総括所見:ノルウェー(第1回・1994年)


CRC/C/15/Add.23(1994年4月25日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、1994年4月18日および19日に開かれた第149回~第151回会合(CRC/C/SR.149-151)においてノルウェーの第1回報告書(CRC/C/8/Add.7)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。
  • (注)1994年4月22日に開かれた第156回会合において。

A.序

2.委員会は、委員会のガイドラインにしたがった報告書、およびノルウェーの開発援助政策について提供された補足的情報に関して、締約国に対する評価の意を表明する。委員会はまた、事前質問票に対して文書回答を提出したこと、および議論の過程で追加的情報を提供したことに関しても、締約国に対する評価の意を表明したい。これにより、委員会は、締約国代表との率直かつ建設的な対話に携わることができた。

B.積極的な側面

3.委員会は、締約国が、子どもの権利の実施を向上させるための措置を国内的にも国際的にも促進することに対して堅い決意を示していることを評価する。これとの関連で、委員会は、ノルウェーが子どものために活動するオンブズマンを世界で初めて設置した国であることに留意するものである。委員会はまた、政府、自治体およびオンブズマンならびに非政府組織を含む市民社会とのあいだに対話の精神が存在することにも留意する。加えて、委員会は、達成された進展および直面した問題を評価する一助とし、かつ問題が生じたさい、それに対応するために必要な戦略をよりよい形で決定できるようにするため、政府がこれらのさまざまな機関および組織との協力を重視していることに留意するものである。
4.委員会はまた、ノルウェーが、自国の開発援助プログラムにおいても、かつ関連する国際的な議論の場への参加を通じても、社会部門を優先すべきことをもっとも強く重視している国のひとつであることも、特筆に値すると考える。同様に、委員会は、締約国が研究組織「チャイルドウォッチ・インターナショナル」の発足を支援したこと、および、対話および協力の精神にのっとり、とくに人権問題に関して国内の専門家による援助の提供を促進することを目的としてNORDEMを発展させていることに、関心をもって留意するものである。
5.委員会は、条約への留保を撤回の方向で再検討するためにノルウェー政府がとった措置を歓迎する。委員会はまた、条約第51条で禁じられている条約の趣旨および目的と両立しない留保がいかなる締約国によって行なわれた場合にも、ノルウェー政府が懸念を表明していることも評価するものである。
6.同様に、委員会は、多くの国に影響を与えている現在の経済的後退期にあって、かつ社会サービスの地方分権化が進展しているなかにあって、児童福祉プログラムのための予算が締約国において増加していることに、満足感とともに留意する。委員会はまた、児童福祉プログラムの実施に関して自治体の政策および措置を監視するシステムが、県知事の報告手続を通じて設置されていることも評価するものである。
7.委員会は、外国人に対する不寛容の傾向と闘い、かつ人種主義および外国人嫌悪の問題に対応するために、締約国が青少年の関与および参加によるものも含めて相当の努力を行なっていることに留意する。委員会はまた、地域レベルの場においてこうした問題と向き合うにあたってそのようなアプローチを奨励するために、締約国が積極的な役割を果たしていることも歓迎するものである。

C.主要な懸念事項

8.委員会は、一部の人権条約を編入する特別規定の導入のため政府委員会の報告書によって憲法改正が提案されていること、および、この提案では子どもの権利条約の編入が対象とされていないことに留意する。
9.委員会は、義務的宗教教育を受けたくないと考える子どものために選択忌避制度が設けられているとはいえ、そのためには親が正式な要請を提出して当該の子どもの信仰を明らかにしなければならず、それがそのような子どものプライバシーへの権利の侵害と感じられる可能性があることに、留意する。
10.自己の出自を知る子どもの権利に関して、委員会は、人工授精との関わりで、とくに精子提供者の素性が秘密とされる点で、条約のこの規定と締約国の政策とのあいだに矛盾が生じる可能性があることに留意する。
11.委員会は、庇護申請を行なう子どもに関わる法律および政策が実際に適用されるさいの一部の側面について、とくに保護者のいない未成年者も含む子どもの事情聴取の方法との関わりで、懸念を覚える。さらに、委員会は、警察に対し、家族全体が離れ離れにならず、かつ子どもに対する不当な重圧がかけられることを確保する目的で家族の一部構成員の国外退去を遅らせるよう指示が出されない場合があることを、懸念するものである。
12.委員会は、庇護申請を拒否されながら同国に留まっているあらゆる子どもが、保健および教育への権利を法的にではなく事実上保障されてきたことに留意する。そのようなサービスは、条約第2条および第3条の文言および精神にしたがい、原則の問題として提供されるべきであるというのが委員会の見解である。

D.提案および勧告

13.委員会は、締約国に対し、条約に対する留保を遠からず撤回するために必要な措置をとるよう奨励したいと願い、かつ、この点に関してどのような発展があったかについてひきつづき情報を得たいと考えるものである。
14.ノルウェー政府が憲法を改正することにより一部の人権条約の編入に関する特別規定を設けるのであれば、委員会は、子どもの権利条約への言及も編入するよう奨励したい。
15.委員会は、締約国が立法において子どもの権利条約第37条(a)の意味するところを考慮すること、および、これとの関連で、ノルウェーも加盟国である拷問および他の残虐な、非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰を禁止する条約第1条に掲げられている拷問の定義にも注意を払うことを、提案したい。
16.委員会は、締約国が、難民である子どもとの関わりで子ども家族問題省の役割を強化する可能性を検討するよう提案したい。
17.子どもの権利を促進しかつ保護する継続的な努力の一環として、委員会は、締約国が、議論の過程で提起されたさまざまな問題に関する調査を実行しまたは奨励するよう提案したい。このような問題には、ノルウェーにおける青少年の自殺率が相対的に高いことの理由、ならびに、条約で保障されたあらゆる権利の実施の進展または後退を監視するための指標の発展および活用が含まれる。
18.委員会は、たとえばひとり親家庭の子どもが直面している特段の困難もさらなる研究の価値があるのではないかと提案する。
19.条約に関する意識をさらに喚起するために締約国が行なっている継続的な努力との関わりで、委員会は、教員、ソーシャルワーカー、法執行官および裁判官を含むさまざまな専門家グループの研修プログラムに条約の規定および原則に関する教育を編入することが検討されるべきであるとの見解に立つものである。
20.委員会はまた、とくに特定のグループの子ども(たとえば少年司法の運営制度の対象となっている子ども)の状況、および、エイズに罹患した子どもおよびHIVに感染した子どもに対する差別の防止に関わる条約の原則および規定について対象を明確にした条約の広報を行なうため、適切な方法および手段を活用するようにも提案する。
21.委員会はまた、とくに人権教育のための10年を設定する可能性に関する総会決議48/127にかんがみ、人権教育の促進に関して締約国が進めてきている政策も歓迎し、かつ、締約国に対し、この機会を活用して、学童を対象としたカリキュラムに子どもの権利条約についての教育を編入することを促進するよう、奨励する。
22.同様に、委員会は、締約国が、とくに地方レベルにおいて、自己に影響を与える事柄に子どもをさらに関与させ、かつそのような参加を促進するための措置を奨励するよう提案したい。
23.委員会は、締約国が、差別の禁止の一般原則およびプライバシーへの権利に照らし、子どもの宗教教育に関する方針を見直すよう提案する。
24.委員会は、締約国が、条約の原則および規定に照らし、庇護申請している子どもに関する政策をあらためて包括的に見直すことを検討するよう、提案する。これとの関連で、家族の分離を引き起こす国外退去を避けるための解決策を模索することも、提案されるところである。委員会はまた、締約国が、自治体のあいだでサービスの水準の違いが生じないことを確保する目的で、教育および保健サービスの提供について、その管轄下にあるあらゆる子どもとの関わりも含めてさらに議論してもよいのではないかとも提案する。
25.委員会は、締約国が、18歳未満の者に対する手続が条約第40条3項の精神と全面的に両立することを確保するため、少年司法制度の見直しを検討するよう提案する。
26.委員会は、締約国に対し、条約の内容をノルウェーのあらゆる子どもおよびおとなにひきつづき知らせ、かつ、条約に関する文書をノルウェーの主要な移民グループの言語に翻訳するよう奨励する。委員会はまた、締約国が、委員会に対する締約国報告書、委員会における議論後に作成された議事要録および総括所見ならびに事前質問票およびそれに対する文書回答をまとめた特別パッケージを作成し、かつそれをできるかぎり広く入手可能とするようにも勧告したい。


  • 更新履歴:ページ作成(2011年8月31日)。