲が蹴られ、仰け反った瞬間に漆黒の剣が腹部装甲を呆気なく切り裂いた。

「弱い、弱い、弱い!」

 舞うように剣を操ったストームブリンガーは、アストロスの右肩を切断し、背部の両翼も切り落とした。ばちばちと過電流とオイルを散らしながら数歩後退ったアストロスは、少女を求めて左手を伸ばした。

「沙、耶…」
「ごめんなさい、アストロス」

 だが、沙耶はその手に顔を背けた。アストロスは膝を折って崩れ落ちると、オイル溜まりに突っ伏した。何度か視覚センサーが瞬いたが、アストロスは立ち上がることはなく、悔しげな呻きも聞こえなくなった。ストームブリンガーがアストロスの頭部に剣先を突き付けると、沙耶はストームブリンガーの指に縋った。

「アストロスを殺さないで、ストームブリンガー」
「しかし、これを生かしておけば、また我は追われる身となる」
「私の大事な友達なの。お願い、ストームブリンガー」
「…仕方ない」

 剣先を下げたストームブリンガーは、気を失ったアストロスを一瞥し、炎を蹴散らしながら歩き出した。沙耶は涙を溜めた目でアストロスを見つめたが、目元を拭い、ストームブリンガーの手の中に隠れた。二人が炎の海を脱すると、待ち構えていたアストロスの仲間が武器を向けたが、沙耶に気付いて躊躇った。その隙に急上昇したストームブリンガーは、ステルス戦闘機に変形し、操縦席に沙耶を乗せて飛んだ。あっという間に離れていく炎に包まれた戦場と正義の戦士達を見つめながら、沙耶はぼろぼろと泣いた。けれど、自分の心に嘘は吐けない。イヤリングを外して握り締めた沙耶は、彼の黒い操縦桿に口付けた。
 冷たく、苦い味がした。


 地を越え、海を越えた先で、漆黒の戦闘機は翼を休めた。
 人型に変形したストームブリンガーは、操縦席で眠り込んでしまった沙耶を右手に乗せて腰を下ろした。慣れない乗り物に乗っていたからだろう、顔色はすっかり青ざめていて眉間には深くシワが刻まれていた。丁寧に飛んだつもりだったが、炭素生物の三半規管は機甲戦士のバランス回路よりも数百倍は繊細だ。申し訳なく思いながら、ストームブリンガーは荒涼とした大地を見渡し、身を隠せる場所を探すことにした。
 ストームブリンガーのセンサーは、アストロス率いる戦闘部隊の行動を鋭敏に感じ取り、騒いでいた。深手を負ったアストロスは、仲間達の制止を振り切って出動し、ストームブリンガーを追尾しているようだ。彼らが行き交わせる通信電波は暗号化されていたが、パルスの端々からは強い苛立ちが滲んでいた。それというのも、アストロスもまた沙耶に心を寄せているからだ。ただの友人としてではなく、異性として。その事実だけでもストームブリンガーの殺意は煽られ、燃え盛るが、奴を殺せば沙耶を困らせることになる。殺すのは容易いが、沙耶が泣くのは困る。ストームブリンガーは渋々殺意を収め、枯れた大地を歩いた。
 赤茶けた大地には無数の岩石が転がり、生命体の姿はほとんどなく、道路すらも走っていなかった。地平線の端に太陽が身を沈めつつあり、漆黒の装甲を舐める太陽光線は鮮やかすぎて目が眩みそうだ。しばらく歩くと、斜面に大穴が開いた岩石の山を見つけたので、ストームブリンガーはその中に入った。沙耶は未だに目覚めなかったので、手に乗せたまま腰を下ろし、翼の生えた背を冷ややかな岩に預けた。
「沙耶」

 ストームブリンガーは、親指の先端で少女の頬を撫でた。

「貴様は我の鞘だ」

 沙耶は僅かに身動ぎ、瞼を開くと、上体を起こしてストームブリンガーを見上げた。

「ストーム、ブリンガー…」

 暗闇の中で煌々と輝く真紅の視覚センサーを見つめてから、沙耶は周囲の景色を見回した。

「ここ、どこ?」
「海を渡った先にある大陸だ。ステルスモードとなり、ジャミングもフルパワーで発動させて移動した。だから、まだ奴らには我の居所は見つけられておらぬ」
「でも、いつかは見つけられちゃうよね?」
「この星は狭い。故に、我が逃げられる場所も限られている」

 上体を曲げたストームブリンガーは、沙耶に顔を寄せた。 

「だが、我に敵う者はおらぬ。我を阻む者があらば、屠ってくれる」
「お願い。もう、誰も殺さないで」

 沙耶が首を横に振ると、ストームブリンガーはぎちりと首を捻った。

「なぜだ。殺さねば、我は殺される。それが我だからだ」
「アストロス達が、ストームブリンガーのことを解ってくれたら良いのに…」

 ストームブリンガーの顔に触れた沙耶は、憂いげに目を伏せた。

「それはない。奴らにとって、我や我と似た志を抱く者は異物に過ぎぬ。奴らは異物を受け入れることの出来ぬ、淀んだ価値観しか持たぬ愚者だ。元より、我を理解出来るはずもない」

 人差し指で沙耶の髪を持ち上げ、滑らせながら、ストームブリンガーは淡々と述べた。

「この宇宙に生きる者は、いかなる者であろうとも命を喰らわねば生きてはゆけぬ。それは、奴らとて、沙耶とて同じこと。生命体を名乗り、生きるからには、命を成すために犠牲が伴うことは世の必然。それが、我は同族の命であったと言うだけのこと」
「うん…」

 沙耶はストームブリンガーの人差し指に腕を絡め、漆黒の装甲に頬を寄せた。

「それを悪と言うのなら、我は悪であろう。同族殺しはいかなる世界に置いても許されざる罪であり、猟奇や狂気と称される行為だ。しかし、我の体内に作られし動力機関は、同族の体内で変換されたエネルギー結晶体しか受け付けぬのだ。無理に他のエネルギー結晶体を摂取しようとすれば、我の動力機関は焦げ付き、回路を巡る電流が乱れるだろう。さすれば、我は真の狂気を手に入れることとなる」

 赤い閃光を放つ瞳で沙耶を見据えたストームブリンガーは、その耳元に揺れるイヤリングに触れた。

「沙耶。貴様の持つ超高密度集積回路を得れば、我は新たなる力に目覚め、同族を狩ることが容易くなる。故に、我には貴様が必要だ」
「でも、これを手に入れても、ストームブリンガーは皆を食べなきゃ生きていけないんだよね?」
「それだけは、我が死ぬまでは変わらぬ」
「でも、これがあれば、ストームブリンガーはもっと強くなって負けなくなるんだよね?」
「力を得ねば、我であろうとも生き延びることは適わぬ」

 ストームブリンガーの真摯な眼差しに、沙耶は握り締めていたイヤリングを差し出した。

「じゃあ、もっと強くなって。そして、誰にも負けないで」
「言われるまでもない」
 ストームブリンガーが複雑な形状のマスクを広げて口腔を開くと、沙耶はその中にイヤリングを投げた。人間など一息に丸呑み出来る大きさの喉を滑り落ちたイヤリングは、ストームブリンガーの体内に入った。集積回路を据えるのは後でも良い。だが、今、体内に収めておかないと、奪い返される可能性がある。
 イヤリングに似た集積回路は、機甲戦士が身体能力を強化改造するために不可欠なアイテムである。機甲戦士は生命体に進化した機械だが、人間もそうであるように、全ての能力を解放しているわけではない。だが、数百万年前に起きた戦争で、潜在能力を解放するための技術を持った機甲戦士は外宇宙に消えた。それ以降も研究が繰り返されたが、その機甲戦士の開発した技術には到底適わず、模倣品以下だった。そして、その機甲戦士が見つけ出されないまま時間だけが過ぎ、機甲戦士達はそれ自体を忘れかけていた。
 そんな時、ストームブリンガーが地球へと逃亡し、それを追ってアストロスらの戦闘部隊が派遣された。戦いを続けながらも、原住民である地球人と交流を重ねたアストロスは、一人の少女、沙耶に出会った。
 沙耶はとある富豪の令嬢なのだが気取ったところはなく、アストロスらとの交流を無邪気に楽しんでいた。地球の平和を守る戦士達を労うために、と沙耶の邸宅の敷地内でパーティが行われた時、それは現れた。沙耶の両耳に下げられた母親の形見の美しいイヤリングは、超高密度集積回路に他ならなかったのだ。永い旅の後に地球に辿り着いた件の機甲戦士が完成させたが、人間達には宝石扱いされていたのだろう。思い掛けない発見にアストロスらは驚き、戸惑い、喜んだが、沙耶は母親の形見を渡すことを躊躇った。アストロスは沙耶の気持ちを慮ってイヤリングは彼女の手元に残し、つつがなくパーティは終わった。
 以前からアストロスらと近しい沙耶を部下に見張らせていたストームブリンガーは、当然情報を手に入れた。アストロスらが沙耶の邸宅から出た直後の隙を狙い、沙耶を攫ったが、その時はすぐに奪い返されてしまった。だが、ストームブリンガーは諦めずに沙耶を狙い、誘拐し、隠れ家にしている地下基地へと連れて行った。
 最初の頃は、当たり前だが沙耶は抵抗した。ストームブリンガーを蔑み、疎み、汚らしいとまで罵った。ストームブリンガーへの罵倒の数々に怒った部下が彼女を殺そうとしたが、制止して、引き下がらせた。部下達に退去を命じ、二人きりになったストームブリンガーは、怯えて泣き出しそうな沙耶に言葉を掛けた。沙耶は喋ろうともしなかったが、ストームブリンガーの人格を知ると次第に気を許してくれるようになった。けれど、ストームブリンガーもイヤリングが目当てだと知っていたから、頑なに警戒心を抱き続けていた。
 その認識が変わったのは、沙耶を助け出すために地下基地に突入してきたアストロスの凶行にあった。アストロスは、沙耶を丁重に扱っていたストームブリンガーの部下達を次々に殺し、地下基地を破壊した。オイルと硝煙に汚れながらストームブリンガーへの恨み言を吐き捨てるアストロスに、正義の光はなかった。その光景を目の当たりにした沙耶は、唯一生き残ったストームブリンガーに守られてその場は逃げ延びた。
 それまで、沙耶はアストロスらが絶対的な正義だと信じて疑わなかった。だが、裏を返せば同じことなのだ。抗いがたい事実を突き付けられた沙耶は、それまで嫌悪していたストームブリンガーへの認識を改めた。そして、目の前で部下達を殺されようとも、その苦しみを隠して沙耶を生かしてくれた彼に心が動かされた。
 だが、アストロスは攻撃の手を緩めなかった。ストームブリンガーを追い詰め、沙耶を奪い返そうとした。しかし、沙耶の心には最早アストロスの入り込む隙はなく、助けに来られても嬉しいとは思わなかった。

「ストームブリンガー…」

 沙耶はストームブリンガーの頭に体を寄せ、滑らかな装甲に手を添えた。

「貴様は我の鞘だ」

 愛おしげに目を伏せる少女を視界に捉えながら、ストームブリンガーは右手で彼女を支えた。

「故に、貴様が必要だ」
 物心付いた頃から、ストームブリンガーは抜き身の刃だった。同族を喰らい、殺し、傷付けて生きてきた。気を許せる相手などおらず、圧倒的な力を持つストームブリンガーを慕ってくれる部下達も邪険に扱っていた。馴れ合うことは弱さの証だと信じ、心を閉ざすことが真の強さなのだと疑わず、何百万年も戦い続けてきた。だが、イヤリングを奪うために攫ってきた沙耶に言葉を掛けるうち、心を解きたがっている自分に気付いた。指先一つで潰せるほど脆弱な生き物である沙耶が相手だから、気負わずに済んだからなのかもしれない。そして、異星人の少女と交流を続け、彼女の人格を垣間見るうちに、イヤリングから興味が失せてしまった。力を得ることよりも、目の前の少女から更なる言葉や表情を引き出したくなり、喜ばせたいとすら思い始めた。しかし、アストロスはストームブリンガーの部下達を皆殺しにし、ささやかな安息の時間を破壊してしまった。

「故に、力を得ねばならぬ」

 ストームブリンガーは体内に入り込んだ異物の存在を確かめながら、沙耶の体を柔らかく握った。

「我が我として生き、我と貴様が生きていける世界を成すために」
「あなたなら出来るわ、きっと」

 沙耶はストームブリンガーの目元に触れていたが、身を乗り出し、マスクにキスをした。

「沙耶」

 ストームブリンガーは、マスクに接した小さな唇の感触に感情回路のパルスが掻き乱された。

「私は力もないし、戦えないから、ストームブリンガーの仲間達の代わりにはなれないけど…」

 沙耶はストームブリンガーにしなだれかかり、言葉に熱を込めた。

「宇宙で一番、あなたが好きよ」
「それだけで良い。我が求めるのは、貴様の存在のみだ」

 ストームブリンガーは沙耶を顔の傍から下ろすと、ぎち、と目元を歪めた。

「さあ。我を収めよ」
「解ったわ、ストームブリンガー」

 沙耶はストームブリンガーの右手に座ると、足を広げ、恥じらった。

「こんな時なのに、こんなことするなんて、なんか変な気分」

 漆黒の機甲戦士の視線を注がれながら、沙耶はスカートの裾をたくし上げると、白い太股を曝した。股間を覆うレース地のショーツに細い指先を滑り込ませた沙耶は、ん、と鼻に掛かった声を漏らした。クロッチが手の形に膨らみ、薄い布地が押し上げられる。その手を緩やかに上下させ、沙耶は喘いだ。

「ん、ぁ…」

 腰を浮かせた沙耶は、ストームブリンガーを見上げた。

「そんなに見られると」

 沙耶は人差し指と中指を陰部に沈めると、ブラウスのボタンを外し、胸をまさぐった。

「もっと感じちゃう…」

 ショーツと揃いのデザインのブラジャーを押し上げて丸い乳房を曝した沙耶は、熱っぽい吐息を零した。

「あぁ、はぁ、あぁぁ…」
 最初は、単なる好奇心に過ぎなかった。機甲戦士は繁殖を行わないため、生殖行為を行う必要がない。だから、地球上に溢れる情報の大多数を占める裸体や生殖行為の画像や映像の意味が解らなかった。人間に対して妙な疑問があっては今後の戦いに支障を来すと思ったストームブリンガーは、沙耶に命じた。沙耶はストームブリンガーの命令を拒絶するかと思われたが、意外にも快諾し、自慰を見せるようになった。なんでも、沙耶には元々そういった性癖があったのだが、誰にも言えず、見せられず、悶々としていたらしい。そのおかげで人間の生殖行為は娯楽の一種だと理解することが出来たが、それだけでは終わらなかった。

「沙耶」

 ストームブリンガーは親指を曲げ、沙耶の肌をなぞった。

「うん、もういいわよ」

 沙耶は息を浅く荒げながら、腰を上げてショーツを脱ぎ捨て、大きく足を広げた。

「んぁ、ああぁっ!」

 赤く充血した陰部に先端が尖り気味の巨大な親指が抉り込まれ、沙耶は目を剥いた。

「あ、ぅ、おっきいの、入ってきちゃうぅ…」

 沙耶はストームブリンガーの手のひらに横たわり、胎内に押し入ってきた異物の存在感に呻いた。指が巨大すぎるので先端が陰部の入り口に入る程度で、それ以上入れては沙耶の体など裂けてしまう。力加減を確かめながら、ストームブリンガーが親指を上に曲げてやると、沙耶は一際甲高い声を発した。

「ひうぁっ!」

 ぐじゅる、と漆黒の指に掻き混ぜられた粘液が、一滴、ふくよかな尻を伝って落ちた。

「あ、あぁ、あっ」

 薄い茂みの奥で硬く尖った肉芽を指で潰し、乳房を掴んだ沙耶は、ストームブリンガーに懇願した。

「もっと、もっとしてぇっ」

 この声が、表情が、温度が、得も言われぬ感情を生み出す。淫らに身を捩る少女から目が離せない。ストームブリンガーは親指を時折動かしてやりながら、更なる快楽を求めて肢体をまさぐる沙耶を眺めた。
 地球上に蠢く人間達の中でも、沙耶は出来の良い個体だ。顔の造形は整っていて、体もしなやかだ。手足はすらりと長く、乳房と尻は大きすぎず小さすぎず、優良な遺伝子によって形作られた生命体だ。立ち振る舞いからは令嬢らしい育ちの良さが窺え、服装も機甲戦士の目から見ても良いものばかりだ。長い髪も艶やかで、肌に合った色合いだ。アストロスが心を惹かれるのも無理はない、と思ってしまう。これまでの戦いでも、アストロスらと関わっていた沙耶の姿を何度となく見、その言動も目にしてきた。頭の回転が速く、理知的で、時としてアストロスらに的確な進言をして戦況を左右することもあったほどだ。
 その、沙耶が己の手の上で乱れている。細い眉を歪めて唇からは涎を零し、一心に指を動かしている。ストームブリンガーを乞うように上擦った声で名を呼び、汗の浮いた肌を装甲に擦り、悩ましく喘いでいる。
「あ、ふぁ…」

 ストームブリンガーが親指の先を下げると、沙耶は虚ろな眼差しを上げ、追い縋ってきた。

「やだぁ、まだ抜かないでぇ」
「止めはせぬ」

 ストームブリンガーは胸部装甲の隙間から、外部端末との接続用ケーブルを数本出して伸ばした。ラバーに包まれたケーブルで沙耶の太股を締め上げ、足を広げると、曝された陰部に二本ねじ込んだ。

「うぁ、あ、ぁああっ!」

 沙耶は涙を滲ませながら胸を反らし、髪を振り乱した。

「あん、来たぁ、奥までぇっ!」

 二本のケーブルが前後に動かされると、沙耶の放つ声はますます高くなり、悲鳴に近くなってきた。だが、これは苦痛による声ではない。ストームブリンガーが与える快楽に溺れ切り、弛緩しているのだ。じゅぶじゅぶと水気の多い異音を繰り返しながら、黒い触手に似たケーブルは少女の胎内で暴れていた。ケーブルを通じて感じられる沙耶の体温を味わいながら、ストームブリンガーはケーブルを絡ませた。

「んふぁっ!」

 胎内で形を変えた異物に、沙耶は舌を突き出して目を見開いた。

「あ、やぁん、もお、きもちいいぃっ!」

 絡み合ったケーブルに荒っぽく胎内を擦られ、突かれ、沙耶はがくがくと膝を笑わせた。

「ダメェ、わたし、イッちゃうぅうううっ!」

 熱くぬめった肉の壁がケーブルを締め付けたかと思うと、沙耶はだらりと崩れ落ちた。

「あ…ぁ…」
「我に相応しき鞘だ」

 じゅる、と沙耶の白濁した体液が付いたケーブルを抜くと、沙耶はそれを引き留めた。

「やん、帰っちゃいやぁ」

 躊躇いもなく自身の体液が付いたケーブルを口に含み、舐め回しながら、沙耶は股間を擦り付けていた。黒く滑らかな装甲が熱い体液に汚されていくが、ストームブリンガーはそれを不快だとは思わなかった。それどころか、沙耶を支配する快感に襲われる。最早、ストームブリンガーでなければ満足しないのだから。

「ねぇ、もう一回、いいでしょ?」

 うっとりと目を細めながらケーブルに頬摺りする沙耶に、ストームブリンガーは答えようとしたが留まった。状況が状況だけに、沙耶に向けることが出来なかったセンサーにアストロスの反応が掠めたからだった。ケーブルを引っ込め、名残惜しむ沙耶をなだめてから、ストームブリンガーは彼女を右手に収めて腰を上げた。
 落日して藍色の暗闇に覆われた大地に、巨体が降り立った。両翼を取り戻した正義の戦士、アストロスだ。ストームブリンガーが洞窟から出ると、アストロスはストームブリンガーを見定め、重たい足取りで歩み寄った。

「見つけたぞ、ストームブリンガー!」
「今しばらく待てぬか、アストロス」

 ストームブリンガーは沙耶を掲げ、アストロスに見せつけた。
「まだ終わっておらぬのでな」
「あ、やぁ…」

 服を直していなかった沙耶は襟を掻き合わせるが、肌は隠し切れなかった。

「沙耶…?」

 あられもない姿の沙耶にアストロスが動揺すると、ストームブリンガーは沙耶の体に指先を這わせた。

「貴様などでは、沙耶を満たせぬ」
「ふぁあっ!」

 ぐりっと陰部を抉られた沙耶は、ストームブリンガーの指に縋った。

「やだぁ、またイッちゃったぁ…」
「う、嘘だ、嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だぁああああっ!」

 アストロスは頭を抱えて絶叫するが、ストームブリンガーは沙耶を責める手を緩めなかった。

「己の眼を信じれぬのか、愚か者めが。我のものだと言ったはずだ」
「あ、そんなぁっ、強すぎるぅっ!」

 アストロスの存在を忘れたかのように甘ったるい声を放つ沙耶に、アストロスは後退った。

「な、なんでそうなるんだよ、俺は、ずっと、君を…」
「青臭い正義など、誰も欲してはおらぬ。沙耶が我を求めたのが何よりの証だ」

 ストームブリンガーが冷淡に言い放つと、アストロスは膝を折ってしまった。

「そんな…どうして…」
「ごめんなさい、アストロス」

 沙耶は口元に垂れた涎を拭ってから、とろんとした目でアストロスを見やった。

「私は、ストームブリンガーが好きなの」
「我を阻むな、正義を騙る愚者よ。貴様が生きる術はそれしかない」

 ストームブリンガーは沙耶を手に収めたまま変形し、操縦席に沙耶を移動させると、急上昇した。地上からはアストロスの無様な咆哮が迸ったが、沙耶はそれを耳にしても眉を動かすことすらなかった。それどころか、ストームブリンガーの飛行に応じて動く操縦桿に跨り、先程の続きを始めようとしていた。操縦桿を包み込んだ熱い陰部を感じ取ったストームブリンガーは、込み上がってくる笑みを隠さなかった。
 力を得た。そして、心を得た。沙耶から注がれる熱い執着が心地良く、アストロスの醜態が楽しかった。さあ、これからどうやってこの星を攻めようか。沙耶と生きるために、暮らせる場所を残しておかなければ。アストロスに皆殺しにされた部下達の無念を晴らすためにも、ストームブリンガーが高みに昇るためにも。
 地球を、我が物としなければ。





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