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正義の定義 ~英雄/十二使徒~ 第5話 1/2




 「おー、やっときたか、おせぇぞコラ」
 「途中で色々あったのよ…それにしても…」
 朝日が昇り、蒼天の大空に陽が射した。所は何処、関東地方のとある自治区である。そこそこ人の入りが見られる事から、
復興度の高い地区のようだ。街並みは明治初期と言った、なんとも古めかしい街の景観に、そぐわない形でビルやらがチラホラと
建っている、珍妙な街並みであった。
 過去の遺物…。現在、アレを建てる技術はこの国にはない。なんだか酷くあべこべだ。まるで時代逆行だ。文明開化の音が
聞こえるところまで逆戻りしてしまったかのような家屋の数々が、高くそびえるビルとの対比になっているようで、それを冴島は
可笑しく思った。
 「でもこのアンバランスなけーかんが、わたしのふえぇてぃしずむをしげきすりゅ…ふぇ、かんだ」
 「何言ってんだこいつ?」
 「おもしろいわよねこの子」
 トエルのよく分からない発言に炎堂が呆れる中、現地に到着した陰伊達は先に活動に応っていた白石との再会に浸っていた。
まぁ数日会っていないだけなのだが。
 「陰伊ちゃーん!」
 「幸ちゃん!」
 再会に抱きしめあう陰伊と白石。ごく一般的なアメリカンスタイルの挨拶である。
 「いやー、もうね、炎堂さんと二人だとおっさん臭がひどくてさー、移っちゃいそうだったから陰伊ちゃんに移植するべさ」
 「やーめーてー」
 「おいこら白石!てめぇなんか色々言ってくれてるじゃねぇか!!あぁ!?」

 (はぁ、ほんとにこの人達は呑気だな…)
 裳杖は再開するや否やてんやわんやで酷い陰伊達の様子を見て溜息を吐く。そんな冴えない様子の彼の肩をぽんと叩いたのは…
 「この中でまともなのは俺とお前だけだなぁ、裳杖!」
 「はぁ…」
 ムッツリスケベ英雄こと青島龍太であった。裳杖は自分と一緒にしないで欲しいと心の奥で密かに思った。


第五話
   ―『魔法と少女と召喚獣』…略してととしょ。―



―前回のあらすじ
クロス
伺か
ふぇ

クロスっていってもラクロスとかゼクロスとかク○ノ・クロスとか…いや、あんなゲームは無かった。今の無しね。
とりあえずあんな前回でした。おもしろいですよね、やっぱりこういうのがしぇあわの醍醐味だとあたち、おもうのよ!
ふぇ!五月病なんか吹っ飛ばせ!そんなあたちは万年五月病ちゃん!

以下、本編…



 「…で、今回護衛する人物はお偉い方だ。お前ら、粗相の無いようになァ」
 区の中心部。廃ビルを再利用して運営している役所の最上階。窓ガラスから外を覗けば、目下に広がるアンバランスな街並み。
そこに今回、炎堂、冴島、陣、青島、陰伊、裳杖、白石、トエル(北条院は留守番。武藤は連絡がつかない)等八人が一堂に会し、
自治体の所長に謁見する事となっていた。所長は最上階の一番良い部屋に居るらしい。所長が居るとされている
部屋はやはり、他所より作りが一段と荘厳であった。扉を前にし、所長はどんな人物なのだろうという各自の推測も程々に、
一同は部屋へと足を踏み入れる。
 室内はアンティークな小物やら観葉植物やらが適度に置かれた面白味のある部屋だった。こういう偉い人の部屋にはよく解らん
抽象絵画が無駄に豪華な額縁に収められ立掛けられていたりするが、この部屋にもやはりそういう額縁がいくつもぶら下がって
いた。トエルや白石は「如何にも裕福な人間が好きそうな部屋だ」と思った。それを嗜む余裕があるのだろう、この部屋の主は。
 部屋の奥には、一面ガラスの下々を見渡せるような壁を背に、広々とした檜のデスクに肘を付き社長椅子に座る中年の男がいた。
おそらくこの男がこの自治区の所長なのだろう。

 「やぁ、どうもどうも。あなた方が再生機関の他の英雄さん達ですか~、噂は常々聞いておりますです、はい」

 一行の来訪を心待ちにしてたかのような態度で迎える男。次に、男は「自分はこの自治区の統治者である」という肩書きと共に自己紹介をした。
男は肥えた中肉中背。服装は、暑いのかスーツは着ておらず、Yシャツネクタイというクールビズな格好をしていた。
白石はやはり「いかにもな格好だ」と型に嵌り過ぎた男の事をつまらなく思った。ともあれ、この所長はそれなりの暮らしをしている
であろうことが伺える。
 白石は数日前からこの自治区に滞在していたが、所長の男を見るのはこれが初めてである。だからといって、どうと言う訳
ではないが、男の気持ち悪いくらい下手な態度に不信と不快を感じた。なんだかあまり好きになれそうにないタイプの人間だ。
白石の第一印象はあまりよろしくないよう。
 「いやぁ、はるばるこのような場所まで皆様に出向いてもらって、私ゃ感無量です」
 「英雄の仕事ですから。して今回、聞くところによるとあなたが命を狙われているという事ですが…」
 男の世辞も軽く聞き流し、単刀直入に本題へと入る冴島。男の表情が曇る。軽い咳払いの後、男は今回の案件について
話し始めた。
 「そうなんですよ。先日このような脅迫状が送られてきましてね」
 男は檜のデスクの引き出しから一枚のペラ紙を取り出す。その紙には酷く不恰好な文字でこう書かれていた。

 『ワレラ、悪ヲメッシ、正スモノナリ。イッシュウカンゴ宵ノ刻。キサマノ首ヲモライウケル。コレハ天誅デアル』

 「ということなんです…実はウチの警備隊も何人かコイツらにやられていましてねぇ、その上正体はわからず…ここは英雄の
皆様方の力をお借りする他無いと思いまして…ええ…来週の宵の刻…これが来たのが五日前ですので…」
 「明後日か…"ワレラ"っつってんだから敵は複数なんだろうな…」
 炎堂は脅迫状を見て苦虫を噛んだ様な顔をする。大人数相手となれば骨が折れる。極力厄介事はパスしたい炎堂であったが
依頼者の手前、本音は胸の奥底へと押し込む事とする。
 「なんでカタカナなの?ふえふぇ」
 「ほら…そこは脅迫文ぽくねぇ?」
 まあお約束ですよそういうのは。そこに突っ込むのはナンセンス。細かいこと気にするべからず。
 「そ、それにしても…この脅迫状からは動機が掴めませんねっ…」
 陰伊にはそれが気がかりであった。殺すとまで言っているのだから、それなりの理由があるはず…
 「おじさん何か恨まれるような事でもしたんじゃない~?」
 ここで白石は男にストレートな質問を投げかけた。失礼極まりない問い掛けをした白石に拳骨を食らわす炎堂であったが、彼も
それについては情報が欲しかった。首謀者がわかれば事前に事を阻止できるというもの。
 「ちょー!いたいしょやー!」
 「うっせ、お前が失礼な質問すっからだろうが、バーカ。…で、失礼ですけどもォ…そういうことに心当たりは?」
 「…んー、ちょっと思い当たりませんねぇ、さっぱりわかりません」
 男は首を傾げ、両腕で全く分からないというジェスチャーを取る。若干胡散臭く見えるが、これといった反対材料もないので
とりあえずは彼に言葉を信じる事にした英雄達。しかしこうなると結局敵を迎いうつ他なくなる。

 「座して待つ…他無い…まぁ…気楽に待とうよ…僕ら英雄に…敵うものなんて…いないんだから…ふふ…」

 大人しく黙っていた陣が不意に言葉を発する。釣り上がる目と口が、彼の押えきれぬ静かな狂気を表していた。
突然自分の後ろで喋ったものだから、陣の前にいる青島は驚きビクリと肩を震わせた。というか、今まで陣の存在にも気がついて
いなかったようで、陣が声を出したことで初めて青島は陣がいることに気が付いたようだ。
 (いきなりしゃべらないでくれよなー、存在感なさすぎてビビったぜ…)


 「…あぁー、なんかあのオヤジあやしいなぁ…」
 「幸ちゃん…そうやって簡単に人を疑うのは良くないよっ…」
 「みつはすこしひとをうたがうことをおぼえたほうがいいけど!ふぇ!」
 挨拶が終わり、各々勝手に行動しだす英雄達。警戒は怠るなとはいえ、護衛は冴島と裳杖が付いているのでよほどの事が
無い限り大事には至らないだろう。今日明日と名目上は機関活動だが、実質自由である。ともなれば彼らとて人間。少しくらい
息抜きしても罰は当たらないはず。
 「それよりさぁ、せっかくフリーになったんだし、皆で街中見てまわろーよ」
 「いいのかなぁ…?」
 「いーんだよ。ほら、炎堂さんだって…」
 白石はそう言って前方2時の方向を指さす。そこにいたのは若い女衆を連れた炎堂虻芳その人であった。
 「ねーぇ、ダンディーなお・じ・さ・ま・?ちょっといい店があるんだけどよっていかなぁーい?」
 女衆の一人が大胆に開いた服の胸元を親指でクイッと広げ、炎堂を誘惑する。見事に魅了されてしまった炎堂は
 「うへ?まじ?おじさんその店気になってきちゃったなぁ~」
 なんて言って、真昼間から艶めかしい風俗街へと入っていくのであった。彼のそのニヤケ顔はただのエロオヤジにしか見えない。
あれが英雄とは…認めたくないが事実であるので仕方がない。
 「おっさん…」
 「ほ、ほら、英雄好色って言葉があるし…」
 「ふぇ!ただしイケメンにかぎる!!あれはただのスケベオヤジ!ふぇふぇ!」
 三人は、炎堂にもっと最年長としての自覚を持って欲しいと思いながら、街へと繰り出すのだった…

―――…

 「おいしー!もーしあわせだべさぁー!」
 「ホント美味しいよね、この羊羹」
 街中へとやって来た三人。しばらく街を見回った後、空いた小腹を満たす為、喫茶店で軽い食事を摂っていた。
食後のデザートは宝石みたいに透き通った羊羹。口の中でとろける甘味が誠美味しゅうございます。
 「それはわたしへのあてつけですか?ふぇふぇ」
 勿論、トエルは機械なので食べることはできない。やさぐれるトエルの事をかわいそうに思った陰伊は次はトエルの喜びそうな
場所へ行こうと思った。ここでふと疑問が生じる。トエルの喜びそうなものって…なんだろう?…と。
 「くったくったー、つぎどこいくー?」
 「えー?うーんとー…」
 娯楽の少ない時代である。そうそうやることが沢山あるわけでもないし…昔なら「とりあえずカラオケ?」なんて言えたのだが…
 陰伊はトエルに行きたい場所はないかと聞いたが…
 「ふえぇ…おふたりにおまかせしますし」
 と返されてしまう。それもそのはず、トエルはあくまでも機械なのだ。精神をも電子化したトエルに自己はない。彼女の行動は全て
ただのプログラムでしか無い。
 「じゃあ服見に行こ服!おしゃれとか滅多に出来ない時代だし~!」
 「え、うん…いいけど…トエルちゃんは…?」
 「ふぇ。いいですよ」
 「じゃーけってーでしょや!」
 よほど服を見に行きたかったのか、白石はふわりと足取り軽く二人の前を進む。笑顔が眩しい。白石だって年頃の女の子なのだ。
 「でも…服屋さんなんてあるのかなぁ…ねぇ、トエルちゃん?」
 「ふぇ?あぁ…はい…」
 陰伊のちょっとした問い掛けにも、まるで上の空のトエル。陰伊はトエルが楽しんでいないんじゃないかと心配になった。自分達
より年下(?)であるにも関わらず遠慮なんてされていたら…
 「トエルちゃん、私達に気を使わなくてもいいんだよ…?」
 「そういうわけではありませんし、ふぇ」
 「ほら二人とも~おいてーくぞー!!」
 トエルは機械…その事をいまいち陰伊は割り切れていなかった。だってこんなにも"人間味"のある表情を見せるトエルのその
顔も言葉も全て"作られたもの"だなんて思えなかった。だから陰伊は普通の人間と同じようにトエルと接する。陰伊は差別をしない
人間だ。良くも悪くも。何が彼女をそうさせているかは分からないが…


 服屋を探し、おかしな街をひた歩く二人。道行く人は着物だ。かと思えばこちらの人は黒のパーカーに灰色のスウェット。まるで
統一感が無い。服装に限ったことではない、人力車に乗る人もあれば原チャリを走らせる人もいる。寝殿造で黒光りする石見瓦の
家屋が和の趣を感じさせ、背にそびえる高層ビルと見事にミスマッチな光景を作り出している。
 そもそも何故このようなごちゃ混ぜの状態になってしまったのか?疑問に感じた白石達は先程の喫茶店で店員にこんな話を
聞いていた。
 先の異形出現により、発電所や工業地域等は破壊され、文明レベルを落とさざるを得なかった。そこでこの自治区はいち早く
対策を取り、今の国力でも実現可能な古い技術で街を復興しようと考えた。特殊な機械などを用い無いせいか、これがうまく
いき、今のようなへんてこな風景ができたという訳だ。しかしながら魔素研究が思いのほか早く進み、結局古い技術は必要なく
なってしまったのだが、これも街の特色だとそのまま今と昔の物がごっちゃごちゃになって現在に至るという。
 「今までいろんな所を見てきたけどさ、こんなに混沌とした所は初めてだべさ」
 白石の言葉に兼ね兼ね陰伊も同意であった。しかしまぁ、街の人間は気にしないのだろうか?人は他と違う事を気にする。
一時期"KY"なんて言葉が流行ったように、他人の目を気にしがちな民族である。この国の人間は特にその傾向が著しい。
逆を言えば、多数の人間が奇行に走れば、それは奇行でなくなる。そう、まるでこの街のように。おかしな事も慣れて
しまえば普通に成り得るのだ。そしてそれを奇行と疑うこともしない。ある種、この街はそんな日本人の特徴がよく現れている場所
なのかもしれない。
 「あれ?そういえばトエルちゃんは?」
 …ふと、陰伊はトエルの姿が確認できないことに気がつく。
 「…ありゃ?そう言えばいつの間にかいないねぇ~」
 「いないねぇ…じゃないよ!早く探さないと!!」

 ―――…

 トエルはとある路地裏で遊ぶ子供達を遠くから眺めていた。先程たまたま目に留まっただけであったが、よく見てみると子供達
の中に異形の子供も混じっていることが確認できた。いくら人の身なりをしていても、獣の風采は隠しきれない。
 (…ふぇ、こういうばあい、どうすればよかろうもん)
 トエルは異形を倒すために作られた兵器だ。異形を見つけたならば放っておく訳にはいかない。

〓AI思考開始...

Object:異形(幼年体) ×2
qes...それは討伐対象であるか?~NO...▼
/Supplement/危険を未然に防ぐ/¬
              異形に攻撃の意思はあるか?
.........情報収集の余地あり?▼
            *異形は駆除すべき?......見逃すことも有(過去データより事例有)

  《異形は敵である》


 (ふぇ!あたまがこんがらがってきた)
 トエルのAIは学習する。相手が殺す対象で有るか無いか…それはトエルにとって最も重要な項目である。人間を異形から守る
のが英雄の勤め。しかしその襲う側と襲われる側が仲良くしてたのでは判断に困る。
 「ああ、もうめんどうですし、ふぇ!」
 堂々巡りする考えに痺れを切らしたトエルは自身の行動理念の大前提である"異形駆除"を選択する。なぜなら自分はその為
に作られた。トエルはただ、自分の役割を果すため行動に移すのだ…そこに感情的な意思は存在しない。ものの生死を考える事
は無く、ただプログラムされたことを実行するだけだ。
 (いまならきづかれずにやれますし、らくしょうらくしょ…)

―――やめて!!―――

 (!?)
 トエルの頭の中で、聞き慣れない謎の声が響く。トエルは自分のデータベースにはない現象に狼狽し、思考を今の声の正体に
集中させる。答えは出てこない。一体なんだったのかと動作を再開させると、先程まで和やかだった子供たちの雰囲気がピリピリ
としたものへと変わっていた。原因は先程までいなかったあの大人たち。

 「おい、貴様等山の民であろう!邪なものがこの街に足を踏み入れてはならん!!」
 男は異形の子供二人にそう言って、猟銃を突きつける。すると人間の子供の一人が異形の子供達を庇うようにして銃口の前に
立った。



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