総括所見:フィンランド(第2回・2000年)


CRC/C/15/Add.132(2000年10月16日)
原文:英語(平野裕二仮訳)

1.委員会は、2000年9月19日に開かれた第643回および第644回会合(CRC/C/SR.643 and 644参照)において、1998年11月18日に提出されたフィンランドの第2回定期報告書(CRC/C/70/Add.3)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。
  • (注)2000年10月6日に開かれた第669回会合において。

A.序

2.委員会は、締約国の第2回定期報告書が時宜を得た形で提出されたこと、追加情報が提供されたこと、および、事前質問事項(CRC/C/Q/FIN/2)に対する文書回答が締約国によって提出されたことを、歓迎する。委員会は、対話の際に追加情報を提供するため代表団が行なった建設的努力に、評価の意とともに留意するものである。

B.締約国によってとられたフォローアップ措置および達成された進展

3.委員会は、子どもの権利条約の実施における全般的進展について締約国を称賛するとともに、包括的な社会保障制度ならびに子どもおよびその親のための幅広い福祉サービス、とりわけ無料の保健ケア、無償教育、長期の母性休暇、母と父の両方を対象とする親休暇および広範な保育制度に対する満足感をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.53、パラ3参照)。委員会はまた、1990年代前半の景気後退が子どもに及ぼす影響を低減するために締約国が努力を行なったこと、および、子どもの福祉を左右する基盤が維持されてきたことも歓迎するものである。
4.委員会は、新たな法律が最近採択され、かつ、国内法を条約の原則および規定に一致させるための改正が行なわれたことを歓迎する。委員会はとくに、委員会の前回の勧告で勧告されたように(CRC/C/15/Add.53、パラ29参照)、政府が提案した法律によって未成年者からの性的サービスの購入および児童ポルノ資料の所持が犯罪化され、かつセックスツーリズムに関わる刑法改正によってフィンランド市民が国外で行なった性的虐待関連の犯罪が犯罪化されたこと、家族再統合の促進を目的として1999年外国人法が改正されたこと、ならびに、社会への移民の統合を促進し、かつ庇護希望者の受け入れ手続を定める法律が採択されたことに、留意するものである。委員会はまた、社会保健省が、子どもの商業的性的搾取を防止するための国家的プログラムを作成したことも歓迎する。
5.委員会は、国内における子どもの権利の実施の監督を任務とする、子ども問題担当の副議会オンブズマンが1998年に設置されたことを歓迎する。
6.委員会は、政府が1997年に寛容の促進および人種主義との闘いに関する政策指針を発表したことに、評価の意とともに留意する。委員会はまた、社会福祉サービスおよび保健ケア・サービスのあり方に関する政府の全国プログラム(1998~2001年)において民族的マイノリティの健康および福祉の促進のための活動が行なわれたこと、移民の子どもが教育に平等にアクセスできること、および、移民自身の言語による教育を促進するための措置がとられてきたことにも、留意するものである。
7.委員会は、児童福祉の全国的平準化制度により、自治体の経済状況に関わらず、必要に応じた適切なサービスへの子どものアクセスが向上していることを歓迎する。委員会はまた、フィンランド地方自治体協会が、2000年1月、自治体における子どもの権利条約の実施を促進する目的で子ども政策プログラムを採択したことにも、評価の意とともに留意するものである。加えて委員会は、とくに子どもおよび若者に影響を与えている精神的問題を考慮に入れた、社会福祉および保健に関する行動計画に、満足感とともに留意する。
8.委員会は、フィンランドが、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約を最初に批准した国のひとつであり、かつILO・児童労働撤廃国際計画(IPEC)に対する主要なドナー国のひとつであることについて、同国を称賛する。
9.委員会は、国連本部で開催されたミレニアム・サミット条約イベントの際、フィンランドが子どもの権利条約の2つの選択議定書に署名したこと(2000年9月7日)を歓迎するとともに、締約国が2001年春に両選択議定書を批准するための措置をとろうとしていることに留意する。

C.さらなる進展を妨げる要因および困難

10.地方当局および広域行政圏当局に対する責任の委譲は地域コミュニティの関与を増進させる可能性があるものの、そのことにより同時に、条約の解釈、その適用および予算配分に関して地方および広域行政圏ごとの差異が存在することにより、条約の原則および規定の全面的かつ平等な実施が阻害されているように思われる。

D.主要な懸念事項

1.実施に関する一般的措置

調整
11.委員会は、政府内に子どもに関する中央担当部局が設けられておらず、かつ、子どもに関わるビジョンのある政策を調整し、かつ条約の実施を監視するための機構が中央および地方のいずれのレベルでも存在しないことを、依然として懸念する(CRC/C/15/Add.53、パラ11参照)。
12.委員会は、締約国に対し、子どもの権利の実現のためのいっそう調整のとれた政策および行動を確立する目的で、政府内に子どもに関する中央担当部局を設け、かつさまざまな省庁間および中央・地方当局間の調整機構を設置するためにさらなる措置をとることを検討するよう、奨励する。
地方レベルにおける実施
13.委員会は、締約国において意思決定、行政およびサービス提供の地方分権化が大規模に進められていることにより、中央レベルから自治体に対して相当の権限が委譲されていることに留意する。しかしながら、すべての自治体が、社会でもっとも脆弱な集団、とくに貧困家庭、ひとり親家庭ならびに障害児、難民およびマイノリティの子どもに対して同一水準の社会政策および社会サービスを提供しているわけではない。
14.委員会は、締約国が、自治体当局による条約のあらゆる側面の実施に関する評価を行なうこと、および、自治体レベルで条約が効果的に実施されることを確保するためにあらゆる努力が行なわれるべきことを勧告する。委員会はまた、すべての自治体の子どもが基礎的社会サービスから等しく利益を受けられることを確保するための、統合的な監視制度または監視機構を設置するべきである旨の勧告(CRC/C/15/Add.53、パラ23参照)も、あらためて繰り返すものである。
予算配分
15.委員会は、低所得家庭または障害のある子どもがいる家庭に対して地方当局が提供している福祉サービスの規模および水準が、自治体当局が利用可能な財源、これらの当局が定めた優先順位、および、ニーズを評価しかつ援助を供与するために用いられているシステムに相当の違いがあることもあって、全国のさまざまな自治体で不平等なものとなっていることを懸念する。これらの格差は、子ども、とくに障害のある子どもが、国内のどこに居住するかによって、福祉援助に不平等な形でしかアクセスできずまたは異なる水準の福祉援助が提供されるという、いずれかの効果を有するものである。
16.委員会は、締約国に対し、たとえば、条約の規定の実施に関する、かつ第2条にしたがった国レベルの最低基準および最低資源配分額を定めることにより、すべての子どもがその居住地に関わらず同一水準のサービスに平等にアクセスできることを保障する方法を検討するよう、促す。
データ収集
17.フィンランドの子ども統計に関する1998年の報告書、および、フィンランド社会を子どもの視点から革新的やり方で検討した子どもの生活条件に関する2000年の特別報告書など、統計の編纂に関する新たな取り組みは認知しながらも、委員会は、条約がとくに地方レベルでどの程度実施されているかを評価するためには、子どもの問題に関するデータおよび指標の恒常的かつ大規模な収集および分析をさらに発展させる必要があることに、留意する。
18.委員会は、締約国が、条約に一致した包括的なデータ収集システムを引き続き発展させるよう、勧告する。このシステムは、とくに脆弱な立場に置かれている子ども(虐待または不当な取扱いの被害を受けた子ども、障害のある子ども、低所得家庭の子ども、法律に抵触した子どもならびに移民およびマイノリティの子どもを含む)をとりわけ重視しながら、18歳までのすべての子どもを網羅したものであるべきである。委員会はさらに、締約国に対し、条約の効果的実施および監視のための政策およびプログラムの立案に際して指標およびデータを活用するよう、奨励する。
オンブズパーソン
19.子どもの権利を実施するための副議会オンブズマンが任命されたとはいえ、委員会は、国レベルのオンブズパーソンの設置に関する議論が継続していること、および、副議会オンブズマンの経験に基づいて締約国がこの点に関する最終的決定を行なうものとされていることに留意する。
20.委員会は、締約国に対し、他の北欧諸国の積極的な経験を考慮に入れながら国レベルの独立した子どもオンブズパーソンの設置を真剣に検討するとともに、財政上の考慮のみで決定が左右されないようにすることを慫慂する。
条約の原則および規定の普及
21.条約に関する情報の普及に関して締約国が行なっている努力(条約本文をサーミ語で刊行したことも含む)には留意しながらも、委員会は、条約の原則および規定が社会のあらゆるレベルで普及されているわけではないことに、懸念を表明する。加えて委員会は、子どもとともにおよび子どものために働く専門家の研修および再研修が体系的ではないことに留意するものである。
22.委員会は、締約国が、絵本およびポスターのような視覚資料等も通じて条約を促進するためのいっそう創造的な手法を発展させるとともに、条約を学校カリキュラムに編入するよう、勧告する。委員会はさらに、締約国に対し、条約をロマの言語その他のマイノリティ言語に翻訳することおよび主要な移民集団の言語で条約を入手可能にすることを検討するよう、奨励するものである。委員会はまた、裁判官、弁護士、法執行官、教員、学校管理者および保健従事者のような、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団を対象として、とくに自治体委員会の委員および公的機関に焦点を当てながら、体系的な研修および(または)感受性強化措置をとることも勧告する。

2.一般原則

一般原則
23.委員会は、締約国が、社会福祉サービス利用者の地位および権利に関する法律のような最近の法改正において、子どもの最善の利益および意見を聴かれる子どもの権利の原則を含めるための努力を行なったことに留意する。
24.委員会は、締約国に対し、条約の一般原則、とくに差別の禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、発達に対する権利(第6条)および子どもの意見の尊重(第12条)を自国の法律および政策によりよい形で反映させるため、引き続きあらゆる必要な措置をとるよう慫慂する。
子どもの最善の利益
25.子どもの最善の利益の原則を尊重するために締約国が相当の努力を行なっていることは認知しながらも、委員会は、とくに自治体当局がこの原則を必ずしも全面的に考慮していないこと、および、さらに、保護者のいない子どもの庇護希望者および難民の最善の利益が必ずしも第一次的に考慮されていないことを、懸念する。
26.条約第3条に照らし、委員会は、締約国が、上述の状況において最善の利益の原則の意味を余すところなく考慮すること、および、子どもに影響を与えるすべての決定においてこの原則が第一次的に考慮されることを確保するためにさらなる努力が行なわれるべきことを、勧告する。
発達に対する権利
27.条約第6条に関して、委員会は、発達に対する権利を締約国がどのように実施しているかについて締約国報告書で明示的言及がないことに留意する。
28.委員会は、締約国に対し、身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達に対するひとりひとりの子どもの権利というの視点から、自国の行動計画、戦略、政策およびプログラムを再検討するよう奨励する。
意見を聴かれる子どもの権利
29.委員会は、とくに子どもの監護をめぐる事案および裁判所に持ちこまれた面会交流紛争において、子ども、とくに12歳未満の子どもの意見が必ずしも全面的に考慮されていないことに、懸念を表明する。。
30.委員会は、締約国が、司法手続の影響を受ける12歳未満の子どもが十分に成熟していると見なされるときは常に意見を聴かれ、かつ、このような意見聴取が子どもにやさしい環境で行なわれることを確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもの意見がどの程度考慮されているか、および、子どもの意見が政策立案および裁判所の決定、プログラムの実施ならびに子どもたち自身にどのような影響を与えているかについての定期的検討を行なうことも、勧告するところである。

3.市民的権利および自由

子ども参加
31.後期中等段階における生徒参加については認知しながらも、委員会は、とくに初等段階および前期中等段階の教育における子どもの参加に十分な注意が払われていないことを懸念する。
32.あらゆる段階の教育における子どもの参加権に関して政府が行なっている活動に留意しつつ、委員会は、締約国に対し、とくに自分たちに関わる教育活動への子どもの参加を増進させるための効果的措置をとるよう奨励する。

4.家庭環境および代替的養護

親からの分離
33.委員会は、失業率が高く、かつ子ども関連の手当に悪影響を与える予算措置がとられていることにより、子どもがいる家庭の純所得が相当に減少していることについて、深刻な懸念を表明する。
34.委員会は、締約国の経済が近年向上していることを考慮に入れ、締約国が、とくに里親養護または施設への子どもの措置を回避する目的で、子どもがいる家庭に対していっそうの資金を配分し、かつこれらの家庭に対して適切な支援を提供するための効果的な措置を発展させるよう、強く勧告する。
35.委員会は、家庭外に措置される子どもが近年増加していることに、懸念とともに留意する。
36.委員会は、締約国が、明らかに子どもの最善の利益にかなう場合に限り、かつ可能なもっとも短い期間で子どもが家庭外に措置されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。
家族再統合
37.移民の統合および庇護希望者の受け入れに関する法律(1999年)により、保護者のいない子どもの庇護希望者の受け入れのあり方について若干の改革が導入されたことには留意しながらも、委員会は、家族再統合の手続にいまなおきわめて長い時間がかかること、および、このことが当事者の子どもに悪影響を及ぼす可能性があることを、懸念する。
38.委員会は、締約国に対し、庇護申請の処理および子どもの定住の手続が遅延する理由を、その短縮を図る目的で検討するよう奨励する。
虐待およびネグレクト
39.締約国が家庭における子どものあらゆる体罰を禁じた世界で2番目の国である(1983年の子どもの監護およびアクセス権法)とはいえ、委員会は、子どもの対する暴力(家庭における性的虐待を含む)の件数について懸念を覚える。委員会はまた、この現象に関する情報がないことも遺憾に思うものである。
40.委員会は、締約国が、家庭における子どもへの暴力の発生を防止するとともに、これが不可能であった場合には、その発生を適時に発見し、早い段階で介入し、かつ、子どもとともに活動する特別訓練を受けた人員を備えた、防止、治療およびリハビリテーションのための子どもにやさしいプログラムおよびサービスを発展させることを目的とした追加的措置をとることを検討するよう、勧告する。

5.基礎保健および福祉

慢性疾患児
41.委員会は、慢性疾患児がいる家族が人材面でも財政面でも必ずしも十分な支援を受けられていないことに、懸念とともに留意する。
42.障害のある子どもの権利を確保するために締約国が行なっている努力を認めつつ、委員会は、締約国が、慢性疾患児がいるすべての家族に対して平等な支援および援助(専門スタッフの助力も含む)を提供するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。
入院している子ども
43.委員会は、経費削減措置のために多数の小児病棟がすでに閉鎖されまたは閉鎖のおそれに直面していること、および、子どもが成人病棟で(成人と同室の場合さえある)ケアを受けていることを、懸念する。
44.委員会は、このような状況を監視するよう求めた広域行政圏当局への最近の要請に留意しつつ、締約国が、入院している子どもに対し、ヨーロッパ入院児連盟(EACH)の入院児憲章にしたがった適切なケアを確保するための効果的措置をとるよう、勧告する。
精神保健サービス
45.精神医学サービス、とくに小児および若者向けの精神医学に対して政府としての支援を提供するために追加的資金が配分されていることは認知しながらも、委員会は、精神病の子どもが成人と同じ施設に措置されていることについての懸念をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.53、パラ16参照)。さらに委員会は、心理学者および精神科医の人数が不十分であることから、精神保健サービスおよび子どものための専門家による対応を受けるまでの待機期間が長く、かつこれらのサービスおよび専門家へのアクセスが遅延していることについて、締約国とともに懸念を表明するものである。
46.委員会は、締約国に対し、子どもが精神保健サービスにいっそう適時にアクセスできるようにし、かつ精神病の子どもが成人と同じ施設に措置されるのを防止する目的で、とくにフィンランドの北部および東部ならびに資源が他の自治体よりも少ない小規模自治体において小児精神科医および小児心理学者の不足に対応するよう、奨励する。
保育サービスおよび保育施設
47.委員会は、自治体が母子福祉クリニックのサービスを提供していることに評価の意とともに留意するものの、これらのクリニックのあり方およびこれらのクリニックに対する資源の提供に関して自治体間で違いがあることを懸念する。
48.委員会は、締約国が、母子クリニックによって提供されるサービスからすべての子どもが同程度の利益を得られることを確保するよう、勧告する。

6.教育、余暇および文化的活動

教育に対する権利
49.委員会は、一部自治体で経済的要因による教員の解雇が行なわれており、これが授業に対しておよび教育の質に対して悪影響を及ぼす可能性があることに対し、締約国とともに懸念を表明する。
50.委員会は、締約国が、国の諸地域間ならびに種々の学校および教育施設間における平等を確保するため、改正された学校関連法制を実施するよう勧告する。

7.特別な保護措置

保護者のいない子ども、子どもである庇護希望者難民
51.委員会は、保護者のいない未成年者が庇護申請を行なった場合に成人と同じ方法による事情聴取の対象とされることを懸念する。さらに、保護者がいない未成年の庇護申請者のための代理人制度が設置されたことには評価の意とともに留意しながらも、委員会は、保護者のいない未成年の庇護申請者の代理人に対して十分な資源および研修を確保するために十分な努力が行なわれていないことに、懸念を表明するものである。また、子どもの難民を対象とした、その子どもの言語による教育が利用可能とされているのは、十分な資源を提供できる自治体のみであるようにも思われる。
52.委員会は、締約国が、子どもの難民の受け入れを対象とする職員の研修(とくに子どもの事情聴取技法に関するもの)および保護者のいない未成年の庇護申請者の代理人の研修のために十分な資源を確保するよう、勧告する。委員会はまた、締約国に対し、子どもの庇護希望者および難民が、その立場および居住地に関わらず同一水準のサービス(とくに教育)に平等にアクセスを認められるようにするための措置を検討することも、奨励するものである。
53.委員会は、戦争の影響を受けている地域の出身であり、かつトラウマ性の経験の被害を受けた可能性のある子どもの庇護希望者および難民が多いことに、懸念とともに留意する。
54.委員会は、締約国が、締約国への到着と同時に特別な支援を必要とする子どもを特定するためにあらゆる努力が行なわれることを確保するとともに、このような子どもおよびその親に対して十分な心理的援助を提供することを検討するよう、勧告する。
有害物質濫用
55.委員会は、締約国の青少年の間で薬物(とくに強度の薬物)の使用ならびにアルコールおよびタバコの濫用が増えているという報告に、懸念を覚える。さらに委員会は、現在の児童福祉サービス制度ではサービスのニーズの増加に対応できないことに留意するものである。
56.委員会は、薬物政策に関する原則決定(1999年)に評価の意をもって留意するとともに、締約国に対し、前向きな文化的変革のためのエンパワーメントを図り、かつ意識啓発および防止のための措置(学校における薬物教育を含む)を継続するよう、奨励する。委員会はさらに、締約国が、子どもにとくに適合した治療療法およびリハビリテーション・サービスを行なうため、児童福祉サービス制度にいっそうの資源配分を行なうよう、勧告するものである。
性的搾取
57.委員会の勧告(CRC/C/15/Add.53、パラ19および29参照)にしたがい、性的搾取からの子どもの保護を向上させるために締約国が実施した法律の見直しその他の措置は評価しながらも、委員会は、フィンランド人の子どもセックスツーリストが売春を行なう子どもを求めて近隣の旧ソ連諸国に旅行する現象に、深い懸念とともに留意する。
58.委員会は、締約国に対し、このような現象と闘うための十分な措置をとるとともに、フィンランド市民が国外で行なった子どもの性的虐待および搾取の事件を捜査しかつ訴追するための国際協力を継続するよう、促す。
マイノリティまたは先住民族集団に属する子ども
59.委員会は、ロマの子どもの学校中退率が高いことに関する懸念をあらためて表明する(CRC/C/15/Add.53、パラ18参照)。
60.委員会は、特別教育を発展させかつ社会的排除を防止するために締約国がとった措置(学校の授業におけるロマ語の地位の強化、ロマ語による教育資料の開発および教員養成など)に留意し、これらの措置の実施を勧告する。委員会は、締約国に対し、この分野における努力を継続するとともに、委員会に対する次回の定期報告書で、これらの措置がロマの子どもに与えた影響についての情報を提供するよう、要請するものである。
締約国報告書の普及
61.最後に、条約第44条6項に照らし、委員会は、第2回定期報告書、委員会が提起した事前質問事項および締約国が提出した文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および委員会が採択した報告書についての総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう、勧告する。このような文書は、政府、議会および一般公衆(関心のある非政府組織を含む)の間で条約、その実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。


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最終更新:2012年03月23日 10:21