総括所見:フィリピン(OPAC・2008年)


CRC/C/OPAC/PHL/CO/1(2008年7月15日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2008年5月30日に開かれた第1333回会合(CRC/C/SR.1333) においてフィリピンの第1回報告書(CRC/C/OPAC/PHL/1)を検討し、2008年6月6日に開かれた第1342回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、選択議定書で保障された権利に関して締約国で適用される立法上、行政上、司法上その他の措置に関する実質的情報を提供してくれる、締約国の第1回報告書および事前質問事項(CRC/C/OPAC/PHL/Q/1 and Add.1)に対する文書回答の提出を歓迎する。委員会はまた、ハイレベルな部門横断型の代表団との対話も歓迎するものである。
3. 委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第2回定期報告書に関して2005年9月21日に採択された以前の総括所見(CRC/C/15/Add.259)、とくに「武力紛争下の子ども」の項のパラ75~78とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。

B.積極的側面

4.委員会は、いくつかの法律に、子どもが軍隊または他の武装集団に義務的に徴募されることおよび敵対行為に直接参加することを防止する規定が掲げられているという情報を歓迎する。委員会は、とくに以下の法律に、評価の意とともに留意するものである。
  • 共和国法第7610号(子どもの虐待、搾取および差別からの特別保護法)
  • 共和国法第9208号(人身取引防止法)
  • 共和国法第8371号(先住民族権利法)
  • 共和国法第9231号(児童労働撤廃)
5.委員会は、締約国が、最近になって、安全保障理事会1612(2005年)にしたがった監視報告機構のイニシアティブへの参加に合意したことを歓迎する。
6.委員会は以下のことも歓迎する。
  • (a) 「武力紛争下の子どもに関する包括的プログラム機関間委員会」の活動。
  • (b) 武力紛争に関与した子どものリハビリテーションおよび再統合について定めた、これらの子どもの処遇および扱いに関する了解覚書。
  • (c) 「武力紛争下の子どもに関する包括的プログラム枠組み」。
  • (d) 武力紛争および避難に焦点を当てながら子どもの福祉を促進することを任務とする、子ども福祉評議会・武力紛争および避難の影響を受けている子どもに関する小委員会(SC CAACD)の創設(2006年2月)。
7.委員会はさらに、締約国が以下の文書を批准したことを歓迎する。
  • (a) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2001年12月20日)。
  • (b) 最悪の形態の児童労働の禁止及び撤廃のための即時の行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(1999年)(2000年11月28日)。

C.議定書の実施に影響を与える要因および困難

8.委員会は、同国に特有の地理的形態(7100以上の島々)が、とくに反政府武装集団の存在によって引き起こされる継続的不安定さとあいまって、選択議定書の実施に関して客観的な困難および課題を生ぜしめていることを認知する。

1.実施に関する一般的措置

データ収集
9.委員会は、フィリピン人権委員会および社会福祉開発省が武力紛争下の子どもに関するデータを収集してきたことを歓迎するものの、これらのデータが、子どもを徴募している武装集団の一部に限られており、かつ、武装集団による子どもの徴募または使用が行なわれたとされる事案のうち、もっぱら子どもが逮捕されかつ社会福祉開発省に送致されてきた事案に関わるものであることを、遺憾に思う。
10.委員会は、社会福祉開発省およびフィリピン人権委員会のデータ収集システムを増進させるためにさらなる人的資源、財源および技術的資源を提供すること等により、締約国が、データ収集、監視および報告のための機構を拡大しかつ強化するよう勧告する。
資源配分
11.委員会は、選択議定書の実施のために配分される資源がいまなお不十分であることを懸念する。
12.委員会は、締約国が、「子どもの権利のための資源配分――国の責任」に関する一般的討議(2007年9月21日)の結果として採択された勧告も考慮に入れながら、選択議定書の全面的実施のために十分な人的資源、財源および技術的資源を提供するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
普及および研修
13.委員会は、警察研修施設である公共安全専門学校のカリキュラムに人権および子どもの保護に関する国内法の科目がいくつか統合されたことに評価の意とともに留意するものの、この研修が体系的なものでなく、かつ選択議定書に関する具体的科目がいまのところ提供されていないことを遺憾に思う。
14.委員会は、締約国が、あらゆる関連の専門家集団、とくに軍の要員が選択議定書の規定に関する体系的研修を受けることを確保するよう、勧告する。加えて、第6条2項に照らし、委員会は、締約国が、適当な手段により、選択議定書の規定をおとなに対しても子どもに対しても同様に広く周知しかつ促進するよう勧告するものである。
独立の監視
15.委員会は、フィリピン人権委員会および国軍担当オンブズマン補佐官の双方が、軍隊による人権侵害について訴えを受理しかつ調査を行なえることを歓迎する。しかしながら委員会は、子どもに関わる事案はこれらの機関にほとんど通報されていないことに留意するものである。
16.委員会は、締約国が、締約国による選択議定書の遵守状況(子どもが収容されている施設との関連も含む)をフィリピン人権委員会およびオンブズマン補佐官事務所が積極的に監視できるようにし、かつ、子どもが苦情申立てのためにこれらの機関に容易にアクセスできることを確保するため、必要な人的および技術的資源を提供するよう勧告する。

2.防止

志願入隊
17.委員会は、志願入隊の最低年齢が18歳であること(ただし訓練目的の場合を除く)に留意する。しかしながら委員会は、遠隔地でおよび一部のマイノリティ集団(先住民族集団を含む)の間で十分な出生登録を確保することが困難であるために、子どもが18歳未満で入隊する可能性があることを依然として懸念するものである。
18.選択議定書第3条に基づいて締約国が行なった宣言が実効的に尊重されることを保障するため、委員会は、締約国が、出生証明書および学校の卒業証書のような客観的要素に基づいて、かつ書類が存在しないときは子どもの正確な年齢を決定するための医師による検査に基づいて志願者の年齢を確認するための保護措置を確立し、かつ系統的に実施するよう勧告する。
19.委員会はさらに、先住民族の子どもが軍または武装集団(自警集団を含む)によって徴募されないことを確保するため、締約国が先住民族権利法の規定を執行するよう勧告する。
国の軍隊とは異なる武装集団による徴募の防止
20.委員会は、国軍以外の武装集団が、子どもを保護する旨の決意をさまざまな文言で表明しており、かつ、最低年齢要件に関する意識が、コミュニティにおいて、おとな、若者のみならず子どもの間においてさえ全般的には存在するように思われることに、留意する。しかしながら委員会は、主として貧困、教化、操作、ネグレクトまたは機会の欠如を理由として、子どもが引き続き武装集団(政府とつながりがある準軍事集団および国軍以外の他の反政府武装集団の双方)に加わっていることに、懸念とともに留意するものである。
21.委員会は以下のことを勧告する。
  • (a) 選択議定書第4条に照らし、締約国が、国の軍隊とは異なる武装集団による子どもの徴募および使用の根本的原因を解消し、かつこれを防止するために、あらゆる実行可能な措置をとること。
  • (b) 締約国が、武装集団と交渉および対話を行なう際、とくに防止、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合の分野で、徴募されまたは敵対行為で使用された子どもに特別かつ十分な注意が払われることを確保すること。
  • (c) 停戦交渉および和平交渉において、すべての当事者が、和平協定の不可欠な一部とされるべき選択議定書上の義務について認識するべきであること。
学校および平和教育
22.委員会は、通常は15歳または16歳の高校生が依然として、卒業のための必修科目として少なくとも1年間の「市民性増進訓練」(CAT、かつての「市民軍事訓練」)を受けなければならない旨の情報に留意する。委員会は、CATが軍国的精神を促進するものであり、締約国が行なっている平和構築教育および選択議定書の精神に反していることを懸念するものである。
23.委員会は、締約国が、平和および安全の条件下で子どもの状況ならびにその発達および教育を継続的に向上させていく目的で、CATプログラムを修正し、かつその軍事的内容の廃止を検討するよう勧告する。
24.委員会はさらに、締約国が、市民社会組織と連携しながら、平和の価値および人権の尊重を促進するための研修プログラムおよびキャンペーンを開発しかつ実施するとともに、平和教育および人権の科目を教育制度に基本科目として導入するよう勧告する。

3.禁止

立法
25.委員会は、いくつかの法律で、子どもの徴募および敵対行為における使用が禁じられており、かつ最高20年の収監刑による処罰対象とされていることに留意する。しかしながら、このような重要な立法上の枠組みにも関わらず、委員会は、とくに紛争地域においてそれが効果的に実施されていないこと、および、いまのところ子どもの徴募または武力紛争における使用について1件の起訴も行なわれていないことを懸念するものである。さらに、委員会は、フィリピンが国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の追加議定書(第1議定書)および国際刑事裁判所ローマ規程を批准していないことを懸念する。
26.軍隊または武装集団による子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用を防止するための国内的および国際的措置を強化するため、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの徴募および敵対行為への関与を禁止しかつ犯罪化した現行法を効果的に実施すること。
  • (b) 子どもの徴募または武力紛争における使用を理由とする訴追件数に関して、次回の報告書で情報を提供すること。
  • (c) 犯罪人引渡しに関する多国間および二国間の協定を締結すること等により、これらの犯罪が締約国の市民である者もしくは締約国と他のつながりを有する者によってまたはこれらの者に対して行なわれた場合の域外裁判権を確保しかつ執行すること。
  • (d) 軍の規則、教範その他の訓令が選択議定書の規定にしたがうことを確保すること。
  • (e) 国際刑事裁判所ローマ規程、および、国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する1949年8月12日のジュネーヴ諸条約の追加議定書(第1議定書)を批准すること。

4.保護、回復および再統合

27.委員会は、武装解除、動員解除、リハビリテーションおよび再統合(DDRR)に関する2004年の行動計画を含め、締約国が実施している武装解除、動員解除、リハビリテーションおよび再統合のためのプログラムについての情報を歓迎する。これらのプログラムに参加した子どもの秘密保持および保護を確保するためにとられた措置には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、子どもがプライバシーに対する権利を侵害される形で宣伝目的で利用された事案についての情報に懸念を覚えるものである。
28.委員会は、締約国が、選択議定書に反する行為の被害者の動員解除、身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のための措置を、これらのサービスおよびとくにDDRRプログラムの開発および効果的運用のためにさらなる財源を提供すること等により、継続しかつ強化するよう勧告する。締約国はまた、とくに回復および再統合のためのプログラムの枠組みにおける、子どものプライバシーへの恣意的干渉となるすべての活動も禁止するべきである。
29.委員会は、武力紛争に関与した子どもについてその訴追ではなくリハビリテーションおよび再統合について定めた、これらの子どもの処遇および扱いに関する了解覚書に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、共和国法第7610号が、第10条において、武力紛争関連の理由による子どもの逮捕および訴追について定めていること(ただし、有罪判決の場合にも刑の執行は猶予される)を懸念するものである。委員会はさらに、このような子どもの逮捕の際および(または)自由の剥奪の期間中に不当な取り扱いが行なわれているとの報告があることを懸念する。
30.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 徴募されまたは敵対行為で使用されたことを理由として子どもが犯罪者とされないことを確保するため、共和国法第7610号を改正すること。
  • (b) 武力紛争下の子どもが犯罪を行なったとして逮捕されかつ訴追されるときは、審判は、少年司法に関する国際基準に掲げられた保障および手続に厳格にしたがって行なわれなければならない。
  • (c) 敵対行為に関与した結果として自由を奪われた子どもが、人道的にかつその固有の尊厳を尊重して取り扱われることを確保すること。
  • (d) 反政府武装集団との和平交渉において元子ども兵士の被害を正当に考慮すること。
  • (e) 真実、正義および被害者に対する償いの基本原則に特別な注意を払いながら、和平交渉の法的枠組みに人権に関する最低基準および子どもの権利の視点を統合する方法について、国連人権高等弁務官事務所および国連児童基金(ユニセフ)の法的助言を求めること。
31.委員会は、地雷の問題はフィリピンでは大きな問題になっていないという締約国の発言に留意しながらも、国軍以外の武装集団が被害者の接触によって起動する対人地雷を使用し続けており、かつ、地雷その他の爆発装置の使用、強奪および奪還に関わる事件が起こり続けている旨の情報があることを懸念する。
32.委員会は、国際協力(国連機関によるものも含む)の枠組みのなかで必要な技術的および金銭的支援を求めること等も通じ、地雷・不発弾(UXO)除去プログラムおよび危険性教育活動を発展させるためにとられた措置について、締約国が次回の報告書でいっそうの情報を提供するよう勧告する。
武器輸出の統制
33.委員会は、小型武器および弾薬の販売、所持および輸出を統制するために締約国が設けたさまざまな措置を歓迎する。しかしながら、小型武器が子どもに所有されるに至ること、または子どもに対してもしくは最終使用者が子どもを徴募している可能性がある主体に対して販売されることを防止するうえでこれらの措置が十分であるかどうか、委員会にとっては明確でない。
34.委員会は、小型武器が最終的に子ども兵士の手に渡ることがないよう、その販売および輸出を規制する法律が十分に強力なものとされかつ執行されるべきことを勧告する。
ヘルプライン
35.委員会は、子ども向けヘルプライン「バンタイ・バータ〔子どもの味方〕」にアクセスできるのが締約国の17地域のうち5地域のみであることに留意する。
36.委員会は、既存の子ども向けヘルプラインをすべての地域に拡大するとともに、番号を3ケタとし、ヘルプライン側も通話者側も費用を負担する必要がないものとし、かつ24時間利用可能とすることを勧告する。

5.国際的な援助および協力

37.委員会は、締約国が、国際社会に対し、選択議定書の実施のためのさらなる技術的協力および財政的援助を求めるよう勧告する。

6.フォローアップおよび普及

38.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国防省、議会および内閣ならびに適用可能なときは州当局に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
39.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択した総括所見を公衆一般が広く入手できるようにすることを勧告する。締約国はまた、
議定書第4条にしたがい、国の軍隊とは異なる武装集団に対し、継続中の対話の枠組みのなかでこの総括所見および勧告を知らせることも検討するべきである。

7.次回報告書

40.第8条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第3回・第4回統合報告書に記載するよう要請する。

  • 更新履歴:ページ作成(2011年9月23日)。