総括所見:イスラエル(第1回・2002年)


CRC/C/15/Add.195(2002年10月9日)/第31会期s
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、10月2日に開かれた第829回および第830回会合(CRC/C/SR.829 and 830参照)において、2001年2月20日に受領されたイスラエルの第1回報告書(CRC/C/8/Add.44)を検討し、2002年10月4日に開かれた第833回会合(CRC/C/SR.833)において以下の総括所見を採択した。

A.序

2.委員会は、第1回報告書(期限を7年以上過ぎて提出されたもの)が報告ガイドラインにしたがっており、非常に詳細であり、分析的であり、かつ部分的に自己批判的であることに留意する。締約国がパレスチナ被占領地域における条約の実施に責任を負っていることにかんがみ、委員会は、パレスチナ被占領地域の子どもの状況についていかなる情報も存在しないことを深く遺憾に思うものである。委員会は、議論の前および最中に追加資料が提供され、かつ豊かな情報を記載した文書回答が提出されたことを評価する。委員会はまた、高い資質を有する部門横断型の代表団の存在が、締約国における条約の実施プロセスに関する理解の向上に貢献したことも評価するものである。

B.積極的な側面

3.委員会は以下のことを歓迎する。
  • (a) 子どもと法律に関するロトレビー委員会ならびに子どもの権利の増進を専門とする各種の議会委員会(子ども法委員会および子どもの地位増進委員会を含む)の設置および活動、ならびに、自治体レベルにおける子どもの地位地方委員会の設置。
  • (b) 立法が子どもの権利に及ぼす影響についての情報法(2002年)ならびに未成年である被害者の権利および子どもの法律扶助に関する法律を含む、進歩的な法律が制定されたこと。
  • (c) 家庭、学校その他の施設における体罰が禁じられたこと。
  • (d) 締約国における人権の促進および保護に市民社会が(公益訴訟等も通じて)積極的に関与しており、かつ裁判所が条約の条項に基づく多くの判決を言い渡していること。
  • (e) アラブ系イスラエル人の教育のための積極的差別是正措置プログラム。
  • (f) 窮乏する家庭(たとえばひとり親家庭)を支援するためのさまざまな措置。

C.条約の実施を阻害する要因および困難

4.現在の暴力の状況を踏まえ、委員会は、条約を全面的に実施するうえで締約国が抱えている困難を認識する。双方に対してテロ行為が継続的に行なわれており、とくにパレスチナ人の自爆工作員によりイスラエル人の民間人(子どもを含む)が意図的かつ無差別に標的とされかつ殺害されている最中にあって、委員会は、根強く残る恐怖の雰囲気、および、平和にかつ安全に存在する締約国の権利を認識するものである。同時に委員会は、パレスチナ領域の違法な占領、民間人地域の爆撃、超司法的殺害、イスラエル国防軍による均衡性を欠いた武力行使、住宅の破壊、インフラの破壊、移動の制限およびパレスチナ人に対する日常的な屈辱的行為によって暴力の連鎖が助長され続けていることを、認識する。

D.主要な懸念事項および勧告

1.実施に関する一般的措置

5.委員会は、この地域の子どもたちにとっての平和的なかつ安定した未来は、国際人権法および国際人道法を基礎としてのみ達成できることを強調する。国際人権法および国際人道法を遵守することは、イスラエルおよびパレスチナ被占領地域で暮らすすべての人々の平等な尊厳の尊重を保障するうえで、必要不可欠である。
立法
6.委員会は、子どもの権利の分野における新法の制定に留意する。しかしながら委員会は、これらの措置の実施が、不十分な予算配分を含む諸要因によって阻害されていることを懸念するものである。
7.委員会は、締約国が、現行法の効果的実施を確保しかつ強化するため、必要な資源(人的資源および財源)の配分を含むあらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
8.委員会は、とくに子どもの権利の分野における新法(すなわち〔たとえば〕条約の実施に関する法律および平等を基礎とする良質な教育に対する権利についての法律)の提案を通じて子どもの権利促進キャンペーンを行なっている、さまざまな議会委員会のコミットメントを歓迎する。
9.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 子どもの権利に関わる法律の迅速な公布およびその効果的実施を確保すること。
  • (b) 条約の規定および原則を編入した包括的な子ども法の採択を検討すること。
  • (c) 十分な資源の配分を通じて、これらの議会委員会の活動を引き続き支援すること。
10.委員会は、とくに属人法の分野における宗教法が条約の原則および規定に一致していない可能性があることを懸念する。
11.委員会は、締約国に対し、宗教法の解釈を基本的人権と調和させるためにあらゆる可能な措置をとるよう奨励する。
調整
12.委員会は、条約の実施を調整する中央機構が存在しないために、包括的なかつ一貫した子どもの権利政策の達成が困難になっていることを懸念する。
13.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 国および地方の行政段階においてならびにこれらの段階間で部門を横断した調整および協力を進めるための中央機関を設置すること。
  • (b) 包括的であり、人権を基盤とし、かつ協議および参加を基調とする開かれたプロセスを通じて定められる、子どものための国家的行動計画(条約の実施を含む)の作成および実施を確保すること。
データ
14.委員会は、締約国から提供された包括的な統計集を歓迎するものの、条約の実施における進展の評価を可能とするデータの十分な分析が行なわれていないことを懸念するとともに、パレスチナ被占領地域に住んでいる子どもについてのデータがまったく提供されなかったことを遺憾に思う。
15.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 条約が対象とするすべての分野について、もっとも脆弱な立場に置かれた集団(すなわち〔たとえば〕遠隔地に住んでいる子ども)およびパレスチナ被占領地域に住んでいる者を含む18歳未満のすべての者に関するデータを収集すること。
  • (b) 進展を評価し、かつ条約実施のための政策を立案する目的でこのデータを活用すること。
監視体制
16.苦情を申し立てるためのさまざまな回路(すなわち〔たとえば〕「オープンライン」、保健省オンブズマン等)が子どもに対して開かれていることには留意しながらも、委員会は、これらの機構の対応が、条約の効果的実施を確保する目的で十分に調整されていないことを懸念する。さらに委員会は、条約の実施における進展を恒常的に監視しかつ評価する任務を委ねられた独立機構が設置されていないことを懸念するものである。
17.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 既存のさまざまな苦情申立て機構が条約の実施に効果的に貢献することを確保するため、これらの機構間の調整を向上させること。
  • (b) 人権の促進および保護のための国内機関の地位に関する原則(パリ原則、国連総会決議48/134付属文書)および委員会の一般的意見2号にしたがい、国および地方のレベルで条約の実施における進展を監視しかつ評価するための独立した国内人権機関の設置を検討すること。当該機関は、十分な資源を提供され、子どもにとってアクセスしやすく、かつ、子どもの権利侵害の苦情を子どもに配慮した方法で受理しおよび調査し、ならびにそれらの苦情に効果的に対応する権限を与えられたものであるべきである。
資源配分
18.委員会は、景気後退を背景として、社会支出に関する予算削減の提案が、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもの経済的、社会的および文化的権利に悪影響を及ぼすであろうことを懸念する。
19.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 利用可能な資源を最大限に用いることにより、すべての子どもの経済的、社会的および文化的権利を確保すること。
  • (b) 引き続き、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子ども(たとえばアラブ系イスラエル人の子ども、ベドウィン、外国人労働者の子ども)のための予算配分を優先させ、かつその対象を明確にすること。
  • (c) 予算配分が子どもの権利の実施に及ぼす影響を制度的に評価すること。
市民社会との協力
20.現在蔓延している条件下においては、とくにパレスチナ被占領地域において、条約の規定の実施について市民社会および国際人道機関が重要な役割を果たすことを認識し、委員会は、市民社会および国際人道機関の取り組みに全面的に協力しかつその便宜を図るために締約国が行なっている努力が不十分であることを懸念する。
21.委員会は、締約国が、非政府組織および国際機関(国連機関を含む)との協力を強化するとともに、これらの組織が子どものための活動を遂行する際の要員の安全および対象となる子どもへのアクセスを保障するよう、勧告する。
研修/条約の広報
22.委員会は、条約を普及するために締約国が行なっている努力を歓迎するとともに、締約国全体で条約をいっそう幅広く普及する必要があることを代表団が認知したことに留意する。
23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう奨励する。
  • (a) 子どもおよび親、市民社会ならびにあらゆる部門および段階の政府機関の間で、すべての公用語により、条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラム(非識字でありまたは正規の教育を受けていない、脆弱な立場に置かれた集団を積極的に対象とするための取り組みも含む)を強化し、拡大しかつ継続すること。
  • (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方行政職員、子どもを対象とする施設および拘禁場所で働く職員、教職員ならびに保健従事者など)を対象とした、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。

2.子どもの定義

24.委員会は、イスラエル法において、子どもの定義に関して、イスラエルの子ども(たとえば〔すなわち〕1962年の後見および行為能力法および青年(審判、処罰および処遇方法)法に基づき18歳未満の者)とパレスチナ被占領地域のパレスチナ人である子ども(すなわち軍令第132号に基づき16歳未満の者)との間に差別があることを懸念する。
25.委員会は、締約国に対し、軍令第132号のうち子どもの定義に関わる規定を廃止するとともに、これとの関係で国内法が条約第1条および第2条に一致することを確保するよう、勧告する。

3.一般原則

差別の禁止に対する権利
26.委員会は、条約第2条に反して締約国で差別が根強く残っており、かつ差別の禁止が憲法上明示的に保障されていないことを懸念する。とりわけ委員会は、とくに宗教法の文脈における女子および女性への差別、宗教上の事由にもとづく差別、経済的、社会的および文化的権利(すなわち〔たとえば〕教育、保健ケアおよび社会サービスへのアクセス)をアラブ系イスラエル人、ベドウィン、エチオピア人その他のマイノリティ、障害のある子どもおよび外国人労働者の子どもが享受する際の不平等、および、被占領地域におけるパレスチナ人の子どもの権利および自由の享受における不平等を懸念するものである。
27.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 第2条にしたがい、すべての子どもが条約に掲げられたすべての権利を差別なく享受することを確保するための効果的措置(必要に応じて法律を制定しまたは廃止することも含む)をとること。
  • (b) 積極的差別是正措置の取り組みに関わる努力を強化すること。
  • (c) この点に関する社会の否定的な態度を防止しかつこれと闘うための、包括的な公衆教育キャンペーンを実施すること。
  • (d) このような努力を支援するために宗教的指導者を動員すること。
  • (e) すべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約(国連総会決議45/158付属文書)の批准を検討すること。
28.委員会は、「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国がとった措置およびプログラムのうち子どもの権利条約に関わるものについての具体的情報を、条約第29条1項(教育の目的)に関する委員会の一般的意見1号も考慮にいれながら、次回の定期報告書に記載するよう要請する。
子どもの最善の利益
29.委員会は、条約第3条に掲げられた子どもの最善の利益の一般原則が子どもに関わるすべての法律に編入されておらず、かつ、たとえばユダヤ律法裁判所による実務において常に考慮されているわけではないことを懸念する。
30.委員会は、締約国が、法律においても実務においても条約第3条が全面的に編入されるようにするための努力を引き続き行なうよう、勧告する。
生命に対する権利
31.委員会は、現在の武力紛争の前および最中にすべての主体によって行なわれた、締約国におけるすべての子どもの殺傷を深く遺憾に思う。委員会は、子どもの発達を深刻な形で損なう、このような恐怖の雰囲気の影響について著しく懸念を覚えるものである。
32.委員会は、締約国および関連するすべての非国家的主体に対し、以下の措置をとるよう強く促す。
  • (a) 暴力を終わらせるために即時的かつあらゆる必要な措置をとること。
  • (b) 子どもが徴募され、かつ紛争に参加しないことを確保するために即時的かつあらゆる必要な措置をとること。
  • (c) 子どもが殺害されたすべての事件を直ちにかつ効果的に調査するとともに、加害者を裁判に付すこと。
  • (d) これらの人権侵害の被害を受けた子どもに対し、十分な補償、回復および社会的再統合の可能性を与えるためにあらゆる必要な措置をとること。
33.最後に委員会は、締約国が、上記の勧告の実施に関する情報を第2回報告書に記載するよう勧告する。
子どもの意見の尊重
34.委員会は、クネセト〔イスラエル議会〕、学校およびコミュニティにおける討議ならびに裁判所(すなわち〔たとえば〕青年(ケアおよび監督)法および青年(審判、処罰および処遇方法)法)等において子どもの意見の尊重を促進するために締約国が行なっている努力を歓迎する。
35.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約第12条にしたがい、家庭、学校、施設、裁判所(ユダヤ律法裁判所を含む)および行政機関(すなわち〔たとえば〕決定措置委員会)における、子どもに影響を及ぼすすべての事柄についての子どもの意見の尊重および子ども参加を引き続き促進すること。
  • (b) 子どもが十分な情報を得たうえで意見および見解を表明するのを援助し、かつこのような見解が考慮されるようにするため、親、教職員、ソーシャルワーカーおよび地方公務員を対象とした、コミュニティの現場で実施されるスキル訓練プログラムを開発すること。

4.市民的権利および自由

拷問および非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰からの保護
36.委員会は、逮捕および尋問中にならびに拘禁場所(すなわちマアレ・アドゥミム、アドライム、ベイト・エル、フワラ、ケドゥミン、サレムおよびグッシュ・エツィオンの各警察署ならびにテルザ、ラムレー、メギドおよびテルモンドのような刑務所)において、警察官がパレスチナ人の子どもに対して行なう非人道的なまたは品位を傷つける行為ならびに拷問および不当な取扱いの訴えおよび苦情があることを、深刻に懸念する。
37.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう、強く勧告する。
  • (a) 締約国にいるパレスチナ人その他の子どもの逮捕、尋問および拘禁に関与するすべての者が条約の原則および規定を全面的に遵守するようにするための訓令を定め、かつ厳格に執行すること。
  • (b) 警察官その他の政府職員によって拷問および非人道的なまたは品位を傷つける取扱いまたは処罰が行なわれたすべての事件を効果的に調査し、かつ加害者を裁判に付すこと。
  • (c) これらの人権侵害の被害者に十全な注意を払い、かつ十分な補償、回復および社会的再統合の機会を提供すること。
  • (d) 上記の勧告に実施に関する情報を次回報告書に記載すること。

5.家庭環境および代替的養護

暴力/虐待/放任/不当な取扱い
38.委員会は、家庭、学校および子どもをケアするその他の施設におけるあらゆる形態の暴力および虐待を防止しかつこれと闘うために締約国が行なっている多くの努力を歓迎する。しかしながら委員会は、とくに包括的戦略および十分な資源が欠けていることを理由として、これらの努力の効果が限られているように思えることを懸念するものである。
39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 家庭、学校および子どもをケアするその他の施設における暴力および虐待を防止しかつこれと闘うための、国レベルの包括的戦略(これにはとくに子どもの不当な取扱いおよび虐待の性質および規模を評価するための研究が含まれるべきである)を策定するとともに、これらの慣行に対処する政策およびプログラムを立案すること。
  • (b) 子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施するとともに、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態のしつけおよび規律を促進すること。
  • (c) 苦情の受理、監視および調査(必要な場合の介入も含む)を行なうための手続および機構を強化すること。
  • (d) 被害者のケア、回復および再統合を行なうための十分な資源を配分すること。
  • (e) 不当な取扱いの事案の特定、通報および処理について、教職員、法執行官、ケアワーカー、裁判官および保健従事者を研修すること。
40.委員会は、里親家庭が提供するケアを向上させるために締約国が行なっている努力(たとえば研修および支援プログラム)に留意するものの、いまなお相対的に多くの子どもが施設ケアのもとで生活し続けていることを懸念する。
41.委員会は、締約国が、とくに里親家庭の数を増やすための公的プログラムの実施および十分な財源その他の資源の提供によって、里親養護システムをさらに強化するよう勧告する。

6.基礎保健および福祉

障害のある子ども
42.委員会は、障害のある子どもの権利および特別なニーズに対応するために締約国が行なっているさまざまな努力に留意する。しかしながら委員会は、このようなニーズと提供されるサービスとのあいだに大きな乖離があること、および、ユダヤ人の子どもに提供されるサービスとアラブ系イスラエル人の子どもに提供されるものとの間に乖離があることを、依然として懸念するものである。
43.委員会は、締約国が、障害のある子どものニーズが充足され、かつ必要なサービスが提供されることを確保するための資源(人的資源および財源)を優先的にかつ対象が明確化された形で配分する努力を継続しかつ強化するよう、勧告する。さらに委員会は、締約国が、アラブ系イスラエル人の子どもがユダヤ人の子どもと同じ水準および質のサービスを受けることを確保するよう、勧告するものである。
保健
44.委員会は、とくにイスラエル国防軍が課した措置(道路の封鎖、外出禁止令および移動の制限ならびに経済および保健に関わるパレスチナのインフラの破壊を含む)の結果として、パレスチナ被占領地域の子どもの健康および保健サービスが深刻に悪化していることを深く懸念する。特に委員会は、これによって生じている遅延および保健従事者への干渉、基礎的医薬品の不足、ならびに、市場の崩壊および基礎食糧品の価格高騰による子どもの栄養不良について懸念を覚えるものである。
45.委員会は、締約国が、パレスチナ人のすべての子どもに対し、基礎的ニーズおよび健康のためのサービス(医薬品および医療従事者を含む)への安全なかつ無条件のアクセスを保障するよう、勧告する。
46.委員会は、国民健康保険法においてすべてのイスラエル市民が対象とされている旨の情報を歓迎するものの、ユダヤ系イスラエル人とアラブ系イスラエル人とのあいだに根強くかつ顕著な保健指標の格差が残っていることを、依然として懸念する。
47.委員会は、締約国に対し、利用可能な保健サービスの利益をすべての市民が平等に得られることを確保するため、資源の配分を強化しかつ増加させるよう勧告する。
十分な生活水準
48.委員会は、脆弱な立場に置かれた家庭(たとえばひとり親家庭)への支援を向上させるために締約国が行なっている活動には留意するものの、社会福祉予算が最近削減されたこと、および、とくに大家族、ひとり親家庭およびアラブ人家庭で暮らしている子どもの貧困率がきわめて高いことを懸念するものである。
49.委員会は、締約国が、貧困根絶のための包括的戦略を策定しかつ実施するとともに、当該戦略に対して十分な財源および人的資源を提供するよう、勧告する。
50.委員会は、パレスチナ被占領地域において住宅およびインフラの大規模な破壊が行なわれていることを深く懸念する。これは、これらの地域の子どもにとって、十分な生活水準に対する権利の深刻な侵害である。
51.委員会は、国際人道法、とくに文民の保護に関するジュネーブ条約を参照しながら、締約国が、(文民と戦闘員との)区別の原則および(文民に対して過度な危害を及ぼす攻撃の)均衡性の原則を全面的に遵守するとともに、したがって住宅、上水道およびその他の公益設備を含む非軍事目標の破壊を回避するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国が、このような破壊の被害者に対し、住宅の再建のための支援および十分な補償を提供するよう勧告するものである。

7.教育

教育
52.委員会は、イスラエル国防軍が課した措置(道路の封鎖、外出禁止令および移動の制限ならびに学校インフラの破壊を含む)の結果として、パレスチナ被占領地域の子どもによる教育へのアクセスが深刻に悪化していることを懸念する。
53.委員会は、締約国が、条約にしたがい、パレスチナ人のすべての子どもが教育にアクセスできることを保障するよう、勧告する。その第一歩として、締約国は、パレスチナ被占領地域全域で開校時間中の移動の制限が解除されることを確保するべきである。
54.委員会は、教育予算が近年の支出削減から保護されている旨の情報を歓迎するものの、アラブ系イスラエル人層における教育への投資および教育の質がユダヤ人層におけるそれよりも相当に低いことを懸念するものである。
55.委員会は、締約国が、積極的差別是正措置を継続しかつ強化するとともに、アラブ層の教育に配分される予算をさらに増加させるよう、勧告する。
56.委員会は、条約第29条に列挙された教育の目的(人権、寛容および性の平等ならびに宗教的および民族的マイノリティの尊重の発展を含む)が、締約国全体を通じ、明示的にカリキュラムの一部とされているわけではないことを懸念する。
57.委員会は、締約国および関連のすべての非国家的主体(パレスチナ自治政府を含む)が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮にいれ、とくに人権、寛容および性の平等ならびに宗教的および民族的マイノリティの尊重の発展との関連で、すべての初等中等学校のカリキュラムに子どもの権利を含む人権の教育を含めるよう、勧告する。この努力において、宗教的指導者の動員が図られなければならない。

8.特別な保護措置

武力紛争
58.委員会は、テロリズムが締約国の子どもの権利に及ぼす影響、および、軍事行動がパレスチナ被占領地域の子どもの権利に及ぼす影響について深刻な懸念を覚える。さらに委員会は、レバノン南部における地雷除去の取り組みとの関連で締約国の協力が不十分であること、および、同地域で行なわれたイスラエル国防軍の作戦の被害を受けた子どもに対して救済措置が提供されていないことを、懸念するものである。
59.委員会は、締約国およびその他の非国家的主体が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約に掲げられ、かつ国際人道法で保護される子どもの権利を全面的に尊重した、軍隊その他の要員を対象とする交戦規則を策定し、かつ厳格に執行すること。
  • (b) 武力紛争において子どもを使用することおよび(または)目標とすることを控えるとともに、条約第38条を全面的に、かつ武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を可能なかぎり、遵守すること。
  • (c) レバノン南部における地雷除去の取り組みに全面的な支援および協力を提供するとともに、レバノン南部におけるイスラエル国防軍の行動により被害を受けた子どもが十分な補償、回復およびリハビリテーションの機会を得られるようにすること。
  • (d) 対人地雷の使用、貯蔵、生産および移譲の禁止ならびに廃棄に関する条約(1997年)を批准し、かつ全面的に実施すること。
性的搾取
60.委員会は、未成年者の商業的性的搾取と闘うための省庁間・機関間委員会の設置、その活動およびこの分野におけるNGOの関与に留意する。しかしながら委員会は、これらの取り組みその他の努力の効果がいまのところ限られていることを懸念するものである。
61.委員会は、締約国に対し、とくに必要な財源その他の資源を提供することにより、未成年者の商業的性的搾取に対応するこれらの努力の有効性を高めるためのあらゆる必要な措置をとるよう、勧告する。
少年司法の運営
62.委員会は以下のことを懸念する。
  • (a) イスラエルおよびパレスチナ被占領地域における子どもの定義に関してなど、子どもに関わる法律が異なる形で適用されていること。
  • (b) パレスチナ被占領地域における子どもの逮捕および尋問に関わる実務のあり方。
  • (c) 軍令第378号および第1500号、ならびに、長期にわたる子どもの独居拘禁を認めている可能性があり、かつ適正手続の保障、法的援助へのアクセスおよび家族の面会について規定していない他のすべての軍令。
63.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。
  • (a) 条約の規定、とくに第37条、第39条および第40条が、北京規則リャド・ガイドライン自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもについての行動に関する指針のようなこの分野における他の関連の国際基準とともに、少年司法制度の法律および実務に全面的に統合されることを確保すること。
  • (b) 自由の剥奪が最後の手段としてのみ、可能なもっとも短い期間でかつ裁判所の許可を受けて用いられること、および、18歳未満の者が成人と拘禁されないことを確保すること。
  • (c) 子どもが法律扶助および独立のかつ効果的な苦情申立て機構にアクセスできることを確保すること。
  • (d) 子どものリハビリテーションおよび社会的回復の分野について専門家の研修を行なうこと。
  • (e) 諸軍令の規定のうち、少年司法の運営に関する国際基準に違反するものをすべて廃止すること。

9.選択議定書

64.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春および児童ポルノならびに武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の両選択議定書を批准するよう、奨励する。

10.報告書の普及

65.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した第1回報告書および文書回答を公衆一般が広く入手できるようにし、かつ、関連の議事要録および委員会が採択した総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。そのような文書は、締約国のあらゆる行政段階においてかつ公衆一般(関心のある非政府組織を含む)のあいだで条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。
66.委員会が採択し、かつ委員会の第29会期報告書(CRC/C/114)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、委員会は、締約国による報告が相当に遅延していることを認識しながら、条約第44条の規定を全面的に遵守した報告実践の重要性を強調する。条約に基づいて締約国が子どもに対して負う責任の重要な側面のひとつは、委員会が条約の実施における進展を審査する定期的機会を持てるようにすることである。これとの関連で、締約国が定期的にかつ時宜を得た報告を行なうことはきわめて重要である。委員会は、一部の締約国が時宜を得た定期的な報告を開始するうえで困難を経験していることを認識する。委員会は、例外的措置として、締約国が条約を全面的に遵守してその報告義務の履行の遅れを取り戻すことを援助するため、締約国に対し、2008年11月1日までに、単一の統合報告書として第2回、第3回および第4回報告書を提出するよう慫慂する。委員会は、締約国に対し、その後は条約で予定されているとおり5年ごとに報告を行なうよう期待するものである。


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