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温泉界へご招待 ~千丈髪怜角の場合~ 前編

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温泉界へご招待 ~千丈髪怜角の場合~ 前編




『千丈髪』を侮ってはいけない…一瞬だけ凄みのある笑みを浮かべた怜角は亡者の逃亡先、おそらく遥か異界と繋がる細く強靭な髪を、『向こう側』へしっかりと絡みつかせた。

「…山茶角さん、分隊長たちに伝えて下さい。私はこのまま、『天野翔太』を追います!!」

「お、おう…」

戸惑う仲間の前から、ふっ、と怜角の姿が消える。獄卒として彼を逃がす訳にはいかなかった。自分が担当する亡者にして、恐るべき『第二類』の誤爆霊。そのうえ面妖なその能力を駆使して、卑劣な覗きまがいの行為まで…

(…べ、別にいつも官給の虎縞下着のわけじゃない…今日は、本当にたまたま…)

地獄の鬼たちに律儀な閻魔庁が支給する虎縞の下着。獄卒隊の入隊式に授与される金棒と同じで、今ではほぼ形式的な獄卒の証だ。
同期の胡蝶角は額縁に入れて祖母に贈ったらしい。あの衣服に無頓着な慈仙洞の嵐角でさえ、赤ん坊のおむつカバーに使用しているという。
そんなある意味滑稽な下着を、仮にも同期入隊筆頭のクールビューティー、千丈髪怜角が愛用している、などと噂になったら…

(…いやいや、下着などはどうでもいい…)

しかし歪んだ空間に潜り込み、渦巻く色彩のなかを駆け抜けながらも、怜角の思考は待ち受ける危険より恥ずかしい虎縞パンツから離れなかった。

(…もし、宮殿侍女たちなんかの耳に入ったら…)

『…怜角はケチだニャ!!それとも、もしかしたら男に貢いでパンツを買う金も無いのかニャ!?』などと嬉しそうににゃあにゃあと根も葉もなく騒ぎ立てるに違いないのだ。

(…ああ…高瀬さま…)

怜角の懸念はさらに加速してゆく。妖しい空間の彼方、伸ばした黒髪が導く異世界が現れたが、彼女の脳裏には高瀬陸軍中尉の険しい顔しか映っていなかった。

『…怜角さん。自分は女性たるべき者、その貞潔を示す純白の下着を着用すべきと考えるのであります。仮にも虎縞などという破廉恥極まりない柄は、全く言語道断であります!!』

(わああああああ!!)

…彼女の耳には、すでに高瀬小隊が高々と唄う『嗚呼、虎縞下着』(作詞/作曲・千丈髪怜角)の旋律さえ高く響いていた。
その自分勝手な怒りの全てを天野青年ののほほん、とした顔にぶつけながら、千丈髪怜角は鼻息も荒く彼の逃げ込んだ異空間、なにやら石鹸の香り漂う未知の世界へと跳び込んだ。

千丈髪怜角「地獄世界:地獄百景」よりご来場


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