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「焼き土下座」、「トライアスロン」、「夢」

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shoyu

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「焼き土下座」、「トライアスロン」、「夢」


84 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2008/09/12(金) 17:31:10 ID:hzBhSpaV [2/3]

かなりアレな内容だけど、月・焼き土下座・トライアスロンで書いたので、一応投下してみる。

85 名前:月・焼き土下座・トライアスロン[sage] 投稿日:2008/09/12(金) 17:32:07 ID:hzBhSpaV [3/3]

 競技に勝つ為なら命も掛ける。
 これは比喩などではない。一流のアスリートにとって、備えてしかるべき資質の一つだ。
 しかし、その男は勝利を得れば得るほどに、自身の中で虚しさが募るのを感じていた。
 違う。この競技も違う。この競技もまた、オレの求めるものではない。
 様々な競技を渡り歩き、ひたすら勝利を重ねるも、心の渇きが癒えることはない。
 自然、求める競技の内容もまた、より過酷なものになっていった。

 今日もまた一つの競技を終えて、男は空を見上げた。
 星空に囲まれた海岸。月はただ天に座す。
 あらゆる競技の中で、最も過酷と評されるトライアスロンもまた、男の渇きを癒すことはできなかった。
 月明かりに照らされた海岸。男は仰向けに寝ころがり、一人夜空を見上げていた。
「くくくっ……お疲れのようですな」
「……誰だ?」
 咄嗟に上体を起こす。闇の向こうから、僅かの間も置かずに答えが返る。
「失礼。少し驚かせてしまったようですね」
 闇にまぎれるようにして、黒スーツの男が立っていた。
「先程の勝利、見事でしたよ。しかし、あの競技もまた、あなた様の渇きを癒すことはできなかったようだ」
 称賛に続けて、黒スーツはさも残念でならないといった様子で、かぶりを振って見せた。
 こちらの内面を読み取ったようなことを言う。顔を顰める男に、黒スーツは笑いかける。
「ですがご安心ください。私はそんなあなた様の渇きを癒すような、最高の競技を紹介することができる」
「最高の競技……だと?」
「ええ。体力。知力。精神力。あらゆる要素が複雑に絡み合い、勝利を掴む為に必要となる、至高の競技です」
 興味がわきましたら、こちらに御連絡下さい。一枚の名刺を残し、男は去った

 あまりにも怪しい誘いだった。
 こんな名刺、破り捨てて家に帰るのが当然の反応だろう。
 しかし、男はどうしても破り捨てる気になれなかった。
 脳裏を過るのは、かつて耳にしたことがある、冗談のような一つの噂話。
 裏の世界において、公然と賭けの対象として開催される、裏競技の存在。
 おそらく、あの黒スーツは件の裏競技に関わる人間だろう。
「面白い」
 男は不敵に笑うと、名刺に視線を落とす。
「いいだろう。極めてやるよ。この裏競技」
 名刺に、その競技の名は記されていた。
「オレは──焼き土下座の神になる!」

 後に『灼熱のマゾヒスト』の名を世界に轟かせることになる、伝説のアスリートが、ここに誕生した。

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