朝の光がステンドグラスを透過して様々な色の光へと変わり、藤林杏の髪を照らす。
何もかもを投げ出したい、もうこれ以上この世界にある音を聞きたくないとばかりに両手で耳を塞ぎ椅子で丸まっていた。
歩の追求から逃げ出した杏が走って、転んで、歩いて、走って、躓いて転びかけて。
その逃亡の終着点が今いる大聖堂だった。
何もかもを投げ出したい、もうこれ以上この世界にある音を聞きたくないとばかりに両手で耳を塞ぎ椅子で丸まっていた。
歩の追求から逃げ出した杏が走って、転んで、歩いて、走って、躓いて転びかけて。
その逃亡の終着点が今いる大聖堂だった。
「どうしろっていうの」
破綻のきっかけとなった携帯に送られて着たとある画像――岡崎朋也の無残な姿であった。
頭を打ち抜かれ、がらんどうとなった光無き虚ろな瞳。杏は認めたくなかった、恋心を抱いていた青年の死を。
何故朋也が死んでしまったのか。理由は明確、誰かに殺されたからだ。
誰かとは誰か? 悪意を持つ参加者。自分の我欲を叶える為に人を殺した最低の屑。
頭を打ち抜かれ、がらんどうとなった光無き虚ろな瞳。杏は認めたくなかった、恋心を抱いていた青年の死を。
何故朋也が死んでしまったのか。理由は明確、誰かに殺されたからだ。
誰かとは誰か? 悪意を持つ参加者。自分の我欲を叶える為に人を殺した最低の屑。
「何でよ……何で死んじゃったのよ」
どんなに問いかけてもその質問が返ってくることはない。この大聖堂には誰もいないのだから。
一人。そう、自ら進んで一人になったのだ。心配する樹や歩を置いて飛び出していったのは誰だ?
自分だ。歩の言葉に勝手に腹を立てて最低な捨て台詞まで残して。
一人。そう、自ら進んで一人になったのだ。心配する樹や歩を置いて飛び出していったのは誰だ?
自分だ。歩の言葉に勝手に腹を立てて最低な捨て台詞まで残して。
「は、ははっ……」
数時間前に自分がしでかしたことに杏はもはや渇いた笑いしかでてこない。
自業自得。もうあの場所には戻れない。戻った所でもはや仲間ではないとみなされるのがオチだ。
勝手に暴走するような人は足手まとい、考えるまでもなく杏はそう結論付けた。
そして、現在の杏の頭にあるのはこれからどう生き残ろうかということだ。
荷物は何もかも置いてきてしまった。食料も、水も、デバイスも。
信頼できる仲間も捨てた今の杏はいつ殺されてもおかしくはないのだ。
自業自得。もうあの場所には戻れない。戻った所でもはや仲間ではないとみなされるのがオチだ。
勝手に暴走するような人は足手まとい、考えるまでもなく杏はそう結論付けた。
そして、現在の杏の頭にあるのはこれからどう生き残ろうかということだ。
荷物は何もかも置いてきてしまった。食料も、水も、デバイスも。
信頼できる仲間も捨てた今の杏はいつ殺されてもおかしくはないのだ。
「あるのは腰につけていた拳銃だけか……」
まだ一回も撃ち放っていない拳銃。これを持ってきたことは唯一のラッキーとでも言うのだろうか。
だが、撃てるのだろうか。もし参加者と遭遇して襲いかかってきたとしたら。
この拳銃の引き金を引くことが出来るのか。
出来る訳がない。自分はあくまでも普通の女子高校生なのだ。
それ以前に常識的にそんなことはしてはいけないという気持ちが杏にはある。
殺せないし殺されたくない。二つの感情が引き金を引く勇気を霧散させる。
だが、撃てるのだろうか。もし参加者と遭遇して襲いかかってきたとしたら。
この拳銃の引き金を引くことが出来るのか。
出来る訳がない。自分はあくまでも普通の女子高校生なのだ。
それ以前に常識的にそんなことはしてはいけないという気持ちが杏にはある。
殺せないし殺されたくない。二つの感情が引き金を引く勇気を霧散させる。
「誰かいませんかーって杏!」
そうして、蹲ること数分。
ドアの開閉される音と同時に光の刺す方からいつも聞いていた、日常を象徴するであろう軽い声が聞こえてきた。
顔を上げた杏の眼前に映ったのはいつも辞書をぶつける的のような存在である金髪。
ドアの開閉される音と同時に光の刺す方からいつも聞いていた、日常を象徴するであろう軽い声が聞こえてきた。
顔を上げた杏の眼前に映ったのはいつも辞書をぶつける的のような存在である金髪。
「よう、へい……?」
「他の誰だって言うのさ」
「他の誰だって言うのさ」
朋也が死んでしまった現在ではこの島で一番信頼できるであろう悪友、春原陽平がそこに立っていた。
傷もなく制服も綺麗サッパリ。今まで戦いとも遭遇しないで無事に生きてきたのだろうと杏は判断する。
その姿を見てその幸運を少しでも朋也に分けてやれなかったのかと筋違いの八つ当たりをしそうになった自分を苦く思う。
関係ない親友にまで迷惑を掛けたくない。だがそれ以上にもう自分の過失で仲間を失いたくなかった。
これで陽平から逃げ出してしまったら自分はどうなってしまう。想像するだけでギリギリと心臓をつかむような痛みが胸に走る。
傷もなく制服も綺麗サッパリ。今まで戦いとも遭遇しないで無事に生きてきたのだろうと杏は判断する。
その姿を見てその幸運を少しでも朋也に分けてやれなかったのかと筋違いの八つ当たりをしそうになった自分を苦く思う。
関係ない親友にまで迷惑を掛けたくない。だがそれ以上にもう自分の過失で仲間を失いたくなかった。
これで陽平から逃げ出してしまったら自分はどうなってしまう。想像するだけでギリギリと心臓をつかむような痛みが胸に走る。
「無事だったの……」
「当たり前じゃん。こんな若い身空で死ぬなんて僕はごめんだね」
「当たり前じゃん。こんな若い身空で死ぬなんて僕はごめんだね」
いつものように軽薄な笑みを浮かべて陽平はゆっくりと杏の元へ歩いてくる。
よく見ると腰には大きな短機関銃とリボルバーが下げられており、思わずピクリと身体に震えが出る。
拳銃を見ただけで怯えてしまう自分に少し嫌気が立つ。いつから自分はこんなにも弱くなってしまったのだろう。
決まっている、朋也の死体画像を見た時からおかしくなってしまった。思考にノイズが生まれて立っている地面が真っ暗な闇に見えるようになった。
よく見ると腰には大きな短機関銃とリボルバーが下げられており、思わずピクリと身体に震えが出る。
拳銃を見ただけで怯えてしまう自分に少し嫌気が立つ。いつから自分はこんなにも弱くなってしまったのだろう。
決まっている、朋也の死体画像を見た時からおかしくなってしまった。思考にノイズが生まれて立っている地面が真っ暗な闇に見えるようになった。
「あたし達はまだ生きてるけど……! 朋也が……朋也が!」
放送が流れていないということを顧みると陽平はまだ知らないのだ、朋也が死んだことに。
それをこれから伝えねばならないことが重い。されど伝えねばならない。親友として黙っている訳にもいかない。
それをこれから伝えねばならないことが重い。されど伝えねばならない。親友として黙っている訳にもいかない。
「岡崎がどうかしたのかい」
「あたしが持ってた携帯にメールが送られてきたの。その中に朋也の死体の画像が入っていて……」
「それで死んだって? その携帯は?」
「…………ちょっと移動している最中に落としちゃったのかな、ゴメン。でも信じて……朋也は死んじゃった。
こんな訳もわからない所で……!」
「あたしが持ってた携帯にメールが送られてきたの。その中に朋也の死体の画像が入っていて……」
「それで死んだって? その携帯は?」
「…………ちょっと移動している最中に落としちゃったのかな、ゴメン。でも信じて……朋也は死んじゃった。
こんな訳もわからない所で……!」
本当のこと、仲間との衝突のせいで荷物は全部置いてきたなんて言えはしなかった。
自分の恥を陽平には知られたくなかった。
杏としても朋也の死で動揺するであろう陽平をこれ以上惑わせたくなかった。
それは、自分が苦しみたくないだけという我欲であることから目を背けて。
自分の恥を陽平には知られたくなかった。
杏としても朋也の死で動揺するであろう陽平をこれ以上惑わせたくなかった。
それは、自分が苦しみたくないだけという我欲であることから目を背けて。
「そうだね、だけど――それがどうしたのさ」
二人の共通の友人である朋也は死んだ。故にこの胸に抱く悲しみ、怒りも当然共通のはずだ。
杏はそう思っていた。だが、実際は違っていた。
陽平の物言いには悲しみも怒りもなくただあっけらかんとしていた。
その証拠に彼の瞳からは涙は流れていない。悲しみと怒りに打ちひしがれていない。
杏はそう思っていた。だが、実際は違っていた。
陽平の物言いには悲しみも怒りもなくただあっけらかんとしていた。
その証拠に彼の瞳からは涙は流れていない。悲しみと怒りに打ちひしがれていない。
「ちょっと! 朋也が死んだのよ! 何でそんなに落ち着いてられるのよ!」
陽平の言葉には重みがなかった。まるで今日遅刻してしまったことを笑いのネタとして喋るかのように軽かった。
親友である岡崎朋也が死んだ。それは陽平にとっては驚くに値しないことだったのか。
杏が何でだと聞こうと声を張り上げるがその前に答えは開示される。
親友である岡崎朋也が死んだ。それは陽平にとっては驚くに値しないことだったのか。
杏が何でだと聞こうと声を張り上げるがその前に答えは開示される。
「別に僕にとっては驚くことじゃないんだよ。だってさ、岡崎を殺したのは僕なんだから」
掲げられるリボルバーの拳銃に杏は思考が一瞬真っ白になる。
陽平と全く関連性が見えないその言葉に杏は思わずキョトンとしてしまった。
『岡崎は僕が殺した』という言葉の意味がわからない。
陽平が自分に拳銃を向けているのがわからない。
嘘でしょ、と問いたくなるが口からはひゅーひゅーと吐息しか吐かれない。
吐かれるべきなのはもっと違うものであるはずなのに。
そう、これはきっと冗談だ。杏はそう認識した。
朋也を殺したという発言も拳銃を構えているのも冗談。自分が落ち込んでいるのを見受けて何か気分を変えようとする発言だ。
こんなことで笑わせようなどとは陽平も趣味が悪い。
しかし、冗談にしては悪いにも程がある。自分の知る春原陽平はこんな質の悪い冗談を言うような人物ではなかったはずだ。
陽平と全く関連性が見えないその言葉に杏は思わずキョトンとしてしまった。
『岡崎は僕が殺した』という言葉の意味がわからない。
陽平が自分に拳銃を向けているのがわからない。
嘘でしょ、と問いたくなるが口からはひゅーひゅーと吐息しか吐かれない。
吐かれるべきなのはもっと違うものであるはずなのに。
そう、これはきっと冗談だ。杏はそう認識した。
朋也を殺したという発言も拳銃を構えているのも冗談。自分が落ち込んでいるのを見受けて何か気分を変えようとする発言だ。
こんなことで笑わせようなどとは陽平も趣味が悪い。
しかし、冗談にしては悪いにも程がある。自分の知る春原陽平はこんな質の悪い冗談を言うような人物ではなかったはずだ。
「そしてさ、杏も僕が殺す」
そんなできもしない言葉に杏は思わずクスリと笑ってしまう。
自分と陽平は親友なのだ、そして朋也もだ。親友を殺すなんてことを友情に篤い陽平がやるはずもない。
何が目的で陽平はこんなことを言っているのか。自分の驚く姿を見たいだけではないのか。
わからないなら問えばいい。最初の驚きも覚めて今なら声が出ると確信して杏は声に出す。
非情なる現実に心が追いつかなかった少女は最後に笑って言った。
自分と陽平は親友なのだ、そして朋也もだ。親友を殺すなんてことを友情に篤い陽平がやるはずもない。
何が目的で陽平はこんなことを言っているのか。自分の驚く姿を見たいだけではないのか。
わからないなら問えばいい。最初の驚きも覚めて今なら声が出ると確信して杏は声に出す。
非情なる現実に心が追いつかなかった少女は最後に笑って言った。
「陽平の、バーカ」
◆ ◆ ◆
「何がバーカだよ、杏の方がよっぽどだ」
陽平は崩れ落ちたものを見て蚊の鳴くような声で呟いた。
血をドクドクと垂れ流し笑顔で死んでいる親友“だった”少女。
血をドクドクと垂れ流し笑顔で死んでいる親友“だった”少女。
「戦わないと、殺さないと。ここでは生き残れないんだよ、杏」
覚悟も決意もない杏がこの先を生き残れるとは陽平には到底思えない。
その証拠に腰に下げていた拳銃も弾こそ込められているが安全装置は外されていなかった。
その証拠に腰に下げていた拳銃も弾こそ込められているが安全装置は外されていなかった。
「……畜生」
ガンと椅子を蹴るが胸にたまった鬱屈とした想いは一向に収まらなかった。
何度も何度も蹴りつけるが足が痛くなるだけで気は晴れない。
肉体的にも精神的にも痛いという二重苦。
椅子を蹴った足はじんじんと痛むし胸の奥には魚の骨が刺さったような痛みが継続している。
胸には強さを、気高き強さを、頬には涙を、一滴の涙を。そんな清廉な強さは何処にも存在しなかった。
何度も何度も蹴りつけるが足が痛くなるだけで気は晴れない。
肉体的にも精神的にも痛いという二重苦。
椅子を蹴った足はじんじんと痛むし胸の奥には魚の骨が刺さったような痛みが継続している。
胸には強さを、気高き強さを、頬には涙を、一滴の涙を。そんな清廉な強さは何処にも存在しなかった。
(何でだよ……何で僕はこんなにも弱いんだよ……っ!)
もう迷いを捨て去ったと思ったのに。瞼の思わぬ緩みに陽平は少しだけ口を釣り上げて笑う。
感情なんてもう捨ててしまったと思っていたのに。
くぐもった笑い声は覚悟を決め切れない自分を嘲笑しているかのようだった。
感情なんてもう捨ててしまったと思っていたのに。
くぐもった笑い声は覚悟を決め切れない自分を嘲笑しているかのようだった。
(伊達との会話でもあんまり得られるものはなかったし……しいて言えばハラオウンの持ってたものが手に入っただけ)
放送前に行った伊達――もとい鍵との会話もほんの数分で終了した。
互いに嘘偽りを交えた会話だったので実になったものはほぼなきに等しい。
隙を見つけては殺そうかとも考えたがそうはさせてくれなかった。
彼の軽薄で能面のような感情のない笑い顔を見ると手が震えてくる。
底のしれない恐怖。氷の冷たさを感じさせる視線を耐えることで陽平は精一杯だった。
そして逃げるようにその場から離れて、その姿が見えなくなったら走って、走って。
方角も気にせずにただ走り続けて。落ち着いた矢先にあの悪夢の放送がやってきた。
死者19人。その中には護ると誓った妹が含まれておらず陽平は胸をなで下ろした。
だが、その安堵も鍵との生まれた恐怖も晴れはしない。
放送後も鬱屈とした感情は晴れずにとぼとぼと歩いた末に杏と出会ったのだ。
互いに嘘偽りを交えた会話だったので実になったものはほぼなきに等しい。
隙を見つけては殺そうかとも考えたがそうはさせてくれなかった。
彼の軽薄で能面のような感情のない笑い顔を見ると手が震えてくる。
底のしれない恐怖。氷の冷たさを感じさせる視線を耐えることで陽平は精一杯だった。
そして逃げるようにその場から離れて、その姿が見えなくなったら走って、走って。
方角も気にせずにただ走り続けて。落ち着いた矢先にあの悪夢の放送がやってきた。
死者19人。その中には護ると誓った妹が含まれておらず陽平は胸をなで下ろした。
だが、その安堵も鍵との生まれた恐怖も晴れはしない。
放送後も鬱屈とした感情は晴れずにとぼとぼと歩いた末に杏と出会ったのだ。
(あいつはどれだけの覚悟があるんだよっ! いちいち迷っている僕なんかとは比べものにならないくらい強いものだっていうのかよっ!
くそっ…………! 僕には、覚悟が足りないっていうのか!)
くそっ…………! 僕には、覚悟が足りないっていうのか!)
覚悟の違い。この世界の全てを敵に回そうとも決意を曲げぬ思いとどんな優しさを与えられても平然と捨てされる非情さ。
妹と似た少女を見逃がし、死にかけの参加者を殺すことを迷う程度のぬるま湯の覚悟しかなかった自分とは余りにも違いすぎる。
友達二人、死にかけ一人を殺しただけでは足りないとでも言うのか。どうすれば鋼の如き強さを手に入れることができるのだろうか。
妹と似た少女を見逃がし、死にかけの参加者を殺すことを迷う程度のぬるま湯の覚悟しかなかった自分とは余りにも違いすぎる。
友達二人、死にかけ一人を殺しただけでは足りないとでも言うのか。どうすれば鋼の如き強さを手に入れることができるのだろうか。
(ちく、しょうっ……)
見果てぬ強さはこの身体の中には存在しない。あるのはちっぽけでウジウジ悩んでばかりの自分だけだった。
銃で人を撃ち、殺した。そうだ、殺したのだ。
妹を一緒に捜そうとぶっきらぼうながら親身になって言ってくれた悪友を。
自我が消失する寸前だというのに他者の為に潔く殺された少年を。
真っ暗な世界で懸命に生きて、間違いを正そうと必死にもがいて自分に助けを求めてきた親友を。
全員、陽平は殺した。銃口から撃ち放たれた弾丸は人の命を容易に奪い去った。
たった一つの身勝手な醜いエゴの為だけに三人の命を犠牲にした。
殺した命の数だけ妹である芽衣の優勝は近づいていく、その喜びを胸に抱きながら。
銃で人を撃ち、殺した。そうだ、殺したのだ。
妹を一緒に捜そうとぶっきらぼうながら親身になって言ってくれた悪友を。
自我が消失する寸前だというのに他者の為に潔く殺された少年を。
真っ暗な世界で懸命に生きて、間違いを正そうと必死にもがいて自分に助けを求めてきた親友を。
全員、陽平は殺した。銃口から撃ち放たれた弾丸は人の命を容易に奪い去った。
たった一つの身勝手な醜いエゴの為だけに三人の命を犠牲にした。
殺した命の数だけ妹である芽衣の優勝は近づいていく、その喜びを胸に抱きながら。
(わかってる、わかってるさ。僕が馬鹿な事をしていることぐらい。あの郷田ってババァが最後の一人を無事に帰してくれるなんて信用出来ないって)
人を殺すことは悪いということぐらい陽平は百も承知だった。命の価値は尊くて容易くなくしてはいけないものだって。
黙っているだけでも罪悪感で押しつぶされそうになり足は止まりそうだ。
それでも動き続けるしかない。必死に汗を垂らしながらゴールまで走りぬくしか解決方法はない。
黙っているだけでも罪悪感で押しつぶされそうになり足は止まりそうだ。
それでも動き続けるしかない。必死に汗を垂らしながらゴールまで走りぬくしか解決方法はない。
(僕は兄貴だから。妹を護らないといけないから……今までの分まで)
気高き強さなんていらない。一滴の涙を流す弱さはいらない。
必要なのはどこまでも残酷で孤独な何者をも滅殺する誇り無き強さ。
この掃き溜めの世界は弱さを許してくれない。卑怯は悪、そんな規則は投げ捨ててしまえ。
勝てば――。否、どんな手段を使ってでも勝たなければ意味はないのだ。
罪深き咎人はもう引き返すことはできない。
必要なのはどこまでも残酷で孤独な何者をも滅殺する誇り無き強さ。
この掃き溜めの世界は弱さを許してくれない。卑怯は悪、そんな規則は投げ捨ててしまえ。
勝てば――。否、どんな手段を使ってでも勝たなければ意味はないのだ。
罪深き咎人はもう引き返すことはできない。
「だから、杏。僕は謝らないよ」
陽平は物言わぬ骸に背を向けて大聖堂を後にする。杏を殺した自分がどれだけ懺悔をしたとしても許されることはないだろう。
元より許しを乞うつもりもないし止まりもしない。この道の果てが行き止まりの絶望であっても。
弱さを認めない少年は、この闇の中でも歩き続ける。
元より許しを乞うつもりもないし止まりもしない。この道の果てが行き止まりの絶望であっても。
弱さを認めない少年は、この闇の中でも歩き続ける。
【藤林杏@CLANNAD 死亡】
【D-2大聖堂/1日目朝】
【春原陽平@CLANNAD】
【状態】:健康
【装備】:Sturm Ruger Blackhawk(5/6)、IMI Micro UZI(20/20)
【道具】:支給品一式×2 不明支給品0~4、.41Remington Magnum予備弾54、IMI Micro UZIの予備マガジン×3、LAR Grizzly(8/7+1) 、斬られた右手首(クロノ)、スタングレネード×3、支給品一式、不明支給品0~1
【思考・状況】
基本:芽衣のために皆殺し
1:殺す。殺す……。
2:クロノの仲間とであったら……?
3:甘さは見せない……はずだった。
【状態】:健康
【装備】:Sturm Ruger Blackhawk(5/6)、IMI Micro UZI(20/20)
【道具】:支給品一式×2 不明支給品0~4、.41Remington Magnum予備弾54、IMI Micro UZIの予備マガジン×3、LAR Grizzly(8/7+1) 、斬られた右手首(クロノ)、スタングレネード×3、支給品一式、不明支給品0~1
【思考・状況】
基本:芽衣のために皆殺し
1:殺す。殺す……。
2:クロノの仲間とであったら……?
3:甘さは見せない……はずだった。
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