総括所見:フィリピン(第2回・2005年)


CRC/C/15/Add.259(2005年9月21日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2005年5月18日に開かれた第1028回および第1029回会合(CRC/C/SR.1028 and 1029参照) においてフィリピンの第2回定期報告書(CRC/C/65/Add.31)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、締約国が提出した、定められた報告ガイドラインにしたがった第2回定期報告書、および委員会の事前質問事項に対する文書回答を歓迎する。委員会は、締約国との間に持たれた建設的対話を心強く思うとともに、条約の実施に関与する省庁横断型の代表団が出席してくれたことにより、締約国における子どもの権利の状況のより十全な評価が可能となったことを認知するものである。

B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、近年、子どもの権利の保護および促進を目的としたいくつかの法律が採択されたこと、とくに以下のことに留意する。
  • (a) とくに女性および子どもの人身取引を根絶するための政策を制定し、人身取引の対象とされた者を保護しおよび支援するための制度的機構を設置し、人身取引を行なった者に対する刑罰を定め、かつ、フィリピンまたは国外における武装活動に従事させるための子どもの徴募、移送または養子縁組も禁じた、人身取引防止法(共和国法第9208号)の採択(2003年)。
  • (b) 最悪の形態の児童労働の根絶を定め、かつ働く子どもに対してより強力な保護を与える、子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法(共和国法第7610号)を改正した共和国法第9231号の採択(2003年)。
  • (c) フィリピン家族法(大統領令第209号第176条)を改正し、非嫡出子が父の姓を用いることを認めた共和国法第9255号の採択(2004年)。
  • (d) 女性およびその子どもに対する暴力を定義し、かつ被害者の保護措置およびこのような暴力の加害者に対する刑罰を定めた、女性およびその子どもに対する暴力防止法(共和国法第9262号)の採択(2004年)。
  • (e) この総括所見全体で言及されている国際的条約および議定書の批准など、条約の実施を促進するためにとられたその他の法律上または行政上の措置。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

4.委員会は、7100以上の島々から構成されている締約国が、地理的形態の面で特有の性質を有しており、かつ、同国の農村部および遠隔地(多くの場合、これらの地域は孤立しており、サービス等の対象とすることが非常に困難である)に住んでいる子どもを対象として十分なプログラムおよびサービスを実施するうえで課題に直面していることを認知する。
5.委員会はまた、トロピカル・ストームによる自然災害および2004年末に発生したいくつかの破壊的タイフーンによって同国のいくつかの州のインフラが崩壊し、そのため経済的および社会的困難が増しつつあることも認知する。とくに政治的不確定性および反政府運動によって引き起こされる国内の不安定さは、締約国における全般的な人権の発展に悪影響を及ぼしてきた。

D.主要な懸念領域および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
6.委員会は、締約国の第1回報告書(CRC/C/3/Add.23)の検討時に採択された総括所見(CRC/C/15/Add.29)に掲げたさまざまな懸念および勧告について立法措置および政策を通じた対応が行なわれてきたことに、満足感とともに留意する。しかしながら、委員会が表明した懸念および行なった勧告の一部、とくに刑事責任および性的同意に関する最低年齢、婚外子差別、包括的な少年司法制度の欠如、条約に関する監視制度の欠如ならびに拷問等の禁止については、十分な対応が行なわれていない。
7.委員会は、締約国に対し、第1回報告書に関する総括所見で行なわれた勧告に対応し、かつ第2回定期報告書に関するこの総括所見に掲げられた勧告に対応するため、あらゆる努力を行なうよう促す。
立法
8.委員会は、比較的先進的な法的枠組みに留意するとともに、子どもの権利の保護および促進を向上させることを目的とした多くの立法上の提案、新法の制定および法改正の採択を心強く思う。しかしながら委員会は、とくに地方レベルで法律が十分に実施されていないことを深く懸念するものである。委員会はまた、国内法が条約のすべての規定および原則に完全に一致しているわけではないことにも留意する。
9.委員会は、締約国が、子どもの権利の保護を向上させる目的で国内法の全面手的かつ効果的実施を確保し、かつ、たとえば刑事責任に関する現行の最低年齢および法律に触れた子どもとの関連で、自国の法律を条約の規定および原則と全面的に調和させるため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
国家的行動計画
10.委員会は、「子ども21」として知られる「子どもの発達のための国家的戦略枠組み計画(2001~2025年)」が開始され、かつ、子どもの権利に関する問題ならびに関連の進展および欠点に対応するためにホリスティックなアプローチがとられていることを歓迎する。委員会は、既存の監視機構が、同計画の実施を一貫したやり方で監視しかつ評価するためには不十分であることを懸念するものである。さらに、委員会は、地方レベルで同計画およびその目的についての意識が限定されていることを懸念する。
11.委員会は、締約国が、とくに十分な人的資源、財源および技術的資源を提供することにより、「子どもの発達のための国家的戦略枠組み計画(2001~2025年)」の全面的実施のためにあらゆる必要な措置をとるとともに、同計画の実施に関して、地方レベルでの同計画の実施に特段の注意を払いながら、権利を基盤とする、開かれた、建設的かつ参加型のプロセスを確保するよう勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、同計画の実施に関わる活動の効果的調整ならびにこの実施プロセスの監視および評価を可能ならしめるのに必要な資源を国家子ども福祉評議会に提供することにより、同評議会を全面的に支援するよう勧告するものである。加えて、締約国は、とくに同計画および子どもの権利条約一般の実施における重要な手段となるだけの十分な資源を提供された子どもの保護のための地方評議会の設置を、とくに都市、自治体およびバランガイ(最小地方行政単位)においてできるかぎり促進するよう促される。委員会はまた、締約国が、実施プロセスの過程でとくに国連児童基金(ユニセフ)の技術的援助を求めることも勧告するものである。
独立の監視
12.委員会は、人権の実施を独立の立場から促進しかつ監視する権限を与えられたフィリピン人権委員会(PCHR)が1997年に設置されたことを歓迎するとともに、他のいくつかの機関に対しても子どもの権利の実施に関する監視の役割が与えられていることに留意する。委員会は子どもの権利に関わるPCHRの活動を認知するものの、その権限および資源が限られていることを懸念するものである。
13.委員会は、子どもの権利の保護および促進における独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)を参照しつつ、締約国に対し、子どもが申し立てた個別の苦情の調査を子どもに配慮したやり方で強化するため、子どもの権利の監視に関わるPCHRの権限を拡大することおよびPCHRに十分な資源を提供することを検討するよう、勧告する。
資源配分
14.委員会は、子どものための社会サービスに対する予算配分が若干増額されたこと、締約国が予算策定に関して20/20イニシアティブを実施するために努力していること、および、たとえば貧困緩和基金を通じて低所得家庭および貧困との闘いに優先順位が与えられていることに留意する。委員会はまた、締約国の債務元利払いが国家予算の30%以上を占めていること、ならびに、子どものための十分な予算配分、および、利用可能な資源を最大限に用いて子どもの経済的、社会的および文化的権利を実施することに対する予算配分に関わる条約第4条について十分な注意がはらわれていないことにも、深い懸念とともに留意するものである。
15.委員会は、とくに子どもの権利の実現ならびにとりわけ子どもの経済的、社会的及び文化的権利の実施に対する予算配分を増額できるようにするため、締約国が、債務元利払い水準を低減させるための努力を強化するよう勧告する。子どもに関する支出の影響を評価できるようにするため、委員会は、締約国が、予算配分が子どもの権利の実施に与える影響の体系的評価を確立し、かつ、18歳未満の者に支出される年間予算の額および割合を明らかにするよう、勧告するものである。
データ収集
16.委員会は、データ収集改善のためのさまざまな努力を歓迎するものの、条約が対象としている一部の領域(障害のある子ども、移住者の子ども、極度の貧困下で暮らしている子ども、虐待およびネグレクトの対象とされている子ども、少年司法制度における子どもならびにマイノリティに属する子どもおよび先住民族の子どもを含む)で、データが存在せずまたは不十分であることを依然として懸念する。
17.委員会は、条約のすべての領域に関するデータが収集され、かつ、これらのデータが、とくに、18歳未満のすべての者について年齢別、ジェンダー別、都市部および農村部の別ならびに特別な保護を必要とする子どもの集団別に細分化されることを確保するため、締約国が、既存のデータ収集機構を強化しかつ条約と一致した指標を開発するとともに、必要なときは追加のデータ収集機構を設置するよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、条約を効果的に実施するための政策およびプログラムを立案する目的でこれらの指標およびデータを活用するよう、奨励するものである。
条約の普及
18.委員会は、条約普及特別委員会が設置されたことに評価の意とともに留意し、かつ、たとえば出版物、放送メディアおよび専門家の研修を通じて条約の原則および規定に関する情報を普及するうえで、締約国が、ユニセフ、その他の国際機関ならびに国内外の非政府組織と連携しながら行なっている努力を心強く思う。にもかかわらず、委員会は、条約が社会のあらゆるレベルで普及されているわけではないことを懸念するものである。加えて、委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修および再研修が系統だって行なわれておらず、むしろ場当たり的になっていることに留意する。
19.委員会は、締約国が、条約を促進する創造的かつ子どもにやさしい手法を引き続き発展させるよう勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、遠隔地の子どもおよびおとなの間で条約に関する意識を高めるとともに、少なくとも主要な言語で、かつできるだけその他の先住民族およびマイノリティの言語でも条約を利用可能とするよう、奨励するものである。委員会はさらに、裁判官、弁護士、法執行官、教員、学校管理者および保健従事者のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団の系統だった研修を勧告する。条約の普及に関して、委員会はまた、締約国が、とくに国連人権高等弁務官事務所およびユニセフの技術的援助を求めることも勧告するものである。

2.一般原則

差別の禁止
20.とくに子ども・若者福祉法(大統領令第603号)、家族法および子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法の規定ならびに第3次初等教育プログラムのようないくつかのプログラムの実施を通じて子どもに対する差別を撤廃するために締約国がとった措置にも関わらず、委員会は、多くの子ども、とくに貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、先住民族およびマイノリティの子ども(ミンダナオに住むイスラム教徒の子どもを含む)、移住者の子ども、ストリートチルドレンならびに農村部に住んでいる子どもおよび紛争地域に住んでいる子どもが、とりわけ社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関して差別に直面していることを懸念する。委員会は、女子が日常生活で直面している事実上の差別(これはジェンダーに基づく複合差別であることが多い)についてとくに懸念を覚えるものである。委員会は最後に、とくに相続の権利および「非嫡出」という差別的分類に関する婚外子の不平等な地位についての懸念をあらためて表明する。
21.条約第2条に照らし、委員会は、締約国が、差別の禁止の原則を保障した現行法の効果的実施を確保するための努力を強化するとともに、脆弱な立場に置かれたすべての集団の子どもに対するあらゆる形態の差別(諸形態の複合差別を含む)を撤廃するための積極的かつ包括的戦略を採択するよう、勧告する。委員会は、締約国が、女子の平等な地位ならびに女子によるすべての人権および基本的自由の全面的享受に対して特段の注意を払うよう勧告するものである。婚外子に関して、委員会は、締約国に対し、平等な取り扱いに対する婚外子の権利(相続の権利を含む)を保障し、かつこれらの子どもを「非嫡出」と分類する差別的慣行を廃止する目的で、国内法を見直すよう要請する。
22.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)も考慮に入れながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。
生命に対する権利
23.委員会は、とくに国内武力紛争を理由とする子どもの生命権の侵害に重大な懸念を表明する。軍の兵士による子どもの超法規的殺害が2004年にブラン(ソルソゴン州)で行なわれたとされること、および、近年、ダバオおよびディゴスの両都市でもいわゆる死の部隊による同様の事件が起きたとされていることは、きわめて重大な懸念の理由となるものである。
24.改正刑法(共和国法第3815号)および改正刑法を修正した一部の凶悪犯罪に対する死刑適用法(共和国法第7659号)の規定で、犯罪を行なったときに18歳に達していなかった者に死刑を科すことが明示的に禁じられていることには留意しながらも、委員会は、子ども、すなわち18歳未満の者が確固たる年齢証明のないまま死刑囚とされている事案があることに深い懸念を表明する。
25.委員会はまた、民事登録官へのアクセスが制約されていることを理由として新生児死亡および流産の報告制度に欠陥が生じていることにも、懸念とともに留意する。
26.委員会は、条約第6条その他の条項を参照しながら、締約国に対し、とくに子どもの超法規的殺害を防止することならびに殺害が疑われる事件を徹底的に捜査しかつ加害者を裁判にかけることを目的とする効果的措置をとることにより、生命、生存および発達に対するすべての子どもの権利の保護を強化するためにあらゆる努力を行なうよう促す。
27.委員会はまた、締約国に対し、死刑を言い渡された子どもの処刑を防止し、かつ死刑に代えて条約および少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)(国連総会決議40/33)に一致する制裁を適用するためにあらゆる必要な措置をとることも促す。締約国はまた、18歳未満の者が死刑または成人を対象とする他の刑罰を言い渡されないことを確保する目的で、警察、検察官、弁護人、裁判官およびソーシャルワーカーのような公的権限を行使する者に対し、被告の正確な年齢に関する証拠を法廷に提出すること、またはそれが不可能な場合には被告に灰色の利益を与えることを義務づけるため、即時に立法上その他の措置をとることも求められる。
28.新生児死亡および流産の報告について、委員会は、締約国が、とくに同国の遠隔地において民事登録官へのアクセスを容易にするよう勧告する。
子どもの意見の尊重
29.委員会は、締約国の国内法令のなかに、たとえば司法上および行政上の手続における子どもの同意および意見を明示的に尊重しているものがあり、かつ、締約国が、とくに全国若者議会(共和国法第8044号)および生徒評議会を通じ、子どもの参加を促進してきたことに留意する。これらの積極的措置にも関わらず、委員会は、ひとつには社会における伝統的態度を理由として、参加および自由な意見表明に対する子どもの権利が締約国においていまなお制限されているという見解に立つものである。
30.条約第12条に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家庭、学校およびその他の施設において子どもの意見の尊重を促進し、かつ、とくに子どもおよび若者の評議会、フォーラム、議会等を通じ、子どもに影響を与えるすべての事柄への子どもの双方向的参加の便宜を図るための努力を強化すること。その際、脆弱な立場に置かれた集団の子どもに特段の注意を払うことが求められる。
  • (b) 子どもおよびその親、養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家に対し、子どもが自己に関わる問題について影響を及ぼす機会を追求しかつ強化するよう奨励することにより、意見を聴かれかつ参加する子どもの権利についての意識啓発キャンペーンを行なうこと。
31.委員会は、子ども向けヘルプライン「バンタイ・バータ〔子どもの味方〕163」の活動に、評価の意とともに留意する。これは、子どもが自己の関心事および意見を表明し、かつ援助および助言を求めるための重要な手段である。しかしながら委員会は、同ヘルプラインにアクセスできるのが首都圏に住んでいる子どもだけであり、かつ、同ヘルプラインを同国の農村部にまで拡大するための基本的資金が存在しないことを懸念するものである。
32.委員会は、子ども向けヘルプライン「バンタイ・バータ163」を全国的にアクセス可能なフリーダイヤルとし、かつ十分な人的資源、技術的資源および財源を提供することにより、締約国が同ヘルプラインの拡大を支援するよう勧告する。ヘルプラインに関する子どもの意識について、委員会は、締約国が、子ども関連のプログラムに同ヘルプラインについての情報を含めるよう勧告するものである。

3.市民的権利および自由

出生登録
33.出生登録率の上昇の見込みおよび締約国がこの点についてとっている措置(プラン・インターナショナルおよび国家統計局が連携して実施している「未登録の子どもプロジェクト」を含む)には留意しながらも、委員会は、子ども、とくに宗教的その他のマイノリティ集団または先住民族に属している子どもおよび同国の遠隔地に住んでいる子どもの時宜を得た出生登録を確保するうえで困難が生じていること、および、出生登録が無償ではなく、かつ締約国全域のすべての親にとって平等にアクセス可能なものとなっていないことを、依然として懸念する。委員会はまた、出生証明書の偽造についても懸念を覚えるものである。
34.子どもがすべての人権および基本的自由を全面的に享受することを確保し、かつ100%の出生登録を達成するため、委員会は、締約国が、領域内の最遠隔地にサービスを提供する移動出生登録班をより効果的に活用すること等も通じて、締約国の領域を完全に網羅した、効率的な、かつあらゆる段階で無償の出生登録制度を発展させるための努力を強化するよう、勧告する。委員会は、締約国に対し、子どもが婚外子である親および宗教的その他のマイノリティまたは先住民族に属する親による早期の出生登録へのアクセスを向上させることに、特段の注意を払うよう要請するものである。
35.委員会は、同国における出生登録率の向上を達成するため、締約国が、公衆の態度を変革し、かつ親、産婦人科診療所および病院、助産師ならびに伝統的出産立会人の感受性を強化することを目的とした意識啓発キャンペーンを導入するよう、勧告する。加えて、委員会は、締約国が、この点に関する国際機関および非政府機関との協力を深めるよう勧告するものである。委員会は、締約国が、とくに社会福祉開発省のような政府機関に関連の規定の実施およびすべての偽造事件の記録を担当させることによって、出生証明書の偽造を防止する効果的措置をとるよう勧告する。委員会はまた、締約国に対し、出生時からのアイデンティティに対する子どもの権利および家族のなかで成長することに関する広報キャンペーンを、とくに地方レベルで開始することも勧告するものである。
名前、国籍およびアイデンティティ
36.海外で働くフィリピン人が多いことに関して、委員会は、国外で生まれたフィリピン人移住労働者の子どもについて懸念を覚える。これらの子どもは、登録されないことにより、名前、国籍およびアイデンティティならびに基礎的サービスに対する権利を奪われている。
37.委員会は、締約国に対し、親がその在留資格に関わらず国外で生まれた子どもを登録することを奨励し、かつそのための便宜を図るよう勧告する。委員会はまた、締約国が、登録されておらず正規の身分証明書類を有しない子どもが、適正に登録されるまでの間、保健および教育のような基礎的サービスへのアクセスを認められることを確保するようにも勧告するものである。加えて、委員会は、締約国に対し、出生登録の必要性および価値に関する親の意識を高めるよう勧告する。
拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは処罰
38.委員会は、フィリピン憲法が拷問を禁じており、かつ子ども・若者福祉法(大統領令第603号)の規定で拷問および不当な取り扱いからの子どもの保護が定められていること、ならびに、すべての病院、診療所、関連施設および開業医に対し、子どもの拷問および不当な取り扱いのすべての事案を書面で報告する義務が課されていることに、留意する。にもかかわらず、委員会は、子ども、とくに拘禁されている子どもの拷問、非人道的なおよび品位を傷つける取扱いの報告件数が多数にのぼることを深く懸念する。委員会は、法律による拷問の禁止および犯罪化に関する前回の勧告をあらためて繰り返すとともに、現行法は子どもに対して拷問および不当な取り扱いからの十分な水準の保護を提供していないという見解をとるものである。
39.拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取り扱いまたは処罰に関して、委員会は、締約国に対し、家庭ならびに官民のすべての施設における拷問および不当な扱いからの子どもの保護を向上させ、かつ法律により拷問を犯罪とする目的で、国内法を見直すよう促す。委員会は、締約国が、虐待された子どもが法的手続で被害を受けないことおよびそのプライバシーが保護されることを確保しながら、子どもの拷問および不当な取り扱いのすべての事案を捜査しかつ訴追するよう、勧告するものである。締約国は、被害を受けた子どもに対し、ケア、回復および再統合のための適切なサービスが提供されることを確保するよう求められる。委員会は、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働く専門家(教員、法執行官、ケアを提供する者、裁判官および保健従事者を含む)に対し、不当な取り扱いの事案の特定、通報および管理についての研修を行なう努力を継続するよう勧告する。
40.委員会は、締約国に対し、子どもの拷問、非人道的なおよび(または)品位を傷つける取り扱いが公的機関または関連機関に報告された件数、そのような行為の加害者のうち裁判所による刑の言い渡しを受けた者の人数および言い渡された刑の性質に関する情報を次回の定期報告書に記載するよう要請する。
体罰
41.種々の関連規定を実施することにより学校、刑務所、施設および諸形態の子どものケア現場における体罰の使用を禁止しようとする締約国の努力には留意しながらも、社会で体罰が蔓延していることは重大な懸念の理由となる。委員会は、体罰に関する規定が子ども・若者福祉法に含まれていないことを懸念するとともに、家庭における体罰が法律で明示的に禁じられていないことを遺憾に思うものである。
42.教育の目的に関する一般的意見1号(2001年)および家庭および学校における子どもへの暴力に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/111参照)に照らし、委員会は、体罰は条約の規定と両立せず、かつ、条約第28条2項でとくに求められている子どもの尊厳の尊重の要件と一致しないことをあらためて指摘する。したがって委員会は、締約国が、家庭、学校および官民の施設、少年司法制度ならびに代替的養護制度におけるあらゆる形態の体罰を法律で禁止するよう勧告するものである。
43.委員会は、締約国に対し、さまざまな場面(家庭環境を含む)における体罰の性質および規模を評価するための包括的研究を実施するよう、勧告する。さらに、委員会は、締約国が、暴力的形態の「しつけおよび規律」の有害な影響に関する公衆教育キャンペーンを実施することによって親、保護者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家の感受性強化および教育を行なうとともに、体罰に代わる手段として、積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進するよう、勧告するものである。

4.家庭環境および代替的養護

親の責任
44.子どもの養育および発達に対する親の責任について、委員会は、フィリピンの子どもの多くが、少なくともいずれかの親が海外で働いているために家族の絆が緊密ではない状況下で暮らしていることを懸念する。
45.委員会は、海外就労に関する政策を定めることならびに移住労働者、その家族および窮状にある海外在住フィリピン人の福祉の保護および促進に関する基準を向上させること等に関する法律(共和国法第8042号)の効果的実施を求めるとともに、締約国に対し、海外で就労するフィリピン人が女性も男性も平等に親としての責任を果たせることを(就労先の国々と二国間協定を締結する等の手段も通じて)確保し、かつ家族の再統合および子どもの養育のための安定した家庭環境を促進するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。加えて、委員会は、締約国が、海外就労フィリピン人およびその子どものための、子どもに配慮した家族カウンセリング・サービスを発展させかつ提供するための努力を引き続き行なうよう勧告するものである。
扶養料の回復
46.親の一方または双方が海外で働いているフィリピン人の子どもが多いこと、海外移住中に国外で出生するフィリピン人の子どもが増えていることおよび父親が確定されない場合があることに留意しながらも、委員会は、締約国が、実際上、扶養料の回復を十分に確保していないことを懸念する。委員会は、国内法(たとえば家族法および子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法)の関連規定の不十分な実施ならびにこの点に関わる裁判所命令の執行について懸念を覚えるものである。加えて、委員会は、扶養命令の相互執行に関する二国間協定が実際には十分に実施されていないこと、および、このような協定が締結されていない場合もあることを懸念する。
47.委員会は、締約国が子どもの扶養料の回復を実際に確保するよう勧告する。国外で働いている親に関して、委員会は、締約国に対し、扶養命令の相互執行に関する二国間協定を締結するとともに、扶養料の回復が行なわれない場合に扶養料の支払いを保障する基金の設置を検討するよう、奨励するものである。
里親養護および養子縁組
48.委員会は、締約国が国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約を批准したことを歓迎し、かつ、国際養子縁組法(共和国法第8043号)および国内養子縁組法(共和国法第8552号)の規定に評価の意とともに留意する。委員会は、里親養護に関する政府法案が数年間議会で未決案件となっていることに、懸念とともに留意するものである。委員会は、子どもの養子縁組許可宣言の手続に時間がかかるため、施設での滞在が長期化する結果になっていることを懸念する。委員会はまた、国際養子縁組が最後の手段として用いられていないことに、懸念とともに留意するものである。
49.委員会は、すべての養子縁組が条約の原則および規定ならびに他の関連の国際基準に全面的にしたがって、かつ子どもの最善の利益にかなうように行なわれること、ならびに、国際養子縁組が最後の手段として用いられることを確保するため、締約国があらゆる努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国に対し、里親養護法を優先的課題として採択しかつ実施するよう奨励するものである。委員会は、締約国に対し、養子縁組手続が施設における子どもの長期滞在につながる要因を特定するよう勧告する。さらに、委員会は、締約国が、里親および里子に対して十分な審理社会的サービスを提供するよう勧告するものである。
虐待およびネグレクト、不当な取り扱い、暴力
50.委員会は、締約国において児童虐待およびネグレクトの報告件数が増えており、かつ、あらゆる形態の虐待、ネグレクトおよび不当な取り扱い(性的虐待を含む)の処罰に関して国内法に顕著な欠陥があることを、深く懸念する。加えて、委員会は、宗教上の制度の枠組みのなかで子どもの性的虐待が行なわれているという訴えがあることを深く遺憾に思うものである。
51.委員会は、締約国に対し、子どもに対するあらゆる形態の虐待(性的虐待を含む)、ネグレクト、不当な取り扱いおよび暴力を処罰し、かつ子どもに対するこれらの犯罪(近親姦を含む)を明確に定義するため、国内法を見直すよう促す。委員会は、締約国に対し、宗教上の制度の枠組みのなかで行なわれる性的虐待および搾取を防止し、かつこれらの行為から子どもを保護するために効果的措置をとるよう勧告するものである。そのための手段には、このような事案の規模について調査を行なうとともに、このような虐待の加害者が裁判にかけられること、および、このような性的虐待の事案および未成年者の搾取の事案について宗教上の制度の役職者の責任が問われることを確保することが含まれる。
52.委員会は、締約国に対し、加害者を裁判にかけ、かつ暴力および虐待の被害を受けた子どもが十分なカウンセリングならびに回復および再統合のための学際的援助にアクセスできることを確保する目的で、たとえばビデオに録画された証言を証拠として認めることによって被害を受けた子どもの権利を法的手続において全面的に実践しながら、児童虐待および子どもに対する暴力のあらゆる事案について時宜を得た十分な調査を行なうよう促す。
母親とともに刑務所にいる子ども
53.母親とともに刑務所で暮らしている子どもに関して、委員会は、十分な社会サービスおよび保健サービスに対するこれらの子どものアクセス、ならびに、とくに、劣悪でありかつ国際基準に達していないことが多いその生活条件について懸念を覚える。
54.委員会は、締約国が、条約第27条にしたがって、刑務所における生活条件および保健サービスが子どもの乳幼児期の発達にとって十分であることを確保するとともに、子どもが拘禁される母親とともに滞在するようになる前および滞在している期間中に、子どもの最善の利益の原則(条約第3条)が権限のある専門家によって注意深くかつ独立の立場から考慮されることを確保するよう、勧告する。委員会は、収監中の母よあから分離された子どもの代替的養護が、子どもの身体的および精神的ニーズが適切な形で満たされることを確保しながら、定期的に見直されるべきことを勧告するものである。さらに委員会は、締約国が、代替的養護において、子どもが収監されたままの母親との個人的関係および直接の接触を維持できることを確保するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、この点についてとくにユニセフその他の国連機関の援助を求めるよう奨励するものである。

5.基礎保健および福祉

障害のある子ども
55.とくに「コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム」を実施することによって、障害のある子どもに対する差別を撤廃し、かつ障害のある子どもが平等な機会に基づいて社会に統合することを促進するために締約国が行なっている努力を歓迎しつつ、委員会は、障害のある子どもが事実上の差別に直面していることおよびこのような子どもの役割が社会で不可視化されていることを懸念する。委員会は、障害に関する国内法、たとえば障害者大憲章(共和国法第7277号、1992年制定)および子ども・若者福祉法の関連規定がとくに地方レベルで十分に実施されていないことに、懸念とともに留意するものである。委員会は、障害のある子どもの多くが貧困下で暮らしており、かつ社会サービスおよび保健サービスならびに教育への障害児のアクセスが限られていることを懸念する。さらに、フィリピン社会に深く根づいている、障害のある子どもに対する誤った考え方および広範な偏見は、懸念の理由となるものである。
56.障害者の機会均等化に関する基準規則(国連総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に委員会が採択した勧告(CRC/C/69参照)に照らし、委員会は、締約国が以下の目的のためにあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
  • (a) 障害に関する国内法および全国的な「コミュニティを基盤とするリハビリテーション・プログラム」を実施し、かつ、あらゆる関連の政策立案および国家的計画策定に障害の側面を含めることにより、障害のある子どもに対するあらゆる形態の差別を防止しおよび禁止し、かつ、障害のある子どもが生活のあらゆる領域に完全に参加するための平等な機会を確保すること。
  • (b) 国内の最遠隔地に住んでいる障害児に特段の注意を払いながら、障害のある子どもに関する十分な統計データを収集し、かつ、社会への障害児の平等な参加を促進するための政策およびプログラムを発展させる際にこれらの細分化されたデータを活用すること。
  • (c) 公教育政策および学校カリキュラムがそのあらゆる側面において完全参加および平等の原則を反映することを確保するとともに、障害のある子どもを可能なかぎり普通学校制度に包摂し、かつ、必要なときはその特別なニーズに適合した特別教育プログラムを確立すること。
  • (d) 障害のある子どもが、十分な社会サービスおよび保健サービスならびに物理的環境、情報および通信にアクセスできるようにすること。
  • (e) 公的情報キャンペーンを開始しかつ支援することによって障害のある子どもに対する否定的態度、誤った考え方および広範な偏見を変革する目的で、障害のある子ども(その権利、特別なニーズおよび潜在的可能性も含む)に関する意識啓発のための努力を強化すること。
  • (f) 医療従事者、準医療従事者および関連要員、教員ならびにソーシャルワーカーのような、障害のある子どもとともにおよびこのような子どものために働く専門家が十分な研修を受けることを確保すること。
  • (g) 国家障害者福祉評議会の職務および活動、ならびに、フィリピン障害者団体全国連合および障害問題の分野で活動している非政府組織との協力を強化すること。
  • (h) とくにユニセフおよび世界保健機関(WHO)の技術的協力を求めること。
57.さらに、委員会は、締約国に対し、大統領布告第240号(2003年)で宣言された「フィリピン障害者の10年(2003~2012年)」の文脈において障害のある子どもの権利および地位に特段の注意を払うよう、奨励する。
健康および保健サービス
58.委員会は、健康および保健サービスの分野において、とくに予防接種との関連で締約国が達成した進展(ポリオの撲滅および新生児破傷風の根絶など)を心強く思うとともに、「保健部門改革アジェンダ」に評価の意とともに留意する。農村部では出産10件のうち8件が専門家による保健上の便益を受けることなく行なわれており、かつ乳児、5歳未満児および妊産婦の死亡率が相対的に高いことに留意しつつ、委員会は、とくに同国の農村部において産前産後の保健ケアが不十分であることに、深い懸念を表明する。母乳育児の普及率が低いこと、子どもの間で栄養不良が生じていること(学齢期の子どもの微量栄養素不足問題も含む)、および、同国の遠隔地において良質な保健サービスへの子どものアクセスが全般的に限られていることは、重大な懸念の理由となるものである。委員会は最後に、他の国々との間で現在交渉中である自由貿易協定によって負担可能な医薬品へのアクセスに悪影響が生じるおそれがあることに、懸念を表明する。
59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 「保健部門改革アジェンダ」を全面的に実施するために必要な立法上、行政上および予算上の措置をとるとともに、改革プロセスが、子どもの最善の利益および子どもの権利の全面的享受を第一次的に考慮することによって進められることを確保すること。
  • (b) 条約、とくに第4条、第6条および第24条を全面的に実施するため、保健部門に適切な資源が配分されることを確保するとともに、子どもの健康状態を向上させるための包括的政策およびプログラムを策定しかつ実施すること。
  • (c) 同国の農村部に特段の注意を払いながら、産前産後の良質な保健サービスおよび保健上の便益へのアクセスを保障するための措置(助産師および伝統的出産立会人を対象とする研修プログラムも含む)を実施すること。
  • (d) 乳児、5歳未満児および妊産婦の死亡率を低下させるためにあらゆる必要な措置をとること。
  • (e) 予防接種プログラムを効果的に実施することにより、できるかぎり多くの子どもおよび母親に予防接種を行なうために現在行われている努力を強化すること。
  • (f) 生後6か月間は母乳のみを与え、その後はこれを修正して適切な乳児食を与えることを奨励するとともに、健康的な摂食習慣の教育および促進を通じて子どもの栄養状態を改善するための措置をとること。
  • (g) とくに貧困層のおよびもっとも脆弱な立場に置かれた子どもおよびその親を対象として負担可能な医薬品へのアクセスを確保するため、自由貿易協定の交渉において、第4回世界貿易機関閣僚会議(ドーハ)が採択した「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定と公衆衛生に関する宣言」で再確認されたあらゆる柔軟条項および締約国が利用可能な諸機構を活用すること。
  • (h) この問題に関して、とくにWHO、ユニセフおよび国連人口基金(UNFPA)と引き続き協力し、かつその技術的援助を引き続き求めること。
環境衛生
60.委員会は、締約国がとった立法上その他の措置にも関わらず、大気および水の汚染ならびに環境悪化のような環境問題が子どもの健康および発達に深刻な影響をもたらしていることを懸念する。安全な飲料水および衛生設備へのアクセスに関して、委員会は、地域格差があることを懸念するものである。さらに、子どもの間でも親の間でも衛生的習慣に関する知識が貧弱であることは、懸念を覚える理由となる。
61.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 環境に配慮した固形廃棄物処理法(共和国法第9003号)および大気浄化法(共和国法第8749号)を含む環境関連の国内法の実施を強化することにより、汚染および環境悪化を低減させるための努力を引き続き強化すること。
  • (b) 学校に環境衛生教育プログラムを導入することにより、環境衛生問題に関する子どもの知識を高めること。
  • (c) とくに同国の遠隔地において安全な飲料水および衛生設備へのアクセスを向上させ、かつ衛生に関する子どもおよびその親の意識を高めるための効果的措置をとること。
思春期の健康
62.委員会は、「リプロダクティブヘルス・プログラム」、および、人口委員会およびUNFPAとの連携による思春期の健康に関する合同プロジェクトの実施等も通じ、思春期の健康を促進するために締約国が行なっている努力に評価の意とともに留意する。委員会は、青少年の間でアルコール、タバコおよび薬物の濫用が広がっていること、若年妊娠が発生していること、ならびに、これとの関連で、リプロダクティブヘルスに関する相談および(たとえば避妊法に関する)正確かつ客観的な情報への青少年のアクセスが限られていることを懸念する。アルコールの購入および消費に関する最低年齢を定めた法律が存在しないことは、懸念の理由となるものである。委員会はまた、青少年の自殺を防止する措置がとられていないことに関する締約国の懸念も共有する。
63.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 「リプロダクティブヘルス・プログラム」のような、思春期の健康に関する国家的な政策及び計画を実施するとともに、思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年)を考慮することにより、思春期の健康のあらゆる分野を網羅した新たな政策および計画を策定すること。
  • (b) 10代の妊娠および関連する中絶を予防する目的で、リプロダクティブヘルスに関する相談へのアクセスを確保し、かつ、正確かつ客観的な情報およびサービスをすべての青少年に提供すること。
  • (c) セクシュアリティ、HIV/AIDS、性感染症および家族計画に関する公式・非公式の教育を強化すること。
  • (d) アルコールの購入および消費に関する最低年齢を法律で定めること。
  • (e) アルコール、薬物およびタバコの使用の有害な影響に関する情報を青少年に提供すること。
  • (f) 青少年に適合した十分な精神保健サービスを設置すること。
  • (g) とくにWHO、国連エイズ合同計画およびUNFPAの技術的協力を求めること。
HIV/AIDS
64.委員会は、同国におけるHIV感染率が相対的に低いことに留意するとともに、AIDS予防統制法(共和国法第8504号、1998年採択)の実施および全国AIDS予防統制プログラム(1998年)の設置等も通じ、HIV/AIDSの感染予防および削減に対処するために行なわれているさまざまな努力を歓迎する。〔しかしながら、〕委員会は、セックスワーカーが多いことのような、HIV感染の可能性を高めるリスク要因が存在することを懸念するものである。AIDS予防統制法が、学校におけるHIV/AIDSについての完全な情報へのアクセスを保障していることには留意しながらも、委員会は、フィリピンの青少年の間でHIV/AIDSに関する意識水準が不十分であることに懸念を表明する。
65.HIV/AIDSと子どもの権利に関する委員会の一般的意見3号(2003年)およびHIV/AIDSと人権に関する国際指針(E/CN.4/1997/37)に照らし、委員会は、締約国が、引き続き以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) HIV/AIDSの症状を予防しかつ治療するため、AIDS予防統制法を実施するための努力を強化すること。
  • (b) たとえばいかなる形態の差別的行為も禁ずるフィリピンAIDS予防統制法を実施することによって、HIV/AIDSに感染した子どもおよびその影響を受けている子どもに対する差別を防止するとともに、これらの子どもが十分な社会サービスおよび保健サービスにアクセスできることを確保すること。
  • (c) 学校で、HIV/AIDSに関する正確かつ包括的な情報(コンドームの利用も含む)を青少年に提供すること。
  • (d) 子どもが必要とするときは、親の同意を得ることなく、子どもに配慮し、かつ秘密が守られるHIV/AIDS相談にアクセスできることを確保すること。
  • (e) とくに国連合同エイズ計画の技術的援助を求めること。
生活水準
66.委員会は、国の貧困線以下の世帯で暮らしている子どもが多いこと、および、異なる地域間の富の格差が大きいことに、懸念とともに留意する。委員会は、貧困下で暮らしている子どもが、社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスを含む人権の享受に関して困難に直面していることを深く懸念するものである。委員会はまた、締約国の劣悪な住宅状況、および、たとえばインフラが十分に整っていない都市のスラムおよび不法居住区に住んでいる家族についても懸念を覚える。
67.条約第27条にしたがい、委員会は、締約国が、とくに貧困削減戦略の実施およびコミュニティ開発(子どもの参加を含む)を通じ、貧困下で暮らしている農村部および都市部の人々の生活水準を向上させるために緊急の努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国に対し、経済的に不利な立場に置かれた子どもおよびその家族に物的援助および支援を提供する努力を強化するよう要請する。さらに、締約国は、貧困下で暮らしている子どもが社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに十分な住居へのアクセスを提供されることを確保するべきである。

6.教育、余暇および文化的活動

教育
68.委員会は、小学校および中等学校に関する新学校カリキュラム、ならびに、ユニセフとの連携による乳幼児期カリキュラム、「万人のための教育行動計画」および「子どもにやさしい学校制度」を実施する等の手段により、教育の水準および目的を向上させるために締約国が行なっている努力に留意する。これらの積極的措置がとられたにも関わらず、委員会は、いまなお子どもに小学校教育を提供することのできないバランガイが残っており、かつ、小学校教育に平等にアクセスできていない、脆弱な立場に置かれたいくつかの集団の子ども(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、子どもの労働者、武力紛争下にある子ども、先住民族の子ども、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもおよびストリートチルドレンなど)が存在することに、依然として重大な懸念を覚えるものである。委員会は、通学にかかる費用負担(食費、移動費、制服代および学用品費など)が貧困家庭の多くの子どもにとって金銭的障害となっており、このような子どもにとって教育への平等なアクセスが否定されていることを、懸念する。初等教育を就労しない子どもの割合が高いことは、中等教育における中退率が高いこととともに、深刻な懸念の理由となるものである。委員会はまた、就学前学校での早期教育を享受する子どもの人数が少ないことにも留意する。
69.委員会は、とくにリンガ・フランカ・プロジェクト等も通じ、先住民族、マイノリティおよび地方の言語を促進しようとする締約国の努力を心強く思う。委員会は、教室の席、教科書およびその他の学用品の数が不十分であることも含め、とくに遠隔地のバランガイにおいて就学のための便益が貧弱であることを懸念するものである。委員会は、中等教育就学率が低く、かつ遠隔地のバランガイに住んでいる子どもは中等教育へのアクセスが非常に制限されている旨の懸念を、あらためて繰り返す。委員会は、締約国が、子ども参加を奨励する課題および教授法にかける時間を増やすことによって教育の質を向上させるために熱心な努力を行なってきたことに、評価の意とともに留意するものである。委員会はまた、教員の着任前研修および現職者研修の拡大および改善も歓迎する。委員会はまた、教育の質を日常的に監視しかつ評価しようとする試みが行なわれていることも認識するものである。
70.条約第28条および第29条ならびに教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)に照らし、委員会は、締約国が、以下の目的のために十分な財源、人的資源および技術的資源を配分するよう勧告する。
  • (a) 低所得家庭の子どもがあらゆる段階の教育に平等にアクセスできることを確保するため、このような子どものための予算配分、政府補助金および援助プログラムを増加させること。
  • (b) すべての者を対象とする無償の完全初等教育を確保するため、あらゆる必要な措置を緊急にとるとともに、最遠隔地にあるバランガイにおける就学機会および脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(貧困下で暮らしている子ども、障害のある子ども、先住民族の子ども、子どもの労働者、武力紛争下にある子ども、HIV/AIDSに感染しまたはその影響を受けている子どもおよびストリートチルドレンなど)の教育上のニーズに対し、教育に対するこれらの子どもの権利を充足する目的で特段の注意を払うこと。
  • (c) 初等中等学校における中退率を迅速に下降させるための効果的措置をとること。
  • (d) すべての子どもが乳幼児期教育にアクセスできるようにする(そのための費用は貧困家庭にも負担可能なものとすることが求められる)とともに、就学前学校および早期の学習機会に関する親の意識を高めること。
  • (e) 学校および教室を新設し、教科書その他の学用品を開発し、教員の養成および研修を増進させ、ならびに、学習の前提条件が異なる子どもに適合した革新的かつ双方向的な学習手法を採用することにより、教育制度の基盤を発展させおよび改良すること。
  • (f) とくにリンガ・フランカ・プロジェクトを通じ、先住民族の子どもおよびマイノリティ集団に属する子どもが、それぞれの異なる文化様式を尊重し、かつ教育において地方の先住民族言語およびマイノリティ言語を用いる良質な教育に、平等にアクセスできるようにすること。
  • (g) 初等中等教育を修了していない子どもを対象とするものも含め、非公式な学習および職業訓練のための便益をより多く提供するための努力を引き続き行なうこと。
  • (h) 中退者数を減少させ、かつ中等教育を修了する子どもの人数を増やすための努力を引き続き行なうこと。
  • (i) 労働市場で必要とされることおよび市民的責任に関して子どもが学校で体系的に準備を整えられるようにする職業訓練校を設立すること。
  • (j) 子どもの権利を含む人権を学校カリキュラムの主流に位置づけること。
  • (k) 教育部門の改善のため、とくにユネスコ、ユニセフおよび非政府組織と協力すること。
  • (l) 教員の着任前研修および現職者研修を引き続き拡大すること。
余暇、レクリエーションおよび文化的活動
71.子どものためのスポーツおよび文化的活動を発展させかつ組織しようとする締約国の努力にも関わらず、委員会は、子どものためのレクリエーション活動および文化的活動ならびに関連の便益の数が不十分であり、かつ、この点に関してバランガイ間に格差があることに、懸念とともに留意する。委員会は、休息および余暇に対する権利を享受する権利も、遊び、スポーツ、レクリエーション活動および文化的活動を行なう権利を享受する権利も平等に有していない子どもの集団(初等教育に参加していない子ども、子どもの労働者およびストリートチルドレンなど)がいくつか存在することを、懸念するものである。
72.条約第31条に照らし、委員会は、締約国が、休息、余暇、文化的活動およびレクリエーション活動に対する子どもの権利を保護するため、あらゆる必要な努力を行なうよう勧告する。委員会は、締約国が、遊びのための創造的な便益を子どもに提供することにより、遊びを行なう子どもの権利を促進する努力を強化するよう勧告するものである。委員会は、この権利の実施に対して十分な人的資源および財源が配分され、かつ、教育制度の外にある子ども、子どもの労働者およびストリートチルドレンのような脆弱な立場に置かれた集団の子どもに特段の注意が払われるよう、要請する。

7.特別な保護措置

子どもの難民
73.子どもの難民の処遇およびその権利の実施がフィリピン人の子どもに一般的に適用される法律に照らして考えられてきたとはいえ、委員会は、子どもの庇護希望者および難民の具体的ニーズに対応した国内法が存在しないことを懸念する。委員会は、たとえば、子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法の規定のうち緊急事態下にある子どもに関する規定が武力紛争の状況下にある子どもに限定されていることに留意するものである。
74.委員会は、締約国に対し、子どもの庇護希望者および難民のニーズに対応し、かつ、保護者のいないおよび養育者から分離された子どもの庇護希望者および難民に関する特別手続を定めた、特別な法律および行政規則を導入するよう勧告する。これとの関係で、委員会は、締約国が引き続きUNHCRと協力するよう勧告するものである。
武力紛争下の子ども
75.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書を締約国が2003年8月に批准し、かつ、国軍への入隊に関する最低年齢を18歳と定めたこと(ただし訓練目的の場合を除く)を歓迎する。委員会はまた、武力紛争に関与した子どもの救助、回復および再統合を促進する「武力紛争下の子どもに関する包括的プログラム枠組み」(2001年、大統領令第56号)が採択されたことに、評価の意とともに留意するものである。締約国がとったこれらの積極的措置にも関わらず、委員会は、ときには11歳という幼さの子どもが新人民軍、モロ・イスラム解放戦線およびアブ・サヤフ・グループのような武装反政府運動によって徴募され、戦闘員、諜報要員、警備兵、調理担当または衛生兵として働かされていることに、深い懸念を表明する。
76.委員会は、締約国が身体的および心理的回復ならびに社会的再統合のためのサービスを提供できるのは拘束された子ども兵に対してのみであり、武力紛争に関与しまたはその影響を受けている子どもの大多数に対してはまったく手が差し伸べられていないことを懸念する。さらに委員会は、国内武力紛争の悪影響のため、子どもが避難を余儀なくされる状況が続いており、かつ、これらの子どもが、社会サービスおよび保健サービス、教育ならびにとくに発達に対して限られた形でしかアクセスできていないことを懸念するものである。加えて、委員会は、敵対行為に関与していない子ども、とくにミンダナオ地域に住んでいるイスラム教徒の子どもに対して国内武力紛争が与えている影響について懸念を覚える。
77.委員会は、締約国が、自国の管轄内にあるすべての子どもについて、条約に掲げられたすべての権利をいかなるときも尊重しおよび確保することを約束したことを想起する。条約第38条、第39条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国に対し、武力紛争における子どもの徴募および武力紛争への子どもの関与を即時停止するよう促す目的で武装反政府勢力との和平の努力を継続するとともに、武力紛争に関与させられたすべての子どもの保護を確保するよう、促すものである。委員会は、締約国に対し、武力紛争に関与した子どもおよび武力紛争によって傷を負った子どもに対し、国内的および国際的非政府組織ならびにユニセフのような国連機関と協力しながら、その身体的および心理的回復ならびに社会への社会的再統合のための十分な援助およびカウンセリングを提供するよう、勧告する。委員会は、締約国が、女子の子ども兵に対し、リハビリテーションおよび再統合のための、ジェンダーに固有の十分なサービスを提供するよう勧告するものである。
78.委員会はまた、締約国が、武力紛争下の子どもの取り扱いに関するフィリピン国軍向け指針の実施に特段の注意を払うとともに、拘束された子どもが定められた期限内に軍事拘禁から釈放されること、および、子どもが十分な治療を提供されかつ自己の権利について告知されることを確保するようにも勧告する。避難民の子どもおよび紛争地域に住んでいる子どもに関して、委員会は、締約国に対し、十分な社会サービスおよび保健サービス、教育ならびに発達を含む基礎的サービスにこれらの子どもがアクセスできることを確保するために効果的措置をとるよう、促すものである。最後に、委員会は、締約国が、武装交戦の影響を受けている地域に住んでいるすべての子どもがいかなる差別もなく平等に人権を享受できることを確保するよう、勧告する。
経済的搾取
79.委員会は、〔ILOの〕最低年齢条約(1973年、第138号)が1998年6月に、および最悪の形態の児童労働条約(1999年、第182号)が2000年11月に批准されたことを歓迎する。委員会は、たとえば全国児童労働対策プログラムの実施、労働法実施雑則、地方レベルの児童労働プログラム実施委員会の設置ならびに国際労働機関およびその児童労働撤廃国際計画との実りのある協力を通じ、児童労働と闘うために締約国が行なっている努力に、評価の意とともに留意するものである。これらの積極的努力にも関わらず、委員会は、締約国における子どもの労働者の人数が多いこと(働く子どもが370万人)を深く懸念する。委員会は、児童労働に関する文化的態度および慣行ならびに労働法の執行の弱さに懸念を覚えるものである。
80.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 国内法ならびに全国児童労働対策プログラムおよびその下位プログラム(たとえばタバコ産業における児童労働撤廃プロジェクト)を効果的に実施するとともに、この問題の解決に関する議論に子どもの労働者が参加することを確保すること。
  • (b) 子どもが行なう労働が軽易労働であって搾取的なものではないことを保障するために労働監察制度を改善するとともに、とくに、当該制度に対し、子どもによる家事労働および農村労働の慣行を監視しかつ報告する権限を付与すること。
  • (c) 元子ども労働者に対し、回復および教育のための適切な機会を提供すること。
  • (d) 国際労働機関/児童労働撤廃国際計画に対し、引き続き技術的援助を求めること。
薬物および有害物質の濫用
81.とくに2002年包括的危険薬物法(共和国法第9165号)の実施を通じて麻薬取引ならびに薬物および有害物質の濫用と闘おうとする締約国の努力、ならびに、子どもを対象とする治療および社会的再統合のためのサービスの増加には留意しながらも、委員会は、フィリピンで麻薬売買が大規模に行なわれており、かつそれが子どもおよび青少年に悪影響を与えていることを深く懸念する。委員会は、薬物および有害物質の濫用(ストリートチルドレンの間で行なわれている接着剤およびシンナーの吸引を含む)が多数発生していることに関する締約国の懸念を共有するものである。さらに、委員会は、薬物回復再統合センターにおける治療を自発的に求めた子どもがしばしば治療費の支払いを求められることにより、資力の限られている子どもにとって克服不能な障害が生じ、かつ治療および再統合へのアクセスが否定されていることを懸念する。
82.委員会は、締約国が、以下の目的のために行なっている努力を引き続き強化するよう勧告する。
  • (a) たとえば2002年包括的危険薬物法を効果的に実施することによって、子どもおよび青少年の間で行なわれている薬物および有害物質の濫用と闘うとともに、法の適正手続を確保すること。
  • (b) 子どもおよび青少年に対し、公立学校プログラムおよびメディア・キャンペーンを通じて薬物および有害物質(の使用に関する正確かつ客観的な情報を提供するとともに、正しくない有害な情報および有害なモデルから子どもを保護すること。
  • (c) 薬物および有害物質の濫用の被害を受けた子どもを対象とする、薬物濫用の治療および社会的再統合のための無償かつ容易にアクセス可能なサービスを発展させること。
  • (d) ストリートチルドレンに適合した、特定の薬物濫用(接着剤およびシンナーの吸引を含む)からの回復および社会的再統合のためのプログラムおよびセンターを設けるとともに、この点に関して非政府組織と協力すること。
  • (e) 既存の薬物回復再統合センターに十分な予算を配分すること。
  • (f) とくに国連薬物犯罪事務所およびWHOの技術的援助を求めること。
ストリートチルドレン
83.委員会は、路上で生活している子どもが多く、かつ、このような子どもがさまざまな形態の暴力および虐待(性的虐待および搾取、経済的搾取および有害物質濫用を含む)の被害をとくに受けやすい状態に置かれていることに対する重大な懸念を、あらためて表明する。委員会は、このような状況に対処し、かつ路上で生活している子どもを保護するための体系的かつ包括的戦略が存在しないことに留意するものである。委員会は、ストリートチルドレンの不法な逮捕および拘禁は条約の規定および原則の重大な侵害であることを強調する。締約国ならびにストリートチルドレンとともにおよびストリートチルドレンのために活動している多くの非政府組織(たとえばチャイルドホープ・アジア・フィリピン)が行なっている努力にも関わらず、委員会は、十分な栄養、衣服、住居、社会サービスおよび保健サービスならびに教育サービスへのストリートチルドレンのアクセスが制限されていることを懸念するものである。さらに委員会は、ストリートチルドレンが直面している健康上のリスク(毒性・有害廃棄物ならびに大気汚染のような環境衛生上のリスクを含む)について懸念を覚える。
84.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) この現象を縮小させかつ防止する目的で、ストリートチルドレンの多さに対処するための包括的戦略を、ストリートチルドレン、非政府組織および関連の専門家の積極的参加を得ながら策定すること。
  • (b) 路上で生活している子どもが不法に逮捕されかつ拘禁されないことを確保し、このような子どもを警察による蛮行から保護し、かつ、必要なときはこのような子どもに対して十分な法律サービスへのアクセスを保障すること。
  • (c) このような子どもの全面的発達を支え、かつこのような子どもに十分な保護および援助を提供する目的で、ストリートチルドレンが、訓練を受けた、路上で活動する教育者およびカウンセラーを通じて支援の対象とされ、かつ、十分な栄養、衣服およびシェルターならびに社会サービスおよび保健サービスならびに教育機会(職業訓練およびライフスキル訓練を含む)を提供されることを確保すること。
  • (d) ストリートチルドレンに対し、身体的および性的虐待ならびに有害物質濫用に関わる回復および社会的再統合のための十分なサービスを提供するとともに、実現可能なときは家族との再統合を促進すること。
  • (e) とくに、環境衛生上のリスクに関するストリートチルドレンの意識を高め、かつこのようなリスクから身を守るための適切な行動について指導することを通じ、路上で生活している子どもが直面する環境衛生上のリスクを削減しかつ防止すること。
  • (f) ストリートチルドレンの自尊感情を高めるため、このような子どもたちの自己組織化の努力を支援すること。
  • (g) ストリートチルドレンとともにおよびストリートチルドレンのために活動している非政府組織と連携し、かつこのような組織を支援すること。
性的搾取、児童ポルノおよび人身取引
85.委員会は、児童買春が増えていることおよび児童ポルノの事案が報告されていることを含む、締約国における子どもの性的搾取について重大な懸念を表明する。委員会は、子どもの虐待、搾取および差別からの子どもの特別保護法の規定が主として児童買春に関連したものであり、他の形態の性的搾取の被害者を十分に保護していないことに、懸念とともに留意するものである。さらに、委員会は、性的同意に関する最低年齢が締約国の国内法で十分明確に定められておらず、かつ、改正刑法(共和国法第3815号)が、被害者が12歳に達していないときはもっとも重い刑を科しているのに対し、12歳以上の未成年者に対する性犯罪についてはより軽い刑罰を科していることに、懸念とともに留意する。
86.委員会は、新たな人身取引防止法の採択(2003年)、ならびに、人身取引の防止および被害者の保護の分野で締約国がとったその他の措置(不法な募集防止調整評議会の設置、「労働組合・働く子どもの権利擁護者」イニシアティブ、および、とくに女性および子どもの人身取引を抑止するための執行委員会の設置など)を歓迎する。しかしながら委員会は、国内のおよび国境を越えた人身取引の対象とされるフィリピンの子どもについて重大な懸念を覚えるものである。委員会は、固定化された貧困、一時的な海外移住、セックス・ツーリズムの増加および締約国における法執行の弱さのような、人身取引活動を助長する既存のリスク要因について懸念を表明する。
87.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。
  • (a) 性的搾取の被害を受けたすべての子どもに平等な保護を提供する目的で、とくに子どもに対する性犯罪のすべての加害者に対する平等な制裁を法律に含めることにより、性的搾取(ポルノグラフィーのために子どもを使用することも含む)からの子どもの保護に関する国内法を見直すこと。
  • (b) 国内法において、性的同意に関する最低年齢を、国際的に受け入れられる水準でおよび明確に定義された形で定めること。
  • (c) 子どもの商業的性的搾取および人身取引の原因、性質および規模を評価するための包括的研究を実施すること。
  • (d) 第1回・第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取および(または)人身取引の対象とされた子どもに対して、援助および再統合のための十分なプログラムを提供すること。
  • (e) 地域で増加しつつあるセックス・ツーリズムのような既存のリスク要因に特段の注意を払うとともに、この点について観光省および観光サービス業者と引き続き連携すること。
  • (f) 子どもに関わる人身取引、性的搾取およびポルノグラフィーを防止する目的で、子ども、親その他の養育者を対象とする意識啓発キャンペーンを開始するとともに、人身取引被害者とともにおよび人身取引被害者のために働く職員の感受性を高めること。
88.フィリピンにおける、国内のおよび国境を越えた子どもの人身取引に関して、委員会は、関連の法律の効果的執行を確保し、かつ責任があると認められた者に対して制裁を科すことによってあらゆる形態の人身取引と闘うために適当な措置をとることに関する、自由権規約委員会が第79会期(2003年)に採択した勧告(CCPR/CO/79/PHL、パラ13)を支持する。
少年司法の運営
89.委員会は、締約国において犯罪水準が高く、かつ18歳未満の者の拘禁が多数行なわれていること、法律に触れた子どもの権利侵害が根強く行なわれていること、拘禁されている18歳未満の者に対して拷問、性的虐待を含む虐待およびその他の形態の品位を傷つける取り扱いが行なわれているとされること、ならびに、フィリピンの少年司法制度の運営に全般的欠陥があることを深刻に憂慮する。委員会は、少年司法を規律する十分な法律が存在せず、かつ提案中の「包括的な少年司法制度および非行防止プログラム法」案が1999年以来議会の審議待ちになっていることに、深い懸念とともに留意するものである。2000年2月に発布された省令により地区裁判所が家庭裁判所として指定されたことには留意しながらも、委員会は、子どもに配慮し、かつ十分な訓練を受けた〔専門家による〕少年裁判所が存在しないことを懸念する。
90.さらに、委員会は、刑事責任に関する最低年齢(9歳)が非常に低いことを懸念する。子ども・若者福祉法ならびに若年犯罪者の逮捕、捜査、訴追および更生に関する細則(大統領令第603号)のうち青年拘禁ホームに関する規定について、委員会は、これらの規定の実施が不十分であり、かつ18歳未満の者が拘禁場所で成人とともに収容されていることを懸念するものである。子ども(たとえばストリートチルドレン)が長期にわたって不法に拘禁され、かつ、適当な法律上の扶助および援助ならびに十分な社会サービスおよび保健サービスに対して限られた形でしかまたはまったくアクセスできないことは、重大な懸念の理由となる。加えて、委員会は、法外な額の保釈金が求められるために子どもおよびその親にとって克服不能な金銭的障害が生じていること、刑の執行猶予が制限されていること、および、拘禁環境(いわゆる秘密房も含む)が劣悪であることを懸念するものである。
91.委員会は、締約国に対し、少年司法に関する法律および実務が、条約の規定、とくに条約第37条、第39条および第40条、ならびに、少年司法の運営に関する国連最低基準規則(北京規則)(国連総会決議40/33)、少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)(国連総会決議45/112)、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則(国連総会決議45/113)および刑事司法制度における子どもに関する行動についてのウィーン指針(1997年7月21日の国連経済社会決議1997/30添付文書)のような、この分野における他の関連の国際基準と全面的に一致することを確保するよう、促す。これとの関連で、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。
  • (a) 提案中の「包括的な少年司法制度および非行防止プログラム法」案を緊急に採択するとともに、刑事責任に関する最低年齢を国際的に受け入れられる水準まで引き上げること。
  • (b) 自由の剥奪が最後の手段として、もっとも短い適当な期間で、かつ適切な環境においてのみ用いられること、ならびに、18歳未満の者が成人とともに拘禁されないことを確保すること。
  • (c) 十分な人数の、適切な訓練を受けた専門職員が配置された少年裁判所を設置すること。
  • (d) 18歳未満の者が法律扶助および独立のかつ効果的な苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。
  • (e) 保護観察、地域奉仕活動または刑の執行猶予のような、自由の剥奪に代わる措置を実施すること。
  • (f) 子どもの回復および社会的再統合の分野に関して専門家の研修を行なうこと。
  • (g) とくに国連人権高等弁務官事務所、国連薬物犯罪事務所およびユニセフの技術的援助を引き続き求めること。
マイノリティおよび先住民族に属する子ども
92.先住民族権利法(共和国法第8371号)の規定ならびにマイノリティおよび先住民族に属する子どものためのプログラムおよびプロジェクト(先住民族文化コミュニティに属する子どものための代替的教育制度、保育開発プログラムおよびリンガ・フランカ・プロジェクトなど)には留意しながらも、委員会は、
マイノリティおよび先住民族の間で貧困が広がっており、かつ、とくに社会サービスおよび保健サービスならびに教育へのアクセスに関してその人権の享受が制約されていることを懸念する。委員会は、先住民族コミュニティで行なわれている、親の取決めによる早期婚についての締約国の懸念を共有するものである。加えて、委員会は、イスラム教徒に対してより著しい差別が行なわれていることに、懸念とともに留意する。
93.委員会は、条約第2条および第30条に基づく締約国の義務を想起し、締約国が、先住民族の子どもおよびマイノリティに属する子どもがすべての人権を平等にかつ差別なく全面的に享受できることを確保するよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、先住民族権利法(共和国法第8371号)を実施するための努力を強化するとともに、先住民族およびマイノリティの子どもに対して文化的に適切なサービス(社会サービスおよび保健サービスならびに教育を含む)への平等なアクセスを確保するための政策およびプログラムを策定しかつ実施するよう、勧告するものである。さらに、委員会は、マイノリティおよび先住民族の子どもの人権の享受に関して存在する格差および障壁を特定し、かつそのような格差および障壁に対応するための法律、政策およびプログラムを発展させる目的で、締約国が、これらの子どもに関するデータ収集機構を強化するよう勧告する。
94.自己の言語を用いる子どもの権利に関して、委員会は、締約国に対し、先住民族およびマイノリティの子どもの言語上のニーズに対応するための努力を引き続き行なうよう勧告する。加えて、委員会は、締約国が、先住民族およびマイノリティのコミュニティならびにそれぞれの指導者と緊密に連携しながら、早期婚のような、先住民族およびマイノリティの子どもの健康および福祉にとって有害な伝統的慣行を廃止するための効果的措置を追求するよう、勧告するものである。

8.子どもの権利条約の選択議定書

95.委員会は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書が2002年5月に批准されたこと、および、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書が2003年8月に批准されたことを歓迎する。
96.委員会は、選択議定書の実施についての審査を可能にするためには、定期的かつ時宜を得た報告の実践が重要であることを強調する。委員会は、締約国が、選択議定書および条約の報告条項に基づく報告義務を全面的に履行するよう勧告するものである。

9.フォローアップおよび普及

フォローアップ
97.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能なときは州の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
98.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第2回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。

10.次回報告書

99.委員会が採択し、かつ第29会期に関する報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、子どもの権利委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、時宜を得た定期的報告を行なううえで一部の締約国が困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、第4回報告書の提出期限である2007年9月19日までに、単一の統合報告書として第3回および第4回報告書を提出するよう慫慂する。この報告書は120ページを超えるべきではない(CRC/C/118参照)。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年9月23日)。/前編~後編を統合(2010年10月20日)。