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管理人

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

管理人

「やあ、どうも箱庭館へ。歓迎するよ、お嬢さんとそのお弟子君」
「どうも、あなたは?」
「俺はこの館の管理を任されている。だがまあ、主ってわけじゃあない。ただの管理人だよ」

 僕らだけかと思ったが、ここまで綺麗に整備されているのだ。管理人くらいいるだろう。
 管理人を名乗る男が、手を差し出す。華奢に見えるが、それなりに鍛えているのだろう。皮の厚い手の平だ。
 煙草を吸っているのか、少しヤニの残り香が服についていた。

「さて、部屋だが、っとその前に、ここの儀式をしておこう……」

 男は玄関の扉に手を掛けて、しばし留まる。それから手を顎に当て、やや思案顔を浮かべた。

「儀式? 一体? なんなんですか?」
「……個人的には、もう少しグラマラスな方が趣味だっ――ひでぶっ!」
「気が済んだか? 管理人」

 管理人は、僕は怖くて言えない言葉をさらりと吐いて、ついでに血を吐きながら盛大に吹き飛ぶ。
 師匠に胸とか小さいとか、そういった言葉を投げかけるとはなんと勇者な。
 おお、立った。なんか蛙を潰したような音が鳴ってたのに、すげえ。

「まあ……げほっ…とりあえず、この町流の挨拶だ」
「レディの感想を素直に述べることがですか? それとも、不躾で率直にリビドーを吐き出すことがですか?」
「おや? 君はルールを知らないのか? 俺が手取り足取り教えてやってもいいんだぜ?」
「遠慮しておきます」
「なあに、俺は付いててもいけるんだぜ?」

 空恐ろしいものを感じて、じりじりと距離を開ける。
 管理人は、なにかを知りながら、その秘密を楽しむように笑顔を浮かべていた。
 同時に、その笑顔から、どこか言いようのない不自然さを感じながら、僕らは館の中へと通された。

「ところで管理人、あなたはエキストラか?」
「これでも脇役志望だ。どう転ぶかは流れ次第だろう」

 僕は会話に耳を傾けつつ、師匠の荷物を引きながら廊下を進んだ。
 なにか、良く理解できない会話が師匠と管理人との間で交わされている。
 さっきから、なにか自分には知らされていないルールがあるようで、だが、僕はそれの片鱗すら掴めない。

「そうだな。ところで、ブ男管理人……くっ」
「どうやら、主導権は君にはないみたいだな。俺はこれでも、すごくモテる部類なんだよ。可愛いお嬢さん」
「お前、私を自分の理想にしてないか?」
「さあ? 単に君の弟子がそういう趣味なんじゃないか?」

 あれ? なんか管理人の顔がぼやけて……
 目をこする間に、男は足を止めた。僕らも従って扉の前に並ぶ。

「さあ、着いた。ここが君たちの部屋だよ」
「買い物なんかは、どこですればいい?」
「さっそくかい? 随分と早いんだな。まあ、俺も長さより回数に自信があるんだが」

 トバす管理人に、師匠の拳と視線が硬くなる。
 それを読み取ってか、男はすらすらと周辺の環境を説明し始めた。

「まず、この町にコンビニなんて便利なものはないよ」
「コンビニもないんですか? 生活用品はどうすれば?」
「生活用品なら、駅前のホームセンターとスーパーが合体したような店がある。そこが一番品揃えがいい」
「ああ、途中にありましたね。やたら駐車場が広い」
「それは田舎だからな。喫煙するなら、煙草屋が駅前の大通りを左に曲がってすぐにある。そこはちょうど商店街の入り口だ」
「なるほど、煙草は吸いませんが、大まかな生活用品は、その二つで済みますね」

 しかし、どちらも遠いな。なんとも、難儀な生活になりそうだ。

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