総括所見:ノルウェー(第3回・2005年)


CRC/C/15/Add.263(2005年9月21日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2005年5月24日に開かれた第1036回および第1037回会合(CRC/C/SR.1036およびCRC/C/SR.1037参照)においてノルウェーの第3回定期報告書(CRC/C/129/Add.1)を検討し、2005年6月3日に開かれた第1052回会合において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、報告ガイドラインにしたがい、かつ委員会の前回の勧告(CRC/C/15/Add.126)のフォローアップに関する情報を含む締約国の第3回定期報告書が時宜を得た形で提出されたことを歓迎する。委員会はまた、事前質問事項(CRC/C/Q/NOR/3)に対する締約国の文書回答により、ノルウェーの子どもの状況についての理解を深めることができたことも歓迎するとともに、締約国の代表団との率直かつ開かれた対話に、評価の意とともに留意するものである。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、以下のものを含む、報告対象期間中に見られた多くの積極的発展を歓迎する。
  • (a) 子どもの権利条約の実施について全般的進展があったこと。
  • (b) 条約が2003年に国内法に編入されたこと。
  • (c) 意見を聴かれる子どもの権利の適用範囲をさらに強化しかつ増進させる改正が特定の子ども関連法について行なわれたこと。
  • (d) 子どもの間で条約に関する意識を高め、かつ報告プロセスに子どもの参加を得ることを目的とする「18歳になるまでの人生」(Life Before 18)プロジェクトが開始されたこと。
  • (e) 国家人権行動計画(2000~2005年)が採択されかつ実施されていること。
  • (f) 2003年4月に刑法が改正され、人身取引がとくに犯罪化されたこと。
  • (g) 締約国が、とくに教育分野における国際援助および国際協力に対し、継続的かつ傑出したコミットメントを示してきたこと。
  • (h) 子どもの権利の保護を強化するための多くのプログラムおよび国家的行動計画が実施されていること(2001年「子ども・若者とインターネットに関する行動計画」、2002年「移民の背景を有する子ども・若者に関する行動計画」、2003年「女性および子どもの人身取引と闘うための行動計画」、「児童青少年犯罪と闘うための行動計画(2000~2004年)」、「人種主義および差別と闘うための行動計画(2002~2006年)」、ならびに、「女性性器切除と闘う政府の努力-2002年」および「強制婚と闘うための新たな努力-2002年」と題されたプログラムを含む)。
  • (i) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書および武力紛争への関与に関する子どもの権利条約の選択議定書がそれぞれ2001年および2003年に批准されたこと。

C.主要な懸念事項、提案および勧告

1.実施に関する一般的措置

委員会の前回の勧告
4.委員会は、勧告の多くが実施されてきたことに評価の意とともに留意するものの、締約国の第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.2)の検討後に委員会が表明した懸念および行なった勧告(CRC/C/15/Add.126)の一部、とくにパラ19(条約に関する研修および教育)、21(差別の禁止)、27(思想、良心および宗教の自由)、31(親の分離)、41(精神保健サービス)および43(保育サービス)に掲げられたものへの対応が不十分であることに、遺憾の意とともに留意する。
5.委員会は、締約国に対し、前回の勧告のうち部分的にしかまたはまったく実施されていないものおよびこの総括所見に掲げられた一連の勧告に対応するためにあらゆる努力を行なうよう促す。
立法および実施
6.委員会は、国内法を条約に全面的に一致させるためにとられた多くの措置を歓迎する。しかしながら委員会は、出入国管理、運営機関への子ども参加および宗教的自由のような一部分野の国内法については、実際の実施が条約の原則および規定と全面的に一致することを確保するためにさらなる注意が必要とされることに留意するものである。
7.委員会は、締約国に対し、国内法が条約と全面的に一致しかつ一致し続けることを確保するための努力を継続するよう慫慂する。委員会は、締約国に対し、裁判官に対して子どもに関わる事件における条約の直接適用可能性についての研修を、かつ中央政府および自治体の職員に対して条約についての研修を行なうよう奨励するものである。
調整
8.委員会は、中央および地方の両方のレベルにおいて、とくに地方当局との関連で、子どもおよび若者のための努力の調整および一貫性を向上させる必要があるという懸念を締約国と共有する。
9.委員会は、中央および地方の公的機関間の十分な協力ならびに子ども、若者、親および非政府組織との協力を確保するため、子どもおよび若者のための努力の一貫性および調整を向上させるための努力を引き続き強化するよう勧告する。
独立した監視体制
10.子どもオンブズマンが行なっている重要な貢献は認知しながらも、委員会は、子どもオンブズマンが子ども家族問題省に依存しているように思われることから、その活動を行なううえで制約に直面していることに留意する。
11.委員会は、締約国が、子どもオンブズマンの独立性をさらに高めるよう勧告する。
データ収集
12.委員会は、十分に整備された締約国のデータ収集システムを高く評価するものの、暴力を受けた子どもおよび後期中等学校に入学せずまたは後期中等学校を中退した子どもの状況に関する統計データが存在しないことを遺憾に思う。委員会はまた、移民の子どもならびに施設および里親家庭で暮らしている子どもに関して利用可能なデータが限られていることも、遺憾に思うものである。
13.委員会は、締約国に対し、子どもの状況に関するデータ、とくに暴力および虐待を受けた子ども、後期中等学校に入学せずまたは後期中等学校を中退した子ども、代替的養護制度の対象とされている子どもならびに移民の子どもに関するデータの体系的収集を向上させるため、引き続き努力するよう勧告する。
資源配分
14.この点に関してとられた措置には評価の意とともに留意しながらも、委員会は、子どもが利用可能なサービスの範囲が、サービスの内容面でも実行面でも、子どもが国内のどこに住んでいるかによってさまざまであることを懸念する。
15.委員会は、締約国が、子どもに提供されている資源の水準および内容を評価しおよび分析するための研究を実施するとともに、必要なときは、自治体の地理的所在または規模にかかわらずすべての子どもに対してサービスへの平等なアクセスおよびサービスの平等な利用可能性を確保するための措置をとるよう、勧告する。
研修/条約の普及
16.委員会は、この分野で締約国がとったさまざまな措置にもかかわらず子どもおよび若者の間で条約に関する意識が低く、かつ、子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家が子どもの権利に関する十分な研修を受けているわけではないことを、懸念する。委員会は、これとの関連で、学校では人権について後期中等教育の選択科目としてしか教えられていないことを遺憾に思うものである。
17.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 子どもの権利に関する教育を初等教育および中等教育双方のカリキュラムに編入すること。
  • (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての者(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、教員、ソーシャルワーカー、保健従事者およびとくに子ども自身)を対象とする、子どもの権利を含む人権についての体系的かつ継続的研修プログラムを確保すること。
  • (c) 委員会の一般的意見が普及されかつ翻訳されることを確保すること。

2.一般原則

差別の禁止
18.この分野で締約国がとっている継続的措置にも関わらず、委員会は、一部の子どもがその宗教的または民族的背景を理由として学校および社会で直面している差別について懸念する。
19.条約第2条に照らし、委員会は、締約国が、子どもに対するあらゆる形態の事実上の差別を防止しかつ解消するための努力を引き続き強化するよう勧告する。

3.市民的権利および自由

思想、良心および宗教の自由
20.委員会は、学校科目「キリスト教の知識と宗教・倫理教育」の教授に関する、市民的および政治的権利に関する国際規約の選択議定書に基づく自由権規約委員会の見解(2004年11月3日、CCPR/C/82/D/1155/2003)に留意する。これとの関連で、委員会は、「キリスト教の知識と宗教・倫理教育」の教授を条約第15条に掲げられた宗教の自由に対する権利と全面的に一致させるため、教育法の改正が計画されている旨の締約国の情報を歓迎するものである。委員会は、締約国に対し、これらの改正を採択しかつ制定するプロセスを加速させるよう奨励する。

4.家庭環境および代替的養護

21.委員会は、ノルウェーに子どもがいる外国籍の者が重大犯罪を行なった結果として恒久的に退去を強制される事案において、子どもの最善の利益が十分に考慮されていないことを懸念する。
22.委員会は、締約国に対し、親の退去強制に関わる決定において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するよう促す。
家庭環境を奪われた子ども
23.委員会は、家庭から分離されて里親家庭または他の施設で暮らしている子どもが多いことを懸念する。これとの関連で、委員会は、家庭環境からの子どもの分離に関わる実務を見直すことに対する締約国の前向きな姿勢に留意するものである。
24.委員会は、締約国が、実親に対する十分な支援等も通じ、家庭から分離される子どもの人数が増加している原因に対応するための措置をとるよう勧告する。〔委員会は、〕締約国に対し、自然な家庭環境の保護を優先するとともに、家庭からの分離および里親養護または施設への措置が、それが子どもの最善の利益にかなう場合に最後の手段としてのみ用いられることを確保するよう、奨励するものである。
措置の定期的審査
25.子ども家族問題省の努力は歓迎しながらも、委員会は、監督担当者の人数が十分でなく、かつ監督担当者が研修を受けていないために、里親家庭に措置された子どもの定期的審査が不十分であることを懸念する。
26.委員会は、締約国が、里親家庭または施設に措置された子どもの状況が十分に監督されることを確保する努力を追求するよう、勧告する。
虐待およびネグレクト(身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を含む)
27.委員会は、家庭内暴力にさらされている子どもが常に十分なケアおよび援助を受けているわけではないことを懸念する。
28.委員会は、締約国が、家庭内暴力にさらされている子どもまたは親が精神病患者および(もしくは)薬物濫用者である子どもに十分な援助を提供するための努力を引き続き強化するよう勧告する。そのための手段には以下のものが含まれる。
  • (a) 暴力の被害を受けたすべての者がカウンセリングならびに回復および再統合のための援助にアクセスできることを確保すること。
  • (b) 家庭で虐待の被害を受けた子どもに対し、十分な保護を提供すること。
  • (c) 周縁化された集団および不利な立場に置かれた集団にとくに注意を払いながら、家庭における暴力の根本的原因に対応するための措置を強化すること。
  • (d) 不当な取扱いの有害な影響に関する公衆教育キャンペーンおよび防止プログラム(積極的な非暴力的形態のしつけおよび規律を促進する家族発達プログラムを含む)を実施すること。

5.基礎保健および福祉

障害のある子ども
29.委員会は、障害のある子どもによる文化的活動およびレクリエーション活動への参加が制約されていることに、懸念とともに留意する。
30.委員会は、締約国が、障害者の機会均等化に関する国連基準規則(総会決議48/96)および障害のある子どもの権利に関する一般的討議の日に採択した委員会の勧告(CRC/C/69, paras. 310-339)を考慮に入れながら、障害のある子どもに対してサービス(文化的活動およびレクリエーション活動を含む)への平等なアクセスが提供されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
基礎保健および福祉
31.委員会は、摂食障害(過食症および拒食症)の発生件数が多いことを依然として懸念する。さらに委員会は、運動の少なさおよび栄養バランスの悪い食事があいまって生じる体重過多の問題が子どもの間で増大しつつあることを懸念するものである。
32.委員会は、締約国が、子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達に関する委員会の一般的意見4号(2003年)を考慮に入れながら、子どもおよび青少年の健康に細心の注意を払うよう勧告する。とくに委員会は、締約国が、摂食障害の発生に対応し、かつ思春期の子どもの間で健康的なライフスタイルを促進するための措置を強化するよう勧告するものである。
精神保健サービス
33.子どもおよび若者を対象とした精神保健サービスを強化するためのとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、援助およびケアを受けるまでの待機時間のような課題が残されていることを懸念する。委員会はまた、子どもおよび青少年を専門とする精神医学者および心理学者が足りないことも懸念するものである。
34.委員会は、締約国に対し、支援を必要としている子どもおよび若者に対して十分な治療およびケアが遅滞なく提供されることを確保するため、精神保健ケアの発展の速度を速めるよう奨励する。
35.委員会は、子どもおよび青少年の自殺件数が多く、若い女性および男性の死亡の4件に1件が自殺であることを、依然として深く懸念する。
36.委員会は、締約国に対し、自殺の危機にある人々のための保健サービス資源を強化し、かつ、危険な状況に置かれた集団内で生ずる自殺を防止するための措置をとるよう促す。
十分な生活水準
37.委員会は、継続的低所得世帯で暮らしている移民の子どもの割合が高いことに、懸念とともに留意する。
38.委員会は、締約国が、すべての子どものニーズが満たされることを確保するとともに、いかなる集団の子どもも貧困線以下の生活を送ることがないことを確保するためあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。

6.教育、余暇および文化的活動

39.委員会は、学校におけるいじめと闘うためにとられた多数の措置、とくに子どもオンブズマンによる取り組みを歓迎するものの、この現象が多くの学校で根強く生じていることを依然として懸念する。
40.委員会は、締約国が、いじめと闘うための措置を強化し、かついじめの削減を目的とした取り組みへの子どもの参加を確保するよう勧告する。

7.特別な保護措置

子どもの難民
41.委員会は、保護者のいない子どもの庇護希望者のうち締約国の受入れセンターから失踪する子どもが多いこと(2003年には33名)に懸念を表明する。委員会は、このような子どもが虐待および搾取の被害を受けやすいことをとりわけ懸念するものである。委員会はまた、保護者のいない子どもの庇護希望者(徴募されまたは敵対行為で使用されたことのある子どもを含む)の監督およびこのような子どもに提供されるケアならびに受入れセンターで暮らす子どもに提供される心理的および精神医学的サービスが不十分であることも懸念する。さらに、委員会は、庇護申請の処理があまりにも遅いことを懸念するものである。
42.委員会は、締約国に対し、受入れセンターで暮らす子どもに対する十分な支援および監督、ならびに、トラウマを負った子どもの庇護希望者に対する十分な心理的および精神医学的ケアが提供されることを確保するための措置を強化するよう促す。委員会は、受入れセンターにおける保護者のいない子どもの庇護希望者のための援助およびケアが児童福祉制度下の他の施設で提供されているものと同一の水準に達するよう、受入れセンターにおけるこれらの子どもの状況を、資源および十分な訓練を受けた有能な職員の面で向上させるよう勧告するものである。締約国はまた、庇護申請がより迅速に処理されることを確保するためにさらなる措置をとることも求められる。
薬物濫用
43.委員会は、締約国において薬物およびアルコールを消費する子どもの人数が多いことに、懸念とともに留意する。委員会はまた、親の薬物濫用のために苦しむ子どもの人数が多いことも懸念するものである。委員会は、これとの関連で、子どもおよび青少年の薬物濫用問題を防止するための試験的プロジェクトが多くの自治体で開始されていることに留意する。
44.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもおよび親に対し、有害物質濫用の有害な影響に関する正確かつ客観的な情報を提供するための努力を強化すること。
  • (b) 薬物および麻薬を使用している子どもが(犯罪者ではなく)被害者として扱われ、かつ回復および再統合のための必要なサービスを提供されることを確保すること。
  • (c) 子どもおよび青少年の薬物濫用問題の防止に関するプロジェクトを拡大し、より多くの自治体が対象とされるようにすること。
性的搾取および性的虐待
45.委員会は、締約国において子どもおよび若者の性的虐待が発生していることを懸念するとともに、この問題に関する最近の研究が存在しないことを遺憾に思う。
46.条約第34条その他の関連条項に照らし、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 子どもの性的虐待の性質および規模、ならびに、虐待の被害をとくに受けやすい集団を特定する目的で虐待された子どもの特質を評価するための、包括的研究を実施すること。
  • (b) 子どもおよび青少年の性的虐待と闘うための措置を強化すること。
  • (c) 子どもの証言が適切な方法で記録されること、および、事情聴取を行なう者が必要な専門的資格を有することを確保すること。
売買、取引および誘拐
47.女性および子どもの人身取引と闘うためにとられた措置は歓迎しながらも、委員会は、性的搾取目的の女性および子どもの人身取引が締約国で依然として問題であることを懸念する。
48.委員会は、締約国に対し、性的搾取および人身取引と闘うための計画を効果的に実施するための努力を強化するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、この分野で深刻な問題に直面している国々/地域への協力を拡大するとともに、子どもの人身取引および性的搾取の性質および規模を評価し、かつこの形態の搾取の被害をとくに受けやすい集団を特定するための研究を実施するよう、奨励するものである(注)。

8.フォローアップおよび普及

フォローアップ
49.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を閣僚評議会もしくは内閣または同様の機関の構成員、議会ならびに適用可能なときは州の政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。
普及
50.委員会はさらに、条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した第3回定期報告書および文書回答ならびに委員会が採択した関連の勧告(総括所見)を、インターネット等を通じ(ただしこれにかぎるものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。

9.次回報告書

51.委員会は、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。委員会は、この点に関する締約国の実績を評価するとともに、締約国に対し、条約で予定されているとおり2008年2月6日までに、120ページを超えない範囲で(CRC/C/148参照)第4回定期報告書を提出するよう慫慂する。


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