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「刺身」、「四大文明」、「ひつじ」

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shoyu

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「刺身」、「四大文明」、「ひつじ」


45 名前:刺身・四大文明・羊 1/2[sage] 投稿日:2008/09/10(水) 23:52:19 ID:Y67KPHjj [1/2]

 美食家の友人に食事に招かれ、私は彼の家を訪ねた。
「やあ、ようこそ。今日は珍しい羊の刺身が手に入ったから、一緒に味わおうと思ってね」
 そう言うと彼は、嬉しそうに私を招き入れた。
「君の奥さんがうらやましいな、毎日おいしい料理を食べられるんだろ」
 そんなことないよと謙遜しつつも、彼は得意そうに語り出す。
「生食ってのはとても高度な文化なんだよ。素材そのものの質と鮮度、そして調理の技術が要求されるからね」
 彼の話は続く。
「十分な栄養、運動と休息を与え、何より愛情を注いで育てないといい食材にはならないのさ」
「へー、そりゃ楽しみだ。だが世界中の食材を食べ尽くした君でも、まだ珍しいと思うものがあるのかい」
 すると彼は急に真面目な顔になる。
「うん、実を言うとね、僕は人間を食べてみたいんだ。世界四大文明の一つ、中国では昔
から人肉を食べる風習があってだね……」
 彼は熱の籠もった目でじっと私を見つめる。
「君……まさか僕を……や、やめてくれ!」

46 名前:刺身・四大文明・羊 2/2[] 投稿日:2008/09/10(水) 23:54:20 ID:Y67KPHjj [2/2]

 その表情に恐怖を感じ後ずさりすると、彼はぷっと吹き出した。
「いやだなあ、冗談だよ冗談。君にそんなことする訳ないじゃないか」
「何だよ、たちが悪いな」
 ほっと胸をなで下ろす。
「用意するから少し待っててくれよ」
 彼は冷蔵庫から生肉の固まりを取り出し、切り分け始めた。
「そういえば、奥さんは元気かい?」
「最近は仕事も辞めてのんびりしてるよ。スポーツジムとエステに通い詰めさ」
 彼の妻は一回りも年下の健康的な美人。おしどり夫婦で、彼は惜しみない愛情を注いでいた。
「彼女、今日はいないのかい?」
「ああ、ちょっとね……」
 私の前に、真っ赤な刺身が差し出された。

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