総括所見:フィリピン(第3~4回・2009年)


CRC/C/PHL/CO/3-4(2009年10月22日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2009年9月15日に開かれた第1428回および第1429回会合(CRC/C/SR.1428 and 1429参照) においてフィリピンの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/PHL/3-4)を検討し、2009年10月2日に開かれた第1452回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、報告ガイドラインにしたがった第3回・第4回統合定期報告書および委員会の事前質問事項(CRC/C/PHL/Q/3-4/Add.1)に対する文書回答が提出されたことにより、フィリピンにおける子どもの状況についての理解を向上させることができたことを歓迎する。
3.委員会は、さまざまな省庁の専門家も参加したハイレベルな締約国代表団との、開かれたかつ建設的な対話を評価する。
4.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書に関して2008年6月6日に採択された委員会の総括所見(CRC/C/OPAC/PHL/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

5.委員会は、以下のものをはじめとして、報告対象期間中に見られた、子どもの権利の保護および促進を目的とする多くの積極的進展を歓迎する。
  • (a) 女性大憲章(共和国法第9710号)が制定されたこと(2009年8月)。
  • (b) 包括的な少年司法福祉制度を確立し、かつ法務省に少年司法福祉評議会を創設した少年司法福祉法(共和国法第9344号)およびその実施細則(IRR)が採択されたこと(2006年)。
  • (c) 死刑を科すことを禁じた共和国法第9346号が制定されたこと(2006年)。
  • (d) 武力紛争および避難に焦点を当てながら子どもの福祉を促進することを任務とする、武力紛争および避難の影響を受けている子どもに関する小委員会(SC CAACD)が子ども福祉評議会内に創設されたこと(2006年2月)。
6.委員会は、死刑の廃止を目的とする市民的および政治的権利に関する国際規約の第2選択議定書が批准されたこと(2007年11月20日)および障害のある人の権利に関する条約が批准されたこと(2008年4月15日)を歓迎する。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

7.委員会は、フィリピンが群島国であること、および、このことが、同国が自然災害(とくにタイフーン)の被害をとくに受けやすいこととあいまって、子ども、とくに農村部および遠隔地に住んでいる子どもを対象として十分なプログラムおよびサービスを実施することに対する客観的な困難および課題を生み出していることを、認識する。
8.委員会は、フィリピン南部のミンダナオ地方で集中的に行なわれてきた十数年にわたる武力紛争が、子どもの権利の実現も含む締約国の全般的人権状況に悪影響を及ぼしてきており、かついまなお及ぼし続けていることを遺憾に思う。

D.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置(条約第4条、第42条および第44条6項)

委員会の前回の勧告
9.委員会は、締約国の第2回定期報告書の検討(2005年)後に表明されたいくつかの懸念および勧告、とくに少年司法の運営に関わる勧告について対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、勧告の多くが不十分にまたは部分的にしか対応されていないことを遺憾に思うものである。
10.委員会は、締約国に対し、部分的にもしくは不十分にしかまたはまったく実施されていないこれまでの勧告(性的同意に関する最低年齢、婚外子差別、児童ポルノ、拷問の禁止、ならびに、家庭、学校、官民の施設および代替的養護制度における体罰その他のあらゆる形態の暴力の禁止に関するものを含む)に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。委員会はまた、締約国に対し、次回定期報告書において、この総括所見に掲げられた勧告の十分なフォローアップを行なうようにも促すものである。
立法
11.締約国で多くの立法上の提案が行なわれてきたことには留意しながらも、委員会は、体罰の禁止、拷問の禁止および婚外子の地位に関する法律が存在しないことを依然として懸念する。委員会はまた、締約国で相当に先進的な一般的法的枠組みが採用されていることにも留意するものの、子どもに関する法律、とくに1992年子ども保護法(共和国法第7610号)の実施および法的執行が行なわれていないことを依然として懸念するものである。
12.委員会は、締約国が、子どもの権利の保護を向上させる目的で国内法の全面的かつ効果的実施を確保し、かつ、自国の法律を条約の規定および原則と全面的に調和させるため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。後者の目的のための手段には、体罰禁止法(法案第682号)、拷問を犯罪化する法案第5846号、児童ポルノ禁止法(法案第2317号)ならびに制定法上の強姦年齢および性的虐待行為法(法案第2172号)を迅速に採択することも含まれる。委員会はまた、締約国が、婚外子の地位に対応するための法律を制定することも勧告するものである。
調整
13.委員会は、子ども福祉評議会(CWC)の権限が2009年6月8日の大統領令第806号で確認されたこと、および、CWCが、フィリピンにおいて、子どもに関するあらゆる法律、政策、プログラムおよび措置の実施および執行を調整する権限を与えられた、子どもについての中心的機関横断型機関であり続けていることに留意する。委員会は、大統領人権委員会(PHRC)の存在、および、フィリピンにおける人権の実施に関わるその活動にも留意するものである。委員会は、バランガイ、自治体、都市および州のレベルに子ども保護地方評議会(LPCP)を設置することによって、地方レベルで実施が進められていないことに締約国が対処しようとしていること、および、子どもの福祉地方小委員会(RSCWC)が17か所に設置されて国の政府と地方政府部局とを結びつけていることを歓迎する。しかしながら委員会は、CWC、LCPCおよびRSCWCに人的資源および財源が配分されていないことから、これらの機構の効果的運用が妨げられている可能性があることに、懸念を表明するものである。
14.委員会は、締約国に対し、子どものための努力の一貫性、とりわけ既存の機関(とくにCWCおよびPHRC)間の効果的調整を、それぞれの具体的地位および能力を考慮しながら向上させるための措置を継続しかつ強化するよう、促す。委員会は、締約国が、子どもに関する主たる調整機関としてのCWCの権能を強化するとともに、とくにCWCならびにLCPCおよびRSCWCに対し、これらの機構の効果的運用を確保するための十分な人的資源、財源および技術的資源が配分されることを確保するよう、勧告するものである。委員会はまた、締約国に対し、全領域が網羅されることを達成するため、残りのバランガイ、自治体、都市および州にLCPCを設置することも奨励する。
国家的行動計画
15.委員会は、締約国が「子どもの発達のための国家的戦略枠組み計画(2001~2025年)」の実施のための国家行動計画(NPAC)を策定したことに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、NPACの地方版の策定を促進し、かつ地方開発計画の主流に子どもの権利を位置づけるための第6次および第7次国別プログラム(CPC 6/7)を実施するため、締約国がユニセフに技術的援助を求めたことも評価するものである。しかしながら委員会は、現行の資源および機構が、とくに地方レベルにおけるNPACの実施、監視および評価のためには不十分であることを、依然として懸念する。
16.委員会は、締約国が、国家予算においてNPACの実施のための予算線ならびに関連のあらゆる部門別および地域別プログラム全体の予算線を定めかつ明確に特定することにより、NPACが主流に位置づけられることを確保するよう勧告する。委員会はまた、締約国が〔これらの計画の〕全面的実施を確保するための十分なフォローアップ機構を設置することとともに、部門および地域の枠を超えて、達成された進展を定期的に評価しかつ存在しうる欠陥を明らかにして是正措置をとることを目的とした評価および監視のための機構がこれらの計画に組み込まれるべきことも、勧告するものである。委員会はさらに、すべての自治体、都市および州の地方行政単位(LGU)に対してNPACおよび条約を実施するための十分な資源が提供されるべきこと、ならびに、これが開かれた、協議を中心とする参加型の方法で行なわれるべきことを勧告する。さらに委員会は、締約国が、NPACの監視および評価に関して、より積極的に非政府組織の参加を得るよう勧告するものである。
独立の監視
17.委員会は、フィリピン人権委員会(CHRP)内に設置された子どもの権利センターが、子どもからの苦情を受理する権限を有する子どもオンブズマンとして機能していることに評価の意とともに留意するものの、同センターが、これらの活動のための十分な人的資源および財源または十分な法的根拠を有していないことを懸念する。
18.子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を参照しつつ、委員会は、子どもの権利センターがその権限を効果的にかつ独立して行使できることを確保するため、締約国が、CHRPを通じ、同センターに対して十分な人的資源および財源を提供するよう勧告する。委員会はまた、子どもの権利の保護および促進を強化するため、締約国が、議会による承認待ちとなっているCHRP憲章の迅速な通過を支持するようにも勧告するものである。
資源配分
19.委員会は、低所得家庭を対象とし、かつミレニアム開発目標(MDG)および「子どもにふさわしい世界」の目標(WFFC)を達成することを目的とした、貧困削減のためのさまざまな戦略および取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、子どものための社会サービス、保険サービスおよび教育に対する予算配分が、国家予算に占める割合の点からは減少していることに、懸念とともに留意するものである。これとの関連で、委員会は、締約国が国家予算の30%以上を債務元利払いに配分していること、および、ここ数年、債務元利払いに配分される予算割合が上昇していることに対する深い懸念をあらためて表明する。委員会はまた、子どもの権利(教育および健康に対する権利を含む)の促進および保護を効果的に向上させるための、すでに限られている資源の配分に対し、汚職が悪影響を及ぼしている可能性があることも留意するものである。
20.委員会は、締約国に対し、国および地方のレベルで子どものための予算配分を優先させかつ増額するよう促す。委員会は、締約国に対し、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」についての一般的討議(2007年)における委員会の勧告を考慮に入れながら、以下の措置をとるよう促すものである。
  • (a) 予算全体における子どものための資源の配分および使用の追跡システムを実施し、もって子どもに対する投資を目に見えるものとすることによって、国家予算の策定において子どもの権利アプローチを活用すること。委員会はまた、締約国に対し、いずれかの部門における投資が「子どもの最善の利益」にどのように貢献しているかに関する影響評価のためにこの追跡システムを活用することも促すものである。その際、当該投資が女子および男子に与える異なる影響が測定されることを確保することも求められる。
  • (b) 不利な立場に置かれたまたはとくに脆弱な立場に置かれた子どもおよび積極的な社会的措置(出生登録など)を必要とする可能性がある状況に置かれた子どもに関する戦略的予算科目を定めるとともに、これらの予算科目が、たとえ経済危機、自然災害その他の緊急事態の状況下にあっても保護されることを確保すること。
  • (c) 締約国で現在進められている地方分権化のプロセスにおいて、公の対話および(とくに子どもの)参加を通じ、かつ地方当局の適正な説明責任の面で、透明かつ参加型の予算策定を確保すること。
  • (d) 透明性および廉潔性を志向する政策を強化すること等も通じ、社会のあらゆる部門における汚職を防止しかつ撤廃するための行動を増進させること。
  • (e) とくにユニセフおよび世界銀行に対し、これらの目的のための技術的援助を求めること。
21.委員会は、世界でもっとも鉱物資源が豊かな国のひとつであり、かつ外国投資を求める中所得経済国であるフィリピンが、1995年鉱業法が社会的におよび環境面で及ぼす影響、とくに子どもの状況に対する影響にいまなお対処していないことに、懸念とともに留意する。同法は、最高100%外資により所有されている企業に対し、規制を受けることなく、鉱物、石油およびガスの大規模な探査、開発および利用に投資することを認めたものである。委員会はとくに、家族が採掘地域から立ち退かされ、先住民族が先祖伝来の土地を奪われ、かつきわめて汚染度の高い技術が用いられているために子どもが深刻な影響を受けているという、非政府組織および国際機関からの報告に懸念を覚える。
22.外国投資の必要性には留意しながらも、委員会は、同国における規制の枠組みに、国際的企業および国内企業が子どもの権利の尊重および充足について意識しかつそれに参加するようにさせる、社会的責任および環境保護の要件が含まれるべきことを勧告する。
データ収集
23.委員会は、データ収集システムを改善しようとする締約国の努力を認知するとともに、とくに、国レベルの主要な政府機関と連携したスバイバイ・バータ〔子ども観察〕監視システム(SBMS)がCWCによって開発されたこと、子どもの権利の主要7分野について143の指標が開発されたこと、および、「フィリピン子ども白書」が発行されていることを歓迎する。しかしながら委員会は、地域別、ジェンダー別および年齢別に細分化されたデータが存在せず、かつ、特別な保護を必要とする子ども、とくに極度の貧困下で暮らしている子ども、虐待およびネグレクトの対象とされている子ども、法律に触れた子どもならびにマイノリティおよび先住民族集団に属する子どもについてのデータが不十分であることに対する懸念を、あらためて繰り返すものである。
24.委員会は、締約国が、既存のデータ収集システムをさらに拡大するとともに、データが地域別、ジェンダー別および年齢別に細分化されること、ならびに、データが更新されかつそこに特別な保護を必要とする子どもについての情報も含まれることを確保するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、「フィリピン子ども白書」が国全体で広く普及されかつアクセス可能とされることを確保するよう勧告するとともに、締約国に対し、子どもの権利の実現に関して達成された進展を評価する際の基盤として、かつ、条約およびその2つの選択議定書を実施するための政策立案に役立てる目的で、当該白書を活用するよう奨励するものである。その際、このプロセスにおいて子どもが意見を聴かれかつ協議の対象とされることを確保することが求められる。
普及、研修および意識啓発
25.委員会は、地方レベルにおけるものも含め、条約に関する知識を促進しかつ強化するために締約国が行なっているさまざまな取り組みを歓迎するものの、その意識啓発キャンペーンおよび研修活動が、農村部および遠隔地を含む同国のすべての場所および子どもとともにまたは子どものために働くすべての者とを対象とするには不十分であることを、懸念する。
26.委員会は、締約国が、意識啓発キャンペーンを引き続き強化するとともに、当該キャンペーンにおいて、先住民族コミュニティおよびマイノリティに属する子どもを含む農村部および遠隔地が対象とされることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、このような普及および意識啓発に関してメディアと緊密に協働するとともに、メディアに対し、子どもの権利(プライバシーに対する子どもの権利を含む)を尊重しながら子どもについての取り上げ方を向上させるためにいっそう子ども志向の記事および番組等を発展させ、かつメディア番組に対する子ども自身の参加を促進するよう奨励することも、勧告するものである。委員会は、締約国が、この点に関わるメディア向けの倫理綱領の採択を促進するよう勧告する。
27.委員会はさらに、締約国が、子どもとともにまたは子どものために働くすべての者(たとえば検察官、裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、教員、ソーシャルワーカー、保健従事者およびとくに子ども自身)を対象とした、子どもの権利を含む人権についての継続的研修プログラムを引き続き開発しかつ強化するよう、勧告する。
市民社会との協力
28.委員会は、締約国が、条約の促進ならびに子どものためのサービスおよびプログラムの提供に関して多数の国内的および国際的非政府組織と連携していることを歓迎するとともに、政府がとる行動においてこれらのINGOおよびNGOがしばしば協議の対象とされていることに留意する。委員会は、締約国に対し、国内的および国際的非政府組織を含む市民社会との協力を引き続き強化するとともに、子どもの権利の促進および保護に関わるあらゆる分野で幅広い協力を確保するよう、奨励するものである。

2.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条)

差別の禁止
29.子どもに対する差別を解消するために締約国が行なっている努力(「女子計画」ならびに先住民族およびマイノリティの子どもを対象とした多くのプログラムを通じてのものも含む)には留意しながらも、委員会は、多くの子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、先住民族およびマイノリティの子ども(ミンダナオに住むイスラム教徒の子どもを含む)、移住者の子ども、ストリートチルドレンならびに農村部に住んでいる子どもおよび紛争地域に住んでいる子どもが、とりわけ社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関して差別に直面していることに対する懸念を、あらためて表明する。委員会はまた、主として女子および女性に対する社会的態度を理由として、事実上の差別がいまなお女子に影響を及ぼしており、かつその権利の全面的享受を阻害していることも、依然として懸念するものである。委員会はさらに、「非嫡出」として分類されることおよび相続の権利を制限されることのような差別的慣行にいまなお直面している婚外子の状況に対し、締約国がまだ対応をとっていないことに懸念を表明する。
30.委員会は、締約国に対し、子どもに対する差別を撤廃するための努力を強化するとともに、とくに以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 脆弱な立場に置かれたすべての集団の子どもに対するあらゆる形態の差別(複合的形態の差別を含む)に対処する、かつ、女子、貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、先住民族およびマイノリティの子ども(ミンダナオに住むイスラム教徒の子どもを含む)、移住者の子ども、ストリートチルドレンならびに農村部に住んでいる子どもおよび紛争地域に住んでいる子どもに対する社会の差別的な態度と闘うことを目的とした、包括的戦略を採択しかつ実施すること。
  • (b) 女子が平等な取り扱いおよび自己の権利の全面的享受に対する権利を有することを確保すること。この目的のため、委員会は、締約国が「女子計画」を主流に位置づけ、かつ特に地方レベルにおけるその実施を強化するよう強く勧告する。委員会はさらに、締約国が、差別的慣行の被害を受けた女子が司法にアクセスできることを確保するよう勧告するものである。
  • (c) とくに婚外子を「非嫡出」子として分類することを廃止し、かつ相続に対する権利を含む婚外子の平等な権利を承認することによって平等な取り扱いに対する権利を婚外子に確保するため、国内法を改正すること。
31.委員会は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れた情報が、締約国の報告書に記載されていないことを遺憾に思う。委員会は、次回の定期報告書で、このような具体的情報が、2009年のダーバン・レビュー会議をフォローアップするためにとられた措置に関する情報とともに提供されることを要請する。
生命、生存および発達に対する権利
32.委員会は、国内武力紛争を背景とするものも含む子どもの生命権侵害の態様について、あらためて重大な懸念を表明する。委員会は、締約国が超法規的処刑を「きわめて重大な懸念」として認知していることに留意するとともに、超法規的、即決または恣意的処刑に関する特別報告者その他の情報源が強調しているように超法規的殺害(子どもの殺害を含む)の事案が報告されており、かつ、このような超法規的殺害がフィリピン軍、フィリピン国家警察およびダバオで活動する死の部隊によって行なわれていることに、深い懸念を表明するものである。委員会は、メロ委員会および〔フィリピン国家警察〕迫害特別捜査班の設置ならびに救済令状(Writ of Amparo)規則および情報提出令状(Writ of Habeas Data)規則適用法の公布(2007年10月)のような、締約国が行なったいくつかの積極的取り組みには留意するものの、訴追件数が少ないことおよび加害者を裁判にかけたことによる成果が存在しないことに重大な懸念を覚える。
33.前回の総括所見をあらためて繰り返し、かつ条約第6条その他の条項を参照しながら、委員会は、締約国に対し、とくに子どもの超法規的殺害を防止することならびに殺害が疑われる事件を徹底的に捜査しかつ加害者を裁判にかけることを目的としたあらゆる必要な措置をとることにより、生命、生存および発達に対する子どもの権利の保護を強化するためにあらゆる努力を行なうよう促す。これとの関連で、委員会はまた、締約国が、CHRPに対し、その任務を遂行しかつ報告された事件を調査するための十分な財源を提供することも勧告するものである。委員会は、次回の定期報告書に、苦情申立て、捜査、訴追および有罪判決に関するデータも含む具体的情報を記載するよう要請する。
子どもの意見の尊重
34.委員会は、子ども参加に関する国家的枠組み(NFCP)を採択したこと、ならびに、サングニアン・カバタアン(SK)〔若者村評議会〕および学校における生徒評議会等も通じ、地方および国の双方のレベルで子どもの関与を進めていることなど、子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっているさまざまな取り組みおよび努力に、評価の意とともに留意する。委員会はまた、子どもが自分たちの権利の保護および充足に関して意見を表明しかつ勧告を作成できるようにするため、委員会に提出する締約国報告書の起草過程でCWCの主催により行なわれた、子どもおよび子ども団体との協議会合(2007年)も歓迎するものである。しかしながら委員会は、子ども、とくにマイノリティおよび先住民族に属する子どもが意見を聴かれることは締約国ではいまなお一般的に困難であり、かつ、自己に影響を与える手続において意見を聴かれる子どもの権利が制限される可能性があることを、懸念するものである。
35.条約第12条に照らし、かつ意見を聴かれる子どもの権利に関する委員会の一般的意見12号(2009年)に対して締約国の注意を喚起しながら、委員会は、締約国に対し、子どもの意見の尊重および自己に影響を与えるすべての事柄への子どもの参加を、家庭、学校、施設、裁判所および行政機関において、立法等も通じて促進しかつその便宜を図るための努力を、さらに強化するよう奨励する。これとの関連で、委員会は、締約国が、マイノリティおよび先住民族の子どもに特段の注意を払うよう勧告するものである。

3.市民的権利および自由(条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a))

出生登録
36.委員会は、出生登録プロジェクト(BRP)の実施、草の根レベルでの登録を容易にするためのバランガイ民事登録制度(BCRS)の設置、および、バランガイ民事登録担当者を対象とした民事登録法および移動出生登録手続に関する研修をはじめ、出生登録を向上させるために締約国が行なっている努力を歓迎する。しかしながら委員会は、登録されていない子どもが同国に260万人存在すること(そのほとんどはミンダナオに住むイスラム教徒および先住民族の子どもである)に、懸念とともに留意するものである。委員会はまた、出生登録が無償ではなく、かつ登録遅延の場合は罰金を払わなければならないことも懸念する。
37.委員会は、締約国が、すべての子どもを対象とする、効率的かつ無償の出生登録制度を発展させるための努力を追求しかつ強化するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、草の根レベルで民事登録制度をよりアクセスしやすいものとするため、BCRSを強化するよう促すものである。委員会はまた、締約国に対し、登録所に十分な財源、人的資源その他の資源が配分されることを確保するとともに、ミンダナオに住むイスラム教徒および先住民族の子どもにとくに注意しながら住民(同国の最遠隔地に住む人々を含む)が登録に容易にアクセスできることを確保するため、移動サービスを含むさらなる措置をとることも促す。委員会はさらに、締約国が、期限後の登録を奨励しかつ無償で行なえるようにするための機構を設けるよう勧告するものである。
名前、国籍およびアイデンティティ
38.委員会は、親の就労国のフィリピン大使館および領事館、多数の政府機関、ならびに、親を対象として出生登録の必要性および価値に関する意識啓発会合を実施している「移住労働者その他のフィリピン人海外就労者リソースセンター」(MWCFRC)を通じ、国外で生まれた、登録されておらずかつ身分証明書類を有していないフィリピン人移住労働者の子どもの登録を向上させるために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら委員会は、登録されておらずかつ身分証明書類を有していない子どもが多いこと、および、このような子どもが未登録を理由として名前および国籍に対する権利を奪われる可能性があることを、依然として懸念するものである。
39.前回の勧告をあらためて繰り返しながら、委員会は、締約国に対し、親がその在留資格に関わらず国外で生まれた子どもを登録できるようにするためさらに便宜を図るよう、奨励する。委員会はまた、締約国が、登録されておらず正規の身分証明書類を有しない子どもが、フィリピンへの帰国と同時に、適正に登録されるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスへのアクセスを認められることを確保するようにも勧告するものである。
拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは処罰
40.委員会は、2006年少年司法福祉法第5条(a)が少年司法の運営における拷問または他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは処罰の行為を禁じていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、締約国がこのような犯罪をあらゆる場面で禁ずる法律を制定していないことを、遺憾に思うものである。拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは処罰に関する特別報告者の最近の報告書およびその他の情報源を参照しながら、委員会は、子ども、とくに拘禁されている子どもの拷問、非人道的なおよび品位を傷つける取り扱いの報告件数が多数にのぼることを深く懸念する。委員会は、現行法は子どもに対して拷問および不当な取り扱いからの十分な水準の保護を提供していないという見解をとるものである。さらに、委員会は、訴追および有罪判決に至った事件が少ないことを懸念する。
41.条約第37条(a)に照らし、委員会は、締約国に対し、拷問および他の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取り扱いもしくは処罰の行為をあらゆる場面で禁止するため、拷問禁止法案第5846号を迅速に通過させるよう促す。委員会はまた、締約国に対し、拷問が行なわれたというすべての訴えが効果的かつ迅速に捜査されること、加害者が訴追されかつ処罰されること、ならびに、被害を受けた子どもに対して十分な賠償が行なわれることを確保するよう、求めるものである。さらに、委員会は、締約国が、拷問禁止条約の選択議定書の批准を検討するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもの拷問、非人道的なおよび(または)品位を傷つける取り扱いが公的機関または関連機関に報告された件数、そのような行為の加害者のうち裁判所による刑の言い渡しを受けた者の人数および言い渡された刑の性質に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請する。
体罰
42.あらゆる現場における体罰を禁止する体罰禁止法案が現在議論されていることには留意しながらも、委員会は、家庭における体罰が法律で明示的に禁じられておらず、かつ体罰に関する規定が子ども・若者福祉法に含まれていない旨の懸念をあらためて繰り返す。委員会はまた、社会、とくに家庭における体罰が蔓延していることに対しても懸念を表明するとともに、前回の総括所見(CRC/C/15/Add.25、パラ42)で委員会が勧告した、この問題に関する包括的研究が行なわれていないことを遺憾に思うものである。
43.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 家庭、学校、子どもの代替的養護、職場および拘禁場所を含むあらゆる場面における体罰を法律で明示的に禁止するため、体罰禁止法案を通過させること。
  • (b) このような慣行の有害な影響について親および家族、保護者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の感受性強化および教育を行なうこと、ならびに、子どもの尊厳と一致する方法による、かつ条約(とくに第28条2項)にしたがった、体罰に代わる非暴力的な形態のしつけおよび規律の活用を促進することを目的とした、意識啓発キャンペーンを強化すること。
  • (c) さまざまな場面における体罰の性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。
  • (d) 体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年)を正当に考慮すること。
子どもに対する暴力に関する国連研究のフォローアップ
44.子どもに対する暴力に関する国連事務総長研究(A/61/299)について、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 東アジア・太平洋地域協議(2005年6月14~16日、バンコク)の成果および勧告を考慮しながら、子どもに対する暴力に関する国連研究〔の勧告〕を実施するためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を撤廃するため、以下の勧告に特段の注意を払いながら、同研究の勧告の実施に優先的に取り組むこと。
    • (i) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を禁止すること。
    • (ii) 子どもとともにおよび子どものために働くすべての者の能力を増進すること。
    • (iii) 回復および社会的再統合のためのサービスを提供すること。
    • (iv) アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい通報の制度およびサービスを創設すること。
    • (v) 説明責任を確保するとともに、加害者の責任を問われない状態に終止符を打つこと。
    • (vi) 国レベルの体系的なデータ収集および調査研究を発展させ、実施すること。
  • (c) すべての子どもがあらゆる形態の身体的、性的および心理的暴力から保護されることを確保し、ならびに、このような暴力および虐待を防止しおよびこれに対応するための具体的なかつ適当なときは期限を定めた行動に弾みをつける目的で、市民社会と連携しながらおよびとくに子どもの参加を得ながら、これらの勧告を行動のためのツールとして活用すること。
  • (d) 子どもに対する暴力に関する国連事務総長特別代表、ユニセフ、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)および世界保健機関(WHO)の技術的援助を求めること。

4.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第18条(1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(4項)および第39条)

家庭環境
45.委員会は、自国の法律上、司法上および行政上の枠組みを改善しようとする締約国の努力に留意する。しかしながら委員会は、移民流出数が多くかつ増加していること、ならびに、国外で働く母親または父親が自国に残していく子どもが多くかつ増加していることを理由とする、家族状況の崩壊および変化に懸念を覚えるものである。委員会はさらに、自国に残される子どもの人数に関する体系的データがないこと、および、女性の移民が増加している状況またはその影響を評価する包括的研究が実施されていないことを遺憾に思う。
46.移住労働者委員会が採択した総括所見(CMW/C/PHL/CO/1、パラ45-46)を想起しながら、委員会は、締約国が、移民家族の子どもの保護およびその権利の全面的享受を、とくにコミュニティ支援プログラム、教育広報キャンペーンおよび学校プログラムを通じて確保するための十分な戦略を策定する目的で、これらの子どもの状況に関する包括的研究を行なうよう勧告する。委員会は、移住労働者委員会(パラ20)とともに、締約国が、細分化されたデータも含む「移民に関する共有政府情報システム」(SGISM)を設立するよう勧告するものである。
家庭環境を奪われた子ども
47.委員会は、施設に措置される子どもが多いこと、入所型養護を受けている子どもの身体的および情緒的虐待の事例が報告されていること、ならびに、代替的養護に関する良質なケア基準および監視が存在しないことを、依然として懸念する。
48.委員会は、締約国に対し、子どもの脱施設化を進展させかつこのような子どもに家庭的環境を提供するため、里親擁護法案第263号を優先的課題として採択しかつ実施するよう求める。委員会はまた、締約国が、里親養護または入所型養護に措置されている子どものケア基準およびその状況の監視を増進させることも勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、「親のケアを受けていない子ども」に関する一般的討議(2005年)の際に委員会が行なった勧告を正当に考慮するよう勧告する。
養子縁組
49.委員会は、2009年3月に採択された共和国法第9523号によれば、子どもの養子縁組が法的に可能であることを証明する権限が社会福祉開発省に与えられていることに留意する。しかしながら委員会は、養子縁組手続の費用負担を理由として、養子縁組手続を回避するため、「出生の偽装」または実親ではない者が行なう不正登録を利用する者が多いという報告に懸念を覚えるものである。委員会はまた、国際養子縁組に関する枠組みおよび条件についての情報、ならびに、受け入れ国ならびに養子とされた子どものジェンダーおよび年齢に関する細分化されたデータが存在しないことも懸念する。
50.委員会は、締約国に対し、データ収集に関わる点も含め、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(1993年)を全面的に遵守するよう求める。委員会はまた、すべての養子縁組が子どもの権利条約の原則および規定ならびに他の関連の国際基準に全面的にしたがって、かつ子どもの最善の利益にかなうように行なわれることを確保するため、締約国があらゆる努力を行なうよう勧告するものである。委員会はさらに、締約国が、いわゆる「偽装出生」を防止しかつこれと闘うため、このような慣行の規模に関する意識啓発キャンペーンを市民社会の関与も得ながら実施することおよび責任者を処罰すること等も通じ、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。委員会は、締約国に対し、国際養子縁組に関する枠組みおよび条件についての情報、ならびに、受け入れ国ならびに養子とされた子どものジェンダーおよび年齢に関する細分化されたデータを次回の定期報告書で提供するよう、要請するものである。
虐待、ネグレクトおよび不当な取り扱い
51.委員会は、女性およびその子どもに対する暴力禁止法(共和国法第9262号)等も通じ、子どもの虐待および不当な取り扱いに対処するために締約国がとった措置を歓迎する。しかしながら、締約国報告書でも認知されているように、委員会は、子どもの身体的虐待、ネグレクトおよび性的虐待も含むドメスティック・バイオレンスの件数が増加しており、かつ、同法が制定されたにも関わらず、家庭における暴力はほとんど通報されないままとなっていることに、深い懸念を表明するものである。委員会はまた、宗教上の制度の枠組みのなかで子どもの性的虐待が行なわれているという訴えがあることについての懸念をあらためて繰り返す。1992年子ども保護法(共和国法第7610号)の改正には留意しながらも、委員会はさらに、ドメスティック・バイオレンスおよび子どもの虐待の事案が子どもにやさしい手続のもとで調査されていないこと、虐待された子どもがそのような手続で被害を受ける可能性があること、および、証人である子どもが脅迫から保護されていないことを懸念する。
52.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 女性およびその子どもに対する暴力禁止法の実施および普及を増進させかつ強化すること。
  • (b) 虐待、ネグレクトおよび不当な取り扱いを含むドメスティック・バイオレンスについて包括的研究を実施すること。
  • (c) 宗教上の制度における性的虐待の規模について調査すること等により、このような虐待を防止しかつこのような虐待から子どもを保護するために効果的措置をとること。
  • (d) 加害者を裁判にかけるため、児童虐待および子どもに対する暴力のあらゆる事案について、子どもにやさしい手続のもとで時宜を得た十分な調査を行なうとともに、虐待された子どもが法的手続において被害を受けないことを確保するためにこのような手続において子どもに支援サービスを提供し、かつ、証人である子どもを脅迫から保護するために現行の証人保護プログラムを強化すること。
  • (e) 虐待およびネグレクトを防止する目的で、虐待を行なう親のための家族支援サービスが提供されることを確保すること。
  • (f) 暴力および虐待の被害を受けた子どもが十分なカウンセリングならびに回復および再統合のための学際的援助にアクセスできることを確保すること。

5.基礎保健および福祉(条約第6条、第18条(3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(1~3項))

障害のある子ども
53.締約国が2008年に障害のある人の権利に関する条約を批准したことは歓迎しながらも、委員会は、障害のある子どもが社会サービス、教育サービス、保健サービスその他のサービスに平等にアクセスできることを確保するための包括的政策が存在しないことに、懸念を表明する。委員会はまた、多くの原因(極度の貧困の結果として生ずる栄養不良および非衛生的な生活条件を含む)により、フィリピンの子どもの障害発生率が高いことも依然として懸念するものである。委員会はさらに、これらの子どもが事実上の差別に直面し続けており、かつこれらの子どもの役割が社会で不可視化されていることを懸念する。
54.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、障害のある子どもの権利を保護しかつ促進するための措置を強化するよう勧告する。
  • (a) 障害のある子どもの権利を保護しかつ促進するための包括的政策を策定しかつ実施するとともに、障害のある子どもが社会サービス、教育サービス、保健サービスその他のサービスに平等にアクセスできることを確保するために現行法を執行すること。
  • (b) 障害のある子どもに関する既存のデータベースおよびモニタリング・システムを強化すること。
  • (c) 障害のある子どもおよびその家族構成員が、プログラムの計画、実施および評価に参加することを確保すること。
  • (d) 障害(精神障害を含む)のあるすべての子どもにプログラムおよびサービスを提供し、かつこれらのサービスに対して十分な人的資源および財源が与えられることを確保するため、あらゆる努力を行なうこと。
  • (e) 障害のある子どもの権利および特別なニーズに関する講習の感受性を強化し、かつ社会への障害児のインクルージョンを奨励するための意識啓発キャンペーンを行なうこと。
  • (f) 教員、ソーシャルワーカー、医療従事者、準医療従事者および関連要員のような、障害のある子どもとともに働く専門的職員を対象として研修を行なうこと。
  • (g) 条約第23条、障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)および障害のある人の権利に関する条約を考慮すること。
健康および保健サービス
55.締約国の「健康に関する国家的目標(2005~2010年)」、乳児死亡率の低下(出生1000件あたり43(1990年)から23(2007年)へ)および妊産婦死亡率の若干の低下(出生10万件あたり172(1997年)から167(2005年)へ)には留意しながらも、委員会は、乳児および妊産婦の死亡率が高いことならびに死亡率に関わる進展の達成について地域格差があることを依然として懸念する。委員会はまた、新生児死亡および流産の登録および報告に欠陥があることも依然として懸念するものである。委員会はさらに、子どもの間で低栄養(低体重、低身長および痩せ)が生じており、かつ同国の遠隔地において良質な保健サービスへの子どものアクセスが全般的に限られていることに対する懸念をあらためて表明する。加えて、委員会は、援助を必要とする子どもおよび青少年のための精神保健サービスおよび関連サービスの問題に関する情報が締約国報告書に記載されていないことを遺憾に思うものである。
56.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約、とくに第4条、第6条および第24条を全面的に実施するため、引き続き、保健部門に適切な資源が配分されることを確保し、ならびに子どもの健康状態を向上させるための包括的政策およびプログラムを策定しかつ実施すること。
  • (b) 同国の農村部および遠隔地に特段の注意を払うことにより、産前産後の良質なサービスおよび便益へのアクセスを保障するための措置(助産師および伝統的出産立会人を対象とする研修プログラムも含む)を強化しかつ実施すること。
  • (c) 乳児、5歳未満児および妊産婦の死亡率を低下させるため、引き続きあらゆる必要な措置をとること。
  • (d) 新生児死亡および流産について、委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.259、パラ28)を想起し、締約国が、とくに遠隔地において民事登録官へのアクセスを容易にするよう勧告する。
  • (e) 十分な栄養のある食料および補給剤ならびに幼少期からの健康的習慣に関する教育を提供することにより、低栄養の問題に効果的に対処すること。
  • (f) 精神的健康の促進、一般的に見られる精神保健上の問題ならびに外来および入院のサービスを含む、子どもおよび青少年の精神保健に関する包括的政策を策定しかつ実施すること。
  • (g) この問題に関して、とくにWHO、ユニセフおよび国連人口基金(UNFPA)と引き続き協力し、かつその技術的援助を引き続き求めること。
母乳育児
57.母乳育児を奨励するために締約国が行なっている努力には留意しながらも、委員会は、母乳育児の実践率が低いことに対する懸念をあらためて繰り返す。委員会はまた、母性休暇期間が不十分であること、および、労働者が母性休暇の取得を権利として認められる基準が公共部門と民間部門で異なることも、懸念するものである。
58.委員会は、締約国が、ミルク・コード(大統領令第51号)および2007年RIRR(改正ミルク・コード実施細則)の効果的実施を確保するために必要な措置をとるよう勧告する。委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.259、パラ59(f))を想起し、締約国が、生後6か月間は母乳のみを与え、その後はこれを修正して適切な乳児食を与えることをさらに奨励するとともに、健康的な摂食習慣の教育および促進を通じて子どもの栄養状態を改善するための措置をとるよう、勧告するものである。委員会はまた、母性保護に関するILO第183号条約(2000年)にしたがい、推奨されている14週間の母性休暇を与えることによって公共部門および民間部門で働く女性を平等に支援するため、母性保護に関する法律を見直すことも求める。
環境衛生
59.締約国がとった立法上その他の措置には留意しながらも、委員会は、大気および水の汚染ならびに環境悪化のような環境問題が子どもの健康および発達に深刻な影響をもたらしていることに対する懸念をあらためて表明する。委員会はまた、安全な飲料水および衛生設備へのアクセスに関して地域格差があることも、依然として懸念するものである。締約国がとりわけ自然災害の被害を受けやすいことには留意しながらも、委員会は、そのような災害の影響を受けた子どもを保護しかつ援助するために用意されているいずれかの行動計画または戦略についての情報が存在しないことを懸念する。
60.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 環境関連の国内法の実施を強化することにより、汚染および環境悪化を低減させるための努力を引き続き強化すること。
  • (b) 学校に環境衛生教育プログラムを導入することにより、環境衛生問題に関する子どもの知識を高めること。
  • (c) とくに農村部およびスラムにおいて安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを向上させるために効果的措置をとること。
  • (d) 自然災害の影響を受けた子どもの援助および保護に関する行動計画または戦略を策定しかつ実施すること。
思春期の健康
61.委員会は、リプロダクティブヘルスに関するサービスおよび情報が不十分であること、避妊手段使用率が低いこと(現代的家族計画手法を利用している女性は2006年で36%)、ならびに、人工的避妊手段へのアクセスが困難であることから、締約国における高い10代妊娠率および妊産婦の死亡が助長されていることを、依然として深刻に懸念する。委員会は、女性大憲章の制定を歓迎するものの、女性および女子のリプロダクティブライツを促進するための効果的措置がとられておらず、かつ特定の信条および宗教的価値観によってその履行が妨げられていることを、依然としてとくに懸念するものである。同国のHIV感染率が低いことには留意しながらも、委員会は、フィリピン国家AIDS評議会(PNAC)が、HIV/AIDSの状況の特徴について、潜在化しておりかつ増加しつつあると説明していることに懸念とともに留意し、かつ、フィリピンの青少年の間でHIV/AIDSおよび性感染症(STI)に関する意識水準が不十分であることを依然として懸念する。
62.委員会は、締約国に対し、思春期の健康の分野でより子どもにやさしいプログラムおよびサービスを設置し、かつ、とくにこの問題に関する研究を通じて思春期の健康に関する有効なデータを入手するための努力を強化するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 議会による承認待ちのリプロダクティブヘルス法案を緊急に採択するとともに、条約に掲げられた子どもおよび青少年の権利が同法案に反映されることを確保すること。
  • (b) 10代の妊娠を予防する目的で、リプロダクティブヘルスに関する相談へのアクセスを確保し、かつ、正確かつ客観的な情報ならびに文化的配慮のあるサービスをすべての青少年に提供すること。このための手段には、幅広い種類の避妊手段にいかなる制限もなく広くアクセスできるようにすること、ならびに、家族計画に関する知識および意識を向上させることが含まれる。
  • (c) 若年妊娠の予防、STIおよび家族計画に焦点を当てた、女子および男子を対象とする公式・非公式の性教育を強化すること。
  • (d) HIV/AIDSに関する意識啓発キャンペーンを強化するとともに、子どもがHIVおよびSTIへの感染のしやすさに対処しかつこれを低減させるためのライフスキルを身につけられるよう、学校内外で、子どもを対象とした、HIV/AIDSに関する年齢にふさわしい教育および情報にアクセスできることを確保すること。
  • (e) とくにWHO、国連エイズ合同計画およびUNFPAの技術的協力を求めること。
  • (f) HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)および子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年)を正当に考慮すること。
生活水準
63.委員会は、パンタウィド・パミーリャン・ピリピーノ・プログラム(4Ps)、飢餓緩和促進プログラム(AHMP)、条件付現金給付(CCT)プログラムおよび締約国報告書パラ49で説明されているその他の取り組み、ならびに、ユニセフの「子どもの貧困および格差に関する世界的研究」への締約国の参加をはじめ、貧困と闘うために締約国が行なっているさまざまな取り組みおよび措置を歓迎する。しかしながら委員会は、国の貧困線以下の世帯で暮らしている子どもが多いこと、とくに、子どもおよびその家族が農村部の貧困を逃れようとして都市で極度の貧困状況に直面していることについての懸念をあらためて繰り返すものである。委員会はまた、異なる地域間の生活水準レベルおよび基礎的サービスへのアクセスに関して大きな格差が存在することにも、懸念を表明する。
64.委員会は、締約国が、包括的かつ全国的な貧困削減戦略を策定しおよび実施し、ならびに、子どもがどこに住んでいるかに関わらず、貧困下で暮らしている子ども(とくに極度の貧困に直面している子ども)の生活水準を向上させるためにあらゆる必要な措置をとるべきである旨の、前回の勧告(CRC/C/15/Add.259、パラ67)をあらためて繰り返す。委員会は、当該戦略には子どもの参加が含まれるべきであることを強調するものである。委員会はまた、締約国に対し、経済的に不利な立場に置かれた子どもおよびその家族に物的援助および支援を提供する努力を強化することも要請する。

6.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条および第31条)

教育(職業訓練および職業指導を含む)
65.委員会は、就学率および学校修了率の悪化に関わる近年の傾向、ならびに、とくに初等学校の第1年次および第2年次で脱落する子どもまたは学校に行かない子どもの人数の増加に、懸念とともに留意する。委員会はまた、脆弱な立場に置かれた一部の集団の子ども(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、働く子ども、武力紛争下にある子ども、先住民族の子ども、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもおよびストリートチルドレンなど)が教育に平等にアクセスできていないことも、依然として懸念するものである。委員会は、教室の席、教科書およびその他の学用品の数が不十分であることも含め、とくに遠隔地のバランガイにおいて就学のための便益が貧弱であることに対する懸念を、あらためて表明する。さらに委員会は、幼児ケアを受けている子どもの人数が若干増加している一方で、就園率がいまなお非常に低いこと(3~4歳児の13%)、および、この点に関して0~3歳児が看過されていることを懸念するものである。
66.条約第28条および第29条ならびに教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために必要な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう勧告する。
  • (a) 初等中等学校における中退率を削減し、学校教育未修の背景にある理由(文化的伝統および貧困を含む)に対処し、かつ中等学校への進学者数を増加させるための具体的措置をとること。
  • (b) 初等教育が完全に普及し、直接間接の費用負担をともなわず、かつすべての子どもにとってアクセス可能であることを確保するため、あらゆる必要な措置を緊急にとるとともに、最遠隔地にあるバランガイにおける就学機会および脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの教育上のニーズに対し、教育に対するこれらの子どもの権利を充足する目的で特段の注意を払うこと。
  • (c) 初等中等学校における教員ひとりあたり生徒数を改善し、同時に教員が十分な訓練を受け、十全な資格を有し、かつ十分な給与を支払われることを確保することを通じて、教育の質を増進させること。
  • (d) 学校および教室を新設し、教科書その他の学用品を開発し、教員の養成および研修を増進させ、ならびに、学習の前提条件が異なる子どもに適合した革新的かつ双方向的な学習手法を採用することにより、教育制度の基盤を発展させおよび改良すること。
  • (e) 乳幼児期の教育およびケアに関する包括的政策を策定し、かつ、就学前学校および早期の学習機会に関する親の意識を高めること。
  • (f) 初等中等教育を修了していない子どもを対象とするものも含む非公式な学習および職業教育の促進を引き続き強化するとともに、労働市場で必要とされることおよび市民的責任に関して子どもが学校で体系的に準備を整えられるようにする職業訓練校を設立すること。
  • (g) ユニセフおよびユネスコの技術的援助を求めること。

7.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)~(d)ならびに第32~36条)

子どもの難民
67.委員会は、締約国における子どもの難民の状況に関する情報が存在しないことを遺憾に思うとともに、子どもの庇護希望者および難民の具体的ニーズに対応した国内法が存在しないことに関する懸念をあらためて繰り返す。
68.委員会は、締約国が、子どもの庇護希望者および難民のニーズに対応し、かつ、保護者のいないおよび養育者から分離された子どもの庇護希望者および難民に関する特別手続を定めた、特別な法律および行政規則を導入するべきである旨の前回の勧告をあらためて繰り返す。これとの関係で、委員会は、締約国が引き続きUNHCRと協力するよう勧告するものである。
武力紛争下の子ども
69.委員会は、「武力紛争に関与した子どもに関する包括的プログラム枠組み」(CP-CIAC)の継続的実施、SC CAACD〔子ども福祉評議会・武力紛争および避難の影響を受けている子どもに関する小委員会〕の活動、および、武力紛争の影響を受けている子どもの状況に対応するためのさまざまな取り組みを歓迎する。委員会はまた、武力紛争と子どもに関する事務総長特別代表が2008年12月にフィリピンを訪問したこと、および、モロ・イスラム解放戦線(MILF)が、2009年7月、子どもの徴募を防止しかつ民間人としての生活への子どもの再統合を促進するための具体的かつ期限を定めた措置をともなった行動計画に調印したことも歓迎するものである。これらの積極的措置には留意しながらも、委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書を2008年5月/6月に検討した際に表明した懸念(CRC/C/OPAC/PHL/CO/1)をあらためて繰り返す。とくに、子どもの徴募を禁じた共和国法第7610号第10条22項(b)が曖昧であり、違反に対する懲罰的制裁を定めていないことをひとつの理由として、戦闘員、諜報要員、警備兵、調理担当または衛生兵として働かせるために武装集団が子どもを徴募しているという報告が引き続きあること、および、このような犯罪の加害者が訴追されていないことが、懸念の対象である。
70.委員会はまた、国内武力紛争の悪影響のため、子どもが避難を余儀なくされる状況が継続しおよび悪化しており、ならびに、これらの子どもが社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに発達に対して限られた形でしかアクセスできていないことにも、深い懸念を表明する。さらに、委員会は、敵対行為に関与していない子ども、とくにミンダナオに住んでいる子どもに対して国内武力紛争が与えている影響について、依然として懸念を覚えるものである。
71.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書についての締約国の第1回報告書を2008年5月/6月に検討した際に行なった勧告(CRC/C/OPAC/PHL/CO/1)を想起し、締約国に対し、当該勧告を全面的に実施するよう促す。とくに、子どもを徴募することおよび敵対行為に関与させることを禁止しかつ犯罪化した現行法の効果的実施のための勧告、ならびに、被害者の動員解除、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を目的とする措置(子どもが避難を余儀なくされる状況に対応し、かつ、このような子どもが社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに発達にアクセスできることを確保するための措置も含む)の継続および強化のための勧告を実施することが求められる。委員会はまた、締約国に対し、子どもの徴募を禁じた共和国法第7610号第10条22項(b)の曖昧さに対処するために必要な立法上の措置をとることにより、このような侵害の加害者が処罰されることを確保するよう求めるものである。委員会はさらに、締約国が、武力紛争下の子どもが法律に触れた子どもとして扱われないことを確保し、かつ、国際刑事裁判所ローマ規程、および、国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の追加議定書(第1議定書)を批准するよう、勧告する。
児童労働を含む経済的搾取
72.サギップ・バータン・マンガガーワ〔児童労働者救援〕(SBM)救援機構およびSBM迅速行動班(QAT)の設置を含め、児童労働と闘うために締約国が行なっているさまざまな努力には留意しながらも、委員会は、締約国における子どもの労働者(5~14歳)の人数が多いことを深く懸念する。委員会はとくに、これらの子どもが有害なまたは危険な条件下で働いており、かつさまざまな形態の性的および経済的搾取(最悪の形態の児童労働を含む)にさらされていることを懸念するものである。
73.委員会は、締約国に対し、児童労働と闘い、かつあらゆる形態の性的および経済的搾取(最悪の形態の児童労働を含む)から子どもを保護するための努力を強化するよう促す。委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 国際基準にしたがい、児童労働を禁止する国内法を強化すること。
  • (b) 最悪の形態の児童労働撤廃法(共和国法第9231号)を含む国内労働法および諸プログラムを効果的に実施するとともに、この問題の解決に関する議論に子どもの労働者が参加することを確保すること。
  • (c) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないことを保障するため、労働査察官の人数を増やすこと等も通じて労働監察制度を改善するとともに、とくに、当該制度に対し、子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告する権限を付与すること。
  • (d) 不法な児童労働を利用した者に罰金および刑事的制裁が科されることを確保すること。
  • (e) 法執行官、検察官および裁判官を対象とする義務的研修を実施すること。
  • (f) 元子ども労働者の回復および教育機会へのアクセスを促進するためにあらゆる適当な措置をとること。
  • (g) 国際労働機関/児童労働撤廃国際計画に対し、引き続き技術的援助を求めること。
ストリートチルドレン
74.委員会は、路上で生活している子どもが多数(25万人近く)存在し、かつ、このような子どもがさまざまな形態の暴力および虐待(性的および経済的搾取を含む)の被害をとくに受けやすい状態に置かれていることを、依然として深刻に懸念する。委員会はまた、子どもが路上で生活することの防止、このような子どもの人数の削減および保護の必要性に対処するための体系的かつ包括的戦略が引き続き存在しないことにも、懸念とともに留意するものである。委員会はさらに、マニラのさまざまな地域で実施されている一部の救援活動(「窮乏者救済」、「路上生活者一掃」または「一斉摘発」とも呼ばれる)およびこれらの活動に対するフォローアップの欠如について懸念を覚える。
75.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) この現象の根本的原因に対処し、ならびにストリートチルドレンの人数を減らしかつ路上で生活している子どもを保護するための包括的戦略を策定するとともに、当該戦略にしたがい、問題の根本的原因に対処する地方レベルの具体的プログラムを策定すること。当該戦略およびプログラムは、とくに地方レベルで、子どもたち自身、市民社会および関連の専門家の協力を得ながら策定されるべきである。
  • (b) 家族、コミュニティおよびストリートチルドレン自身が国の支援を得ながら子どもの教育に注力できるよう、とくに教育を条件付現金給付(CCT)プログラムと関連させることによって、教育に対する子どもの権利を確保することを重視すること。
  • (c) ストリートチルドレンが法律に触れた子どもとして扱われないことを確保すること。
  • (d) ストリートチルドレンが十分な栄養、衣服およびシェルターならびに社会サービスおよび保健サービスならびに教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練など)を提供されることを、訓練を受けたストリートワーカーおよびストリートカウンセラー等も通じながら確保すること。
  • (e) ストリートチルドレンに対し、身体的および性的虐待に関わる回復および社会的再統合のための十分なサービスを提供するとともに、実現可能なときは家族との再統合を促進すること。
性的搾取および虐待
76.「子どもに目を向けた観光」(Child Wise Tourism)キャンペーンおよびパーソナル・セーフティ・レッスン(PSL)プロジェクトのような、子どもの性的搾取および虐待に対処するための締約国の努力には留意しながらも、委員会は、ストリートチルドレン、(たとえば授業料を稼ぐための)「学費売春」(prosti-tuition)を行なっている子ども、「コールガール/ボーイ」(もっぱら家族の緊急のニーズに対処するためまたは自分自身の生活維持のためにシーズン限定の売春を行なう子ども)および「興行」従事者として働く若い女性の海外フィリピン人労働者(OFW)を含む多くの集団が商業的性的搾取の被害を受けやすい状態に置かれているという情報に対し、懸念を表明する。
77.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 商業的性的搾取および児童ポルノの原因、性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。
  • (b) 性的搾取の被害を受けたすべての子どもに平等な保護を提供する目的で、このような搾取(ポルノグラフィーのために子どもを使用することも含む)からの子どもの保護に関する国内法を見直すこと。
  • (c) 親が子どもの福祉および安全確保を促進できることを確保するため、1992年子ども保護法(共和国法第7610号)の改正法を効果的に実施すること。
  • (d) 第1回・第2回・第3回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取の対象とされた子どもに対して、援助、回復および再統合のための十分なプログラムを提供すること。
売買、取引および誘拐
78.締約国がとったさまざまな立法上、行政上および政策上の措置には留意しながらも、委員会は、多くの女性および子どもが、同国から国外への、同国を通じてのおよび国内における、性的搾取および労働目的の人身取引の対象とされ続けていることに懸念とともに留意する。委員会は、人身取引を行なった者の訴追件数および有罪判決数が少ないことをとりわけ懸念するとともに、固定化された貧困、一時的な海外移住、セックス・ツーリズムの増加、犯罪者の噴処罰および締約国における法執行の弱さのような、人身取引活動を助長する既存のリスク要因についても懸念するものである。委員会はさらに、子どもの人身取引が違法でありかつ秘密裏に行なわれることならびに効果的なデータ収集機構が存在しないために、人身取引の被害者数および目的を確認することが困難であることを懸念する。
79.委員会は、締約国が、とくに以下の措置をとることにより、人間、とくに女性および子どもの取引(性的搾取および労働を目的とするものも含む)を防止しかつこれと闘う努力を強化するよう勧告する。
  • (a) 人身取引の被害者数および目的を確認するためのデータを収集する目的で強力かつ体系的な監視機構を設置すること。
  • (b) 人身取引を防止するためのプログラムおよび広報キャンペーンを支援するとともに、法執行官、検察官および裁判官を対象として人身取引禁止法制に関する義務的研修を行なうこと。
  • (c) 地域で増加しつつあるセックス・ツーリズムのような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、この点について観光省および観光サービス業者と引き続き連携すること。
  • (d) とくに被害者に対する医療面、心理面および法律面の支援の提供を増強することにより、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書を実施すること。
  • (e) 国際的な子の奪取の民事上の側面に関するハーグ条約(1980年)の批准を検討すること。
少年司法の運営
80.委員会は、2006年に共和国法第9344号(少年司法福祉法、JJWA)が採択されたことにより、刑事責任に関する最低年齢が9歳から15歳に引き上げられるとともに、法律に触れた子どもに対する拷問および不当な取り扱いの行為が禁じられかつ犯罪化されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、JJWAの実施ペースが遅いこと、ならびに、とくに、拘禁されている子どもが多いこと、および、法律に触れた子どもが実質的に法的保障を有せずかつ医療ケアにもアクセスできないことを懸念するものである。委員会はまた、ダイバージョンの利用が限られていること、および、子どもの審判前拘禁が広く行なわれているとされることにも懸念を表明する。委員会はさらに、専門の裁判所および職員が存在しないことを遺憾に思うとともに、過密な施設に、成人とともに、劣悪な条件のもとで収容されていることが多い子どもの拘禁環境について深刻な懸念を表明するものである。加えて、委員会は、子どもの刑事責任年齢引き下げに関する最近の提案について懸念を覚える。
81.委員会は、締約国に対し、少年司法に関する基準、とくに条約第37条(b)、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)および自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(ハバナ規則)が全面的に実施されることを確保するよう促す。委員会は、締約国が、少年司法の運営に関する委員会の一般的意見10号(2007年)を考慮に入れながら、以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 刑事責任年齢が引き下げられないことを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (b) JJWAおよび大統領令第633号の規定にしたがい、微罪を行なった子どもを引き続き釈放すること。
  • (c) ダイバージョン、保護観察およびカウンセリングならびに地域奉仕活動のような、自由の剥奪に代わる措置の活用を拡大すること。
  • (d) 子どもの拘禁が最後の手段として、可能なかぎり短い期間でのみ行なわれることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (e) 拘禁が行なわれるときは、拘禁措置が法律を遵守して適用されることおよび条約に掲げられた子どもの権利が尊重されること、ならびに、未決拘禁の際も刑の言い渡しを受けた後も子どもが成人とは別に収容されることを確保するため、効果的な措置をとること。
  • (f) 子どもが拘禁中に不当な取り扱いを受けず、通信および面会を通じて家族との接触を保つ権利を有し、かつ、少年が関わる事件の審判が可能なかぎり迅速に行なわれることを確保するため、あらゆる必要な措置をとること。
  • (g) 拘禁された子どもが、逮捕後直ちにおよび拘禁のあらゆる段階を通じて弁護人および医療ケアにアクセスできることを確保すること。
  • (h) 先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)にしたがい、先住民族の子どもの場合には必要に応じ無償で通訳が提供されること、および、子どもが文化的に配慮のある方法で法的援助を保障されることを確保するための措置をとること。
  • (i) 関連の国際基準に関する研修プログラムを引き続き実施するとともに、JJWAに関する理解、意識および知識を増進させるため、一般公衆およびとくに少年司法制度に関わる活動をしているすべての専門家(警察官を含む)を対象としてJJWAの規定を広く普及すること。
  • (j) UNODC、ユニセフ、OHCHRおよびNGOも参加する「少年司法に関する国連機関横断パネル」の技術的援助その他の協力を求めること。
犯罪の証人および被害者の保護
82.委員会はまた、締約国が、十分な法律上の規定および規則を通じ、犯罪の被害を受けたおよび(または)犯罪の証人であるすべての子ども(たとえば、虐待、ドメスティック・バイオレンス、武力紛争、性的および経済的搾取、誘拐ならびに人身取引の被害を受けた子どもならびにこのような犯罪の証人)が条約で求められている保護を提供されることを確保し、かつ、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての国連指針(2005年7月22日の経済社会理事会決議2005/20付属文書)を全面的に考慮するようにも、勧告する。
マイノリティおよび先住民族に属する子ども
83.フィリピン中期開発計画(MTPDP)(2004~2010年)に先住民族の関心事を初めて盛りこんだことなど、先住民族の子どもの不安定な状況に対処するためにとられた措置は認知しながらも、委員会は、マイノリティおよび先住民族の間で貧困が広がっており、かつ、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関してその人権の享受が制約されていることについての懸念をあらためて表明する。委員会はまた、1997年先住民族権利法(IPRA)の適用が子どもに与えた実際の影響に関する情報が、締約国報告書においても代表団との対話の過程でも提供されなかったことも懸念するものである。
84.委員会は、一般的意見11号(2009年)を考慮し、締約国が、先住民族の子どもおよびマイノリティに属する子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、IPRAを実施するための努力を強化するとともに、先住民族およびマイノリティの子どもに対して文化的に適切なサービス(社会サービスおよび保健サービスならびに教育を含む)への平等なアクセスを確保するための政策およびプログラムを策定しかつ実施するよう、勧告するものである。委員会はまた、子どもの具体的権利が擁護されることを確保するため、IPRAおよびMTPDPの見直しの過程で一般的意見11号が指針とされるべきことも勧告する。委員会はさらに、マイノリティおよび先住民族の子どもの人権の享受に関して存在する格差および障壁を特定し、かつそのような格差および障壁に対応するための法律、政策およびプログラムを発展させる目的で、締約国が、これらの子どもに関するデータ収集機構を強化するよう勧告するものである。さらに、委員会は、締約国が、フィリピン社会の多文化的性質、および、さまざまな民族集団の伝統、言語および見方に対して敏感になるための教育の必要性に関する意識をコミュニティおよび学校において高めるよう勧告する。

8.国際人権文書の批准

85.委員会は、締約国に対し、まだ加盟していない国際人権文書、とくに強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約、拷問禁止条約の選択議定書、障害のある人の権利に関する条約の選択議定書、および、経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書の批准を検討するよう、奨励する。

9.フォローアップおよび普及

フォローアップ
86.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を内閣、議会および最高裁判所ならびに適用可能なときは地方の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
87.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、第3回・第4回統合定期報告書、締約国が提出した文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

10.次回報告書

88.委員会は、締約国に対し、第5回・第6回統合定期報告書を2017年9月19日までに提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。
89.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/MC/2006/3)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出するよう慫慂する。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年9月23日)。/前編~後編を統合(2012年10月20日)。