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☆-2-002

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だれでも歓迎! 編集

投下作品まとめスレ2-2〔2-092~192〕



92 : ◆Qb0Tozsreo :2009/12/09(水) 12:02:13 ID:0eGSVF9g
「博士、期限は今日までと言っておいたはずでしょう」

「待ってくれ! あと三日……いや、明日までにはどうにかするから」

 研究所にやってきた厳つい風貌の男たちを前にして、博士は必死に嘆願していた。
 我が国を代表するロボット工学の権威である博士の研究には、莫大な費用がかかっていたのだけれども政権交代の余波で予算を削減され、ついには闇金融にまで手をつけてしまったのだ。

「もう待てねえよ! ここには金目のものはねえようだし……」

 そう言って男たちの一人が研究所の周りを見渡したところ、壁際のデスクで事務をしている秘書に目が止まった。

「だ、だめだ! あの子には手をださないでくれ」

 危険を察した博士は両手を翳して男たちを制しようとしたが、軽くあしらわれて男たちは秘書のもとへ群がっていった。

「この女で、借金は帳消しにしてやるよ! それじゃ、いただいていくぜ」

「先生! たすけて」

「待て! 待ってくれ!! 彼女は……」

 秘書は男たちに軽々と抱き上げられて、そのまま連れ去られてしまった。

「なんてことを……」

 博士はしばらく床にへたりこんだまま動くことができなかった。

 そして数時間後。

「てめえ! この野郎! この女は何者なんだ!? うわっ、やめろ! あっ――」

 研究所にかかってきた電話をとると、受話器の向こう側ではたいへんなことが起きているようだった。

「だから手を出すなと言ったじゃないか。彼女はワタシの最高傑作なのだから」

102 : ◆PDh25fV0cw :2009/12/12(土) 14:24:50 ID:a7n66heg
『もしも占い』
あるところに奇妙な占い屋があった。なにが奇妙なのかというと、この占い屋は起こらなかった未来を占う、もしも占いなのだ。
誰しも、あの時あれをしていれば、と後悔したことはあるはずだ。もしもその先、行動していた時の未来が見えるとするならば、誰しも知りたくなるだろう。
「あの、占って欲しいのですが」
小さなビルの一階、占い師の老年の男が占いの準備をしている時、一人の女性が占い屋に入ってきた。薄いグレイのスーツを着た、OLのようだ。
「はいはい、わかりました。占いたい内容はなんでしょうか?」
「私、少し前に彼氏と別れたんです。それで、新しい男の人と付き合い始めたのですが、どうもしっくりこなくて」
「それで、もし前の男性と別れなければ今はどうなっていたか。それでいいですかな?」
「はい、そうです。仕事が手に付かない、というほどでもないですが、やはりすっきりしなくて」
「ここにくる人は皆、そういっています。大丈夫、きちんと見てあげますよ」
そう言うと占い師は、目の前の水晶に手をかざし、呪文のようなものを唱えだす。時折、女性に質問し、また水晶に呪文を唱える。それを少し続けた後、占い師はおもむろに答えた。
「結果がでました。紙に書いてきますので少しお待ちを」
そうして後ろの部屋に向かい、5分もしないうちに戻ってくる。
「これに全て書いてあります。それでは代金の方をもらえますかな?」
「わかりました。ですが、なぜ結果をいちいち紙に書くのですか?口で言えばすむ話なのに」
「私も昔はそうしていました。しかしそうすると、代金を払わないで出て行ってしまう不届き物がおりまして。こうして紙に書いているのです」
「そうだったのですか。これが代金です」
女性から、代金としてお札を数枚渡し、占い師は結果の紙を渡す。
女性が不安と期待、そして恐怖。それらがまぜこぜになった表情を浮かべ、少し興奮気味に占い屋を去って行く。
一仕事終えた占い師は、部屋の奥に向かった。そこでは、共同経営者の、眼鏡の青年がパソコンで書類を作っていた。
この青年は、半年ほど前、この占い屋にお客としてきた時スカウトされて、この占い屋にいた。
青年は、小説家志望で文は上手いのだが、暗い話しか書けないのでどうにかして欲しいと相談に来たのだ。
そんなこと、プロの小説家に聞けといいたかったが、その時占い師はひらめいた。
そうして生まれたのがこの、もしも占いだ。占い師が、巧みにお客の素性を喋らせ、マイクで聞いている青年が、それを文章にする。
青年の書く、生々しく寒気のするような文は、読んだ人を震え上がらせるに十分だった。
「しかし、毎回暗い話ばかりでいいのでしょうか?」
「いいんだよ。もしも、なんて聞きに来る人間は自分は間違って無かったと、聞きにきているだけなんだから。もしも、で幸福になると言ったら、怒って怒鳴り込んでくる奴もいるだろうさ」
「たしかに、そうですね」
そう他人の不幸は蜜の味。違う選択肢を選んだ自分はもう、他人なのだから。 

115 :創る名無しに見る名無し:2009/12/13(日) 22:46:54 ID:ZAJtw3lp
           『ジュース』(前半)

ある日、Q氏はジュースを飲む…脳に色とりどりの光と光彩が浮かぶ、
恐ろしい程に複雑で精巧な機械が並ぶ研究室で缶ジュースを飲
み干すQ氏は「ふう」とため息を吐いた…どうにかして「味」を
発見しなければならない…
西暦1XXXX年人類は完全に味覚を失ってしまった…というか科学
が進歩しすぎて、食べる事意外の娯楽がどんどん発達していき、
ついにはグルメという文化は完全に忘れ去られて久かったのだ。
考古学者であるQ氏は古代の文献を調べていく内に人類は「味覚」
という感覚を数千年前までは有していたのだと言う事実を発見
した。学会で論文を発表した時は結構な笑いものになってしま
ったが、どうにかして味覚の正体を突き止めたい…そう思っていた

          『ジュース』(後半)

ペットの散歩がてら気分転換に公園を散歩していた私はひたすら考えていた…味覚とは何か?
一説に古代人は缶という原始的な容器に今では絶滅してしまった植物の一種である果実等から
絞った「ジュース」という飲み物を、今では退化してしまった「舌」という器官を使い味を
知覚しながらジュースを「胃」と言う何かに流し込んでいったのだそうだ、そしてその味覚と
いうやつはえも知れぬ快感を与えてくれたのだそうだ…気になる…絶対に解明してみせる!
とは言ったものの、その肝心の「舌」が体のどこにあったのかさえ知らない…
自分の無力さに途方に暮れながら夕焼けを眺めるQ氏。「もう遅い、帰ろうか…タロウ」
ペットの霊長類にそう言うと、Q氏は鉄の巨体で大きな伸びをして家路へと向かった。

116 : ◆PDh25fV0cw :2009/12/13(日) 23:04:22 ID:jLrgnZcU
多少、星さんっぽくないかもしれないが、少し腹が立ったので
『賽の河原の子供たち』
三途の川のそのほとり、賽の河原と呼ばれる場所。そこで子供たちが石を積み上げている。
親より早く死んだこの子供たちは、その罪を購うために石の塔を完成させなければいけないためだ。しかし、塔が完成間近になると、毎回棍棒を持った鬼がやって来て、石の塔を壊してしまう。
子供たちは壊されないように抵抗するが、鬼は不思議な力があるのか、触れることができない。
泣きじゃくる者や、怒る者、呆然とする者など様々な反応をする子供たち。まだ幼い子が多いのか、その反応はことさら大きく、静かな川辺をざわめかせる。
鬼は塔を壊し終わると、その子供たちをあざ笑うかのような哄笑を残し、霞のように消えさっていく。
鬼が消えた後、子供たちはまた石を積み始める。今度は子供たちなりに頭を使い、複数の塔を同時に建て始め、一つ二つ鬼に壊されてもいいようにした。
しかし、完成間近になったとき、今度は鬼も複数になって現れた。無惨に壊されていく塔たち。それは、鬼が子供の浅知恵を嘲笑っているかのようだった。
毎回、毎回壊される塔。その内、ほとんどの子供が積むことを諦めてしまった。そんな中、一人の少年が、また塔を積み始めた。
回りの子供は、皆諦めた表情でそれを見ていた。案の定、その塔は完成間近で壊されてしまう。
だが、その少年は壊されても、壊されても、塔を積むことをやめようとはしなかった。
そのうち、一人の子がその少年に問いかけた。
「そんなことをしても無駄さ。また、壊されてしまうだけだよ」
「壊されてもいいさ。それよりも、今度は丸い塔ができたよ」
よく見てみると、その塔はたしかに円錐状になっていた。
「前回は四角い塔、その前は三角の塔。塔を作るの、楽しいよ」
少年はその汚れた顔に、あどけない笑顔を浮かべながら、本当に楽しそうに答えた。
塔を作ることを楽しむ。完成させることばかりに気をとられ、他の子供たちはそんな簡単なことを忘れていた。
塔を作る者、見て楽しむ者、次の塔を考える者。それぞれの楽しみ方で、子供たちは塔作りに熱中しつづけた。
鬼は塔を壊すことはできても、子供たちには触れることができない。鬼は楽しそうな子供たちを見て、地団太を踏むことしかできなかった。
ここは地獄の入り口、賽の河原。子供たちの楽園だ。

120 :創る名無しに見る名無し:2009/12/13(日) 23:40:39 ID:ZAJtw3lp
            『数千年』

奴らは恐ろしく巨大だ俺の勘では数千年以上は生きているの
だろうと思う、化け物だ!狭い部屋に二十人の男がたむろし
ている俺もその一人だ…全員にネズミの様なシッポが生えて
いる。ある日、屋根が開く…ある者はただ呆然とし、ある者
は半狂乱となる…三人の男が選ばれ、何かの薬品を投与され
る。じきに二人がぐったりとなって動かなくなり、なんとも
無かった一人は巨大な手にどこかに連れ去られた、その後ど
うなったかは知らない。

137 :創る名無しに見る名無し:2009/12/22(火) 13:10:40 ID:JH8LgSrk
厄介な奴

「まったく、ほんとに厄介な奴らだな。」
「そのとおりだ。こいつらが地球に現れなかったら今の地球はずっと平和だったはずだ!」
「動物を次々と殺し、自然破壊や環境汚染、ついには自分たちの仲間とまで戦い、自分たちの首を締め上げている。馬鹿じゃないだろうか?」
「なぜ神はこんなものを作ったのだろう?」
「知るものか!やつらも対策を立てようとした頃にはもう遅かった。このままだと遠からず奴らは破滅だ。いい気味だな!しかし自分たちだけ破滅するのならいいが、我々まで巻き込んだあげく。だものな。」
「ほんとに厄介な奴らだな。人間というものは・・・・・・。」

139 :創る名無しに見る名無し:2009/12/22(火) 19:06:18 ID:2NAaSpJV
『懐古』

ある絵描きが昔自分が住んでいた故郷を懐かしみ絵に描いてみることにした。
彼がまだ少年だったころよく絵を描きに行ったあの高台からの風景を思い浮かべる。
山には杉の苗がたくさん植えられていて、川の水は工場の汚水で濁っていたはずだ、彼はさらに記憶を辿って絵を書き足していく。
山のこの辺りには広いあぜ道が町まで通っていて自分の育った家は大体この辺にある・・・
しばらく時間をかけて彼は記憶を頼りに一枚の風景画を描き上げた。
 この町を知らない人がこの絵を見てもよくある風景画だと思うだけなんだろうな、と思ったが絵に詰まった思い出から彼は満足感で満たされていた。

それから数十年が経った。
歳をとった彼は再び少年のころ過ごした故郷を絵に描いてみようと記憶を辿る。
しかしずいぶん昔住んでいた故郷だったのでその際いつだったか若いころに描いた故郷の風景画を参考にしようと探してみる。
ようやく出てきた自分で描いた絵を久しぶりに眺めてみると彼はあれこれ物足りなさを感じ出した。
 杉はこんなに小さくなかったのではないか、川の水はもう少し澄んだ色をしてはいなかったか、
 町ももう少し明るい色を使った方が存在を目立たせられるだろう
彼は今思ったことを新しく描く故郷にそのまま反映させていく。
そして描き上がった風景画をみて彼は満足し、嬉しそうな表情を浮かべる。
しかしその満足は若かりし頃に故郷を想い絵を描いた時のものとは全く別の感情だった。

146 :創る名無しに見る名無し:2010/01/14(木) 15:12:14 ID:0lLkAxXn
『積もる雨』

天気のよかった午前を過ぎると急速に雲が集まりだし瞬く間に雨が降り始めた。
しばらく降っていなかったせいか厚い雲はなかなか雨の終わりを感じさせない。
町へ山へ川へ海へ雲はところかまわず雨を降らせ続ける。
それから数日後、ようやく雲は小さくなりどこかへと流れていった。
「ようやくやんだ。水溜りがすごいなあ」
外の地面を見て男性が感想を述べた。
テレビによると雨は全国的に降っていたらしいがこれからは晴天が続くという。
現にもう太陽が暖かく照っている。外では水溜りをうまくよけながら人々が歩いていた。

だがそれから二日も経つと彼に少し気のかかることができた。
二日も晴天が続いたというのに外の水溜りが引いていかないのだ。蒸発しない。
「いつもならもう消えているんだがあの雨の後からなかなか消えないな」
もっと時間が経てばいずれは消えるのだろう、と彼は考えた。
その翌日は小雨が降り外ではわずかではあるもののさらに水溜りが増えて拡がっていた。
もう十分水溜りは道路を覆っているのにそれでもまだ低い方へと流れていかず川の水は大して増えていない。
天気がよくなっても水溜りが全く小さくならないので歩く人々は皆長靴を履いている。
外を見ながら男性は考えた。
「今はまだいいがこれから少しずつでも雨が降ってくると、やがては・・・」
日差しがきつくなり夏に近づく5月の終わり、これから梅雨の始まる6月に入ろうとしていた。

150 :創る名無しに見る名無し:2010/01/18(月) 19:13:50 ID:JIY5vXZy
『そうならば』

ある所で人が地球とはどういう形をしているのか話し合っていた。
一人が言う。「地球は大きな半円型に決まっている。地球の下には巨大な亀がいてその上に立つ四頭の象が地球を支えているのだ」
するとパオ-ン、とどこかから大きな鳴き声が聞こえた。
それにかまわず二人目が考えを言う。
「それなら海の向こうには崖があるのかい。違うと思うなあ、地球は巨大な空洞になっていて
 僕たちはその中にいるんだよ。そこにあるように見える山や空もすべて内側にかかれた絵なのさ」
その瞬間遠くの山がさっと平面的に変わったように見えた。
それを聞いていた三人目。彼は地球がどういう形をしているのか正しく知っていた。
「いいか。信じられないと思うけどこの地球は空間に浮かぶ巨大な球体で俺たちはその上に立っているんだ」
真実を知る三人目の意見を聞いて周りにいた者たちはすぐにこう切り返した。
「お前の言うとおり地球が丸くてその上に俺たちがいるというのならなんで俺たちは地球から落ちないんだ。」
「それは・・・・・・」
三人目はなぜかという理由までは知らず言葉に詰まり考え出した。
合わせて考える一人目と二人目。直後、彼らはふわりと足元が浮くような感覚を覚えた。

151 :創る名無しに見る名無し:2010/01/18(月) 22:04:50 ID:upQKI4tF
新作を書きます!星氏っぽくないかもしれませんが……

「操作」
ある男がいた。
その男は一人暮らし。就職も出来ず、テレビを付けるだけの日々。
今日はテレビを付けた後、少し音量が小さいと思った。
男は音量を上げてみた……と、その時、外の車が通る音が少し大きくなった気がした。
それだけじゃない。全ての音が大きくなっている。
足音、咳払い、吐息……自分が出す音までも…
まさかと思ってさらに音量を上げてみると、また大きくなった。
これはうまく使えそうな気がした……

次の日、昨日より周りの音が小さくなっている。
昨日の上げた音量が元に戻ったのだろう。
早速音を上げてみた。やはり周りの音が大きくなる。

一時間後、さすがに飽きてきたのか、外出したくなった。
テレビを消した……そのときだった。
辺りが急に暗くなったのだ。
自分の部屋の電気も、周りの建物も、さらには空までもが暗くなった。
これはまずいと電源を入れると、全てが元に戻った。
いきなり厄介なものを手に入れたと思った男であった。

次の日、番組の録画をしようと思った。
男はいつものように録画予約をしておいた。そして外出した……

帰ってきて、早速録画したものを見ている。
だが、それはなんの番組でもないある風景だった。
よく見ると、自分の近所に似ている。
もしかしたら、外の風景が録画されてしまったのではないか……そう思った。
さらに案の定、様々な風景が映し出されていた。

何日もそれが続いた。もう男もうんざりしてきた。
いっそのこと、これを燃やそう、と考えた……
男はマッチで火をつける。これくらいはあるのだ。
だが燃やそうとしたその時、外の風景が炎に包まれた。
辺りが真っ赤になり、さすがに今回は男もあわてた。
すぐに火を消すと、元に戻った。焼け跡や焦げ跡などは何も無い。
男は悟った。このリモコンからは逃げられないと、自分は操作する身になってしまったのだと……

男は2年経ち、就職した。
結婚はしていない。むしろ、しない方がいいのかもしれない。
金はあるが、新しいテレビは買いにいけない。
行ったら……また何か災害がおこると思っているからだ。
今も男は、あのリモコンと一緒に人生を過ごしている。

157 :創る名無しに見る名無し:2010/01/22(金) 18:37:40 ID:v6ILLV82
『王座と革命』

季節は冬が終わりを迎えるころ。
雑草と野花が覆い茂る中それらを拒むように一面土だけの一角があった。
周りと四角く切り離されていてまるで誰かが区切ったようにも見えた。
その一側面に伸びる一本の小道。そこを通りがかる男性がいた。
男性はその一角に気付くと足を止めて土に触れてみる。
見て触った土の感じから地面が肥えていることを確信した彼は
背負っていたリュックをおろし、小さな袋を取り出す。
その袋に入っていた植物の種を植えるため、彼は地面に人差し指で穴をあけているようだった。
持っていた分すべてを植え終わった後、彼はリュックを背負い直し再び小道を歩いて行った。

半年後、その雑草を寄せ付けない四角い土地の横を彼が一年ぶりに通りがかった。
しかし辺りを見た彼は半年前に通った小道と、本当に同じ場所なのかわからなくなった。
彼が半年前植えたのはひまわりの種だったがその場所におかしなほど大きなひまわりが成長していた。
それに引き換え周りの土地に生える雑草はみな小さく細く、枯れる寸前の状態になっている。
どうやらひまわりの生えている一角が辺りの地面から養分をごっそり吸い上げているようだった。
ひまわりを植えた男性は周りの土地が以前青々と雑草や野花で賑わって
いたことを思い出し、ひまわりを土から抜いてしまおうと考えた。
くきを掴み、引っこ抜いた。 これでもとの様に草花が伸び伸びとした
多様性あふれる土地になるだろうと思い、彼は抜いたひまわりを捨てその場を後にした。
だがひまわりを抜いた後もその土地は男性の思い通りにはいかなかった。
それまでその一角を取り巻いていただけだった雑草や野花が次は自分がその一角を治めようと根を伸ばしだした。
結果、その一角は再び辺りの一帯から養分を吸い上げ、吸い上げつくしたのちその土地には何も生えなくなってしまった。

159 :創る名無しに見る名無し:2010/01/23(土) 16:09:01 ID:INukBhyB
嘘をついたら消えてしまう世界の話
A氏とF氏の会話
A「いやぁ私、一人が好きで休みになると一人で旅するのが定番になってるんですよ。」
B「ほう、私も一人旅が好きでねぇ……」
A「奇遇ですね、では今度一緒に旅行でも行きませんか。」

164 :「 悪魔な博士 」1/2:2010/01/24(日) 20:14:20 ID:yVCuZNju

 とある研究所。
発明家のN博士はアルバイトのS助手とともに、狭い研究所の中で
日々怪しげな実験を繰り広げていた。
 危険と緊張が伴う実験を終えて一息ついた深夜。
眠気覚ましの濃いコーヒーを飲みながらN博士はS助手に切り出す。

「 S君、これから重要な話をする。
 今まで黙っていたが、実のところ私は悪魔なのだ…… 」
「 ……なに馬鹿なこと言ってんですか 」
 気を張った実験の疲れからか、突拍子の無いN博士の言葉に
S助手は呆れたように苦笑いを浮かべることしか出来なかった。
しかしN博士はいたって真面目な表情で続ける。

「 馬鹿なことではない。私が悪魔なのは紛れのない事実だ。
 黒い翼や尻尾、赤い瞳を晒せば信じてもらえるとは思うが残念ながら
 それは悪魔界の規則で禁じられている 」
「 ……ふざけているんですか? 」
 悪魔ごっこはいいから早く家に帰りたいと心の中で舌打ちをするS助手。
だが露骨に嫌な顔をしているS助手を前にしてもN博士の話は止まらない。

「 二度も伝えたのに理解してもらえないとは嘆かわしい限りだ……。
 君も科学者発明家を志すのならもう少し素直に人の話を聞いたほうがいい。
 事実を受け入れられないその頑なさは、時に君の発想力をスポイルする。
 何度でも言う。私は悪魔だ。ふざける必要はどこにも無い 」 
「 いい加減してくださいっ!!! 」
 深夜にまで及んだ実験による寝不足と苛立ち。そして自分は悪魔
だと言い張り、それを信じない者を小馬鹿にするような口ぶりのN博士に
S助手の堪忍袋の緒が切れた。 

「 博士が悪魔だということが重要な話ならばそれで結構。
 僕にはさして問題はありません。とっとと家に帰って寝たいんで
 用が無いなら今日はこれで失礼します! 」
「 待ちなさい。それも重要だが本題は別にある 」
 付き合いきれないという表情のS助手だが雇い主のN博士に逆らえる
訳もなく、N博士に促されるまま渋々と安物のパイプ椅子に腰をおろした。

「 くどいようだが私は悪魔だ。しかしそろそろ人間の姿で暮らすことに飽きを
 感じている。人間の発明家としての地位も名誉もあるが、それにはなんのしがらみ
 も感じない。という訳で近いうちに人間から悪魔に戻り魔界に帰るつもりでいる。
 ……急な話で申し訳ないのだがS君。
 今日限りで君をこの研究所から解雇する。二年の短い時間だったが
 色々と無理難題を押し付けてすまなかった。感謝している 」
「 は……? 何ですかそれ? 」
「 ……言葉を選ばずに言おう。S君、今日限りでクビだ 」
「 ちょっと待ってください! いきなりそんなこと言われても困ります! 」
 突然言い渡された解雇宣告にS助手は動揺を隠せない。

「 ……君が憤るのは分かるが私の気持ちは変わらない。
 給料はいつも通り振り込む。あと退職金として一年分の給料も一緒に
 振り込もう。ニ年間の労働期間で退職金が給与一年分なら充分破格なはずだ 」
「 そんな問題じゃない! このご時世、仕事を探すのがどれだけ大変な
 ことか博士は分かっていない! ひどい人だ。まるで悪魔だ! 」
「 ……だから言っているだろうに。私は悪魔だと 」
「 ………… 」

 N博士を見据えるS助手の瞳には、もはや狂人を見る憐れみの色しかなかった。
お世話になりました。ぽつりと呟いて悪魔なN博士を残し、S助手は研究所を去った――

165 :「 悪魔な博士 」2/2:2010/01/24(日) 20:16:09 ID:yVCuZNju

 翌日。
研究所を畳むべくN博士は所内の整理にいそしんでいた。
長年過ごした研究所を畳むのは忍びなかったが、自分で決めたことだと心に
強く言い聞かせ、黙々と作業を続けた。

 丸一日掛けてN博士が納得できるところまで所内の片づけが終わった。
残るは昨日の実験データーの処理だけだった。
「 ……色々なことがあったが今までありがとう 」
濃いめのコーヒーを飲みながらN博士は所内を見渡し昨日の実験のことを
思い出していた。

 多くの技術発明発見がそうであるように、昨日S助手と行った実験で得た発見も
全くの偶然が引き起こした賜物だった。

 深夜に及んだ実験は長時間掛けたのにも関わらず、N博士の思い描いた
結果は残せなかった。だがN博士の意図せぬところで小さな科学反応が起こった。
 何千回も繰り返した作業ルーチン。正確に手順を踏めば起こりえない現象。
S助手もしくはN博士自身の散漫。あるいは単純な注意不足かは分からない。
しかし、偶然起こったその小さな化学反応は、ある特殊な分野の常識を覆す画期的
な発見だった。

 その発見の有効性に、単なる助手のSは気付くはずもなかった。
そしてN博士もその発見を瞬時に無かった事にした。
 けしてその発見を独り占めしようとした訳ではない。
N博士の直感がそうさせたのだ。この発見はあまりにも危険すぎる――と。

「 S君。君に悪魔と呼ばれるのは一向に構わない。一生私を呪ってくれていい。
 しかし私はこの悪魔の発見を世に送り出すわけにはいかないのだよ。分かってくれ…… 」  

 そう呟いてN博士は昨日の実験に関わる全ての書類、データーを廃棄した。
そして主を失った研究所にあかりが灯ることは二度と無かった――

おわり

170 :創る名無しに見る名無し:2010/01/25(月) 17:41:48 ID:TBCDQqpG
「パトカー」

とある農村で窃盗事件が数多く発生した。
警察に頼ろうとも出動するのに時間がかかる
農民達が知恵を出し合い、ある方法を試した。
夜、ドロボウがいつも通り農家の家に侵入しようとすると突然赤いランプが見えた。
ランプのほうを見ると白と黒の大きい物が目に付く。
ドロボウはまずいと思いその場から去っていった。

「おう!無事追い払われただか?」
「んだ!、それにしても牛に赤いランプをつけただけでパトカーと間違えるだなんてな」
農夫たちは笑いあった

173 :創る名無しに見る名無し:2010/01/25(月) 21:27:50 ID:S9wYPqcg
とある研究室
N博士は、お札を増やす薬を開発していた。そこへN博士とN博士が入って来た。
「皆、研究の方はどうだ?」とN博士は伺うと
N博士は冴えない顔で首を横に振り、N博士はため息をついた。
すると、N博士とN博士とN博士が勢い良く入ってきて、

「実験中に資金が全部焼けてしまいました!」
とN博士とN博士とN博士は蒼白な顔でうろたえているてところに、遅れて入って来たN博士が
「働ける人を増やす薬を作ればよかったのに」

だが、N博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士とN博士は
「最初から、そんな事を思わなきゃよかったのに」
と反論したのであった。

185 :創る名無しに見る名無し:2010/01/27(水) 09:10:37 ID:vLKUtmqQ
それでは私も一つ。

「免罪列車」

駅員の声で起こされたのは深夜0時過ぎの事だった。
どうやら最寄駅を大分通り過ぎてたみたいだ。55歳にもなって、酔っ払って寝過ごすなんて恥ずかしい事である。
「もう終点ですよ。折り返し電車が間もなく出発しますがいかがされますか?」
「あっ、乗ります」
すると駅員は向かいのホームに停車中の電車指差した。
「階段を上って、3番ホームですので」
私は急いでその電車に飛び乗った。どうやら乗客は私一人のようだ。余計なタクシー代がかからずに済んだと、胸を撫で下ろしていた所いた。その後電車は発車したが、数分後になぜか回りの雰囲気が違う事に気がついた。
いつもと風景が違う。ここはどこだ?
車掌からアナウンスが聞こえてきた。
「毎度ご乗車ありがとうございます。この列車は免罪駅までノンストップで運行して参ります」
免罪駅……そんな駅名聞いた事ないぞ。
私はパニックになり、少しの恐怖感も沸いて来た。
一体何が起こっているんだ?窓の外を眺めていると、深夜にもかかわらず急に明るくなり、映画のスクリーンのような物が目に飛びこんできた。

『1965年5月8日』と字幕が現れると、そのスクリーンの中に、子供の頃の私が映し出された。

「おい!明日だぞ!必ず1万円持ってこいよ!」
「そんなの無理だよ…」
「お前の家は金持ちなんだろ?母ちゃんの財布から抜いてこい。明日持って来なかったらタダじゃおかないからな!」

間違いなく私本人だった。しかも、この情景は覚えている。
その後も次々に、日付の字幕と共に私がスクリーンに現れた。

『1974年5月9日』
就職した会社にて、ライバルだった同期社員が所持していた重要な顧客資料をシュレッダにかける私がいた。
それにより、この同期社員は翌日上司よりクビを言い渡される。

そういや昔は酷い事したもんだなあ、と思っていたところまたしても画面は切り替わった。

『1996年2月14日』

「奥さんと別れて私と一緒になるって言ったじゃない」
「すまんが、今は動けないんだよ」
「嘘泣き!もういいわ。死んでやる!」
「勝手にしろ!元々、私が結婚してるのを知ってて付き合い出したんだろ?死ぬ勇気なんてないくせに!」
翌日の新聞で私は彼女が特急電車に投身自殺をした事実を私は知る。

私の悪事が時系列でスクリーンに映し出されている。その後も私が横領したのを部下におしつけたり……。

かれこれ30分は経っただろうか。車内アナウンス
が流れる。
「列車は間もなく終点の免罪駅に到着いたします」
列車のブレーキ音が聞こえると数十秒後に停車した。
ほんとに奇妙な列車だな。しかしこんな駅知らないぞ、と呟きながら列車を降りた。すると死神の格好をした車掌が立っている。

「いかがでしたか?」
「奇妙な列車だよ!一体ここは何処なんだ?」
「あなたは今まで犯してきた罪を償った事がありません。最近自ら罪を償おうとする人間が減りましてね。私がお手伝いしてるんですよ。ヒッヒッヒ」
「よくわからんが出してくれ、タクシー乗り場はどこだ?」
「その前に乗り越し代金を清算して頂きますよ。えーとあなたがこれまで犯した罪は合計で1500万円支払えば償えるでしょう。現在は便利になりましたよ。罪は金で消せるのですからね」
「馬鹿馬鹿しい!そんな大金有る訳ないだろ!」
「なるほど。今は不況ですからね。そういった方に便利な支払方法があるんです。」
「なんだそれ!どうすりゃいいんだよ!」
「簡単ですよ。ちょいと、腎臓と角膜を頂くだけなんです」

191 : ◆Qb0Tozsreo :2010/01/28(木) 12:33:04 ID:BC087cX+
規制解除記念カキコ

「畜生……」

 アイツは項垂れながらずっと唇を噛み締めていた。

「でも後悔なんてしてないよな。やるだけのことはやったんだから……」

 オレは勝ち誇りたい気持ちをぐっと抑えて、アイツを宥める。進路指導の先生からも志望校は厳しいと言われていたのだけれど、アイツは希望どおり第一志望の学校を受験した。
 志望校をワンランク落としたオレを散々戒めていたくせに、結果はこのとおりだ。意気揚々とやってきた合格発表の日。アイツの受験番号は掲示板にはなかった。

「オレも考えを改めるよ……。みんなの意見は真摯に受け入れて、自分勝手な行動は慎む。自己チューなオレとは、もう、さよならさ」

 そう言ってアイツは頬を弛めた。

 それから、学校が変わったオレたちは段々と疎遠になってゆき、いつしか年賀状のやり取りをするだけの仲になっていた。

「あらっ? スズキさん結婚したみたいね。へぇ~、スズキさんって、こういう人がタイプだったんだぁ」

 今年も届いた数十枚の年賀状を仕分けていると、妻がアイツからの年賀状を見つけて呟いた。
 差し出されたアイツからの年賀状にプリントされていたのは、アイツのタイプとは凡そ正反対の容姿をしている女性と仲睦まじく寄り添う、アイツの姿だった。
 オレはアイツがあの日、合格発表の掲示板の前で言った言葉を思い出していた。

「この人、ぜったいに第一志望じゃなかったな……」

192 :創る名無しに見る名無し:2010/01/28(木) 15:06:24 ID:813eGM/S
http://tsushima.2ch.net/newsplus/dat/1264633967.dat
(一部修正)

エヌ氏は家族に見守られて病室からオペ室へと移動しようとしていた。
最新の東芝秘書携帯が電子的な声で報告する。
<会社へ入院期間とその後のスケジュールをメール致しました>
「こんな時まで仕事の話なんて、やっぱり機械は機械ね。」
妻は不満そうに秘書携帯を睨みつける。
必要な情報を自ら考えプログラム実行してくれる。エヌ氏にとっては手放させない
存在となってはいるが、人間的な場の空気を読めというのは、いささか酷であろう。
「さあアナタ頑張ってしっかり治してまた働いて頂かなくちゃ」
「パパ頑張って~」
「あぁそうだな。頑張ってくるよ」
エヌ氏は秘書携帯を金庫に入れ家族と共にオペ室へ向かった。
柔らかな春の日差しが誰もいない病室を明るく照らしていた。

<さよなら>


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