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「ポスト」、「左」、「悪夢」

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「ポスト」、「左」、「悪夢」


30 名前:ポスト 左 悪夢[sage] 投稿日:2008/09/08(月) 02:09:15 ID:48pNp28L

 永田町の悪夢といわれた国会議員の集団食中毒事件から、もう三年が経とうとしていた。
 事件発生当初こそマスコミは連日のようにこの惨劇を報じたが、結果的に死亡者が一人もでず、原因も政治家を狙ったテロではなく、弁当を調理した仕出店の衛生管理の問題とわかったことから次第に下火となり、やがて忘れ去られていった。

 しかし、この事件をどうしても忘れることのできない男がいた。左幹雄。東京都選出の衆議院議員、齢四十八にして当選五回のベテラン議員であり、次期総裁にもっとも近いと噂されていた。
「おはようございます、ヒダリー」
 その日、衆議院正玄関の階段で待構えていたのは南都新聞の女性記者、朝岡あずさだった。
「おはよう」
 無愛想に返事する。が、彼女は幹雄のそんな態度に臆するふうもない。
 二人の出会いは半年前、政治部の新人記者としてあいさつ回りに訪れた朝岡に、幹雄は冗談で「わたしのことはヒダリーと呼んでくれ」と言ったところ、彼女はそれを真に受け、毎度毎度「ヒダリー!」と馴れ馴れしく呼びかけだしたのだった。
「ヒダリー、組閣ポストをめぐって鍋本幹事長との確執が噂されていますが?」
 いいか、おれの次女と同い年のおまえに気安くあだ名で呼ばれる筋合いはねぇんだよ! わかったか、このクソアマ!
 と、喉元まででかかった言葉を飲み込んだのは、いつもとはちがう匂いに気づいたからだ。
「香水を変えたのか?」
 立ち止まった幹雄が思わず口をすべらす。
「あら、ヒダリー。わたしが香水かえたの、気づいてくれたんですね」
 あずさは笑みを浮かべ、手にしたICレコーダーのスイッチを切った。
「このまえ銀座のデパートで奥さまといっしょに買い物されていたとき、こっそり買ってらしたでしょ、この香水。どなたへのプレゼントだったんですか?」
 小声でそう言うと、どういうわけかレコーダーを落とした。
「やだ、わたしったら。どうしようもないドジなんだから。レコーダー落としちゃった……。ヒダリー、それ、とってくれませんか? このハイヒール買ったばかりで慣れてなくて、うまく屈めないんです」
 視線を上から下に落とす。見慣れたはずのスーツが、妙に艶めかしい。レコーダーはちょうどあずさの両脚の間に落ちていた。
「ねぇ、ヒダリー、お・ね・が・い」
 あずさは幹雄の肩に手を置くと、彼の耳もとでささやいた。
 この日はなにもかも違っていた。幹雄は場所も構わず女の足元へとしゃがみ込み、

(省略されました。事件の真相を知るには大家さん大家さん、家賃はもうちょっと待ってくださいと書き込んでください)

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