「さてと、街に着いたっと。ここまで誰とも会わなかったのは運がいいのか悪いのか」
「…………」
「だんまりだと気が滅入るなあ。何かほら! 喋って交流をしようよ」
「アンタとはもう情報の共有は果たしたはずだ」
「……ぅ」
「…………」
「だんまりだと気が滅入るなあ。何かほら! 喋って交流をしようよ」
「アンタとはもう情報の共有は果たしたはずだ」
「……ぅ」
西洋風の街を行くのはシン・アスカと竹井久。参加者との交流を求め街へ出てきたものの、未だ誰とも出会わない。
がらんどうの街を二人して歩く。まるでアダムとイブのように二人きり。
最も、このような状況ではロマンの欠片もないと久は考えているのではあるが。
がらんどうの街を二人して歩く。まるでアダムとイブのように二人きり。
最も、このような状況ではロマンの欠片もないと久は考えているのではあるが。
「少し休憩した方がいいんじゃないかな。ここまで歩き詰めだしさ。シン君も疲れてない?」
「いい、俺は疲れていないし大丈夫だ」
「いい、俺は疲れていないし大丈夫だ」
ぶっきらぼうにシンは久の申し出を拒否をする。
その横顔は何かに追い詰められているような、簡単にいえば余裕が無いといった風貌であった。
実際にシンの頭の中にはこれ以上命を取り零したくないという考えしかない。
ナギを死なせてしまった事実が重くのしかかるが為にいまこうして安穏とする暇は存在しないと自戒する。
その横顔は何かに追い詰められているような、簡単にいえば余裕が無いといった風貌であった。
実際にシンの頭の中にはこれ以上命を取り零したくないという考えしかない。
ナギを死なせてしまった事実が重くのしかかるが為にいまこうして安穏とする暇は存在しないと自戒する。
「何処が大丈夫なのよ。気付いてないの? さっきから汗が出て歩く速度も遅くなっていることに。シン君が疲れてるって私みたいな素人女子高校生にもわかるわよ」
「だけど……こうしている間にも誰かが死んでいるかもしれないんだ。俺は、助けないと」
「だけど……こうしている間にも誰かが死んでいるかもしれないんだ。俺は、助けないと」
故に久の言葉は届かない。ナギの最後がシンに対しての言葉を阻む壁となる。
命を担保にしてでも他者を救うと決めたこの身だ、今更立ち止まっていられるはずがない。
休息など不要、この身は機械で出来ていると言わんばかりに動くのみ。
命を担保にしてでも他者を救うと決めたこの身だ、今更立ち止まっていられるはずがない。
休息など不要、この身は機械で出来ていると言わんばかりに動くのみ。
「シン君」
「何だ……ってうわ!」
「何だ……ってうわ!」
シンが後ろを振り向くと頬に柔らかな感触。視界に入るのは頬を指でつつく久の姿。
久のにんまりとした顔が癪に障る、一般的な日常生活では見る者を魅了する笑みである。実質この笑みに騙されてホイホイと付いていく男は何人もいるだろう。
だが、今の追い詰められているシンには効果は全くない。
シンは心中で久の評価を下方修正し、めんどくさそうに応対する。
久のにんまりとした顔が癪に障る、一般的な日常生活では見る者を魅了する笑みである。実質この笑みに騙されてホイホイと付いていく男は何人もいるだろう。
だが、今の追い詰められているシンには効果は全くない。
シンは心中で久の評価を下方修正し、めんどくさそうに応対する。
「何すんだよ!」
「リラックスにいいかな~って。それにそんな眼で疲れてないって言っても説得力ないわよ?」
「疲れてないって言ってるだろ!」
「はいはい、これはお姉さんからの忠告。先は長いんだからさ、最初から全力で戦ってちゃ後が持たないって」
「……っ」
「これで論破っと。じゃあ何処か落ち着ける場所で休もうか。そんなふてくされないで行きましょう」
「リラックスにいいかな~って。それにそんな眼で疲れてないって言っても説得力ないわよ?」
「疲れてないって言ってるだろ!」
「はいはい、これはお姉さんからの忠告。先は長いんだからさ、最初から全力で戦ってちゃ後が持たないって」
「……っ」
「これで論破っと。じゃあ何処か落ち着ける場所で休もうか。そんなふてくされないで行きましょう」
◆ ◆ ◆
「で、休むことになったのはいい」
「うん」
「食事をとろうって案も悪くない。食べれる時に食べておくのはこういうサバイバルでは常識だと思う」
「うん」
「食事をとろうって案も悪くない。食べれる時に食べておくのはこういうサバイバルでは常識だと思う」
休息の為に近くにある家に転がり込んだ二人は食事を取るということになった。
シンは血塗れの軍服から支給されていた物に入っていた燕尾服に着替えている。
血濡れの軍服で余計な誤解を生むのを避けるためである。
シンは血塗れの軍服から支給されていた物に入っていた燕尾服に着替えている。
血濡れの軍服で余計な誤解を生むのを避けるためである。
「というか、アンタ料理作れないのか」
「作れるわよ。そりゃあ十七歳の乙女が料理が全くできないってのはねー」
「じゃあなんで俺に作らせてるんだよ……別にそれなりに作れるからいいけどさ」
「作れるわよ。そりゃあ十七歳の乙女が料理が全くできないってのはねー」
「じゃあなんで俺に作らせてるんだよ……別にそれなりに作れるからいいけどさ」
シンはフライパン片手に久を恨めしそうにじろりと視線を向ける。
ちなみに現在は支給されていた品物に入っていた食材を使ってベーコンエッグを作っているのだ。
油のじゅうじゅうとはねる音と香ばしいベーコンの匂いが食欲をかき立てる。
備え付けられていたオーブンでは食パンがこんがりと焼き目がつき今か今かと食べられる瞬間を待ち望んでいる。
ちなみに現在は支給されていた品物に入っていた食材を使ってベーコンエッグを作っているのだ。
油のじゅうじゅうとはねる音と香ばしいベーコンの匂いが食欲をかき立てる。
備え付けられていたオーブンでは食パンがこんがりと焼き目がつき今か今かと食べられる瞬間を待ち望んでいる。
「だってシン君が作ったほうが美味しいかなって。楽しみだな~」
目をぱちくりさせて硬直。時が止まって五秒間、無音の空間が形成される。
「……何言ってるんだよ、アンタ」
「あはっ、照れてる照れてる~」
「あはっ、照れてる照れてる~」
ニヤニヤと久は笑みを浮かべ、シンは赤くなった顔を必死で隠す。
その様は軍人としてではなく、本来の、等身大のシン・アスカだということを久は感じる。
素直な方が可愛げがあっていいのに、とは流石に言えなかったが。
そして、一通りのじゃれ合いを終えた後、シンはポツリと苦虫を噛み潰すように呟着始めた。
その様は軍人としてではなく、本来の、等身大のシン・アスカだということを久は感じる。
素直な方が可愛げがあっていいのに、とは流石に言えなかったが。
そして、一通りのじゃれ合いを終えた後、シンはポツリと苦虫を噛み潰すように呟着始めた。
「なあ、アンタさ……俺が怖くないのか」
「へ? 何で?」
「さっきの情報交換の時に言っただろ、俺は軍人だ。任務の過程で人を殺した。たくさん、殺したんだ。
そんな俺と普通に接して怖くないのか? ある程度距離を置こうって考えないのか?」
「確かに怖い。人を殺したって事実は怖いよ、あくまで私は普通の女の子だしそう言うのに関しては人並みの恐怖感ってのはある。
だけど、シン君と話してわかったんだよね。人を殺したという事実とシン・アスカという人間は別個として考えられるって。
私から見るとシン君はさ……」
「へ? 何で?」
「さっきの情報交換の時に言っただろ、俺は軍人だ。任務の過程で人を殺した。たくさん、殺したんだ。
そんな俺と普通に接して怖くないのか? ある程度距離を置こうって考えないのか?」
「確かに怖い。人を殺したって事実は怖いよ、あくまで私は普通の女の子だしそう言うのに関しては人並みの恐怖感ってのはある。
だけど、シン君と話してわかったんだよね。人を殺したという事実とシン・アスカという人間は別個として考えられるって。
私から見るとシン君はさ……」
次に出た言葉はシンからすると笑って違うと否定したくなるものだった。
それでも――。
それでも――。
「ぶっきらぼうだけど優しい、普通の男の子にしか見えないから」
――その言葉を聞いて嬉しいと思ったのは何故だろう。
【E-1民家/一日目・早朝】
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【状態】健康、自己犠牲の精神
【装備】モーターギア@武装錬金、蝶ヶ崎蛾々丸の燕尾服@めだかボックス
【持ち物】支給品一式×2、スコップ、ブレックファーストにぴったりな材料詰め合わせ、
血濡れの軍服@機動戦士ガンダムSEED DESTINY、不明支給品0~1
【思考】
基本:自分の命をかけてでも人を救う。
1.久と行動。
2.ハヤテとマリアに伝言を伝える。
【状態】健康、自己犠牲の精神
【装備】モーターギア@武装錬金、蝶ヶ崎蛾々丸の燕尾服@めだかボックス
【持ち物】支給品一式×2、スコップ、ブレックファーストにぴったりな材料詰め合わせ、
血濡れの軍服@機動戦士ガンダムSEED DESTINY、不明支給品0~1
【思考】
基本:自分の命をかけてでも人を救う。
1.久と行動。
2.ハヤテとマリアに伝言を伝える。
【竹井久@咲-Saki-】
【状態】:健康
【装備】:なし
【持ち物】:支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:生きて仲間と共に脱出
1.シンと行動し、知り合いとの合流。
2.やっぱり自分の勘頼りが一番。
【状態】:健康
【装備】:なし
【持ち物】:支給品一式、不明支給品1~3
【思考】
基本:生きて仲間と共に脱出
1.シンと行動し、知り合いとの合流。
2.やっぱり自分の勘頼りが一番。
【ブレックファーストにぴったりな材料詰め合わせ】
モーニングを爽やかに過ごすためのブレックファーストの材料。卵やらパンやらベーコンやらその他諸々。
何故横文字かというとその方がかっこいいから。
モーニングを爽やかに過ごすためのブレックファーストの材料。卵やらパンやらベーコンやらその他諸々。
何故横文字かというとその方がかっこいいから。
【血濡れの軍服@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
ZAFTの赤い軍服。ナギを抱き起こした際に血でベトベトになってしまった。
ZAFTの赤い軍服。ナギを抱き起こした際に血でベトベトになってしまった。
【蝶ヶ崎蛾々丸の燕尾服@めだかボックス】
蝶ヶ崎蛾々丸が着ている燕尾服。かっこいい。
蝶ヶ崎蛾々丸が着ている燕尾服。かっこいい。
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