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全島会議終了。そして……

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全島会議終了。そして……


人気の少ない道を二人の兵士が歩いている。
こうなったのも西の村が意味のわからぬことを言ったせいなのだ。
しかし愚痴を垂れても仕方あるまいと今日起きたどうでもいいことを話しながら巡回をしていた。
「あ、や、これは巡回お疲れ様です」
その二人に声を掛ける影が一つ。役所から自衛団に送られた監視人の補佐官であった。
兵士は敬礼を返す。心なしか補佐官の顔が赤いことに気づいた。
「いや、これは失礼。この先で少々ですね。ええ。あ、そうですね。これをどうぞ」
補佐官は懐から貨幣を取り出し二人に差し出す。
「これでですね。まぁお酒でもですね。ええ、飲んでください。この先は私がいるから、ええ大丈夫ですよ」
兵士はこれはしめたと感謝の言葉と共に直立不動の敬礼を行い、来た道を戻った。
西の村と隊商に招かれて飲んでいるのだろう。そう兵士たちは考えたのだ。
無論、その答えは外れていない。
だがそれは半分の回答でしかなかった。

なんだかんだと気を揉んだ全島会議が本日を持って終了となった。
物資のやり取りや各町村の連携、対応など多岐に渡る項目が決まった。
その中でも町にとって最も大きいのは他の町村からの移民受け入れをするというものだった。
魔物の脅威は減少したもののなくなったということはない。
特に小規模の村では防衛設備も乏しく、襲撃があるたびに被害が大きい。
そこで村の住民を丸ごとこの町が受け入れようという話になったのだ。
「名簿を見るだけでも結構な人数になるけどそんなに空き家あるのかな」
「そのくらいは結構余裕じゃないかな」
本部に戻り、だらけようとする亀と一緒にいつもの報告をする。
「ええ、この町は少々無計画に家屋を増やしすぎたせいで空き家は結構あるんですよ」
「だからこんなに入り組んでいるのか……。でもまぁこの辺は役所の仕事になるかな」
ソーニャは持っていた名簿を机の上に置き、伸びをする。
「しっかし七日間も続くなんてね。明日は宴会だっけ?」
「そういえばんなこと言ってたな。俺は酒が飲めるならなんでもいいんだが」
椅子に座って腐っていたビゼンが宴会という言葉に反応する。
会議が終わり、各代表が帰る前に宴会をすると知らされたのは今日の会議終了後だった。
町長が閉めの言葉の後に「それでは明日は宴会を予定していますのでどうぞ楽しんでいってください」
と言い出した時は思わずえっとなったがそんな反応をしたのはソーニャぐらいで
他の人間は楽しそうに飲むかー飲むかーと話していた。酒好きどもめ。
「場所は噴水広場だっけか。また宿直がかわいそうな行事だ」
「なら代わってあげればいい。僕はいやだけどね」
冷たい言葉だ。これでも上に立つ人間なのだろうか。正直ソーニャもあまり代わる気はないが。
「まぁ楽しめるときに楽しまないとな」
「そうですね。明日にはもしかしたら酒も飲めない体になってるかもしれませんしね」
「ロゼッタ、そういうのはやめてくれ」

そして当日。
この町の町長の言葉から宴会は始まり一時間も経った頃には最早酒の海にいるのではないかと
錯覚するような世界を目の当りにすることとなった。
各代表だけではなく町民も参加しているせいで規模は想像を遥かに越え
あちらで歌を歌う者あれば、あちらでひたすら酒を飲む者もいるし
あちらで踊る者あれば、あちらで喧嘩している者もいる。
ソーニャの仕事はそんな人間の仲介役だ。正気の人間は宴会では最後に損をする。
この騒ぎの最中、数人の人間が抜け出しても誰も気づかなかった。
彼らは正門へと向かい、外の丘へ歩き出した。
普段ならば外に出る理由を尋ねるが今回はその中に町長と補佐官がいたため問われることもない。
少し離れたところにある丘で町を見下ろす一行。
「名残惜しいですか? 町長」
西の村の長が尋ねる。彼の手には魔術師の杖が握られていた。
「少々勿体無い気がする。ただそれだけだ」
「そうですか。ご協力感謝します」
「契約は守ってもらうぞ……。北の国よ」
空には少し欠けた月が昇っていた。



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